TENNIS LOVERS

ATPを中心に色んなテニス情報を伝えていくブログです。 2014.8 - 2015.9 スポーツナビ+にて連載 2017.12.29 livedoorさんに引越

2014年12月

 今日12月29日、錦織圭が25歳の誕生日を迎えました。今日当ブログでは、錦織の誕生日に合わせてテニス選手における25歳という年齢を考えてみたいと思います。

Happy 25th Birthday to @keinishikori! More on Kei: http://t.co/dMkQtUUhBk #ATP #tennis pic.twitter.com/7B46gZCwC3— ATP World Tour (@ATPWorldTour) 2014, 12月 29

 テニス選手の全盛期は一般に24~6歳と言われています。これはある程度はっきりした基準です。フェデラー(2005~06)も、ナダル(2010)も、ジョコビッチ(2011)もこの法則から外れることはできません(全員24歳が全盛期)。ヒューイットやロディックの頃までは20代前半でピークを迎えてその後落ちていく早熟派も多かったのですが、同じく早熟派と思われていたナダルの更なる強化以降、このタイプの選手は本当に少なくなりました。
 では24歳にトップに立った彼らは何年間トップパフォーマンスを維持できるのでしょうか。フェデラーの09全仏~10全豪、ナダルの2013年を考えると「2度目の全盛期」は3年後、28歳と27歳で訪れており、その翌年はパフォーマンスが落ちています。現在27歳のジョコビッチは2014年末の現在に至るまで常に高いパフォーマンスをキープしています。簡略化して考えてしまうと「25歳になった錦織圭」に与えられた時間はこの先3年ないし4年ということになりますが・・・ちなみに過去の大選手、サンプラスがめっきり衰え始めたのは29歳のことでした。28歳の最後に制した00年ウィンブルドンを最後に2年以上ツアータイトルから遠ざかることになったのです。

 もっと身近な例で見てみましょう。今シーズン25歳で戦った選手達はどうだったのでしょうか。デルポトロは負傷で離脱したものの、チリッチは25歳最後の大会となった全米を制して9月末に26歳となりました。グルビスもフェデラーを破って全仏ベスト4を達成した後トップ10入りも果たし、8月に26歳となっています。彼らは二人ともキャリアハイの成績をたたき出しています。この2人の例は25歳全盛期説の正しさを裏付けています。

 一方でテニス選手の全盛期が徐々に後ろにずれつつあるのではということも昨年辺りから言われています。フェデラー(33歳)とフェレール(32歳)に代表される30代選手達の異常なまでの奮闘に加え、ナダル(28歳)、ジョコビッチとマレー(27歳)、そしてトップ10を連続4年以上守っているベルディヒ(29歳)らがどんどん加齢していくにもかかわらず彼らを脅かす選手が昨年まで全く出てこなかったという理由からです。これが単純に下の世代の不甲斐なさによるものなのか、本当にテニス選手の活躍年度が後ろにずれているのか、どちらによる現象なのかは歴史に判断してもらうしかありません。
 昨年9月に25歳と「全盛期の年」を迎えたデルポトロは自ら勝負の年と位置づけて4強に挑んだものの、あと一歩及ばず跳ね返されています(過去記事参照)。来年の錦織はまさしく昨年のデルポトロと同じ立場に立たされることになります。4強への挑戦者筆頭として挑む1年間が始まるわけです。また錦織とちょうど1歳差のラオニッチも27日に24歳の誕生日を迎えています。来年はラオニッチにとってもまた勝負の1年間となります。

 若い選手が活躍開始が遅くなり、一方で元気なベテランが多いのには、一説としてストローク戦中心の現在のテニス界におけるフィジカルの重要度が日々上がっていることにあると言われています。プレーの成熟と比較してフィジカルが身につくのは遅いのです。例え毎日マシンルームに篭ってトレーニングを行ったとしても、それでもです。一概に鍛えればよいというのではなくて、テニスには瞬発力持久力スピードパワー頑丈さ全てがバランスよく必要で、個人に合った筋肉をつけていくのにはかなりの時間がかかります。ナダルはブレイク後に一度ムキムキにして失敗し(よくネットでナダルの画像として貼られる筋骨隆々なものはほとんどこの時期のもの)、その後最適なバランスに鍛えなおして全盛期を迎えています。参考までに今年のジョコビッチのトレーニング光景を見てみましょう。無駄なものを一切削ぎ落としたこんな肉体は一朝一夕で作れるものではありません。

Working the core muscles earlier today. Training for tomorrow, and Monday, hopefully ;) pic.twitter.com/RzgZGOisVj— Novak Djokovic (@DjokerNole) 2014, 9月 5

 一度完成したフィジカルは、近年のスポーツ科学の進歩により衰えを最小限に抑えることができます。そして衰えも長年試合をこなす中で身についた豊かな経験と戦術でカバーできます。そのようなバックボーンのない若手陣にとって、単純な身体能力とショットのセンスだけでゴリ押しすることは難しくなってしまいました。
 フィジカル偏重なこの時期においてこそ、錦織にはぜひ天下を取ってほしいものです。もちろん錦織だってフィジカルを身につけていないわけではありません。2年前の全豪では準々決勝で既に精魂尽き果てていた錦織が今年の全米では接戦続きでも力尽きることなく決勝まで進んだのですから。
 それでも欧米のトップ選手と錦織の体格では歴然とした差があるのも事実。TOP100の平均身長は187.3cmまで伸びてきており、170cm台の選手は錦織とフェレールを含みわずか10人。フェレールのいなかった最終戦出場者に限るとその平均は190.8cmまで上がったのだそうです。デルポトロ(202cm)やチリッチ(198cm)といった昔ならまともに動けなかっただろう大型選手がその身体能力に頼らずしっかり鍛えて、小柄な選手に負けずにコートを走り回りストロークを打ち込むのですからたまったものではありません。そんな時代に178cmの錦織が天下を取るようなことになれば、この上なく素晴らしいことではありませんか?

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前編の続きです。

【史上最強の戦い】
 共に激戦を戦った二人でしたが、より楽に勝ち上がりしかも休養が一日多いナダルのほうがコンディションは有利でした。だがそれをもってしてもなおこの二人の対戦はジョコビッチ有利と言わざるを得ませんでした。何せジョコビッチはナダルに対して6連勝中なのです。しかもここはハードコートの全豪。クレーですら勝てなかったナダルに術はないように見えました。
 第1セットから激しい打ち合いが展開されました。恐ろしいまでにハイレベルなストロークの打ち合い。だがジョコビッチにミスが多く出た分だけナダルがわずかに上回り、5-5からブレイクを奪うと最後BPを凌ぎながらキープしてまず1セットアップ。
 だが第2セットから調子の上がってきたジョコビッチがナダルを押しこみ、そしてラリーを支配し始めました。ナダルも必死に食らいつくのですがその差が徐々に、ほんのわずかづつ開いていきます。6-4で第2セットジョコビッチ、第3セット6-2ジョコビッチ。
 第4セット第8ゲームナダルサーブ、ジョコビッチが0-40としました。ついに万事休すか…。だがここからナダルはフォアとサーブを叩き込んで2本返すと、最後はジョコビッチのフォアDTLにバックDTLを合わせて返す見事なショットで追いつき、このゲームを凌ぎます。
 迎えたタイブレークはこれまでで最高の打ち合いとなりました。しばき合いの末一旦はジョコビッチが5-3とリードを奪いましたが食らいつくナダルの執念の前にストロークの精度がわずかに乱れました。ここから4連続でポイントを奪ったナダルが第4セットを取り返したのです。この時点で試合時間は既に4時間39分。
 
【死闘の結末】
 30度目の対戦にして始めてフルセットにもつれた二人。勢いは第4セットを取り返したナダルにありました。第1セットと第4セットでセットを奪った立役者の1stサーブでポイントを稼ぎ、多少強引な姿勢からもパワフルなフォアハンドをどんどん叩き込み主導権を握りに行きます。押し返しに行ったジョコビッチはナダルの鉄壁の守備に阻まれ、逆にフォアのDTLを食らってブレイクを許してしまいます、ナダル4-2。
 ナダルの勝利まであとキープ2つ。ナダルは30-15からパッシングショットを食らわせジョコビッチの甘い返球をオープンコートに叩き込んだのですが…それがわずかに横に逸れました、痛恨のミス。生き返ったジョコビッチはバックハンドから強打を連発して即座にブレイクバック。
 セットカウント2-2、ゲームカウント4-4。試合開始から5時間半近くが経ち、両者とも限界に達しつつありました。それでも今日一番のラリーが出ます。ナダルキープ、ジョコビッチキープ、5-5。いつ終わるともわからない死闘でしたが、再び両者の間にわずかな差が生まれてきました、ナダルが少し足が動かなくなった瞬間に、ジョコビッチがそれを逃さず振り回してナダルのミスを誘います。一度は凌いだナダルでしたが最後はスライスがネットにかかりジョコビッチがブレイク。
 それでもこの試合はまだ終わりではありませんでした。ジョコビッチは30-15からスマッシュを失敗。続くポイントをナダルが制して30-40とBPを迎えたのです。だがナダルの反撃はここまで。全身全霊のバックハンドをクロスに叩き込んでピンチを凌いだジョコビッチがデュースを制して勝利を収めました。試合時間は5時間53分。もちろん全豪OP最長記録であり、そしてあの08年ウィンブルドン・フェデラーVSナダル戦をも越えグランドスラム決勝史上最長記録となったのです。表彰式では激闘を戦った両者のために椅子が用意される特例まで設けられました。

【その後】
 優勝したジョコビッチだけでなくBIG4全員の強さを見せつけた大会でした。激戦を制したジョコビッチは徐々に安定期に入っていき、そして他のBIG4の反撃が始まります。クレーシーズンはナダルがジョコビッチに昨年のリベンジを果たし直接対決3連勝、そして全仏3連覇。フェデラーは前半戦だけでツアー4勝を挙げる快進撃でウィンブルドンに乗り込むと直接対決でジョコビッチ、マレーを下しウィンブルドン制覇、世界1位復帰。逆に直後のロンドン五輪では地元マレーがフェデラーを下して見事金メダル。そして全米では全豪に続いてのジョコビッチとの死闘を制したマレーが涙のGS初優勝。ツアーファイナルズ決勝ではジョコビッチとフェデラーによる頂上決戦が繰り広げられ、激戦の末ジョコビッチがこれをねじ伏せました。男子テニス界にとってこれほど充実した一年があったでしょうか。
 一方で男子テニス界の固定化も加速していきます。BIG4だけでなくフェレール(全仏全米ベスト4、パリMS優勝)やベルディヒ(全米ベスト4)、ツォンガ(ウィンブルドンベスト4)、デルポトロ(五輪銅メダル)も随所で好成績を残し他の選手につけいる隙を与えません。BIG4に続くいわゆる第二グループまで形成されたテニス界はデルポトロが8位に復帰して以降完全に固定化されてしまったのです…

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 3年前の全豪OPをもって、1ヶ月連載してきたBIG4特集(前回の続き)はひとまず終わりにしたいと思います(多分全豪後にまたやるとは思いますが)。これはテニス界の最高点が披露された戦いでした。と同時に、日本人にとっては錦織が記念すべきGSベスト8を成し遂げた大会として覚えている方も多いでしょう。

【ベスト8】
 大会前から焦点は4強の誰がジョコビッチを止めるかに集まっていました。4強は全く危なげなく勝ち進み、ナダルとフェデラーは全試合ストレート勝ちで、ジョコビッチは地元の大歓声を背に奮闘したヒューイットに2-0から1セット奪われたのみ、マレーは初戦の立ち上がりに1セット落としたのみとそれぞれ危なげない勝ちあがりでベスト8に入りました。
 追う「第2グループ」も非常に高いレベルで安定していました。フェレール、ベルディヒが順当にベスト8に入ります。唯一本命不在だった第8シード、フィッシュのブロックでは前年のカムバック賞を受賞したデルポトロがその実力を見せつけて順当にベスト8入り。残りの一人も順当にツォンガに決まると思われましたが、なんと当時22歳の錦織が大番狂わせを演じました。
 グランドスラムで初めてシードがついた錦織は苦戦の連続でした。初戦こそ順調に勝ち上がったものの、2回戦は地元オーストラリアのエブデンに苦戦し2セットダウンからの大逆転で辛くも3回戦進出。ベネトーとの3回戦も3時間半の長丁場になりましたが第3セット2-5から逆転してタイブレークを制してベスト16入り。もう怖いものはありませんでした。ツォンガとのバトルは錦織にとって3戦連続となる死闘になりましたが錦織の輝きは最終セットまで鈍ることがありませんでした。

【準々決勝】
 当時最高の7人+錦織が揃った準々決勝。だがその4試合は4人の強さを再確認するだけの一方的な戦いになってしまいました。既に限界を迎えていた錦織はマレーの前にこれ以上ない完敗でした。デルポトロもフェデラーの緩急をつけた老獪なプレーの前に翻弄され1セットも取れず敗れました。フェレールと対戦したジョコビッチは第2セットのみタイブレークにもつれたものの、終わってみれば世界5位にほとんど何もさせずストレートで片付けました。
 唯一準々決勝でセットを奪ったのがナダルと対戦したベルディヒ。第1セットをタイブレークで奪うと第2セットのタイブレークでもSPを握って前に出ます、だがバックハンドボレーが痛恨のサイドアウト。第3セット以降はナダルが躍動し順当に準決勝進出を果たしました

【4度目の4強決戦】
 08年全米、11年全仏、全米に続いての4強対決となった準決勝。1年間で3度目となるハイレベルな対決の実現に否が応でも期待が高まります。まず一日早く行われたのは旧黄金カード「フェデラーVSナダル」。27度目の対戦となったこの試合もハイレベルな打ち合いが展開されたものの、結果はかつて全仏で06,07年と繰り広げられた光景の再現となりました。フェデラーがトップギアで1セット先取するものの、ナダルが徐々にギアを上げていきその後3セットを連取する展開です。だが違う展開もありました。この試合フェデラーが苦しんだのはバックハンドではなくフォアハンドでした。攻めたいシーンでフォアハンドのDTLが何度となくネットにかかってしまったのです。
 翌日、ジョコビッチVSマレーの試合が行われました。この試合は両者が全てを出し尽くす名試合となりました。世界1位の貫禄を見せつけあっさりと第1セットを先取したジョコビッチに対し、マレーは第2セットで3度、第3セットで2度のブレイクを奪い、2セット計153分という信じられない長さの死闘を制してセットカウント2-1としました。マレーは持ち前の守備力だけでなく前年から磨いていた攻撃力をこの試合で惜しむことなく見せつけました。左右にどんどんストロークを打ち込んでジョコビッチを振り回すのです。もちろん持ち前のカウンターも健在でした。
 だが第4セットも変わらず向かってくるジョコビッチに第1ゲームをブレイクされたマレーはこのセットを捨ててしまいました。結果的にはこの判断が凶となったのでしょうか、わずか25分でジョコビッチが追いつき2セットオール。再び激闘になった第5セットはジョコビッチが先にブレイクしてサービング・フォー・ザマッチ、この局面でマレーはラブゲームブレイクで追いつく粘りを見せます。だが最後はジョコビッチが4時間50分の死闘の末にマレーを振り切り決勝進出。この試合が今大会のベストマッチだと誰もが思いました。

 後編に続きます。

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Best of 2014もほぼ終わりました。ATP公式サイトでは現在コート外での出来事特集や引退選手特集(ダビデンコ等)を行っています。興味のある方はニュースの一覧から”Best off court”や”Player Farewells”と題された記事を読んでみてください。

当サイトでは最後にATP Matchfactsの特集を行いたいと思います。ここではサーブとリターンに関する数々のスタッツを見ることができます。2014年の記録を覗いてみましょう。

★ファーストサーブ確率



 1stサーブ確率が一番高いのはナダル。全試合の平均が7割というのは非常高いレベルでの安定感が伺えます。ジョコビッチにも同じ傾向が伺えます。かつてナダルやジョコビッチのサーブというのは本当にヘロヘロサーブだったのですが、のちに改善されて確率とコントロールを兼ね備えた素晴らしいものになりました。ナダルが全米制覇して生涯グランドスラムを達成できた要因の一つとしてサーブの強化があると言われているほどです。サーブに難がある錦織も彼ら2人の素晴らしい手本を追うべきでしょう。
 一方ビッグサーバー勢もきちんと確率部門でランクインしています。カルロビッチ、イズナー、アンダーソンらです。彼らは上背を活かしてフラットサーブをこのような高い確率で入れることが可能なのです。ですがこの表にラオニッチがいないのが個人的には気になるところ。61%(22位)はビッグサーバーとしては低すぎます。これをイズナークラスまで上げられればラオニッチはより脅威を増すはずです。

★サーブ時ポイント獲得率



 当然ながら1stサーブ部門にはずらりとビッグサーバー達が並びます。しかしこの中にも2種類の選手がいて、本当にサーブ中心のタイプと強力サーブとストローカーを両立しているタイプがいます。後者はビッグサーバーとは言わないことも多いです。またコートの低速化などで最近はサーブだけでは勝てない事例が多く、前者と言えどもある程度のストローク力は身につけていることが多くなっています。そんな中旧時代のビッグサーバー像を貫くカルロビッチ35歳が未だに元気なのは異例とも言えるかもしれません。
 2ndサーブ部門の1位はフェデラー。フェデラーのセカンドサーブは恐ろしい脅威です。ツアーファイナルズの錦織フェデラー戦を見た方は錦織がセカンドサーブを攻略できず敗退したのを覚えているでしょうか?セカンドサーブでもコースを変え球種を変え自由自在に打ち込んでくるとこれだけの脅威となるのです。

★リターン時ポイント獲得率



 ジョコビッチ、ナダル、マレー、フェレール。この4人をリターン四天王と呼んでもよいかもしれません。世界屈指のストローカー達はリターンでもその能力を存分に発揮します。この4人に食い込もうとしている錦織もセカンドサーブのリターンにおいて第6位と高い確率を記録しました。錦織のリターンも十分驚異的でしょう。1stサーブのリターンがそれ程よくない(キャリア通算でも31%)のは錦織のリーチの短さに原因がありますが、これはもう仕方がないことだと思っています。リーチが届いたときには素晴らしいリターンを見せてくれているので、それで良いのです。

★ブレイクポイント時成績



 左の表にはビッグサーバーが、右の表にはストローカーが綺麗に並んでいるランキング。この表で錦織が欄外なのが非常に残念です。10位とほとんど差がない13位というのは決して悪い数字ではないですが、錦織なら先のリターン四天王にも劣らないリターン力を持っているだけにもう少し数字を上げてほしいところ。
 

★サービス&リターンゲーム獲得率



 サービスゲーム上位4人の90%越え、リターンゲーム上位4人の30%越えは流石の数字。リターンゲームの上位4人はリターンに関する全ての指標でトップ5入りを果たしており、この表では5位以下に圧倒的な差をつけています。錦織は4位のマレーに4%差をつけられての6位。来年の錦織はこの数字をもう少し上げていきたいところでしょう。
 実はサービスキープ率84%のほうが、順位は下ですが実は錦織にとっては素晴らしい数字です。なんと錦織のキャリア通算は78%。かつてトップ選手最弱サーブと言われていた頃の錦織のサービスゲームの弱さが伺えます。今年はクレーシーズンを中心に素晴らしいサービスゲームを見せてくれました。来年以降にも大いに期待が持てます。
 そんな中でジョコビッチとフェデラーはサービスリターン両方でトップ10入りを果たしています。今年の勝率85%以上を記録している世界ランキング上位2名らしい成績でした。

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 ”By the numbers”最終回後編。引き続き、来年注目の選手達を紹介。今回注目する選手達は、100位周辺から大きくジャンプアップして一躍トップ選手の仲間入りを果たした選手達。

★50RANKアップ&TOP50入り達成者一覧




ダビド・ゴファン


 今月7日に24歳になったばかりのゴファンは今年91ランクアップで22位まで上がってきました。ゴファンがブレイクしたのは2012年の全仏。ラッキールーザー(直前で本戦に欠場者が出た場合、予選決勝の敗者が参戦できる制度)でグランドスラムデビューを果たした当時109位のゴファンはステパネクなどを破る快進撃を見せなんと4回戦に進出。憧れだったというフェデラーとの対戦を実現させ1セット奪う大健闘を果たしました。ウィンブルドンでも3回戦進出を果たしたゴファンは2012年を46位で終えます。だが2013年はトップ選手の壁にぶつかり思うように勝ち星を挙げられず、さらに全米後左手首を負傷。残りのシーズンを棒に振ってしまいました。ランキングは一時113位まで下降。
 今年も前半戦は思うように勝てなかったゴファンでしたが、ウィンブルドン後のチャレンジャー大会で覚醒し3週連続優勝。さらにその勢いで乗り込んだ250のキッツビュールでツアー初優勝を達成して「4週連続優勝」。 予選から参戦したウィンストンセーラムでも準々決勝まで進んだゴファンの連勝(予選やCHを含むので公式記録ではありませんが)はなんと「25」まで伸びたのです。
 この後もゴファンの勢いは止まりません。全米では2012年以来となるGS3回戦進出を達成。デビスカップ2連勝でベルギーのWG残留に貢献。ベルギーとの国境に近いフランス・メスの250大会でツォンガを破るなどして優勝、ツアー2勝目。地元ベルギー、モンスのCH大会で貫録の優勝。さらにバーゼルでも同世代のライバル、ラオニッチを撃破するなどして準優勝。7月から11月までのたった4か月で106→22の84ランクアップを達成したゴファン。来年もウィンブルドンまではポイントがほとんど減らないため更なる順位上昇も期待できます。
テニス選手としては小柄な180㎝の身体を目いっぱい使って打ち込むストロークが持ち味の選手。現代のテニスにはよく合っていて、どんなコートでも活躍が期待できます。まずはグランドスラムで唯一実績のない全豪でどんな活躍を見せてくれるか注目です。


ドミニク・ティエム


 オーストリア出身のティエムは今年21歳の若武者。昨年は地元オーストリアの2大会、キッツビュールとウィーンでWCを貰った以外はフューチャーズ大会中心の転戦となったものの、その2大会でいずれも2勝して準々決勝に進む活躍。そして今年の全豪では初めてGSの予選を突破し、本戦初勝利も挙げて本格的にATPツアーでの活躍を始めました。まだ全豪終了時の順位は113位でしたが積極的にATPツアーにエントリーし次々と予選を突破、インディアンウェルズMSでは本戦でもシモンなどを破りトップ100入りを果たしました。その後もどんどんATP大会予選へのエントリーを続けるチャレンジャーとなったティエムは最終的に7大会もの予選を突破しました。もちろん今年度のトップ回数です。
 予選突破7大会目となったマドリッドでは2回戦でバブリンカに逆転勝ちする大番狂わせ。20歳以下によるトップ3撃破はなんと5年ぶりという快挙でした。7月には昨年に続いてキッツビュールで躍動、今度は決勝にまで進出しトップ50入り。翌月の全米では2回戦でコーチを同じくする兄弟子のグルビスと対戦、グルビスの負傷にも助けられ勝利を収めると4回戦(ベスト16)まで進出しました。この快進撃により大会後のランキングは現在のキャリアハイである36位を記録しています。
 ディミトロフと同様、若手では珍しい片手バックハンド使い。全米より後の戦いを見ていると、先に紹介したゴファンが昨年そうだったように思うように勝ち星を挙げられない時期に入ってきてるかなあという印象があります。一旦伸び悩むのはほとんどの若手が通る道です。それを乗り越えての2度目のブレイクを起こせるかどうか、来年のティエムを見守りたいものです。


テニス大国アメリカ復権へ~ソックとジョンソン


 ロディックを最後にトップ選手が消えてしまったアメリカ勢。イズナーが孤軍奮闘しているものの奮闘止まり、腹部の怪我に苦しんでいたクエリーはCH転戦を重ねてようやくランキングを戻してはきたもののまだ35位。彼らにキャリアハイ(それぞれ10位、17位)以上の活躍を期待するのは難しく、となるとアメリカ復権の鍵は若手勢が握ることになります。
 22歳のジャック・ソックは今年ダブルスでウィンブルドンを制しました。シングルスでも今年は1年通してATPツアーを回りながら着実に実績を積み上げています。最高実績はアトランタとニューポートの準決勝進出が最高とまだ爆発力には欠けるものの、1年通してトップ選手と戦い続けてこの順位を記録したという自信と経験は来年以降の戦いに繋がっていくはずです。
 一方のスティーブ・ジョンソンは錦織世代で誕生日もわずか4日違い、今日25歳の誕生日を迎えます。イズナーと同様大学を卒業してからプロに転向したジョンソン。今年は157位からスタートしたものの自国大会を中心に予選本戦問わず勝ち進み一気にランキングを上昇させました。ソックとともに楽天オープンでもベスト8に入っています。彼ら二人とドナルド・ヤング、計3人のアメリカ人若手はアメリカ復活ののろしを上げられるのか?


錦織の同世代の活躍に期待


 錦織世代の選手(1989年生まれ、今年25歳)には先に挙げたジョンソンとヤング、フランスの若手ペイル、そして表の中にいるクリザンがいます。全仏ジュニアを制した経験も持つクリザンは2012年にCH5大会優勝、全米でツォンガを撃破し4回戦進出など一気に大ブレイクし一時は最高26位を記録。だが2013年は思うような実績を残せず、昨年のポイントが入れ替わるとともに順位を逆戻りさせてしまいました。
 だが2014年、全豪で予選を突破すると一気に3回戦まで進出しトップ100に復帰。ミュンヘンでは予選から勝ち上がりユーズニー、ハース、フォニーニと当時のトップ20を3人撃破して文句なしの優勝(ツアー2勝目)。全仏では錦織を破って全豪に続く3回戦まで進出。56位までランキングを上げて迎えた北京ではまたしても予選から勝ち上がり準々決勝でナダルを破る快挙。世界ランクキャリアハイへの復帰はもうすぐです。錦織と来年以降切磋琢磨できるような関係になってくれるのではないかと、個人的に期待しています。

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