2010年3月28日
 JR西日本の歴代三社長を「強制起訴」する検察審査会の議決が出た。史上最悪の脱線事故の一因には、安全対策の不徹底があった。市民の感覚は、同社の経営体質を厳しく問いかけている。

 二〇〇五年に乗客百六人の命を奪った尼崎JR脱線事故では、神戸地検は鉄道本部長だった前社長のみ在宅起訴した。井手正敬元相談役ら歴代社長三人については不起訴としたが、今回の“民意”はそれを覆すものだった。
 昨年から、市民で構成する検察審査会が二回、「起訴相当」と議決すると、裁判所が指定する弁護士が検察官役となり、必ず起訴する仕組みとなったのだ。兵庫県の明石歩道橋事故でも、警察の元副署長が強制起訴議決されたばかりだ。
 検察審査会が問題視したのは、事故が起きた「魔のカーブ」だ。一九九六年に半径約六百メートルを約三百メートルの急カーブに付け替える工事を行っていた。その直前にはJR函館線のカーブで脱線事故が起きており、現場は危険性が高いと認識できたはずだとした。
 高速走行の新型車両も導入しており、可能な限りの安全対策を取るべきだったが、自動列車停止装置(ATS)の整備を怠った-。そうした点から、検察審査会は強制起訴の結論に導いたわけだ。
 今回の議決には批判もある。歴代社長に道義的・経営上の責任はあるにせよ、刑事責任を問うに十分な証拠があるのか、などだ。
 だが、市民の視線は、むしろ列車運行で肝心の安全が徹底されていなかった現実や、事故を起こした背景、同社の経営体質に注がれているのではないか。
 国鉄分割・民営化を主導した井手氏は「独裁的」ともいわれる権限をふるった。関西では私鉄との競合が激しく、当時のJR西日本は過密ダイヤを組んだり、運転時間の短縮などを行っていた。
 同時にミスをした社員には「日勤教育」と呼ばれる懲罰的な勤務を強いた。就業規則の書き写し、草むしり、清掃…。教育とは名ばかりの「いじめ」が国会で取り上げられたこともある。
 事故で亡くなった運転士も「日勤教育」を受けた体験があった。当日もオーバーランのミスがあり、事故と無関係とは思えない。ATS整備が最優先されなかったのはなぜか。「収益重視」のあまり、「安全重視」がなおざりではなかったか。これまで検察が踏み込めなかった企業体質そのものを市民は鋭く突いたといえよう。