2010年3月22日
 日銀が追加の金融緩和をした。昨秋来の金融政策は引き締めから一転、緩和に動いて首尾一貫していない。肝心の景気認識がぐらぐらしているからだ。景気は依然、厳しい。それが出発点である。
 まず金融政策の流れをみよう。 それは昨年十月末にさかのぼる。日銀は当時の金融政策決定会合で企業の資金繰り支援で始めた社債とコマーシャルペーパー(CP)買い取りを昨年末で終了し、別の資金供給手段にしていた企業金融支援特別オペもこの三月末で打ち切りを決めた。
 ところがデフレは止まらないどころか、逆に加速してしまう。政府がデフレ宣言に踏み切ると、日銀も対応を迫られ、十二月に新型オペを導入した。わずか一カ月で右に左に揺れ動いた形である。
 今回の追加緩和もその延長線上にある。新型オペによる資金供給枠を従来の十兆円から二十兆円に拡大して、企業の資金繰りに不安がないようにした格好だ。
 ところが、政策の前提になる景気の現状について、どうみているのかといえば、日銀は相変わらず楽観的だ。「民間需要の自律的回復力は弱いものの、景気は持ち直している」という判断である。
 景気が持ち直していると考えているなら、なぜ追加の金融緩和をするのか、という素朴な疑問さえ起きる。そうではなく、景気は厳しい。デフレは依然、止まる気配が見えない。
 昨年十~十二月期の国内総生産(GDP)デフレーターでみれば、前年同期比マイナス2・8%と前四半期のマイナス0・6%から加速した。高校生や大学生の就職状況は史上最悪水準である。企業収益はようやく改善の兆しがあるが、雇用や賃金に跳ね返ってくるのはまだ当分先だろう。
 景気が厳しい状況にあるという認識がしっかりしていないから、日銀の方向感覚がぶれるのだ。そのために、政府の顔色をうかがいながら、小出しに追加緩和する結果になっている。
 日本だけが長年デフレに苦しんでいる現状をみれば、今回決めた資金供給枠拡大のような小手先の手段では足りない。思い切って、国債買い切りを増額しニューマネーを市場に投入するような抜本策が必要ではないか。
 日銀はまず第一に物価安定に責任を負っている。「デフレは日銀の責任ではない」といった言い訳に終始するようでは、なんのために日銀があるのかさえ分からなくなる。しっかりしてほしい。