2010年3月23日
 地域のテーマに、選挙で選ばれた住民たちが予算の使い道を考えて取り組む「地域委員会」制度が名古屋市で始まった。崩壊が叫ばれる地域社会の在り方を見直し、再構築する機会にならないか。
 地域のことは地域で決める。そんな狙いの地域委員会や協議会は、大阪府池田市や愛知県豊田市、千葉県香取市などで始まっているが、順調ばかりではない。
 二〇〇五年の周辺町村との合併を機に、地域自治区ごとに委員を選挙で決める地域協議会を始めた先進地の新潟県上越市でも、立候補者が定数に達しない協議会が相次ぎ、定着に苦労している。
 「遠くの親せきより近くの他人」と古くから言う。児童虐待や孤独死などの悲報を聞いたり、災害時の避難を考えたりするたび、地域のつながりがあらためて叫ばれる。再構築には、住民が身近な地域に関心を持つことが大事だ。
 名古屋市の地域委員会は、河村たかし市長が、市民税減税や議会改革と並ぶ「庶民革命」の三本柱の一つに掲げた。
 小学校などの学区ごとに、十人ほどの委員を選挙で選ぶ。一千万円前後の市予算を使い、防災や川の美化、歴史をいかした街づくりなど、テーマを決めて取り組む。
 始まったのは市内二百六十余の学区のうち、モデル地区に選ばれた八学区。立候補者の公開討論会を経て、選挙を行った。委員は無報酬だ。会社員や大学生などの委員もいるので夜、週一回程度集まって一時間余、話し合う。
 市議会が住民の声の受け皿になっていない。市議会は市全体の事柄により多く力を注ぐ。既存の町内会は行政の下部組織のようで、住民が考え、行動する仕組みになっていない-。市長の主張にはうなずけるところも少なくない。
 なるほど、地域委員会の委員は選挙で住民の負託を受けたことで自覚と責任を持つ。投票した住民も委員会の活動に関心を持とう。
 名古屋でも関心はまだ低い。投票した住民は対象の8・7%。高めるには「自分たちで決めた」という実感が欠かせない。
 鳩山政権は地域主権を「一丁目一番地の改革」と呼んでいる。市町村への権限移譲が進んでも「地域のことは自分たちで」という住民意識が育っていなければ、地域主権は根付くまい。
 住民自治は上から与えられるものでなく、本来は私たち住民が求めるものでもある。まずやってみる。それが出発だ。