皆様、ご無沙汰しております。
NHKR2での番組がスタートし、こちらのブログがなかなか書けないでおりました。
番組を多くの方に聞いていただき、心より感謝いたします。

そんな折、悲しいニュースが飛び込んでまいりました。
「エリザベス女王陛下の崩御」のニュース。
昨日は、イギリス人の友人と話しながら二人して、涙を流してしまいました。

そんな中、音声学者としての懸念があります。

まず、それは、「イギリス英語」Received Pronunciation(RP)の存在が今後、大きく変化するのではないかということです。これまで、RPのロールモデルというと、「エリザベス女王の英語」でした。



しかし、今回の崩御によって、今度はその筆頭ロールモデルが、チャールズ3世になります。今回チャールズ3世に即位あそばして、初めての演説をなさいました。



これまでも、標準イギリス英語が変化していることは、多くの専門家が指摘していることですが、それがより加速度的に変化するのではないかという懸念です。

変化は「社会階級の縮小」といった点では喜ばしいことかもしれませんが、同時に、「文化の消滅」という点を考慮しなくてはなりません。なぜなら、アクセント(方言)は「文化」を如実に表すからです。つまり、アクセント(方言)は、一朝一夕でできるものではなく、文化という層の蓄積としてアクセントが生まれるのです。

これは「イギリス英語の魅力」と好意的にとらえたいところです。そのイギリス英語の特徴が消えゆくことを、音声学者としては憂慮しています。

言葉は時代とともに変化するものです。しかし、「イギリス英語」をどう定義づけるのか、今回の崩御によって、大きな変化を目の当たりにすることになるでしょう。


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新しいタイプの「イギリス英語」に関しては、以下の本に詳しく載っています。

English After RP: Standard British Pronunciation Today
Lindsey, Geoff
Palgrave Macmillan
2019-03-07