日本時間11月10日午前2時前に、ヒラリー・クリントン氏は今回の大統領選挙に対する敗北宣言を行いました。
クリントン氏は民主党と共和党の融和を表す紫とグレーのシックなスーツに身を包み、堂々と演説を行い、夫のビル・クリントン氏も紫のネクタイに身を包んで、ヒラリー氏の横で温かい眼差しを向けていたのは印象的でした。同様に、副大統領候補のティム・ケイン氏もヒラリー氏を温かく穏やかに見守っている姿にも心打たれました。

全体として、その演説は、堂々とした、立派なものだったと高く評価出来るでしょう。以下のように、感動的なフレーズが含まれていました。全文は以下からご覧いただけます。ヒラリー・クリントン敗北宣言 全文



I’ve had successes and I’ve had setbacks. Sometimes, really painful ones. Many of you are at the beginning of your professional, public, and political careers—you will have successes and setbacks too. This loss hurts, but please never stop believing that fighting for what’s right is worth it.(わたしは、人生の中で、成功したことも、挫折したこともありました。そして、その挫折は時として、痛みを伴うものもありました。みなさんの多くは、専門職の、公的な仕事の、政治の仕事のファーストステージにいると思います。その中で、成功もあれば、挫折もあるでしょう。今回の敗北はとてもつらいことです。でも、正しいと思うものために戦うことを決してやめないでください)

Now, I know we have still not shattered that highest and hardest glass ceiling, but some day someone will—and hopefully sooner than we might think right now. (最も高い、最も硬いガラスの天井を破ることはできませんでした。しかし、いつか誰かがそれを破ってくれるでしょう。願わくは、ここにいるみなさんが思っているよりもそれが早く実現することを)

これらは非常に重い、感動的な言葉です。今すぐには評価されなくとも、後世で女性初の米国大統領が誕生するとき、感動を持ってこれらの言葉が振り返られることでしょう。

今回のスピーチを聞いて、今から20年ほど前、CNNが世界各国から報道関係者を集めて行うWorld Report Conferenceでファーストレディーとしてスピーチを行った講演を思い起こしていました。その一節には、

And most of all, the challenge of putting people first, of including all citizens― men and women, rich and poor, people of all races and creeds― as full participants in our societies. (そしてなによりも、人々を最優先する課題、つまりあらゆる市民を仲間に入れるという課題があります。それは、男性であっても女性であっても、豊かな人でも貧しい人でも、どのような人種で信条を持っていても、私たちの社会に全面的に参加する人として)

というものがありました。

いろいろな疑惑が取り沙汰され、「醜い争い」と言われた今回の選挙戦でしたが、ヒラリー氏のその言葉と信条はこの言葉が発せられた当時と変わっていないように思えます。

そういった意味でも、今回のヒラリー氏の健闘を心からたたえたいと思います。

ただ、今回のスピーチで気になったのは、上記の"Many of you are at the beginning of your professional, public, and political careers"の部分です。穿った見方をすれば、ここから「やる気のある一部のアメリカ国民」に限定している印象を与えます。つまり今回、多くのアメリカ人がトランプ氏に投票した理由は、「多くの仕事を持たない、持てない、仕事を奪われたアメリカ人」の悲しみと怒りの結果なのです。
こうしたところが、ヒラリー氏の弱点だったのはないかと分析できます。