一部SNSやメディアでは「小泉進次郎環境大臣が気候変動問題をセクシーに扱うべき」として、話題をさらっています。いくつかのメディアやSNSでは、誤解があったと記事を書き換えているところもあるようですので、誤解も減っているようです。(誤解なく伝えているメディアももちろんあります)

ではなぜ上記のように発言に誤解があったのでしょうか。 なぜ誤解されたのでしょうか。
1. sexyが問題というよりは
そもそもsexyには「性的な、セクシーな」という意味のほかに、口語でexcitingとかappealingといった意味で使われることもあります。

例えば、オックスフォード米語辞典(2nd edition)にある例としては、

I've climbed most of the really sexy west coast mountains. 
(試訳:本当に魅力的な西海岸のほぼすべての山に登ったことはあります)

のように使われます。またロングマン現代英英辞典(5th edition)の例には、

one of the sexiest companies in Seattle
(試訳:シアトルでもっとも話題の会社の一つ)

があります。このような意味もあるので、小泉氏も「魅力的な」といった意味で使ったのでしょう。そもそも文脈からすると、女性の言葉の引用のようです。(2.の英文をご覧ください。sheと言っています)
(加筆:twitterでご親切な方が、その女性とはChristiana Figueresで、Christiana氏は"Let's make green sexy"の提唱者であると教えてくださいました。つまりその言葉を引用してsexyといったわけです。)以下がそのビデオです。


さらに以下のビデオを見ると、Christiana Figueresさんが隣にいるので、指をさしてsheと言っていますが、sheではなく、sheという代名詞よりはDr. Figueres(ProfessorならProfessorの方が好ましい)の方が誤解を与えません。大臣として重要なのは、話し手である二人(小泉大臣とFigueres氏の二人)あるいはその場にいた人のみがわかっていればよいということではなく、それが記事になった際に、誤解を与えないようにするかに気を配ることではないかと個人的には思っています。

したがって、現在、メディアやSNSなどで、「性的な」「セクシーな」と小泉氏が発言したことに注目するのは少し問題の論点がずれています。

2. 実際の小泉大臣の使用例
実際に小泉氏が使った文脈は以下の通りです。音声から書き起こしたので、少し違うところもあるかもしれませんが、ご容赦ください。誤解をしたメディアの一部は、5文目のOn tackling such~からしか記事にしていないものも午後に見たところ散見されました。

On tackling on this issue, everything gotta be fun. And she added also 'sexy.' I totally agree with that. 
In politics there are so many issues, sometimes boring. On tackling such a big-scale issue like climate change, it gotta be fun, it gotta be cool, it gotta be sexy, too. 

(試訳:このような問題を解決するとき、すべては面白くないといけません。彼女は「セクシー」にねとも言いました。政治においてはたくさんの問題がありますが、時々それは退屈なものもあります。気候変動のような大きな問題を解決するにあたって、その問題は面白く、かっこよく、sexyでなければなりません)

注釈
※On tacklingではなく、In tacklingが文脈上、正しいでしょう。On~ingは「~するとすぐに」、In ~ingは「~するとき、~する(した)際に」。それを反映して訳しています。
※on this issueではなく、onは不要。他動詞のため。
※it gotta beではなく、it's gotta beが正しい。
※(加筆)9月25日の朝日新聞に掲載協力した英文では、意味を勘案してgottaとして掲載したため、改めて上記の英文をgottaに訂正いたしました。もともとの英文ではgonnaとしておりました。

では、なぜ「魅力的な」と小泉氏が言いたかったのが、誤解を招いて、世界のメディアの一部が話題にしたかというと、小泉氏のitがclimate changeを指してしまっていると考えたメディアや人もいるので(本来はsolution of climate changeと言いたかったのでしょうが)、「気候変動はsexyであるべきだ」と誤解されてしまったのです。言いたかったのは、「気候変動問題解決をsexy(=appealing)にすべきだ」ということでしょう。それでも前後関係や背景などがわからない人にとっては???なのです。また、そもそもitが何を指しているのかも不明なのも誤解された要因でしょう。その結果、言葉が一部でひとり歩きしてしまったというわけです。

またsexyを「引用」としたかったのであれば、英語圏では両手の人差し指と中指で "    "というジェスチャーをするのです。しかしそれがなかったこと、あるいはso-calledといった語がなかったことから誤解されてしまったのです。あるいは、sexyの後に、as Dr.(ProfessorならProfessorのが好ましい)Figueres called のように言えばよかったのです。

今回の問題はsexyという語の誤用云々というよりも、世界の一部のメディアから内容が誤解されてしまったことが問題なのです。

小泉氏が言いたいことは、おそらく

In politics, there are so many issues, sometimes boring. In tackling such a big-scale issue such as climate change, what we can do is to tackle the issues properly. However,  to solve the environment issues together is sometimes fun, cool and appealing or so-called "sexy" , so we should solve our issues together. 
(試訳:政治においてたくさんの問題があり、時々それは退屈です。気候変動のような大きな問題を解決するにあたり、私たちができることはその問題を適切に解決するということです。しかし、環境問題をともに解決することは、時として楽しく、かっこよく、魅力的なこと、言い換えればsexyでもあるので、我々の問題をともに解決しましょう)

ではなかったかと推察します。

ただ、なんせ言葉が足りないので、補うのも難しいのです。つまり、「言葉を補うのが難しい」ということは、「言いたいことがよくわからない」という結論が導かれてしまいます。ここが今回の問題なのです。

3. 今後の課題
しかし、今回の問題は言葉の選択が誤解を与えたか否かというだけの問題ではありません。むしろ小泉大臣の大臣としての危うさと脆さを露見したことに注目すべきではないかと思うのです。

小泉大臣は今回、映像で(0’59~)「英語は絶対話せなきゃだめだと思います。通訳がいるってだけで、もうあの場では勝負にならない。国連の中での存在感を発揮していくということが見せられたと思います」と述べています。


確かに「英語ができる大臣」は"sexy"(「魅力的」という意味で)です。(ただし、個人的にはsexyという語をこのように使うのは好みません。なぜなら、もともとは「性的な意味で魅力的」という意味なわけで、アメリカでは口語で使いますが、イギリス人はあまり使いません。このような差があるだけでも国際舞台での使用は誤解を与える危険性があるので避けたいところです)

しかし、口語過ぎる英語、誤解されるような英語を話すならば、やはりプロの通訳者を使うべきではないかと個人的には思っています。私自身も通訳者をしていたことがありますが(と言っても駆け出しです)、通訳者は(特に大臣を担当する通訳者は)相当な訓練を受けているので、インフォーマルな場では通訳者がいなくても問題はありませんが、フォーマルな場ではぜひプロの通訳者を使ってほしいと思います。

学生であれば、間違ってもよいからどんどん話しなさいというところではありますが、小泉氏は「大臣」なのです。したがって、「国連というフォーマルな場で英語を話せば勝負できる」とか「勝ちか負けか」とかという問題ではなく、母国語(母語)でもよいので、言語のプロである通訳者に訳してもらう、あるいは、誤解されないような英語力を身に着けることが重要ではないかと思います。

つまり、国の代表として行っている場なので、自分の勝負の場ではないですし、個人的に勝負をかける場ではないということを心に留めておく必要があるのではないかと個人的には思っています。

やはり大臣なのですから、フォーマルな場で(少なくともテレビクルーが入っているような場で)gottaとかlikeとかといった口語的すぎる言葉のチョイスは、避けるべきだと考えます。

追記:もちろんどのように気候変動問題に取り組むかという内容が重要ですが。