小泉環境大臣の発言が物議をかもしており、こちらの記事もさまざまな反響を得ております。
様々な角度で関心を寄せてくださった方には御礼を申し上げます。すべての方に御礼を申し上げられず、心苦しく思っております。

1. 英語ができないから通訳者を雇うのか?
さて、記事の最後で、「大臣なのだから言語のプロである通訳者をつけること」を提案しました。
それが一部間違って解釈されているので、ここで追記します。

間違った解釈とは、「小泉大臣の英語力が低いのだから、通訳者をつけた方がよい」と筆者が言っているいうものです。
しかし、客観的に見て、小泉大臣の英語力は一般的な日本人としてはよくできる方だと思います。これはあくまで「英語力」「一般的な日本人と比べて」という条件に限っての見解です。

そこから派生して「小泉大臣などの英語力を批判したら、英語を話す日本人がいなくなる」といったものです。しかし、大臣と一般の日本人では言葉の重みが大きく異なることは自明の理でしょう。

2. 戦略としての通訳者の雇用
大臣など社会的地位の高い人が、特にフォーマルな場などで、通訳者をつける理由は、「英語はできるけれど、細かいニュアンスは伝えられないので、そこを踏まえて通訳者にお願いしたい」「英語ができない」(最近こういう方は少なくなりました)という言語的な理由のほかに、「時間稼ぎをする」「考える時間を稼ぐ」ための戦略の一つとして通訳者を雇うことがあります。これは国際的な舞台においては、非常に賢い戦略の一つなのです。

つまり、通訳者が通訳している間に、「次にどのような発言をしようか」、「どのように(どのようなことを)言ったら誤解がないか」、「どのようにしたら戦略的に成功か」「次の一手はどれにしようか」などを考えているのです。場合によっては、ブレーンからの助けを得ることもできるわけです。そのための「時間稼ぎ」という戦略的雇用を行うわけです。

英語圏以外の各国首脳レベルでも、英語は堪能なのに、あえて通訳者をつけることがあります。それは対外的な戦略の意図もあるのです。例えば、中曽根康弘元首相は英語に堪能であったといわれますが、国際的な場面場面には通訳者を帯同していました。

というわけで、国の代表などを含む組織のリーダーが、通訳者を使うことは非常に賢い戦略なのですが、今回、各メディアの注目度が高い中で、この「戦略」を取らなかったことには疑問の余地があります。

3. プロフェッショナルに仕事を頼むことを肯定的に捉えよう
次に、社会的地位の高い人が国や組織としての発言において誤解を生まないために「プロフェッショナル」に仕事を頼むという概念が、大臣側にも、私たちの一部にも欠落していたことも問題です。つまり、「餅は餅屋にお願いする」ということを、決して否定的な方向につなげてはいけないのです。

言い換えると、母国語・母語でない国や組織のトップやそれに準ずる方々が、通訳者といったプロフェッショナルに仕事を依頼することをもっと肯定的に受け取っていく必要があることが、今回の一件で、露見したのではないかと思います。決して、「英語力がないから、あるから、通訳者を頼む、頼まない」という短絡的なことではありません。

今後の「プロフェッショナリズムの尊重」が待たれるところです。

あくまで大臣は国の代表であり、国がさまざまな点で不利益を被らないようにする、誤解を生まないようにするのが最低限重要なのではないかと思います。そのために、通訳者を雇用することは、国際舞台においては正攻法です。

今回、言葉の問題がメディアやSNSの多くで取りざたされていますが、個人的にはこうした正攻法を大臣が自ら放棄している姿勢の危うさが、今後の大臣の資質が問われることになる一因になりはしないかと懸念しています。また、一部のメディアやSNSで言わんとすることを誤解されていること、具体案を示せずcoolやsexyという形容詞を用いて環境問題を論じていることが問題だと思っています。

かといって、言語使用を決して軽んじてよいのかというと、そうではありません。言葉はその人の思考をうつす鑑なのですから。

4. まとめ
今回は、筆者は英語の専門家なので、英語に特化した見解を述べましたが、今後の課題としては、大臣の「話の内容」がより問われることでしょう。

通訳者を雇用したとしても、話の中身は変わることはありません。
そういった意味で、小泉大臣は今後、さまざまな勉強が必要でしょうし、課題も多いと思います。

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