次の図は福島市内の幼小中で測定された放射線量のデータの一部 です。すでに別記事で紹介しましたが、重要度が高いので、こちらに掲載し直します。

 これを見ても、6マイクロシーベルト毎時(1日8時間で年間17.5ミリシーベルトに相当。屋内被曝16時間分を加えるとその倍以上、さらに食品汚染などによる体内被曝が加わる)を越える場所も複数見いだされます。

WS000000

 さらに次は福島県全域での調査結果で、驚くべきことに、「放射線管理区域 」に指定される量の値が検出された校園が全体の4分の3、さらに厳しい「個別被曝管理」を要するレベルとなった校園が全体の5分の1を越えるという結果が出ています。(以下はFoEのホームページに掲載された資料 から)
WS000005

WS000006
  
 

 すなわち、放射線を扱う大人について、厳しい管理が行われ、また一般人に対する立ち入りが厳しく制限されるレベルの環境の中で、子どもたちの学校生活が行われることになります。

 さて、子どがどれほど放射線被曝に対して影響を受けやすいかを示すのが以下のグラフです。(出典終焉に向かう原子力 小出裕章氏講演)
WS000029
ゴフマン(Gofman)というアメリカの研究者が出した推定値ですが、1万人・シーベルト(1シーベルトを1万人とか1ミリシーベルトを1000万人など、被曝線量×被爆者数=1万になるもの)でどれだけガン死が増加するかを年齢毎に産出した者です。白血病の発症者数はここには入っていませんが、ガン死だけで全年齢平均で3731人。30歳がほぼその平均ですが、それが0歳では15152人という極めて大きな値になっています。平均値の4倍強、また感度の鈍くなった55歳に比べれば309倍にも達します。


control
 この状況に対して文部科学省は4月19日付「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方 」の中で、年間20ミリシーベルトに達しない場合は校舎・校庭などの利用を可能とする判断を福島県教育委員会に対して発布しています。(繰り返しますが、ここに体内被曝分などは算入されていません)
 
 この文部科学省の出した暫定基準が子どもに対して極めて苛酷であることは、次の事実によっても明らかでしょう。そもそもそのような危険な場で未成年者は労働させてはならないという労働基準法の規定があるのです。(仮に子どもの健康の問題をさておいて、単に法律上の整合性の点からも大きな問題になると思えます)

 
 (危険有害業務の就業制限)
第六十二条
使用者は、満十八才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。

(2)使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。

(3)前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
     →厚生労働省令 (年少者労働基準規則  (昭和29年6月19日労働省令第13号))
       (年少者の就労制限の業務の範囲) 第8章
       (35)  ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 上記文科省の文章では「児童生徒等が学校等に通える地域においては、非常事態収束後の参考レベルの1-20mSv/年を学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし、今後できる限り、児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切であると考えられる。」とあり、文科省自身、この基準に問題があることは自覚していると思えます。ならばもう一歩踏み込んで子どもを守る体制をとれないものでしょうか。仮に疎開が諸事情で困難であったとしても、少なくとも無責任に「大丈夫だ」と言うべきではなく、「これだけの線量があるから、気をつけて生活をしなさい」と、自衛の知恵を子どもたちに徹底させるべきでしょう。

 なお、文部省から保護者向けの「過度に心配しないで」「3.8マイクロシーベルト/時以下は問題ない」という案内は以下で見ることが出来ます。
 なぜ外部被曝線量だけで計算しているのか、重要な内部被曝についてはなぜ説明していないのか、ICRPがこの3月21日に出した「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、1~20ミリシーベルト/年の範囲で考えることも可能」という声明を利用して、放射線に対して感度の高い子どもに対して最大値の20ミリシーベルトが「差し支えない」と言えるのか、これを見ても管理人にはよく理解できません。
 唯一説得力があるのは、「災害時の子どものこころのケアとしては、普通の生活を送るよう心がけることが大切です。保護者のふさぎ込んだ気分や不安は、子どものこころの不安定さにつながります。保護者が正確な知識を持ち(流通している食品は安全であること、放射線は感染しないことなど)、必要以上に心配しすぎないことが重要です。」と最後に書いてある部分の内、「保護者の気分が子どもに影響する」という部分ですが、福島のある保護者の声を紹介しておきます。
 「周りのお母さんたちは、インターネットを使わない人もすごく多い。でも、情報はほしい。口に出すことを憚っている。でも、悩んでいる是非、署名とセットにした、放射能の基礎知識、現在の自分たちの置かれた状況がわかるような、紙媒体の情報がほしい。署名用紙とセットして、市内の幼稚園、保育園、学校、公民館で頒布したい」(たんぽぽ舎【TMM:No1068地震と原発事故情報 その53 より)
 安心できない心を口に出すことも出来ず、胸の内に隠して子どもに接することは、結局子どもを不安にしてしまうことにつながります。「保護者の言うことが子どもに影響する」のではなく、文部科学省のこの文章が正しく表現しているように「保護者の<気分>が子どもに影響する」わけです。
 「この値なら大丈夫です。安心です(だから不安を隠してください)」という言葉ではなく、「こう対処すればより安全です(そのように努力してください)」という言葉の方がよほど保護者の「気分」を前向きにさせてくれるのではないでしょうか?
 
 福島県内の保護者らで作る市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などは30日、福島第1原発事故の子どもたちへの影響を調べるため、福島市内在住の6~16歳の男女10人の尿検査を実施したところ、全員から放射性物質のセシウムが検出されたと発表した。同ネットワークは「福島市や周辺の子供たちも内部被ばくしている可能性が高い」として、全身の内部被ばく線量を測るホールボディーカウンターによる早期の検査実施などを求めている。

 会見した同ネットワークによると、5月20~22日に採った尿を放射性物質を調査するフランスの民間団体「ACRO(アクロ)」に依頼して解析。セシウム134(半減期2年)が1リットルあたり0.41~1.13ベクレル、セシウム137(同30年)が、1リットルあたり0.43~1.30ベクレルだった。ACROのデービッド・ボアイエ理事長によると、事故前はゼロだったと推測されるという。

 今回の測定値について、内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長は30日の臨時会議後、「十分低い値。健康への影響は疫学的に考えられない」との認識を示した。そのうえで、継続的に子どもの健康を管理するシステムを構築するよう国に求めた。【久野華代、比嘉洋】

福島市の子ども10人中10人の尿からセシウム検出(記者会見ビデオ)