女帝・ヒラリー大統領を期待する超党派のジャパン・ハンドラーズたちのホンネ


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 今日は2016年3月11日金曜日で、あの東日本大震災から5年ですが、今朝の日経新聞にアメリカ大統領選挙について、ジャパン・ハンドラーズたちの本音を伝える記事が載っていました。
 
 要するに、ジャパン・ハンドラーズとしては、「ヒラリーが一番やりやすい」ということのようです。そりゃそうでしょう。

(引用開始)

トランプ氏指名なら「クリントン氏に投票」共和重鎮 アーミテージ氏明言
2016/3/11付  日本経済新聞 朝刊

 【ワシントン=吉野直也】リチャード・アーミテージ元米国務副長官は11月の米大統領選の共和党候補に不動産王ドナルド・トランプ氏(69)が指名された場合、本選では民主党候補の指名の可能性が高いヒラリー・クリントン前米国務長官(68)に投票する考えを示した。日本経済新聞との会見で明らかにした。

 アーミテージ氏はブッシュ前政権時代の国務副長官をはじめ米政府の主要外交ポストを歴任した知日派の重鎮で、共和党内では主流派に位置づけられる。

 アーミテージ氏は米大統領選の本選で「もし私がトランプ氏とクリントン氏を選択できるとしたら、クリントン氏に投票するだろう」と明言した。その理由として「トランプ氏の発言や行動には軽蔑の感情しかない」と説明した。

 「トランプ氏が大統領になる可能性はあるが、明らかなのは共和党員の60%以上、今では3分の2がトランプ氏を支持することができない」と指摘した。そのうえで「多くの共和党員は少なくとも外交政策で、トランプ氏ではなく、クリントン氏に投票するだろう」と述べた。「もしトランプ氏が大統領になれば、危険な人物を政府の様々な地位につけるだろう」との懸念も指摘した。

 アーミテージ氏は「日米関係のためにも(トランプ氏よりも)クリントン氏だ」と力説した。「彼女は一生懸命働くし、仕事を知っている。多くの人は彼女に好感を持っていないかもしれないが、彼女が有能でないという人は誰もいない」と述べた。トランプ氏については「多くの人は好ましく思っていないし、どの程度の能力があるかも確かではない」と語った。

 現在、共和党の候補指名争いに出ている保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員(45)にも「軽蔑の感情しかない」と批判した。

 一方で主流派のマルコ・ルビオ上院議員(44)やオハイオのジョン・ケーシック州知事(63)を評価。「本当に評価しているのはケーシック氏だ」と述べた。

(引用終わり)

 確かに共和党の候補がマルコ・ルビオになれば、ルビオは日本の自民党政権と拉致問題での連携を強めているほか、安倍首相とも面会したことがあるので、その意味では悪いことではないでしょうが、ルビオは「共和党のオバマ」と言われていたので、評判が共和党の草の根の有権者から人気がない。ウォール街からの献金も良いイメージにならない。(実は、ルビオが共和党の有権者に嫌われているのは、若いころのゲイパーティの写真(らしきもの)が発掘されたり、大口の資金提供社がLGBTの支援をしている投資家だったりすることから、彼がゲイではないかという疑惑があるため、という見方もあるのですが)

 ただ、ジャパン・ハンドラーズにとっては、仕事をしやすいのはヒラリー政権です。彼らは、「日本に安全保障上の脅威を感じさせることで武器を販売する」ということでカネを稼いでいます。安全保障コンサルタントというのは、「大きな戦争を起こさずに、顧客に仮想敵の脅威を感じさせることによって、自分たちの専門家としての立場からのアドバイスを販売する」というビジネスです。その意味で、「ISISに絨毯爆撃をする!」と勇ましく宣言しているテッド・クルズ上院議員や、「テロリストの家族も含めて殺害する!拷問を復活させるぞ」と遊説で力説している、ドナルド・トランプ候補が本当に大統領になってしまうと、彼らの「専門外」のトラブルが発生し、ビジネスをやりにくくなるのです。

 ブッシュ政権はネオコン政権でしたが、共和党主流派の軍産複合体の意思を汲み取った政権で、大国とは戦争せず、小国での紛争を引き起こすという「テロとの戦い」のシナリオに基づいていました。ロシアや中国とは非常にブッシュ政権は関係が良かったのはそのためです。

 いまのアメリカは中国やロシアと真正面から対抗するという気力もありません。南シナ海での中国に対する「航行の自由作戦」も、中国と半ば内通して、海軍同士がそれぞれの国の政府にお互いの必要性を認めさせて、そのことによって軍事予算を確保するために「演出」しているだけです。アジアにおいて、不確定要因といえば、北朝鮮でしょうが、これもクリントン政権時代の高官へのアクセスが期待できるヒラリー大統領のほうが「やりやすい」のです。当然ながら、カート・キャンベル元国務次官補などのクリントン国務長官時代の高官の人脈は、シンクタンクなどでしっかりアーミテージやグリーンなどの共和党系ともつながっています。CSISというのは超党派を標榜するシンクタンクです。

 だから、「堂々とヒラリーに投票する」ということが言えるわけです。超党派のエスタブリッシュメントとしては、共和党保守のテッド・クルズが指名されるよりも、実際のところはもはや「共和党はトランプになったほうがいい」と考えていると思います。あるいはクルズに指名されても、トランプが「第三党」の独立派候補として出馬することを期待しているでしょう。ヒラリーがマイノリティの支持を得ており、軍事系やウォール街からの支持を得ていることを重視しているわけです。ウォール街のマネーも兵器産業のマネーも、個人のヘッジファンドの経営者などと違って、党派性があるわけではなく、「勝ち馬に乗る」というわけです。オバマ大統領を支援したのがウォール街の金融機関であり、オバマ大統領はロックフェラー系財界人のバックアップがあったからこそ、「上院議員一期目」にしてアメリカの民主党公認候補に指名されたのだ、ということを思い出す必要があります。

 ブッシュ前大統領は「酒浸りからの反省でキリスト教信仰を再発見した」という”ボーン・アゲイン”のエピソードがあったので、キリスト教右派の支援も得られましたが、国内の文化的問題ではいまのテキサス州のテッド・クルズのようにゴリゴリの「妊娠中絶反対」「移民規制」ではない。ブッシュ王朝というのはもともとイエール大学のエリートから始まっていますから本質的には東部エスタブリッシュメントであるわけです。

 仮にトランプが大統領に当選するとすれば、それはマイノリティも含めた幅広い層の支持をある程度確保しなければなりません。そのためにはトランプは副大統領候補で穏健派を据えたり、これまでの発言をトーンダウンさせて、現実的な政策に落としこむ(白人貧困層の期待に応える福祉政策はやるけれども、メキシコ国境の壁建設やイスラム教の強制送還は見送る妥協する)必要があるでしょう。実際にそうなるのかというのは、共和党の主流派(ネオコンもリアリストも)にはまだわからない、というのが実際のところで、そのためにジャパン・ハンドラーズは、リスクを避けて、「不確定要因が少ないヒラリー」に投票するという選択になるわけです。

 視点を変えると、超党派のタカ派であるネオコン派はブッシュ政権の際に発生したイラク戦争の失敗によって、その理論的基盤を失ったといえるかもしれません。彼ら理論家集団は結局は、アメリカの主要産業である軍産複合体に寄生していたに過ぎない。しかし一方で、アメリカの政党政治が民主党はリベラルの知性主義によってかろうじて政策集団としての一体性を保っている一方で、共和党は宗教右派の文化保守的な政策を重視し、草の根の保守層の反逆というストーリーで、支配層に対抗する狙いの「ティーパーティ運動」がこの宗教右派に結びついたため、共和党が大きく分裂しています。

 ドナルド・トランプは、「民主党の党派登録をしているが実際は共和党支持」という白人貧困層の有権者(いわゆる「レーガン・デモクラット」)と、「もともと共和党支持」の同じ階層の有権者の支持を幅広く獲得していることが共和党予備選での強さの否決と言われています。しかし、これらの勢力はマイノリティ勢力全体から比較すると少数派であり、多数派であるマイノリティ連合を固めている民主党のヒラリーのほうが有力だと見られるのです。

 アメリカは移民の国ですからこれからはマイノリティ連合のヒスパニック系の有権者の支持を得なければならないし、共和党もそのために奥さんがヒスパニックのジェブ・ブッシュや、キューバ系のマルコ・ルビオを担ぎだしたのでしょうが、トランプのあの「メキシコ人はレイプ魔だ」という発言で全てが吹っ飛びました。

 日本のメディアが言う「共和党主流派」というのは「カネ持ちで、大企業減税を重視し、聖書に書かれていることなんか実は信じていない経営者」のことをいうのです。

<追記>

3月10日夜(日本では11日午前)のフロリダでの討論会でトランプが日米安保見直しの話をしました。鳩山元首相が目標にした「常時駐留なき安保」構想はトランプ大統領であれば、日米の「安保再定義」として実現しそうですね。問題は、上のヒラリーを応援する「日米安保マフィア」でしょう。

(貼り付け開始)

トランプ氏、軍事費見直し示唆 社会保障制度の維持強調

マイアミ=佐藤武嗣

朝日新聞 2016年3月11日18時53分

 米大統領選の共和党候補者指名争いで首位を走るドナルド・トランプ氏(69)が10日、米国の社会保障制度を維持するため、外国の駐留米軍経費など、同盟国防衛のための軍事費を見直す考えを示唆した。

 トランプ氏はフロリダ州マイアミであった同党討論会で、現行の社会保障制度を維持する考えを強調。必要な財源について司会者から聞かれると、「我々はより強力な軍事力を持つ必要があるが、ドイツサウジアラビア、日本、韓国の面倒を見なければならない。狂気じみた北朝鮮が何かするたびに米国は艦船を派遣するが、事実上、米国が得るものは何もない」と話し、日本を含めた外国の駐留米軍経費を削減する可能性に言及した。(マイアミ=佐藤武嗣)

(貼り付け終わり) 


 
 

 
 

 
 

欧米諸国の「原発大艦巨砲主義」の終わりが見えてきた


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 今朝(2016年3月8日)のフィナンシャル・タイムズは、フランスの国営電力会社EDFの財務責任者(CFO)が辞任したニュースでもちきりです。辞任の背景は、英南西部のヒンクリー・ポイントに原子炉2基を建設するプロジェクトに絡み、巨額(総額180億ポンド、255億ドル)のプロジェクトの継続に対して、財務責任者の取締役の意見が最高経営責任者との間で食い違ったことが理由です。

 イギリスのヒンクリーポイントへの新型原発EPR建設は、2013年に決まりました。しかし、このEPR型の原発は世界でも建設が完了した例が存在しない。現在、プロジェクトはフィンランドとフランス国内で進行中ですが、建設コストがくり返し膨れ上がっていることや、圧力容器の設計に欠陥があったことなどが指摘されています。圧力容器が欠陥品だということは原発としては非常に危険である、ということです。

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 今年になって、日本でも有名になったアレヴァの原子炉設計部門をこの電力会社であるEDFが買収する動きが出ましたが、背景として、このEPRというお荷物がアレヴァの財務を圧迫したことにあります。アレバにはウラン採掘と燃料処理、廃炉といった事業が残されることになります。要するに「燃料屋」になるということですね。

 ヒンクリーポイントは英仏両政府が力を入れているプロジェクトですが、建設には中国の国有原子力メーカー中国広東核電集団(CGN)を参入させることが安全保障上問題であるという懸念や、イギリス政府が無理やりEDFをつなぎとめるために、ヒンクリーポイントで発電する電力の最低価格を保証するなど、かなり無理をしている印象があります。出力が大きいことが特徴で、原発大艦巨砲主義の象徴のような存在でした。

 再生可能エネルギーや天然ガスのコストが安くなればなるほど、原子力は分が悪くなっていくわけです。建設コストが高過ぎるというのは原子力の最大の問題ではないかと思います。日本の電力会社が、当初は30年を耐用年数として想定していた炉でも、40年も経過した古い炉を使い倒そうとしているのも、リプレースメントをするほどの資金がない、というのが本当のところではないかと思います。アメリカでも運転延長が急増しています。

 フランスとイギリスは、無理にでもこのプロジェクトを継続するようですが、アレヴァだけではなく、今度はEDFまでも財務危機に陥りかねないと考えれば、「待つべきだ」とするEDFの財務責任者の主張も理解できます。

 原子力産業は「行きはよいよい、帰りは怖い」という産業の典型で、廃炉や使用済み燃料の処分など、コストが運転時には安い代わりに、後でツケが回ってくるということです。要するに「割に合わない」ということです。

<参考記事>
 
EDF finance chief quits over decision to push on with Hinkley Point: http://on.ft.com/1p9rYKP 

安全な原発は夢か 仏アレバの新型炉建設が難航  :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO82205990R20C15A1000000/

4期連続最終赤字のアレバ、仏政府が救済へ 原発専業岐路  :日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO86436700V00C15A5FFB000/

EDF tensions over Hinkley Point C are laid bare: http://on.ft.com/1pbpITm  

France and UK move to quash revolt at EDF over nuclear project: http://on.ft.com/1W3QBmu

A blow to Britain’s plan for nuclear renaissance: http://on.ft.com/21huD0G 

Book review: ‘The Fall and Rise of Nuclear Power in Britain’: http://on.ft.com/1La3GKq

Hinkley Point: A long troubled history: http://on.ft.com/1W2zAJj  

 

日米原子力協定の無条件更新にアメリカの原子力関係者が難色を表明-反原発派は「ジョゼフ・ナイありがとうデモ」をやるべきである


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 朝日新聞(3月3日)の科学面にに、「米、MOX工場重荷 建設・運転費用など高騰、4.5兆円 地中に捨てる代替案」という興味深い記事が掲載された。この記事は米国内で、原子力発電所から出る商業用使用済み核燃料の再処理施設の建設を停止すべきであるという声が高まっているということを報じた記事である。

 この記事によると、先日、大統領選挙の予備選挙が行われた米南部サウスカロライナ州のサヴァンナリバーの核施設のMOX(ウランプルトニウム混合)燃料工場の建設を中断することが決まったという。ここでは核兵器の余剰プルトニウムを燃料に再処理・加工する計画があったという。関わっていたのはフランスの原子力企業のアレバ。高コストと稼働開始の遅れを理由に米政府が決断したという。代替案としては、プルトニウムの希釈処分が計画されている。

(引用開始)

  代替案の「希釈処分」は、プルトニウムをほかの物質と混ぜて分離しにくくして、ニューメキシコ州にある核廃棄物隔離試験施設で地下655メートルに地層処分することを想定する。モニツ長官は「(MOX工場に比べ)確実に技術的な挑戦が少なく、今からでも半分以下のコストですむ」と評価。MOX工場より15年以上早い20年代前半には搬入を始められるとしている。

 ただ、工場建設を受け入れてきた地元は反発を強めている。サウスカロライナ州選出のジョー・ウィルソン下院議員(共和党)は声明で「予算の打ち切りは非生産的で短絡的。MOXは現時点でプルトニウムを削減できる唯一の実行可能な方法だ」と批判。州の司法当局は2月上旬、エネルギー省を相手取り、建設継続を求める訴訟を起こしており、実際に建設を中止できるかは予断を許さない。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12238090.html

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(引用終わり)

 どの国も原子力施設は典型的な過疎地に建設される「迷惑施設」です。一方で、過疎地はそれを受け入れることで交付金を得ているわけだ。

 記事で日本にとって重要なのはここからで、今年の2月25日にオバマ政権のモニツ・エネルギー省長官らに米国の核不拡散の専門家13人が公開書簡を送り、アメリカ国内の同施設の建設中止の決断を支持したうえで、「再処理工場をもつ日本や、導入を検討する韓国に対しても、米国が中止を求めるべきだと主張」したというのだ。アメリカが国内でMOX計画の中止に失敗すれば、東アジアでの計画抑止を求める上で説得力を欠く」と要望しているという。

 問題になっている朝日が報じた公開書簡は、International Panel on Fissile Materials というウェブサイトに掲載されていた。書簡に登場するのは、著名なジャパン・ハンドラーズの一人であるジョゼフ・ナイ(元国防次官補、三極委員会北米議長)を含める13人で、Joseph CirincioneやRobert Einhornなど北朝鮮の核開発を巡る議論で頻繁に登場する識者も含まれているほか、三極委員会のナイやビルダーバーグ会議メンバーのジェシカ・マシューズ(カーネギー平和財団)、それからミサイル防衛の権威のトマス・ピカリング元国防次官らが含まれている。

 書簡では、なぜ日本や韓国の使用済み核燃料再処理を認めてはいけないかということについては次の文脈で登場する。米国内でのMOX燃料工場の閉鎖について触れたうえで、海外(日韓中)においても、使用済み核燃料からのプルトニウムの分離(再処理)を求める政治的圧力が、経済的効率がわるいにもかかわらず高まっているという背景があり、これらのプルトニウムは商用原子炉のためのものとはいえ、核兵器にも転用できると指摘している。そして、とりわけ日韓において再処理問題が核武装問題と関連して語られると懸念を示している。

 そして日本政府は六ケ所村の再処理工場を稼働させようとしているが、しかし一方でプルトニウムが溜まり過ぎることに対するアメリカの反応についても心配していると述べ、さらに日本政府関係者は2018年の日米原子力協定の自動更新を目指しているので、この問題についてアメリカ政府と語ろうとしていないと指摘しているのは非常に注目される。日本は非核保有国で唯一の再処理が認められた国であるためだろう。

 その次に中国がフランスと提携して、六ケ所村施設と同じ規模の再処理施設を建設しようとしているという事情について述べ、この中国の高速増殖炉のためのプルトニウムは中国に核兵器能力を高めるためにも利用されかねないと警告しているのだ。日中韓の3ヶ国には、核燃料サイクルへの慎重派がいるにもかかわらず、アメリカがMOX計画(再処理)を推し進めることは、これらの政府に対して説得力がなくなる、と国内情勢に絡めて国際的な核不拡散の文脈で日本への使用済み核燃料再処理を認めるべきではない、というロジックを展開している。

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 ジョゼフ・ナイについては私もこれまで批判してきたが、最近の辺野古移設をめぐる慎重論や、今回の再処理反対は、日本国民にとっても利益になることであるので評価したい。梯子を外されたのは、外務省の原子力ムラだろう。その筆頭で日本が国際的な再処理構想を掲げ核不拡散の旗を振るるべきだとしていた、初代原子力課長の金子熊夫は以前、「日本は核燃料サイクルを放棄するなかれ・その3 — 六ヶ所の早期稼動はなぜ必要か」という寄稿をしていたことがある。この中で金子は日米原子力協定の更新問題について次のように述べている。

(引用開始)

 「権利の不行使は権利の放棄」という法諺があるが、もし六ヶ所再処理工場の本格操業がさらに遅れ、日本の核燃料サイクル政策が大きく動揺するというような状況になれば、再処理は日米協定に基づく日本の「既得権」だから、将来的にも大丈夫だとは言えなくなるだろう。
 米国にしてみれば、韓国などの手前、日本にだけ特別に再処理を認めるということは望ましくないので、できれば喧嘩両成敗のような形で日本の再処理にも何らかのブレーキをかけたいと考えている節がある。そのような声が米議会内にあることは確かだ。

 もちろん、日米同盟関係維持を重視する「親日派」の間には、日本の原子力、とりわけ再処理を軸とする核燃料サイクルの権利を引き続き認めるべきだという意見は決して少なくない。その代表格は、昨年8月、当時の日本・民主党政権の「原発ゼロ」政策を厳しく批判し、日本は国力低下により二流国に転落してもよいのかとストレートに疑義を呈した報告書を発表したリチャード・アーミテージ氏(元国務副長官)、ジョゼフ・ナイ・氏(ハーバード大学教授)らだ。

http://www.gepr.org/ja/contents/20130826-01/
(引用終わり)

 ここで重要なのは、金子氏がナイとアーミテージを「核燃サイクル推進派」と位置づけていることである。ただ、さいきんはナイとアーミテージの方向性も変わってきた。民主党系のナイと共和党のアーミテージの違いである。ナイはハーヴァード大学教授だが、アーミテージは安全保障ブローカーであるから立場が違う。

 この書簡の「威力」については未知数だが、日本の原子力政策は日米原子力協定によって規定されており、アメリカがノーといえば大きくどちらの方向にも転ぶということが改めて明らかになったと言えるだろう。私がこれまでずっと書いてきたとおり、「脱原発」というのは、まずは核燃料サイクル政策の終了をまず行わないことには始まらない。その意味でアメリカの有識者の動きは非常に重要なのだ。ただ、この流れはオバマ政権終了後に変わってしまうかもしれないから注意が必要である。

<書簡に登場する13人の有識者>

※この書簡はモニツ・エネルギー省長官に当てられたものだが、ライス国家安全保障担当補佐官、ケリー国務長官、カーター国防長官、ラマー・アレキサンダー上院議員、ダイアン・ファインスタイン上院議員、ジェフ・セッションズ上院議員、ジョー・ドネリー上院議員、マイク・シンプソン下院議員、マーシー・カプトゥー下院議員、マイク・ロジャース下院議員、ジム・クーパー下院議員にもCCで転送されている。これらの政治家が意思決定過程に影響を与えるキーマンなのだろう。

Peter Bradford, Vermont Law School, former U.S. Nuclear Regulatory Commissioner
Joseph Cirincione, President, The Ploughshares Fund; former professional staff
member, House Armed Services Committee
Robert Einhorn,Senior Fellow, The Brookings Institution; former Assistant Secretary
of State for Nonproliferation
David Freeman,former Chairman of the Tennessee Valley Authority Board of Directors
Ambassador Robert Gallucci,Georgetown University, former Assistant Secretary of
State for Political-Military Affairs
Richard Garwin,IBM Fellow Emeritus, Thomas J. Watson Research Center
Victor Gilinsky,Energy Consultant, former U.S. Nuclear Regulatory Commissioner
Jessica Matthews, Distinguished Fellow, The Carnegie Endowment for International
Peace; former Director of the Office of Global Issues, The National Security Council
Joseph Nye, Harvard, John F. Kennedy School of Government, former Chairman of the
National Intelligence Council
Ambassador Thomas Pickering, Distinguished Fellow, The Brookings Institution;
former U.S. Ambassador to the United Nations
Gary Samore, Executive Director for Research, Belfer Center, Harvard University;
former White House Coordinator for Arms Control and Weapons of Mass Destruction
Henry Sokolski, Executive Director, The Nonproliferation Policy Education Center;
former Deputy for Nonproliferation Policy, Department of Defense
Frank von Hippel,Senior Research Physicist, Professor of Public and International
Affairs (emeritus), Princeton University; former Assistant Director for National Security,
White House Office of Science and Technology  

http://fissilematerials.org/library/mox16.pdf

<参考>

Energy secretary is urged to end U.S. nuclear fuel program at Savannah River - The Washington Post

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