しばらくぶりの更新になります。

 大阪維新の会が推進する「大阪都構想」の賛否をめぐる住民投票が約一万票という僅差で否決されました。これは、自公政権の連立与党である公明党が反対に回ったからでしょう。公明党は安倍政権や菅官房長官に橋下維新と憲法改正をめぐる連携相手としてどっちがふさわしいかという天秤にかけられましたが、見事にその存在意義を示したわけです。

 橋下徹大阪市長は、安倍晋三・菅義偉の官邸中枢部が野党に送り込んだ「撹乱のためのスパイ」だと私は思っていたので、今回の都構想の否決は、大阪府、大阪市の改革という点では否決は良かったのかは断言できませんが、少なくとも国政への影響という点でいうと、安倍政権の「一強多弱」を強化しない結果になったので良かったと思います。

 そこで大阪維新の橋下徹と松井一郎の二人の共同代表の敗北宣言と政界引退宣言を受けて、維新の国政政党である「維新の党」でも江田憲司代表が辞任。即座に19日に代表選定が行われ、無投票で松野頼久幹事長が、新代表になりました。幹事長には若手の柿沢未途衆議院議員。大阪維新系では国会対策委員長に馬場伸幸衆議院議員(元大阪府堺市議)が留任。維新の全議員は51人で、松野新代表のように民主党系が12人、大阪維新系12人、江田憲司・柿沢未途の旧みんなの党(もう誰も覚えていない)=結いの党系が12人、その他の自民系などが15人だそう(産経20日)。

 民主党系と結い系で24人でこれが最も大きな勢力になるようです。そして、民主党の細野豪志前幹事長と維新の松野氏、結いの柿沢氏は、すでに将来の野党再編を視野に協議を一年以上続けていた。民主党でも前原誠司元代表などは、橋下氏との連携を模索していましたが、細野氏は民主党代表選に出馬したり、自前の派閥をつくったりしていました。徳川家康の天下取りをイメージした活動を開始していたわけです。

 そこで気になるのは、「大阪維新が弱体化している今、一気に細野氏が民主党を主導にした野党再編を目指すのか」という点。民主党内では岡田・枝野のような代表・幹事長が民主党主導の野党体制を主導し、細野氏らが野党再編を主張するなどしているという解説があります。

 そこで細野氏らが松野氏らの勢力を取り込んで、維新が弱体化している今、一気に民主党を強化することを期待したい、という人もいるのではないかと思います。ところがそれは法制度上無理なのです。

 そこで登場するのが公選法99条というわけです。

 
第九十九条の二  衆議院(比例代表選出)議員の選挙における当選人(第九十六条、第九十七条の二第一項又は第百十二条第二項の規定により当選人と定められた者を除く。以 下この項から第四項までにおいて同じ。)は、その選挙の期日以後において、当該当選人が衆議院名簿登載者であつた衆議院名簿届出政党等以外の政党その他の 政治団体で、当該選挙における衆議院名簿届出政党等であるもの(当該当選人が衆議院名簿登載者であつた衆議院名簿届出政党等(当該衆議院名簿届出政党等に 係る合併又は分割(二以上の政党その他の政治団体の設立を目的として一の政党その他の政治団体が解散し、当該二以上の政党その他の政治団体が設立されるこ とをいう。)が行われた場合における当該合併後に存続する政党その他の政治団体若しくは当該合併により設立された政党その他の政治団体又は当該分割により 設立された政党その他の政治団体を含む。)を含む二以上の政党その他の政治団体の合併により当該合併後に存続するものを除く。第四項において「他の衆議院 名簿届出政党等」という。)に所属する者となつたときは、当選を失う。

 なんじゃこりゃ、という条文です。わかりやすく言えばこういうこと。

 日本では2000年以降の国政選挙から、比例当選議員は所属政党(=維新)が存在している場合において、当選時に当該比例区に存在した他の名簿届出政党(=民主)に移籍する場合は議員辞職となることになった

 要するに、松野氏のような維新の重鎮らは、仮に「維新の党」が存在し続ける限りは、民主党に党籍を移動した場合は自動的に「議員辞職」になってしまう。これは痛い。上西小百合議員のように無所属になるのはかまいませんが。

 ただ、維新の党と民主党が合併し、新党を作る場合には、「新民主党」に松野氏は失職できず移籍できる。この場合、存続政党を民主党にし、維新を解散政党にする場合か、両政党を解散し、新党を作るかということになる。小沢一郎が仕掛けた自由党解党による民主との合併は前者です

 すんなりと維新の所属議員が民主党との合併(または維新の党の分割、これは石原維新が次世代の党をつくった時に実施)を同意すれば良いのですが、維新には大阪維新系や自民党系の議員もいる。民主党への吸収合併を素直に飲むだろうか、という疑問が出てくる。

 その場合、松野氏は制度上、古巣の民主に合流できない。民主党の重鎮が「離党組を受け入れるなんて感情的に耐えられない」という気持ちの問題もあるでしょうが、それとは別次元の話です。

 旧民主党の維新の幹部らは、松野氏にしろ小沢鋭仁元環境大臣にしても、比例復活。小沢氏に至っては、大阪・近畿の比例での復活。元々の地盤だった山梨ではないわけです。

 まあ、しばらくは選挙もないので維新の党としてはじっくりと民主党側に「新党結成」を飲ませるという作戦なんでしょうが、何かのタイミングでまた官邸側が橋下復活待望論を掻き立てないとも限らない。

 私は野党は最終的には神奈川の浅尾慶一郎(元みんなの党で無所属)を軸に次の衆院選の少し前に合併して統一野党を作るしか無いと思います。その際、社民党や生活の党、次世代の党は入らないと思います。民主党の一部が同調しないかもしれませんが。

 いずれにせよ、橋下徹という官邸のスパイが打ち込んだ野党共闘へのくさびはまだまだ残っているということになります。

 それにしても維新の党の議員名簿を見て思ったのは、橋下徹という看板がなくなれば、全くの烏合の衆の集まり。松野、柿沢以外に代表を狙えそうな人材が見当たらなかった。重鎮の片山虎之助も浮いてしまっている。女性議員も一人だけ。あとは、いわゆる「橋下チルドレン」と。維新を右傾化させた石原慎太郎は政界引退。

 民主党がやはり野党再編の主体にならざるを得ない。しかし、自民党と公明党の連立が続く限り、民主党の政権奪還は遠い先の話でしょう。

<参考記事>

【水平垂直】維新再出発、危うい結束 代表に松野氏選出
産経新聞(2015年5月20日)


 ■4勢力同居、草刈り場にも

 大黒柱を失うことになった野党第二党は、党の結束を保てるのか。「大阪都構想」という看板政策が否定された維新の党は19日、松野頼久新代表の下で再出 発を図ることになった。ただ党所属議員は、出身政党でほぼ同数の4つの勢力に大別され、微妙なバランスの上に成り立っている。松野氏は「是々非々」路線の 継承を表明したが、かじ取りを誤れば“4分裂”で他党の草刈り場となる危険をはらんでいる。(内藤慎二)

 「党が割れるようなことは絶対にないと約束してもらいたい」

 松野氏は19日の両院議員総会でこう訴えた。新代表がいきなり結束を呼び掛けたのは、逆に言えば現在の維新が分裂の可能性を秘めていることを示している。

 満場一致の選出とはいえ、松野氏には注文もついた。大阪選出の議員は総会で、都構想否決で橋下徹最高顧問(大阪市長)と江田憲司前代表が「引責」する中、幹事長の松野氏が代表に「昇格」することに「地元では疑問の声もある」とぶつけた。

 維新は議員51人のうち、民主党系、大阪系、旧結いの党系がそれぞれ12人、自民党などその他の出身が15人と、4つの勢力が同規模で存在する。これま では橋下氏の意向を受けた大阪系の存在感が大きかったが、都構想否決の衝撃は大きく、「しばらくおとなしくしておいた方がいい」(党幹部)との声が大勢 だ。

 一方、大阪系議員には「維新精神を失った党運営は許されない」との警戒感も渦巻く。野党再編を進める過程でリベラル色が強い現在の民主党に近づきすぎれば、憲法改正や集団的自衛権の行使容認といった「本来の維新らしさ」が失われかねないとの懸念だ。

 その民主党の岡田克也代表は、元同僚の松野氏の代表就任を歓迎。記者団に「野党が一致して巨大与党に立ち向かう必要性は増している」と共闘に意欲を示し た。共闘の先にある野党再編についても、民主党内には「『自民か非自民か』という形で第二極をつくっていくことに維新も参加してもらいたい」(安住淳国対 委員長代理)と、民主党主導で維新を取り込むべきだとの意見が多い。

 ただ、維新の衆院議員40人のうち松野氏ら29人は比例代表選出で、現在の任期中は民主党に移籍できない。そのため維新内には「民主党を解体し、両者で新党を結成すべきだ」(中堅)との声も出ている。