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 今朝(2016年3月8日)のフィナンシャル・タイムズは、フランスの国営電力会社EDFの財務責任者(CFO)が辞任したニュースでもちきりです。辞任の背景は、英南西部のヒンクリー・ポイントに原子炉2基を建設するプロジェクトに絡み、巨額(総額180億ポンド、255億ドル)のプロジェクトの継続に対して、財務責任者の取締役の意見が最高経営責任者との間で食い違ったことが理由です。

 イギリスのヒンクリーポイントへの新型原発EPR建設は、2013年に決まりました。しかし、このEPR型の原発は世界でも建設が完了した例が存在しない。現在、プロジェクトはフィンランドとフランス国内で進行中ですが、建設コストがくり返し膨れ上がっていることや、圧力容器の設計に欠陥があったことなどが指摘されています。圧力容器が欠陥品だということは原発としては非常に危険である、ということです。

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 今年になって、日本でも有名になったアレヴァの原子炉設計部門をこの電力会社であるEDFが買収する動きが出ましたが、背景として、このEPRというお荷物がアレヴァの財務を圧迫したことにあります。アレバにはウラン採掘と燃料処理、廃炉といった事業が残されることになります。要するに「燃料屋」になるということですね。

 ヒンクリーポイントは英仏両政府が力を入れているプロジェクトですが、建設には中国の国有原子力メーカー中国広東核電集団(CGN)を参入させることが安全保障上問題であるという懸念や、イギリス政府が無理やりEDFをつなぎとめるために、ヒンクリーポイントで発電する電力の最低価格を保証するなど、かなり無理をしている印象があります。出力が大きいことが特徴で、原発大艦巨砲主義の象徴のような存在でした。

 再生可能エネルギーや天然ガスのコストが安くなればなるほど、原子力は分が悪くなっていくわけです。建設コストが高過ぎるというのは原子力の最大の問題ではないかと思います。日本の電力会社が、当初は30年を耐用年数として想定していた炉でも、40年も経過した古い炉を使い倒そうとしているのも、リプレースメントをするほどの資金がない、というのが本当のところではないかと思います。アメリカでも運転延長が急増しています。

 フランスとイギリスは、無理にでもこのプロジェクトを継続するようですが、アレヴァだけではなく、今度はEDFまでも財務危機に陥りかねないと考えれば、「待つべきだ」とするEDFの財務責任者の主張も理解できます。

 原子力産業は「行きはよいよい、帰りは怖い」という産業の典型で、廃炉や使用済み燃料の処分など、コストが運転時には安い代わりに、後でツケが回ってくるということです。要するに「割に合わない」ということです。

<参考記事>
 
EDF finance chief quits over decision to push on with Hinkley Point: http://on.ft.com/1p9rYKP 

安全な原発は夢か 仏アレバの新型炉建設が難航  :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO82205990R20C15A1000000/

4期連続最終赤字のアレバ、仏政府が救済へ 原発専業岐路  :日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO86436700V00C15A5FFB000/

EDF tensions over Hinkley Point C are laid bare: http://on.ft.com/1pbpITm  

France and UK move to quash revolt at EDF over nuclear project: http://on.ft.com/1W3QBmu

A blow to Britain’s plan for nuclear renaissance: http://on.ft.com/21huD0G 

Book review: ‘The Fall and Rise of Nuclear Power in Britain’: http://on.ft.com/1La3GKq

Hinkley Point: A long troubled history: http://on.ft.com/1W2zAJj