キャリアオイル(植物油)は、アロマテラピーでは欠かせない素材です。
精油は、非常に濃縮された揮発性の芳香物質で、油に溶ける性質を持っています。そのため、皮膚に塗布する場合、原液塗布は原則として、ある限られた部分に対してのみ利用され、他は、キャリアオイルに希釈して(薄めて)用いることになります。

これは、精油の特性から見た場合の考え方ですが、キャリアオイルの特性から見た場合、キャリアオイルもまた化学的な性質を持っていますので、その化学が精油と併用する場合に必要となってきます。

このブログでは、まだ、精油の化学に関してあまり詳しくはお話しておりませんが、キャリアオイルの化学もまた、炭化水素といって、炭素と水素の化合物を中心とした化学です。前回、6月20日精油の芳香成分類の分類は何を基準にしてで、精油の芳香成分類の分類を、通常の有機化学の分類方法とは違う、アロマテラピーの世界でよく分類される方法のご紹介をしました。

基本になる三つの炭化水素のグループとしか表現しませんでしたが、このグループの中に
「脂肪族」という炭化水素のグループがあります。何か変ですね、脂肪族だなんて。でもその構造を理解すると、何で脂肪族なんていわれているのかわかりますよ。

この脂肪族の特徴は、炭素(C)を基本に、鎖状に(鎖のように)炭素同士が結合した状態になっているのが特徴です。基本的な形では、水素(H)が、基本骨格になった炭素に、あますことなく結合した状態となっています。

基本的には、炭素が結合できる手は4本、水素は1本ですから、当然この形は、中心に炭素同士が手を結んだ形で結合していますから、両端に水素と、残りは、各炭素に2個の水素が結合している状態となります。水素の数は炭素の数で決まります。

このような形で、炭素と水素が結合した状態を
「脂肪族」の炭化水素といいます。

下記の図は、脂肪族の炭化水素を表していますが、途中に二重結合が存在しているものが
「不飽和」、単結合のものが「飽和」の脂肪族炭化水素です。

炭化水素不飽和 炭化水素飽和

カルボキシル基 そして、この脂肪族の炭化水素に、官能基といわれる「ある特定の化学的性質を有する原子団」の一つである「カルボキシル基(- COOH)」が結合した構造を持ったものが「脂肪族カルボン酸」と言われる「脂肪酸」です。

不飽和脂肪酸 飽和脂肪酸

ようやく基本的なことの説明が終わりました。ようやくキャリアオイルの化学に進むことができます。

キャリアオイルは、化学的には、油脂と呼ばれています。それでは、油脂ってどんな化学的な構造をしているかというと、今まで見てきたことが全部含まれていますよ。

グリセリンってよく聞きますよね。これもやはり、脂肪族の炭化水素に「水酸基(-OH)」という官能基が結合したものです。ただし、一つの官能基ではなく、水酸基が三つ結合しており、三価のアルコールと言われます(アルコールなので、グリセリンはグリセロールともいわれています)。

このグリセリンの
「三つの水酸基」一つ一つが、先ほどお話した「脂肪酸」三つとお互いに「エステル結合」することで、植物油である「油脂」が形成されます。
グリセリンと脂肪酸 ことばだけでは、ちんぷんかんぷんですが、これを図で表してみました。どうですか、わかりやすいでしょう。
エステル結合すると、グリセリンの官能基であった「水酸基(- OH)」と、脂肪酸の官能基であった「カルボキシル基(- COOH)」は、途中で「水(H2O)を作り出して、お互いが手を結び合います。

エステル基と水 この結びつきが「エステル結合」です。その間に入った官能基ということで「エステル基」ともいわれています。

トリグリセリド 大切なのは、一つのグリセリンに、三つの脂肪酸がエステル結合するということです。これを、「トリグリセリド」とかトリアシルといっています。

トリって三つという意味でした。さあ、もうわかってきたでしょう。

ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸などなど、これらは、脂肪族のカルボン酸である脂肪酸です。 キャリアオイルの化学的な特性は、この脂肪酸の種類で決まってくるわけです。

まとめると、
1. グリセリンに三つの脂肪酸がエステル結合する場合、
(1) 同じ脂肪酸が結合する場合
(2) 3個の異なる脂肪酸が結合する場合、が考えられ

2. さらにその脂肪酸が、
(1) 単結合 - 飽和脂肪酸
(2) 二重結合 - 不飽和脂肪酸

3. そして、不飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸の数の違いで、
(1) 一価不飽和脂肪酸(不飽和が1個)
(2) 多価不飽和脂肪酸(不飽和が2個以上)

によって、キャリアオイルの化学的な特性が違ってきます。

ちなみに、脂肪酸の方の「炭素の数の違い」「二重結合があるかないかの違い」「二重結合がどの位置から始まるかの違い」によって、いろんな種類の脂肪酸があります。

そこで、とてもメジャーな脂肪酸の例として、「炭素数が18個」の脂肪酸を例にあげて、以下に示してみます。

ステアリン酸(炭素18個、二重結合がありませんから飽和脂肪酸)

ステアリン酸

オレイン酸(炭素18個、二重結合が1個ですから一価不飽和脂肪酸で、9番目に二重結合がありますが、これを、「ω-9系統」といっています)

オレイン酸

リノール酸(炭素18個、二重結合が2個ですから多価不飽和脂肪酸で、6番目に二重結合がありますが、これを、「ω-6系統」といっています)

リノール酸

α-リノレン酸(炭素18個、二重結合が3個ですから多価不飽和脂肪酸で、3番目に二重結合がありますが、これを、「ω-3系統」といっています)

αリノレン酸

γ-リノレン酸(炭素18個、二重結合が3個ですから多価不飽和脂肪酸で、6番目に二重結合がありますが、これを、「ω-6系統」といっています)

γリノレン酸

これらの脂肪酸のキャリアオイル(または食品として食べた場合)としての、生体に対する作用については、また投稿しますね。とてもおもしろいですよ。

このように、キャリアオイルには、精油との親油性により、精油を希釈(場合によっては油に混じり合うため揮発度を抑えることができる)することが主な目的として考えられますが、
「化学的な特性」「生理的な特性」によって、植物油自体を目的に応じて選択することが可能となります。

また、これらの脂肪酸を多く含むキャリアオイルを下記の図に表してみました。結構オレイン酸やリノール酸を多く含んでいるキャリアオイルが多いことに気がつくでしょう。

脂肪酸比率

これで、わかっていただけましたでしょうか。やはり精油の化学とキャリアオイルの化学も必要だっていうことが。 すごいですね。精油の特性と、キャリアオイルの特性、これらを的確に判断して、条件に応じて選択する、まさにプロとしての判断がそこに試されますね。ただし、日本では、精油は
「雑貨」、キャリアオイルは「化粧品」として輸入されているものがほとんどですので、利用や販売に関しては「薬事法」の適応がありますので注意して下さいね。

関連記事
2007.01.15 アケビ油とジアシルグリセロール
2007.01.14 アケビ油復活
2006.06.29 アケビの油は油の王様
2005.09.13 植物油の消化吸収