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先日「2005.12.18 二次代謝産物の落とし物 」で、ω-6系・ω-3系の脂肪酸、プロスタグランジンのお話をちょっとしました。というのも「2005.12.17 植物の二次代謝産物 」の中で、特に植物が、自分の生命維持になくてはならない物質を自ら作り出す一次代謝産物とは別に、生命維持に直接必要ではないものの、環境の変化や進化に連動して作られる二次代謝産物のお話をしたところから始まっています。
植物は、プロスタグランジンを、この二次代謝の酢酸・マロン酸経路により作りだすことができます。ところが、人間がプロスタグランジンを作りだすためには、必須脂肪酸といわれている脂肪酸を「食事」から摂取しないといけません。その脂肪酸が「リノール酸(ω-6系)」と「α-リノレン酸(ω-3系)」なんです。
これら二つの脂肪酸は、人間の体内では合成して作り出すことができないため、でも、それらの脂肪酸をスタートとしてプロスタグランジンが作られるため、なくてはならない脂肪酸なので「必須脂肪酸」といわれています。
まず、はっきりしておかないといけないのは、
・脂肪酸がどうして大切なのか
・プロスタグランジンってどういう働きをするのか
の二つが大切なキーワードになります。脂肪酸については「2005.08.06 キャリアオイルの化学」でも説明しましたが、三大栄養素の脂質を構成する大切なものです。詳しくはキャリアオイルの化学を参照いただければ幸いです。
主な脂質とその構造を下記の図に示しました。今回は、「脂肪(中性脂肪)」と「リン脂質」に的を絞ってみたいと思います。一般に「脂肪(中性脂肪)」といわれるものは、グリセリン1分子に、脂肪酸が3分子結合(エステル結合)したものです。それ以外に、リン脂質といって、やはりグリセリン1分子に三つの構成要素が加わるのですが、先の「脂肪(中性脂肪)」のように、脂肪酸が3分子ではなく、脂肪酸が2分子とリン酸(リン酸と塩基)が1分子結合したものです。
これら二つの脂質のうち、リン脂質は、細胞膜(生体膜)の構成要素として、脂肪(中性脂肪)は、脂肪組織にエネルギー源として蓄えられます。
ごぞんじのように、糖質やタンパク質の持つ熱量は 1グラムにつき 4 キロカロリーですが、脂肪(中性脂肪)は倍以上の 9 カロリーであるため、効率のよいエネルギー源として蓄えられます。筋肉の場合、2/3 は脂肪酸から、1/3 はブドウ糖からエネルギーを作りだしているそうです。そして、脂肪酸でも、不飽和脂肪酸よりも飽和脂肪酸の方を優先的に利用しているのだそうです。
どちらの脂質にも、脂肪酸が関わってきますが、その脂肪酸にはいろいろな種類があります。その脂肪酸をどちらの脂質も、3分子あるいは2分子含んでいることになるのですから、脂肪酸の種類によっていろいろな組み合わせができてきます。
脂肪(中性脂肪)は、脂肪酸を3分子含んでいますが、脂肪酸の種類が飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもかまいません。もちろん、1つでも不飽和脂肪酸を含めば「不飽和脂肪(液状)」ですし、3つの脂肪酸がすべて飽和脂肪酸であれば「飽和脂肪(固形)」ということになります。
おもしろいのが、リン脂質です。リン脂質は、脂肪酸を2分子含んでいました。そのうちの一つは必ず不飽和脂肪酸でないといけないのだそうです。残りの脂肪酸は飽和脂肪酸でも、不飽和脂肪酸でもかまいません。
つまり、リン脂質が細胞膜(生体膜)の成分として成立するためには、脂肪酸2分子のうち、必ず不飽和脂肪酸を1分子含んでいないといけないことになります。これは、細胞膜(生体膜)の構成成分という観点からみた場合です。
ここで、プロスタグランジンとリン脂質という観点から見た場合がとても大切になってきます。プロスタグランディンが作られるためには、脂肪酸の種類は、必須脂肪酸である「リノール酸」と「α-リノレン酸」でした。そこで、細胞膜(生体膜)としたら、不飽和脂肪酸が必ず1分子構成要素として含まれていないといけませんが、その不飽和脂肪酸が必須脂肪酸である必要はないわけです。
ところが、生体が、プロスタグランジンの必要性を生じた場合、ホスホリパーゼという酵素によって、リン脂質(細胞膜を構成要素)に含まれている、「プロスタグランジンの元となる必須脂肪酸(または不可欠脂肪酸(これについては後述))」が取り出されます。
不可欠脂肪酸は、必須脂肪酸から代謝されてプロスタグランジンを作るのになくてはならない脂肪酸のことをいいます。それらは、ジホモ γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸という不飽和脂肪酸です(下記図を参照)。
それでは、不可欠脂肪酸は、必須脂肪酸から代謝されるのだから、リノール酸やα-リノレン酸を含む食物を食べれば大丈夫か、というとそうでもないんだそうです。必須脂肪酸から不可欠脂肪酸に代謝されるまでには、いろいろな阻害因子が関わってきて、なかなか不可欠脂肪酸には代謝されにくいというのが現実のようなんです。
ということは、最初から、不可欠脂肪酸を摂取するのが一番効率的だということになりますね。
もうわかったでしょうか。
最初の重要なポイントである「脂肪酸がどうして大切なのか」については、
・エネルギー効率のよい脂肪(中性脂肪)の構成要素
・細胞膜の大切な構成要素であるリン脂質の構成要素
・そして、プロスタグランジンの材料として不可欠な構成要素
ということになるでしょうか。プロスタグランジンのお話は、また後日投稿したいと考えています。
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○「福田安保理論関連の目次」
・「2005.12.31 体調とプロスタグランジン」
・「2005.12.27 プロスタグランジンと栄養素」
・「2005.12.25 プロスタグランジンと福田安保理論」
・「2005.12.21 脂肪酸とプロスタグランジン」
先日「2005.12.18 二次代謝産物の落とし物 」で、ω-6系・ω-3系の脂肪酸、プロスタグランジンのお話をちょっとしました。というのも「2005.12.17 植物の二次代謝産物 」の中で、特に植物が、自分の生命維持になくてはならない物質を自ら作り出す一次代謝産物とは別に、生命維持に直接必要ではないものの、環境の変化や進化に連動して作られる二次代謝産物のお話をしたところから始まっています。
植物は、プロスタグランジンを、この二次代謝の酢酸・マロン酸経路により作りだすことができます。ところが、人間がプロスタグランジンを作りだすためには、必須脂肪酸といわれている脂肪酸を「食事」から摂取しないといけません。その脂肪酸が「リノール酸(ω-6系)」と「α-リノレン酸(ω-3系)」なんです。
これら二つの脂肪酸は、人間の体内では合成して作り出すことができないため、でも、それらの脂肪酸をスタートとしてプロスタグランジンが作られるため、なくてはならない脂肪酸なので「必須脂肪酸」といわれています。
まず、はっきりしておかないといけないのは、
・脂肪酸がどうして大切なのか
・プロスタグランジンってどういう働きをするのか
の二つが大切なキーワードになります。脂肪酸については「2005.08.06 キャリアオイルの化学」でも説明しましたが、三大栄養素の脂質を構成する大切なものです。詳しくはキャリアオイルの化学を参照いただければ幸いです。
主な脂質とその構造を下記の図に示しました。今回は、「脂肪(中性脂肪)」と「リン脂質」に的を絞ってみたいと思います。一般に「脂肪(中性脂肪)」といわれるものは、グリセリン1分子に、脂肪酸が3分子結合(エステル結合)したものです。それ以外に、リン脂質といって、やはりグリセリン1分子に三つの構成要素が加わるのですが、先の「脂肪(中性脂肪)」のように、脂肪酸が3分子ではなく、脂肪酸が2分子とリン酸(リン酸と塩基)が1分子結合したものです。
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これら二つの脂質のうち、リン脂質は、細胞膜(生体膜)の構成要素として、脂肪(中性脂肪)は、脂肪組織にエネルギー源として蓄えられます。
ごぞんじのように、糖質やタンパク質の持つ熱量は 1グラムにつき 4 キロカロリーですが、脂肪(中性脂肪)は倍以上の 9 カロリーであるため、効率のよいエネルギー源として蓄えられます。筋肉の場合、2/3 は脂肪酸から、1/3 はブドウ糖からエネルギーを作りだしているそうです。そして、脂肪酸でも、不飽和脂肪酸よりも飽和脂肪酸の方を優先的に利用しているのだそうです。
どちらの脂質にも、脂肪酸が関わってきますが、その脂肪酸にはいろいろな種類があります。その脂肪酸をどちらの脂質も、3分子あるいは2分子含んでいることになるのですから、脂肪酸の種類によっていろいろな組み合わせができてきます。
脂肪(中性脂肪)は、脂肪酸を3分子含んでいますが、脂肪酸の種類が飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもかまいません。もちろん、1つでも不飽和脂肪酸を含めば「不飽和脂肪(液状)」ですし、3つの脂肪酸がすべて飽和脂肪酸であれば「飽和脂肪(固形)」ということになります。
おもしろいのが、リン脂質です。リン脂質は、脂肪酸を2分子含んでいました。そのうちの一つは必ず不飽和脂肪酸でないといけないのだそうです。残りの脂肪酸は飽和脂肪酸でも、不飽和脂肪酸でもかまいません。
つまり、リン脂質が細胞膜(生体膜)の成分として成立するためには、脂肪酸2分子のうち、必ず不飽和脂肪酸を1分子含んでいないといけないことになります。これは、細胞膜(生体膜)の構成成分という観点からみた場合です。
ここで、プロスタグランジンとリン脂質という観点から見た場合がとても大切になってきます。プロスタグランディンが作られるためには、脂肪酸の種類は、必須脂肪酸である「リノール酸」と「α-リノレン酸」でした。そこで、細胞膜(生体膜)としたら、不飽和脂肪酸が必ず1分子構成要素として含まれていないといけませんが、その不飽和脂肪酸が必須脂肪酸である必要はないわけです。
ところが、生体が、プロスタグランジンの必要性を生じた場合、ホスホリパーゼという酵素によって、リン脂質(細胞膜を構成要素)に含まれている、「プロスタグランジンの元となる必須脂肪酸(または不可欠脂肪酸(これについては後述))」が取り出されます。
不可欠脂肪酸は、必須脂肪酸から代謝されてプロスタグランジンを作るのになくてはならない脂肪酸のことをいいます。それらは、ジホモ γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸という不飽和脂肪酸です(下記図を参照)。
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それでは、不可欠脂肪酸は、必須脂肪酸から代謝されるのだから、リノール酸やα-リノレン酸を含む食物を食べれば大丈夫か、というとそうでもないんだそうです。必須脂肪酸から不可欠脂肪酸に代謝されるまでには、いろいろな阻害因子が関わってきて、なかなか不可欠脂肪酸には代謝されにくいというのが現実のようなんです。
ということは、最初から、不可欠脂肪酸を摂取するのが一番効率的だということになりますね。
もうわかったでしょうか。
最初の重要なポイントである「脂肪酸がどうして大切なのか」については、
・エネルギー効率のよい脂肪(中性脂肪)の構成要素
・細胞膜の大切な構成要素であるリン脂質の構成要素
・そして、プロスタグランジンの材料として不可欠な構成要素
ということになるでしょうか。プロスタグランジンのお話は、また後日投稿したいと考えています。
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