● ひまわりが勝手に選んだ植物療法関係の記事一覧の目次です
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朝からシトシト雨の降る秋田市。ラベンダーも雨に濡れ、葉の色に一段と生命の息吹を感じます。下の写真右側は、お昼に食べたキャベツとウインナーのスープ。それが、何も味つけしてないのですが、とっても甘いんです。

20060408雨に濡れるラベンダー 20060408雨に濡れるラベンダー2 20060408キャベツのウインナーのスープ

先日、東京に出張のおり、日経新聞(2006.03.29)にとてもおもしろい記事が紹介されていたのを思い出しました。早石 修(生化学者)氏、タイトルは「眠る脳と眠らせる脳」。通常「眠る脳と眠らない脳」というお話はよく耳にしますが、眠らせる脳って何なのかとても興味を持ちました。

一般的に、睡眠を誘導するのは、松果体から放出される「メラトニン」というホルモンということで、「眠らせる脳」という表現がとても印象的でした。

朝起きて、目に光りの刺激を受けると、その情報は、視床下部にある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という神経核(神経細胞体が塊となって集まったところ)に届きます。その情報は、生体のリズムを 25時間から 24時間にリセットすると同時に、他のいろいろな神経核へ伝えられます。

その一つに「松果体」があります。松果体は、この情報を受け取ることで、セロトニンを材料にメラトニンを作り、脳内の血中に放出します。光刺激は、このように、松果体でのメラトニン産生に重要な役割を果たしています。

一方、メラトニンの放出のタイミングは、光によって抑制され、夕方になり暗くなってくると、メラトニンの分泌量は増加して眠りを誘うこととなります。

そこで、眠らせる脳のお話となります。通常、メラトニンが眠らせる脳というより、眠りを誘う物質ということになるのでしょうが、この眠らせる脳という表現、実は、脳の内部にあるのではなく、クモ膜(軟膜)にあるのだそうです。眠る脳は、大脳新皮質というわけですから、その脳を覆っている結合組織性のクモ膜(軟膜)が眠らせる脳の正体でした。

この仕組みは、睡眠と覚醒を体温との関係から突き止められたということです。体温の調節という考え方で考えてみると、体温が上がると覚醒、体温が下がると睡眠を促すということを意味し、それでは、体温を下げる物質はいったい何なのかというのが、最初の発想だったようです。

その物質は「プロスタグランジンD2」という物質で、これが先ほどのクモ膜(軟膜)で作られていたそうです。興味を引くのは、「プロスタグランジンD2」が、体温の低下を促す物質というだけではなく、次の睡眠物質である「アデノシン」を介して、脳の睡眠中枢を刺激して、睡眠が引き起こされるということです。

もっとおもしろいのは、クモ膜(軟膜)で産生されたプロスタグランジンD2は、膜の下を満たしている脳脊髄液を介して、前脳基底部に運ばれ、そこから第二の睡眠物質「アデノシン」を放出するとのことです。

実は、視交叉上核からの情報は、複雑な情報の乗り継ぎをして、松果体の受容体へ送り届けられるのだそうですが、ここで働くのがサイクリックAMPというセカンドメッセンジャー。この働きによって、セロトニンがメラトニンに変わる非常に重要な働きをしています。

どうですか、睡眠は、一般的には

・光刺激により、視交叉上核が 25時間の体内時計を 24時間にリセットし
・さらに、視交叉上核は、松果体へ働きかけ、セロトニンからメラトニンという睡眠誘導物質を作り出す
・光刺激は、メラトニンの放出を抑制し、結果として夜に分泌量を増加させ睡眠を促す

ということでしたが、一方

・体温の低下を促すプロスタグランジンD2は、脳脊髄液中でその量を多くして、アデノシンという第二の睡眠物質へと引き継がれ、睡眠中枢を刺激して睡眠を促す

眠るっていうことは、本当にいくつものメカニズムが関係しているんですね。これらのお話から、いろいろな事が関連していることに気がつきました。

光刺激は、視交叉上核へその情報を伝えますが、視交叉上核は、いろいろな神経核へもその情報を伝えます。その一つに松果体がありましたが、同じ視床下部にある「室傍核」へも情報が伝達されます。この室傍核はストレスととても関係の深い所です。

また、上記プロセスは、サーカディアンリズムとも関係が深く、体内時計のリセットが、自律神経とも連動しており、規則的な周期性をもっています。この考え方は福田安保理論ととても関係が深いですよね。

また、視床下部のうち、視床下部脳室周囲層と視床下部内側野は、第3脳室といわれる脳脊髄液で満たされた部分の両側面に位置しています。視床下部脳室周囲層には視交叉上核が、視床下部内側野には、室傍核があります。

今後、いろいろな観点から、脳のお話をしていきたいと考えています。特に植物療法(フィトテラピー)やアロマテラピーでは、とても大切な分野となっているからです。そうそう、眠らない脳は、寝たら大変な脳です。心臓も呼吸も止まってしまいますからね。

ブログ中に出てきた「クモ膜(軟膜)」は、2006.03.29 の日経新聞、早石 修(生化学者)氏の「眠る脳と眠らせる脳」で使われていた言葉ですが、「脳の地図帳」(講談社)によると、

・脳と脊髄は、髄膜で保護されている
・髄膜は硬膜と広義の軟膜に区別
・広義の軟膜は、硬膜に隣接するクモ膜と脳表につく軟膜(これが狭義の軟膜)に区別されている

とありましたので参照いただければ幸いです。

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