今日の秋田は、暑い暑い一日でした。先日の雨で朝夕の気温は寒くなってきましたが、日中は真夏並の暑さ。再び真夏日に逆戻りしたようです。この暑さの中、「大曲花火大会」が開催されます。

20060821夕食ナスしょう油炒め 20060822夕食ピーマンと牛肉炒め 20060822夕食麻婆豆腐

上の写真は、野菜とみそを利用したもの。左が、ネギみそ。ネギとみそを別々に炒め、混ぜ合わせてできあがり。中央は、肉みそ。肉、夏野菜(ピーマン、ナス、ミョウガなどなど)を先に炒め、そこへみそを入れて炒めたもの。右は、寒コウジで漬けたナスがっこ。

先日から、カモマイル ジャーマン Matricaria recutita の話題を、日本アロマコーディネーター協会が発行する「Column No.39」の「香りの科学」の記事(新潟薬科大学、応用生命科学部、小林 義典 助教授の連載物)から取り上げてきました。その中で、「カモミール精油中の主要成分」(Column No.39 p13 図7.)では、カマズレンがマトリシンという化合物から「水蒸気蒸留」で得られることが載っています。

ブログ検索によく、「アズレン」、「カマズレン」、「タナセタム」などのキーワードでアクセスされてこられる方がおられます。タナセタム Tanacetum annuum に含まれるカマズレンの含有量(%)については昨日のブログで示しましたが、これらのキーワードがちょっと気になっていましたので、少し詳しく見ていきたいと思います。なお、下記の三点が今回の主な話題ですので、それらをまとめてみました。

● アズレンとカマズレンについて
・アズレンとカマズレンは違う化合物
・アズレンはナフタレンの異性体

● カマズレンの前駆物質について
・カモマイル ジャーマン Matricaria recutita と、タナセタム Tanacetum annuum の精油中には、カマズレンが含まれる
・カモマイル ジャーマン Matricaria recutita の精油中のカマズレンと、タナセタム Tanacetum annuum の精油中のカマズレンは前駆物質が違う

● 精油とハーブの成分の違いについて
・カモマイル ジャーマン Matricaria recutita の精油中に含まれる抗炎症作用の成分(カマズレン、α-ビサボロール、ビサボロールオキサイド A・B など)
・カモマイル ジャーマン Matricaria recutita のハーブ中に含まれる抗炎症作用の成分(アピゲニンなど)

下記の図は、第一点の「アズレンとカマズレンは違う化合物」を、分子式、構造式であらわしたものです。一番上に示してあるのが、ベンゼン環といって、ケモタイプ・アロマテラピーでは芳香族というグループに入る炭化水素の構造式です。六角形の形をした環(かん)に、二重結合が三つ互い違いに存在しています。

このベンゼン環を二つ持ったものがナフタレンで、分子式が「C10H8」であらわされています。このナフタレンとアズレンは、実は異性体なんです。異性体というのは、分子式が一緒(この場合は「C10H8」)であるにもかかわらず、化学的・物理的な性質が異なる化合物同士をいいます。

アロマテラピーの世界でよく登場するのが「光学異性体」や「幾何異性体」ですよね。d-リナロール、l(エル)-リナロールなどは、光学異性体です。分子式が同じでも、構造が違うため、d-リナロールは「神経強壮、疲労回復」の各作用を示すのに対して、l(エル)-リナロールは「鎮静、血圧降下、抗不安」の各作用を示し、その固有作用が違っています。

ナフタレンとアズレンの場合は、下記の図の通り、構造が異なるため「構造異性体」と呼ばれています。六角形のベンゼン環がきれいに二つ並んでいるナフタレンとは違い、七角形と五角形の環がくっついています。これは、専門的には、「七員環と五員環が縮環した非ベンゼン系芳香族炭化水素」というそうです。

20060826アズレンとカマズレンの構造

構造は違っても、ナフタレンとアズレンの分子式は、同じ「C10H8」です。それでは、アズレンとカマズレンはどうでしょうか。分子式も構造もどちらも違いますよね。だから、アズレンとカマズレンは違う化合物で、イコールではないんです。でも、違う化合物ではありますが、よく上の図をご覧下さい。

何か似ている部分がありますよね。アズレンの骨格である七角形と五角形の環(七員環と五員環)が、カマズレンにも見られ、それらから、ひげのように伸びている手があります。この手は先の方(あるいは途中)に、炭素と、その末端には水素の原子を持っています。

ですから、このアズレンの基本骨格である七角形と五角形の環(七員環と五員環)を含む化合物は、アズレンズや、アズレン系とかアズレン類などと呼ばれています。どうですか? アズレンとカマズレンが違うことがお分かりいただけたかと思います。

下記の図は、第二点目の「カマズレンの前駆物質について」をあらわしています。上の図によって、アズレンとカマズレンが違うことがわかりましたが、それでは、カマズレンはアズレンから作り出されたものなのかなぁと思われるかと思います。そのカラクリが下記の図です。

20060826カモマイル G のカマズレン

上の図のように、カマズレンは、マトリシンという化合物を、水蒸気蒸留することによって得られる化合物です。ですから、カマズレンは水蒸気蒸留によって、温度と圧力が加えられないと作り出されることのない化合物質ということになります。

いつだったか、アロマテラピーのセミナーで、カモマイル ジャーマン Matricaria recutita の蒸留に立ち会ったときのお話を聞いたことがありますが、水蒸気蒸留によって発生した蒸気が、途中で冷却されていく過程で、水滴がブルーになる光景を非常に感動して見ていたということでした。

この水蒸気蒸留によって得られたカマズレンは、「アズレンブルー」と呼ばれる紺碧の色なんだそうですよ。ですから、このカマズレンを含む精油は、このアズレンブルーの色をしているわけです。

アズレンブルーで思い出しましたが、先日、ウィンターグリーン( Gaultheria ProclumSbens )の精油、通常は無色だと思うのですが、淡いピンク色をしていました。これって何でしょうかね。サリチル酸メチルの(エステル類です)平均的含有量の最高値が 99%(精油事典 Ver.5)です(
2006.02.13 サリチル酸二つの官能基)。

下記の図に、炭素を省略しないマトリシンとカマズレンの構造式を示しましたのでご覧いただければ幸いです。

20060826カモマイル G のカマズレン詳細

上の図では、一部、炭素原子から伸びている手に直接結合している水素原子を、ルールにのっとって省略しています。炭素原子の手が二本の場合は水素原子が二個、三本の場合は水素原子が一個結合していることになります(2006.01.27 炭素の手は4本)。

さて、お話はここで終わるのではないから複雑です。実は、マトリシンを含む植物を水蒸気蒸留することで「カマズレン」が得られるわけですが、このお話は、カモマイル ジャーマン Matricaria recutita の「カマズレン」の場合なんです。このように、カマズレンが得られるもとになる化合物のことを前駆物質といいますが、カモマイル ジャーマン Matricaria recutita の精油に含まれる「カマズレン」の前駆体はマトリシンということになります。

200608タナセタムのカマズレン

カモマイル ジャーマン Matricaria recutita と、タナセタム Tanacetum annuum の精油中には、カマズレンが含まれるていますが、両者に含まれている「カマズレン」の前駆物質は、違うんだそうです。カモマイル ジャーマン Matricaria recutita の精油中のカマズレンの前駆物質は「マトリシン」、そして、タナセタム Tanacetum annuum の精油中の「カマズレン」の前駆物質は、「五種類のセスキテルペンラクトン類」なのだそうです。

ですから、同じ「カマズレン」でも、前駆物質が違うカマズレンということを理解いただければよいかと思います。ひまわりも、この前駆物質が違う事が、結果として作用にどう影響するのか、今のところわかりませんけど。

ただ、精油事典 Ver.5 では、カモマイル ジャーマン Matricaria recutita の禁忌事項では、用法用量を守って使用すれば禁忌なし、としているのに対して、タナセタム Tanacetum annuum では、カマズレンには通経作用があるので、原則として妊産婦には使用しない、とあります。タナセタム Tanacetum annuum には、ケトン類のカンファーも含まれていますが、両者のアズレンの平均的含有量の最高値が 10% と同じですからどうなのでしょうか。

さあ、最後の「精油とハーブの成分の違いについて」ですが、これはなかなか難しい問題です。ハーブをハーブティーで湿布(外用)や飲用(内用)した場合と、精油を外用した場合の「抗炎症」作用についてです。ハーブには、精油に含まれている芳香成分が若干ではありますが含まれていることは事実です。ハーブティーを飲まれるときに香りがするのは、精油成分によるものだからです。

しかしながら、特にカマズレンで代表されるような「抗アレルギー、抗ヒスタミン、抗炎症」などの各作用は、精油中に含まれているカマズレンなどの作用であり、そのカマズレンは、今まで見てきた通り水蒸気蒸留により得られたものです。それでは、カモマイル ジャーマン Matricaria recutita のハーブの「抗炎症」作用はどのような成分が引き起こしているのか、というのが下記の図です。

200608カモマイル G のアピゲニン

上の図、といっても、アピゲニンという化合物の構造式ですが、この成分が水溶性で、配糖体(アピゲニンと糖が結合したもの)の形で、カモマイル ジャーマン Matricaria recutita のハーブに含まれているため、「抗炎症」作用を示すようです。

したがって、精油に含まれている成分と、ハーブそのものに含まれている成分の違いを「抗炎症」作用という観点から区別することはとても重要なことだと思います。しかも、その「抗炎症」作用を「カマズレン」だけで議論している場合は、なおさらのことです。

○ 抗炎症作用について
2016.01.25 制御性T細胞Tregとハーブのカモマイル
2012.07.24 抗炎症作用と電子座標系グラフ上の芳香成分類との関係

● 以下追加情報
2014.12.16 雪との戦いが終わり今度は雨の秋田市 2014(ゆずとヘスペリジン)

○ フラボノイドの基本骨格(フラバン(フェニルクロマン)骨格)とフラバノン骨格、及びフラボン骨格

20141216ヘスペリジン

● 以上追加情報

内容成分の事って、本当に複雑で難しい事ですね。でも、アロマテラピーや植物療法を勉強するためには、避けては通れない問題です。カモマイル ジャーマン Matricaria recutita の話題から、ややこしくなりましたが、ゆっくりとやっていくことにします。

● 関連記事
精油の化学関連の目次
2016.01.25 制御性T細胞Tregとハーブのカモマイル
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2012.02.15 カモマイルに含まれるカマメロサイドの抗糖化作用
2006.08.25 カモミールの主要成分の違い
2006.08.24 精油のフェノタイプとケモタイプ