November 30, 2009
吉田直哉氏講演「国際化に対応した馬産」について
この講演はJRA日高育成牧場、JBBA、HBAの共催で毎年開かれている「強い馬づくり講演会」の一環で、直哉さんは07,08年と2年続けて招聘され、07年は「鍛えて育てる」というタイトルで講演し、昨08年は「国際化に対応した馬産と経営」というタイトルになっている。07年の講演はすでにHPに掲載してあるので読まれた方もいると思うが、牧場における馬の管理のあり方を現場に沿った形で語っているのに対し、08年の「国際化に対応した馬産と経営」ではどちらかというと管理者、経営者の立場からマネジメントの重要性とその実際を具体的に語っている。
講演は最初から熱い語り口で国際化への「覚悟」を説く。セリに香港やシンガポールから客が来て馬を買えば、それは彼らを顧客としていたオセアニアの生産者から客を奪うことになる。そうなれば海外の生産者との厳しい競争が始まる、逆に日本の顧客(馬主)を海外に奪われるかも知れない、そういう危惧もあるだろう。その覚悟を持たねばならない。そういう時代に中小の生産者が生き残るにはどうすればよいか?
そういう話を文化の違いや相互理解の不足から説き起こし、中小牧場の経営の合理化やセールス(セリ)のあり方に至るまで実例を挙げながら語っているのがこの講演である。
馬券好きの一般的なファンにはなじみにくい話かも知れないが、競馬は生産に始まり生産に還ってくるスポーツでありドラマである。生産牧場という場所でどれほど多くのことがなされているか、それを知るだけでもかなり興味深く読めると思う。ご一読頂ければ幸いである。
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生産牧場の良し悪し、評価を我々ファンがするのはむずかしい。ノーザンファームや社台ファームは凄いというのは結果を見れば一目瞭然だが、その他の牧場となるとちょっと、、、と言うファンも多いだろう。
吉田直哉氏のWinchester Farmはどうか?
HPの講演者プロフィールにも書いたが、07年BCジュベナイルターフの優勝馬ナウナウナウ、08年のウッドメモリアルステークス(G1)とシガーマイルH(G1)を制したテイルオブエカティはウィンチェスターファームの生産馬である。これらは馬主から預託された繁殖牝馬から生まれている。だから、「なんだ、馬主が配合を決めたんだろ。それじゃ牧場の実績にならないのでは?」と思うかも知れない。
しかし、アメリカでは生産牧場が配合について意見を言いアドヴァイスもしている。そして、それ以上に生まれてから競馬場に送り出すまでの健康管理や飼料管理には大変なものがある。健康に優れ、丈夫で激しい競走に充分耐えられる馬、精神的にも強い馬というのは競馬場の厩舎に入ってから作られるのではない。生産牧場で生まれたときから人間と触れあい、その馬にあった管理を施され、健康に育ち、その上で生まれ持った資質が開花されて初めて良馬が誕生するのである。
馬主にとってコストパフォーマンスが高く、より高い確率で馬を競馬場に送り出し、更により高い勝率を維持できる、そういう牧場は評価するに値する。
Winchester Farmの日本における実績を見てみよう。
獲得賞金額による生産者ランキングは10月6日現在28位にすぎないが、これは出走頭数が少ないからでしかたないが、勝率は34頭の生産馬が265回出走して47勝、18%で4位ある。首位は3頭が13出走で5勝したハッピーネモファーム(勝率38%)で2位3位とも出走頭数、出走数とも比較的少ない、そういう中での4位。さらに出走頭数に対する勝利頭数の比率で見ると34頭中26頭が勝利して76.5%、2位。首位は4頭出走して4頭が勝利(100%)というのだから、出走頭数を考えればWinchester Farmが実に素晴らしい結果を残しているかわかるだろう。
Winchester Farmは今年で創業7年目、これまで6世代(今年の2歳を含む)61頭を日本に送り込み、年々成績を上げてこの結果である。今年の活躍馬にはエーシンエフダンズとエアマックールがいてそろそろ重賞に手が届きそうである。やがては日本のG1を勝つような馬も送り込んでくるだろう。その日を楽しみにしたい。
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最後になるが、講演を通じて生産について知らなかったことを沢山学ばせて頂いたことを、打合せなど煩わしい労をとっていただいたことと併せて直哉さんに深く感謝。また講演記録のHP上での公開に快く了解を頂いた主催者にも深く感謝の意を表したい。
November 03, 2009
'09天皇賞・秋(GI) 回顧
勝ったカンパニーの勝ち時計は昨年と同タイム。流れがスローになった時点で後方4、5番手ではさすがに上がり勝負での不利は否めない。しかも当面の敵カンパニーはウオッカより前にいる。その位置取りの差がそのままゴールでの差になったように思われる。この位置取りの問題はスタート直後、好位を狙って外から殺到する馬群に否応なく後方に追いやられたもので、ここで脚を使いたくない鞍上としてはしかたない結果だった。しかも流れは前半5Fが59.8という緩いペース。これでは直線向いて馬群が固まるのも、そこから出すのに苦労するのも必然、前にカンパニーがいることを考えれば外に出すロスは致命的だろうし、馬場もインが伸びるコンディション。抜け出して一瞬の豪脚は見せたがカンパニーを追いつめることは出来なかった。上り3F32.9は究極の上りとも言えるが、これもカンパニーと同じ。位置取りが決まった時点で勝ちはなかった。
豊騎手は自身のサイトでウオッカにとって「2000mは本質的に長い」と書いており、更にレース後の「完敗」発言。さて、ウオッカはどこへ行くか。更に距離が伸びるJCや有馬にウオッカが出走することに意味はあるか?
ウオッカの過去のレースを見れば確かにベスト・パフォーマンスはマイルだろうとは思うのだが、だからこの馬をマイラーと位置づけることには違和感を覚える。2000でも2400でも牡馬を相手にGIを勝った馬だ。私個人は結果を気にせず王道(JC)を歩んでほしい。昨年だって差のない3着だったのだから今年もチャンスはあるはずだ。
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勝ったカンパニーは8歳にして初のGI制覇。最近の充実ぶりは見事と言うしかない。展開の綾があったともいえそうだが、それだって力がなければ勝てるものじゃない。素直に拍手を送りたい。
馬主は近藤英子氏。父のミラクルアドマイヤ95年生まれ、父トニービン母バレークイーンで弟に皐月賞馬アンライバルド、兄にダービー馬フサイチコンコルド、姉にグレースアドマイヤ(リンカーン、ヴィクトリーなどの母)がいる良血。現役時代は近藤英子氏の夫利一氏の所有馬として走り3戦1勝。00年に種牡馬入りしており、01年生まれのカンパニーは初年度産駒となる。これまで98頭が中央に登録(カク地は除く)されているがカンパニーの他は目立った活躍馬を出しておらず、結局08年に10頭に種付けしたのを最後に供用停止となっている。種牡馬廃用の後はどうなっているのか知らないが、あるいはカンパニーのこの勝利で種牡馬として復活ということもあるのかも知れない。
カンパニーの母のブリリアントベリーはカンパニー同様近藤英子氏の服飾で走り、7戦3勝。引退後もしばらくは英子氏の所有馬として繁殖登録されており、その時代にリンカーン、ニューベリー、カンパニーなど同氏所有の活躍馬を産んでいる。(その後ノーザンファームの所有馬となっている。)
近藤英子氏は自分で繁殖牝馬を持って自分で選んだ種牡馬を付け、その産駒が走るのを見るのが楽しみと、かって「優駿」誌上で語っていたことがあり、数少ない所有馬の中からヴィクトリーに次ぐ2頭目のGIホース誕生は素晴らしいのひとこと。
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| 第140回天皇賞・秋(GI) 東京・芝2000M(良) | |||||||
| 1 | 3 | カンパニー | 牡8 | 横山典弘 | 58 | 1.57.2 | |
| 2 | 2 | スクリーンヒーロー | 牡5 | 北村宏司 | 58 | 1.57.5 | 1 3/4 |
| 3 | 7 | ウオッカ | 牝5 | 武豊 | 56 | 1.57.5 | クビ |
| 4 | 15 | オウケンブルースリ | 牡4 | 内田博幸 | 58 | 1.58.0 | 3 |
| 5 | 10 | シンゲン | 牡6 | 藤田伸二 | 58 | 1.58.0 | ハナ |
| 6 | 12 | ドリームジャーニー | 牡5 | 池添謙一 | 58 | 1.58.0 | クビ |
| 7 | 5 | ヤマニンキングリー | 牡4 | 柴山雄一 | 58 | 1.58.2 | 1 1/4 |
| 8 | 18 | エアシェイディ | 牡8 | 後藤浩輝 | 58 | 1.58.2 | 頭 |
| 9 | 17 | エイシンデピュティ | 牡7 | 戸崎圭太 | 58 | 1.58.3 | クビ |
| 10 | 4 | アドマイヤフジ | 牡7 | スミヨン | 58 | 1.58.4 | 1/2 |
| 11 | 11 | スマイルジャック | 牡4 | 三浦皇成 | 58 | 1.58.4 | ハナ |
| 12 | 8 | キャプテントゥーレ | 牡4 | 川田将雅 | 58 | 1.58.5 | 3/4 |
| 13 | 14 | サクラメガワンダー | 牡6 | 福永祐一 | 58 | 1.58.5 | クビ |
| 14 | 1 | コスモバルク | 牡8 | 松岡正海 | 58 | 1.58.5 | ハナ |
| 15 | 9 | サクラオリオン | 牡7 | 秋山真一 | 58 | 1.58.7 | 1 |
| 16 | 16 | ホッコーパドゥシャ | 牡7 | 岩田康誠 | 58 | 1.58.7 | クビ |
| 17 | 13 | マツリダゴッホ | 牡6 | 蛯名正義 | 58 | 1.58.9 | 1 1/2 |
| 18 | 6 | アサクサキングス | 牡5 | 四位洋文 | 58 | 1.59.3 | 2 1/2 |
| ラップ 13.0-11.2-11.4-12.0-12.2-12.0-11.7-10.8-11.3-11.6 | |||||||
| 上り 69.6-57.4-45.4-33.7 | |||||||
November 01, 2009
'09天皇賞・秋(GI) 注目馬(2)マツリダゴッホ
競馬はギャンブルだ、という考えは偏頗でつまらないと思う私も競馬は祭りだと言われると納得してしまいそうだ。だからこの馬主さんの付ける馬名は冠以下の部分ではほとんど一貫性がないのだが、それはそれで、うん、お祭りだという気分にさせられる。
マツリダゴッホ マツリダガッツ マツリダヒトミ マツリダフジコ マツリダボイス・・・・
まあ、そんな名前が並んでいて第三者の私なんぞには意味不明というか動機不明のにぎやかな命名に思わず笑ってしまうのだが、そう、競馬はお祭りだ。名前もにぎやかな方が良いに決まってる。
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さて、マツリダゴッホ。サンデーサイレンスのラストクロップの最強馬と言っても良いのだろう。馬鹿みたいに中山で強く、これまでの全10勝の内8勝を中山であげている。悲願のGI初勝利も有馬記念。かのダイワメジャー、ダイワスカーレットの兄妹を完封してしまった。
というわけで、中山におけるマツリダゴッホの成長を振り返ってみるのだが、それにはオールカマー3連覇という教材がある。
07オールカマー 2.12.5 8-8-5-2 5F61.0 上3F34.8
08オールカマー 2.12.0 2-2-6-3 5F61.8 上3F34.6
09オールカマー 2.11.4 1-1-1-1 5F61.0 上3F34.1
データは勝ちタイム、コーナーの通過順、前半5Fのレースラップ、上がり3Fの順で並べてある。5Fのペースは07年と09年は同じだが馬の位置取りが違うため、ゴッホ自身は年々速いペースをこなしていると思われる。ということは、年々前で競馬をするようになり、ペースも勝ちタイムも早くなっている。しかも3Fも早くなっている、ということだ。
明らかに成長している。それでも彼は、東京コースはダメでしょ、と言われる。そんなことはない。昨年のJCを見ればわかる。コーナリングに何の問題もなかった。道中は好位3番手追走、4角をまわって直線向くと馬ナリで先頭、手応え充分に見えた。単勝握りしめた私は一瞬夢を見たよ。勝った!とね。
でも結果は4着。
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データを見ればわかるのだが、この馬、足が遅い。というか瞬発力勝負にめっぽう弱い。なにしろ3F33秒台の脚を使ったことがない。昨年のJCだって前半5F61.8というぬるいペース。それでも3F34.4。サンデーサイレンス産駒とは思えぬ鈍足なのだが、こりゃ、母方のばあさんのフローラルマジックの血が出たかいな?と言う印象が強い。そういや叔父さんのナリタトップロードも勝てそうで勝てない詰めの甘さがウリだった。
そういう詰めの甘さというか瞬発力無さを見事に解決して見せたのが今年のオールカマーではなかったか。逃げ。それも相手になし崩しに脚を使わせる引き離した逃げ。これが、この天皇賞・秋に臨むマツリダゴッホの最大の武器になる。そしてマツリダゴッホが引き離して逃げるとき、ウオッカは後方の牡馬をにらみつつどこで仕掛けるか?最大の注目。
いや、その前にエビショーがノリと同じ事を出来るか?
それだけが心配、それだけが問題。
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他にも注目したい馬はいるが、もう時間切れ。今日は府中へ出撃です。
October 31, 2009
'09天皇賞・秋(GI) 注目馬(1)ウオッカとカンパニー
これまで牝馬に、あるいは牝馬だからと言って、特に入れ込んだことのない私としては珍しく震撼する思いでこの馬を見つめている。ウオッカを安っぽい使い古された言葉で「女傑」なんぞと到底呼ぶ気にはなれない。たしかに馬体は成長し牡馬と見まがうばかりだが、それでも女の子らしいふくよかさや、しなやかさも充分に持っており、ついでに気難しさまで持っている。私にはフツーの女の子がたまたま持って生まれた才能を開花させて、それを彼女なりに楽しんでいる、勝ち負けはあんまり関係ないんじゃ無かろうか、彼女にとっては。まあ、あのダイワスカーレットという自分とまさるとも劣らぬ才媛に出会った時だけはかなり本気ではあったろうが。
で、この女の子は最近結婚したくなった、というか子供を育てるのも悪くないわね、何て思ってるんじゃないだろうか、と私は疑ってる。5歳と言えば年頃ではあるし、まあいいんじゃない?と言うのが私の返事。
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ウオッカは毎日王冠でカンパニーに敗れた。同じレースで昨年はスーパーホーネットにやはり敗れている。同じように逃げて、同じようにゴール前でつかまり2着。昨年は天皇賞で一変、ダイワスカーレットとの死闘をハナ差2cmで制した。歴史に残る名勝負だった、と思う。が同時に道中終始外を回されたウオッカとインをまわったダイワスカーレット、実際には2馬身以上の差があっても不思議ではないレースだったとも思う。ダイワスカーレットの尋常ならざる粘りを見るとコース取りが逆でもあるいは僅差だったかも知れぬが、それでも2cm差と言うことはなかったろう。もっとはっきりした差はついたように思う。
そしてこのレースでやはりインを縫って伸びたカンパニーは4着。ハナ+クビ+ハナという差でタイムはウオッカと同じ1.57.2。コース取り次第ではダイワスカーレット以上にカンパニーとはもっとはっきりした差がついていただろうと思うのだがどうだろうか。
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というようなことを考えて、私はウオッカの能力はカンパニーがいかに大成したと言っても、昨年のスーパーホーネットと同様本番では返り討ちだと思うのだが、どうにも気になるのが去年と今年の毎日王冠におけるウオッカの走りっぷりの違いなのである。
ウオッカの毎日王冠の5Fラップ、上がり3F、走破タイムは次のようになっている。
08毎日王冠 5F59.3 3F33.8 1.44.6(2着)
09毎日王冠 5F60.0 3F33.8 1.45.3(2着)
昨年より緩いペースで逃げて、上がりは同じ33.8、走破タイムも0.7秒遅い。そして、これは私の見た印象でしかないのだが昨年に比べフットワークに力強さがない、なにかアッサリ交わされたなあと言う気がするのだ。
昨年は敗れたとはいえ最後まで諦めずに走っていたように見えるのに対し、今年は走ることに本気になれてない、並ばれて交わされた瞬間に脚色が勢いを失っているように見えて気になるところではある。
「カンパニー?何、オジサンじゃん!ウザイから先に行ってヨ!!」てな程度のことで、本番は天皇賞、気力が充溢してきていれば杞憂に終わると思うのだが、さてさて結果はいかに?
October 26, 2009
'09菊花賞回顧
春、実績を残してきたリーチザクラウン(5着)はあらかじめ予想された通りややかかりぎみの逃げで、前半1000m59.9秒はともかく、中盤ペースが緩むべき所で13秒台が1回だけと、勝つにはちょっと無理な、緩み無いペースで運んでしまった。鞍上も終始手綱を絞っており、これはかってのセイウンスカイやアドマイヤメインの長手綱でのリラックスした逃げとは違う。それでも5着に残ったのだから逆に立派と言えば立派なのだろう。
前半のペースを考えれば折り合いに不安のある馬にとってはむしろ走りやすいペースだったと思うのだが、それでもアンライバルド(15着)は行きたがっていたしセイウンワンダー(3着)も同じ。本来持っている能力をきっちり出し切ったレースとは思えない。これら春の実績組は気性的な成長を待つしかないのだろう。
結果、中団より前できっちり折り合っていた馬がワン・ツーとなったようにみえる。イコピコ(4着)は後方からの競馬で、リーチザクラウンさえ捕まえればと思っていたわけではないだろうが、リーチを捕まえたところがゴール、前にまだ3頭もいた。
| 第70回 菊花賞(GI) 京都・芝外・3000M(良) | |||||||
| 1 | 1 | スリーロールス | 牡3 | 浜中俊 | 57 | 3.03.5 | |
| 2 | 3 | フォゲッタブル | 牡3 | 吉田隼人 | 57 | 3.03.5 | ハナ |
| 3 | 12 | セイウンワンダー | 牡3 | 福永祐一 | 57 | 3.03.7 | 1 1/4 |
| 4 | 14 | イコピコ | 牡3 | 四位洋文 | 57 | 3.03.9 | 1 |
| 5 | 9 | リーチザクラウン | 牡3 | 武豊 | 57 | 3.03.9 | クビ |
| 6 | 7 | ヤマニンウイスカー | 牡3 | 和田竜二 | 57 | 3.04.3 | 2 1/2 |
| 7 | 11 | セイクリッドバレー | 牡3 | 松岡正海 | 57 | 3.04.3 | クビ |
| 8 | 2 | シェーンヴァルト | 牡3 | 秋山真一郎 | 57 | 3.04.5 | 1 1/4 |
| 9 | 4 | トライアンフマーチ | 牡3 | 武幸四郎 | 57 | 3.04.7 | 1 1/2 |
| 10 | 13 | キタサンチーフ | 牡3 | 藤岡康太 | 57 | 3.04.9 | 1 |
| 11 | 17 | アドマイヤメジャー | 牡3 | 川田将雅 | 57 | 3.05.1 | 1 1/4 |
| 12 | 16 | ナカヤマフェスタ | 牡3 | 蛯名正義 | 57 | 3.05.2 | 3/4 |
| 13 | 10 | キングバンブー | 牡3 | 小牧太 | 57 | 3.05.5 | 2 |
| 14 | 6 | イグゼキュティヴ | 牡3 | 川島信二 | 57 | 3.06.0 | 3 |
| 15 | 5 | アンライバルド | 牡3 | 岩田康誠 | 57 | 3.06.2 | 1 1/4 |
| 16 | 18 | ブレイクランアウト | 牡3 | 藤田伸二 | 57 | 3.06.3 | 1/2 |
| 17 | 15 | ポルカマズルカ | 牝3 | 横山典弘 | 55 | 3.06.8 | 3 |
| 18 | 8 | アントニオバローズ | 牡3 | 角田晃一 | 57 | 3.07.7 | 5 |
ラップ 12.9-11.5-11.7-11.9-11.9-12.1-12.6-12.6-12.5-13.4-12.9-11.7-11.4-12.2-12.2
上 り 73.8-60.4-47.5-35.8
March 13, 2009
March 11, 2009
生存報告
January 10, 2009
なんとなく、お正月

年末年始も有馬もなく忙しくしておりました。今更、アケ・オメでもないですね、なんぞと言いつつ、なじみの知人にはやっと昨夜年賀状を出したり、、、
今年はもう少し真面目に馬券にいそしもう、というのがしょうもない年頭の決意。
経済本など読むと世界の景気は今年いっぱいはどうも良くないらしい。トヨタや日産の減産=工場の操業停止とか派遣社員の解雇と言ったニュースを聞くといかに日本が外需に頼っていたか、今更のように感じてしまうが、馬産地はようやく、これから外需を求めていかなければならない。生き残るためにはイヤでもやらなければならないだろう。ひきつづき注目。
December 02, 2008
第28回Japan Cup(GI) 回顧
超スローペースでの折り合いが明暗を分けた、そういうレースだったと思う。勝ったスクリーンヒーローは道中5番手でピタリと折り合っていたし、2着のディープスカイは位置取りをどうこう考えるよりも、まず折り合いに専念したのだろう、天皇賞の時に比べればずっとスムーズだった。そしてその一方でスタートからずっと行きたがる素振りを見せていたウオッカはやはりいつもの切れはなく3着。それでも最後一旦は下がりかけたところを盛り返してマツリダゴッホをかわしたあたり、あらためてこの馬の凄さには舌を巻いた。
このウオッカという馬について「牡馬を相手にGI3勝した牝馬は過去にいない」と語っていた解説者がいたが、単に牡馬が相手というだけでなく、底力を要求される東京競馬場で1600m、2000m、2400mという根幹距離のGIを全て制したということが更に凄いことで、これは空前のことであり、もしかすると絶後でもあるという意味で最高級の賛辞が送られてしかるべきと思うのだがどうだろう。
私個人の馬券はマツリダゴッホからで、直線一瞬夢を見たがウオッカの頑張りの前にあえなく馬券圏外。このマツリダゴッホについて過去の左回りのレースを見ても言われるほど「苦手」とは思えないし、折り合いもついていたのだが直線弾けることもなく、伸びはもうひとつだった。これについて、コーナリングに問題はないがどちらかといえば左手前で走った方が伸びるんじゃないか、だから直線が右手前になる左回りでは伸びないんじゃないかという、これはGCのパドック解説者が言っていたのだが、なるほどそういうことは充分に考えられる、説得力のある話だとは思った。
勝ったスクリーンヒーローは名牝ダイナアクトレスの孫で、その子孫としては初のGIタイトル馬となった。ダイナアクトレスは83年の生まれでメジロラモーヌと同世代。体質に弱いところがあって牝馬クラシックではラモーヌに大きく後れを取ったが古馬になった4歳秋の京王杯AH(GIII)で1.32.2という当時の世界レコードを叩き出している。しかも同年のJCでは5頭出走した日本馬のうち4頭が10〜13着と枕を並べて討ち死にした中で彼女だけが勝ったルグロリューから0.2秒差の3着、それも「鉄の女」といわれたフランスのトリプティク(1番人気)に先着する大健闘、この年JRA賞最優秀4歳以上牝馬に選ばれている。まだまだ外国馬が圧倒的に強かった時代で、日本の牝馬が外国馬相手に3着というのは多くのファンや競馬関係者を驚愕せしめた「事件」だった。
またスクリーンヒーローの父グラスワンダーは種牡馬としては同期のエルコンドルパサーやスペシャルウィークに後れを取っていたが、ようやく平地競走でもGIホースを送り出すこととなった。レース巧者でもあり、父のイメージからしても一度強くなれば怪我でもしない限りそうそう落ち込むこともないだろう。今後に期待したい。
また、スクリーンヒーローの勝利で、私個人としては応援しているジャガーメイルの香港ヴァーズが楽しみにもなった。
October 31, 2008
予断するべからず
| 「東京で2400、、、サクラさんの馬ですよ、何か。ハナ負かしたですよ。4歳中距離特別とかなんかいうの、ハナ負かして(ダービーの)権利を取ったんですよ。そうしたら、それからというもの本当に馬が変わって変わって、一日一日おもしろいように良くなったんですよ。目に見えるんですねえ・・・」 |
この話の主は故稲葉幸夫調教師。調教師引退まであと1年ほどになった春のある日、師を取材したときのコメントをVTRから起こしてみた。で、「一日一日おもしろいように良くなった」馬というのはハイセイコーを敗ってダービーに勝利することになるタケホープ。そのダービー直前の「目に見える」ほどの良化ぶりを、その光景が今でもまざまざと目に浮かんで来るかのような感慨をこめて話して下さった。稲葉師は北海道新冠の御料牧場で生まれ、以後生涯にわたって馬と共に生きた人で、調教師としてもそれ以前に天皇賞(秋)、有馬記念、桜花賞、オークスなどに勝っており一流の実績を築いていた。そういう師にしてなお驚くほどの変わり様をタケホープは見せたというのである。2週間か3週間前の前走より良い、のではない。一昨日より昨日、昨日より今日が良いのである。そして、それが「目に見える」のである。それほどまでに馬は変わる、競走馬には時としてそういう瞬間があるということを忘れてはならない。
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マスコミは予断する。小島茂之調教師のブログ炎上の件。マスコミが予断したのだと私は想像する。プロヴィナージュがこれ以上劇的に良くなるとは考えられないと。調教師が弱気と見れば「回避決定も同然」=「回避決定」。
日々馬に触れ、馬を育て、馬を走らせる、そういう現場の只中に何十年も暮らした稲葉師においてすら馬の変化は予断を許さぬものであったのに、マスコミは平然と予断するのである。おそらく馬は予断を許せぬものという感覚は稲葉師ならずとも調教師なら誰でも痛切に感じているだろう。勝てると思った馬が惨敗したり、とても無理と思った馬が激走したり、こうしたことが日常茶飯事で起きる現場なのである。その予断を許さぬという現場のありようこそマスコミはファンに伝えるべきであろうと思うのだが、日刊紙や専門紙は無論のこと週刊誌、月刊誌でもそうした記事が希少なのは「現場」に寄り添うように、たとえば調教師の目線で、時には厩務員や調教助手の目線で馬を見る、そういう想像力がないからだろう。誤解のないように言っておくと、調教師と同じ相馬をせよというのではない。競走馬一頭を育てレースに出す、その労苦とよろこびを想像せよというのである。
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小島師のブログを読む限り師の対応に問題があったとは思えない。発したコメントに曖昧さがあったら、それが明確になるまで突っ込んで聞くのが取材者の鉄則であって、それは取材される側の責任ではない。しかし、そういう突っ込んだ取材があった気配もブログの文面からは感じられない。突っ込んだ取材をせずに予断で記事を書く。いや、私は件の新聞を読んでいないので確かなことはわからないが、なにより’ミソ’と思えるのは取材を受けるたびに懇切丁寧に回答しているのに、「ほぼ全紙」が「回避決定」と打ったというのだから、これは集団的に行われた意図的な予断だったと思わざるを得ない。
そして、その予断に心ない一部のファンが乗った。師のブログに寄せられた非難の集中砲火を読んでいると新興宗教か何かの洗脳を受けているような気分になる。しかし、プロヴィナージュはルールに則った形で出走しただけで非難されるいわれは一切無い、というのが全き正論。100%同意。ただ、そうした筋論を措いて、私が思うのはあのような書き込みをするファンにはファンの、マスコミに勝るとも劣らぬはなはだしい想像力の欠如、「予断」を許さぬ「現場」、様々な労苦やよろこび、時には悲しみもあるだろう「現場」への想像力の欠如があるのではなかろうか。
あるいは、中には愉快犯的におもしろ半分に非難の言辞を弄している者もいるかも知れないとも思うが、いずれにせよ、そういう者たちが非難される側の痛みを理解しているとは到底思えず、もしかすると、非難された者の感じる痛み見て、痛みとはどんなものかを理解したいという、痛みを知らない者の潜在的な欲求に支配された「甘え」としか言いようのない行為ではないかとすら思う。
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サラブレッドは競走するために生産される。人間のエゴで生まれてくるのである。同じように人間のエゴで生き残ったり殺されたりする。運命を人間に託して生きる生き物である。それだけなら牛や豚も同じだが、大きく違うのはそういう生き物であるにもかかわらずレースを通じて我々人間に大きな感動を与えてくれるということである。しかも、その感動は一頭の名馬によってもたらされるのではない。名馬と競うその他大勢の馬たちがいて名馬が名馬として輝くということを忘れてはならない。プロヴィナージュもポルトフィーノもない、全てのサラブレッドがその感動を生み出す力となっているのである。だから、全てのサラブレッドには人間によって等しく敬意を払われる理由があるのである。予想は大いにするがいい。予断はするべからず、そう思うのである。
October 03, 2008
三浦皇成騎手のカウントダウン
とりあえず私の今週の注目はスプリンターズSでも凱旋門賞でもなく三浦皇成騎手の記録。
先々週5勝、先週も5勝で目下64勝。あと5勝で武豊騎手の新人勝利記録に並び、6勝すれば新記録、今週中の達成は微妙なところだがカウントダウンは始まっているというわけだ。
ちなみに武豊騎手は1987年のデビュー。その1年目に554戦して[69.63.57.365]という成績を収めた。勝率は0.125、連対率は0.238になる。一方の三浦皇成騎手は先週終了時点で536戦して[64.51.43.378]という成績。勝率は0.119、連対率は0.215である。騎乗数がほぼ同じ時点で勝率連対率ではわずかに落ちるがほぼ同じ成績といっていいが、さすがに「武豊を超えた新人」とまでは言えない。それでも、文字通り20年にひとり出るかでないかの逸材ではあるのだろうし、武豊騎手と比較されるだけでも凄いことなのだ。
その彼が現時点で武豊騎手を圧倒的に凌いでいるのは騎乗数ということになる。これは時代が違う。武豊騎手がデビューした87年当時と言えばフリー騎手なんてまだ数えるほどしかいなかった時代で、彼も含めて所属厩舎の拘束力が強かった。そういう意味では関東関西を問わず様々な厩舎から依頼される三浦皇成騎手は恵まれている。それは同時に騎手としての経験を積むより多くのチャンスをもらっているということであり、これから年末までの3ヵ月、それこそ勝率連対率などの数字でも武豊騎手を超えるような進化を遂げることが出来るかどうかが問われるだろう。(もちろん数字に表れないところでも問われることは多々あるだろうが)
さて、ところで、そんな三浦皇成騎手の先週先々週の成績を見ると、妙に藤田伸二騎手と並んでゴールというシーンが多い。こりゃ藤田に可愛がってもらっているなあと、あらぬ想像をたくましくしている。三浦・藤田で1・2着あるいは2・1着、それだけでなく両者とも敗れたケースでも前後して入線しているレースが多い。札幌開催リーディングでも共に22勝、首位を分け合っている。騎乗馬の平均人気は三浦皇成騎手4.1、藤田伸二騎手3.7でこちらはわずかに三浦皇成騎手が上。あるいは藤田伸二を本気にさせたかも知れない。しかも、そんなリーディング争いに興味はないよとばかり背を向けて、三浦皇成騎手は日曜日、中山で騎乗する。プレミアムボックスで初のGIに挑むのだ。札幌リーディングは藤田伸二騎手の公算が高いが、大先輩もかたなしのリーディングになってしまいそうだ。
September 25, 2008
馬産地の秋
ナタゴラ(NATAGORA)がスワンSに登録。本当に来ればこの秋のJRA最大の目玉になるんじゃなかろうか。期待。
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馬産地に来ている。静内のネットカフェからの書きこみ。このネットカフェは東京でも見かけるチェーン店だが、静内にあるとは知らなかった。しかも9月いっぱいで閉店になるのだそうだ。若者の数も少ない。そこはかとなく寂れゆく雰囲気。秋、終日強風の吹き荒れる一日であっただけに、なおさらそんな感がしたのかもしれない。 静内にやってきたのは、昨年に続いて米・Winchester Farmの吉田直哉氏による生産者向けの講演会が開かれるためで、直哉さんとゆっくり話をしたいと思い問い合わせたところ、成田から千歳へ向かう時が良いという返事、成田でおちあってたっぷり4時間くらいはご一緒させていただいた。取材というよりほとんどが雑談。 中で気になった話。その1。ディープインパクトであれだけ言われながら、それでもステップを使わないメイショウサムソンに地元フランスのメディアはかなり批判的らしい。ほとんど期待されてないようだ。直哉さんによると凱旋門賞ほどのレースになるとどの陣営も目一杯に仕上げてくるのはもちろん、ライバル馬のことも徹底的に調べ上げて戦略を練ってレースに臨んでくる、ディープインパクトのときも「あの馬はペースメイカーで終わるだろう」と言っていた人もいたそうだ。その2。日本における馬主激減の現状について、生産者にしてもセリにしても(そして多分、育成牧場にしても競馬場にしても)馬主に対するホスピタリティの心がないんじゃないか、もっともてなしの心があって良いんじゃないかという話題。大金を払って馬を買っても、その馬を身近に感じられない、自分の馬を牧場に見に行ってもくつろげない。競馬は馬主にとって大事なエンターテインメントなのだから、もっとお客さんとしての馬主を大事にしなくては・・・。その3、その4もあるけれどここには書かない。講演内容と重複する。今回も講演の記録をHPにUPするのでそれまで待ってください。
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今年のセリについてHBAで話を聞いた。はっきり不況が原因と断言。馬主には株でもうけていた人も多いとか。深刻な表情でちょっと気の毒なくらいだった。その一方でセリで売る立場の知人は売り手が不況のせいにしたら駄目でしょうと。私もそう思う。彼によるとセリで売れなかったのは○市廃止の影響が大きいと。彼が言うには再上場馬の数が減っているのだと。最初のセリで売れなかった馬が価格を下げて再上場するのも○市があったからで、わざわざHBAに売却手数料(5%)を払って再上場するまでもなく、セリ場の裏で内税(5%)で売却すれば生産者にとっては同じことだし手間も省ける。そして購買者は5%得する事になる。まあ、オータムセールの結果を見てからまとめてみようと思う。 ちなみに話を聞いたHBAの知人は外国人馬主についても心配していた。受胎した繁殖牝馬を日本に持ち込んで内国産馬4頭の問題をクリアすればいいのだから、外国人馬主は増えるだろうと。その繁殖の預託を受ける牧場は良いだろうけれど、ほとんどの生産者にとって良いことは何もない。果たしてそうだろうか?海外の馬主にとって、それほど日本競馬のステイタスが高いとも私は思っていないのだけれど・・・。
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いずれにしても馬産地は我慢の時ではあるだろう。我慢の秋。私も我慢の秋だと思いつつ、明るい話題は聞かれずじまいの馬産地に寂しさを禁じえない旅だった。
August 30, 2008
雑記(20) Genuine Risk死亡
まあ、そんなことはどうでもいいことだけど、写真の方はなかなかに味わいがある。写っているのはGenuine Riskと彼女が16歳にしてようやく得た初仔(父Rahy)で、スキャナーで取り込んだこの画像ではわかりにくいかも知れないが、ようやくにして母になったよろこびを感じているかのような実に優しい目で子馬を見ているのである。うれしくてうれしくてしょうがないといった目をしている。

August 29, 2008
小説「すべての美しい馬」

この作品も映画化されている。監督はビリー・ボブ・ソーントン。「アルマゲドン」や「バンディッツ」でブルース・ウィルスと共演していた俳優だが、私が見た範囲で言うと「デッドマン」や「トゥームストーン」にも出演していて、これが一見してビリー・ボブとはちょっと気づかないくらい役を作り込んでいる。その作り方に不自然さがないだけにその想像力の幅広さ、懐の深さのようなものに驚嘆するのだが、どこか天才的な知性を感じさせる人である。彼は製作や脚本の分野でも活躍しており、監督に乗り出してもなんら不思議はないのだが、映画「すべての美しい馬」は彼の演技のイメージからはちょっと想像できないくらいオーソドックスな作りで原作を忠実に映像化しており、それは原作に正面から向かい合った作りとも言えるだろう。そして、その結果実に美しい風景が撮り上がっている。テキサスやメキシコの平原の壮大な風景、大自然の美しさは原作でもたびたび描かれているがやはり映像で見る方がいい。文字通り百聞は一見に如かずである。
そしてその風景に溶け込むように当然のように馬がいる。物語の時代背景は映画では1949年となっているが原作には何年という明らかな表記はない。第二次大戦が終わって何年か経ったころという程度で、まあ、おおむね1949年頃ということだろう。当時のテキサスやメキシコのいわば「自明」の風景の中で、牧場に生まれ馬と共に生きるより他に生きるすべを知らない、あるいは馬と共に生きることが最も自然な生き方で、他の生き方など思いもよらない、それもまた「自明」といった風情の少年(ジョン・グレイディ)が父母の離婚と生まれ育った牧場の売却という事態に直面、自分の生きるべき場所を求めて友人とともに馬に乗って旅に出る。
この、世界のどこに自分の居場所を求めるかというテーマは「ノーカントリー」の主人公で自分には理解できない犯罪や犯罪者に直面して引退してゆく老保安官ベルのテーマと通底している。ベル保安官は引退すれば良かったが、「すべての美しい馬」の主人公ジョン・グレイディ・コールはまだ16歳の少年で、その「居場所」を自分の力で勝ち取っていかなければならない。そのために彼は台頭する自動車文明に背を向けるように、昔ながらのカウボーイの生活を求めて旅をし、やがてメキシコの大牧場にたどり着く。そこからめくるめく運命の変転が始まるのだが、そのことは措いておく。
紹介したいのは、やはり馬についての様々な記述である。この小説に記された主人公やメキシコ人の馬に対するまなざしのありようというものは、どんな時代であっても日本ではちょっと生まれようがない、そんな気がした。独立戦争や南北戦争あるいは西部開拓時代のインディアンとの戦いや無法者達の私的な闘争、アメリカの建国の歴史にはどんなところにも常に馬がいたし、メキシコ革命の動乱の舞台にも常に馬がいたであろう。以下は革命を戦った老人が主人公に語って聞かせる馬の話である。
| 彼らはその夜地卓の頂上の岬のような部分に野営して強い風に吹かれた炎が闇の中で前後左右に首をふる焚き火を囲み、ルイス老人が語るこの国とこの国に生きる人々についてのまたこの国で死んだ人々と彼らがどんなふうに死んだかについての物語に耳を傾けた。老人は生涯馬を愛してきた男で彼も彼の父親も二人の兄弟も騎馬隊にはいって戦い父親と兄弟は騎馬戦のさなかに死んだが彼らはみな他のどんな人間よりもビクトリアノ・ウエルタ(筆者注:メキシコ革命時、反革命を指揮し残虐行為を繰り返した将軍)を軽蔑し他のどんな邪悪な行為よりもウエルタの成したことを軽蔑した。 (中略) (老人は)自分がメキシコの砂漠で戦った戦闘の話をし自分の体の下で殺された何頭かの馬のことを語って馬の魂は人が思っている以上に人の魂を映す鏡だといい馬もまた戦争が好きなのだといった。馬はただ後から好きになるだけだという人もいるがどんな生き物も心がそれを受け入れる形になっていなければ好きになるはずがない。自分の父親は馬に乗って戦争に出かけた者でなければ本当の意味で馬はわからないといったがそうであって欲しくないと思いはしてもどうもそうらしいと老人はいった。 最後に老人は自分は馬の魂を見たことがあるがそれは見るからに恐ろしいものだといった。それは一頭の馬の死に立ち会ったときにある種の条件がそろうと見えるがそれというのも馬という生き物は全体でひとつの魂を共有しており一頭一頭の生命はすべての馬たちをもとにしていずれ死すべきものとして作られるからだ。だから仮に一頭馬の魂を理解したならありとあらゆる馬を理解したことになると老人はいう。 |
馬が戦争を「好き」かどうかは異論があるだろうが、馬が戦場で示す勇敢さを讃える言葉というのは古くは旧約聖書やコーランにもあるし、砲弾や銃弾が飛び交う中を突撃し、時には火をも恐れずその中に飛び込んでいく「馬」という生き物の不可思議さは時として神格化されたとしても不思議ではない。馬という生き物は全体でひとつの魂を共有しているというのは「神格化」の萌芽でもあるだろう。
| 眠りのなかでジョン・グレイディは岩のあいだを歩く馬の蹄の音を聞き暗がりの浅い水たまりで馬が水を飲む音を聞いたが岩は古代の遺跡に残された石のように矩形をして滑らかで馬の鼻面から垂れる水は井戸に落ちる水滴のような音をたて、その眠りのなかでジョン・グレイディは馬の夢を見その夢のなかの馬たちはある古代の遺跡にやってきたかのように傾いだ石の建物の残骸のあいだを重々しい足取りで歩くのだったがその遺跡は世界の何らかの秩序が崩れ去ったあとなのであり石の上に何か書きつけられていたとしても風雨に晒されて既に跡形もなく消し去られていて、そこを歩く馬たちはこの遺跡も含めてかつて馬が存在しまたこれから存在するであろうさまざまな場所の記憶を血のなかに携えて慎重に警戒怠りなく動くのだった。最後に彼がこの夢の中で悟ったのは馬の心臓のなかにある秩序は雨に消されることのない場所に書きこまれているためにずっと永続的なものだということだった。 |
まさに神話世界のイメージ。馬の心臓の中にある秩序はずっと永続的であるという。おそらく時間的な話だけでなく空間的にも。つまりひとつの魂を共有しているということが重ねて表現されているのだろうと思う。
私が思うのは、神話でもいいし伝説でもいいのだけれど、そういう文脈で語られた「馬」が日本には少ないなあということであり、まして現代日本の競馬という現場でそういう神話伝説が誕生する素地があるのだろうかという疑問である。実も蓋もなく「無い」と言ってしまえばそれまでの話ではあるけれど、日本の「ホースマン」と呼ばれる人々の馬との付き合いのあり方を考える上で、彼らが馬によってどんな刺激を得ているか、その感性のありようは覗いてみたい気がする。「強馬」をつくる上で、つまるところその感性が重要だと思うから。
| 馬たちはすでに動揺しはじめていた。ロリンズが最初に群れから飛び出した馬の首に投げ縄の輪をかけ両前脚を縛ると馬はどさりと大きな音を立てて地面に倒れた。異常を嗅ぎつけたほかの馬たちは一塊になって首をこちらに振り向けた。若駒がもがきながら立ち上がる前にジョン・グレイディが首の上にまたがり頭を引きつけて骨張った長い顔を自分の胸に押しつけると鼻腔の暗い井戸の中から熱い甘い息があふれ出してきて別世界からの便りのように顔や首にかかった。馬の匂いではなかった。馬である以前に彼らがそうである野生動物の匂いだった。馬の顔を胸に抱えこみももの内側に馬の動脈が力強く送り出す血を感じることができ馬の怯えを嗅ぎとることができた彼は、馬の目の上に手をかぶせて撫でてやり、低い声で休むことなくこれから自分が何をするつもりなのかを囁きつづけ恐怖心をこすり落とすためにさらに目の上を撫でた。 |
最後に野生馬の馴致シーンから。原作にはこのあと馴致方法が仔細に書かれていて非常に興味深かった。かの"ホース・ウィスパラー"モンティ・ロバーツが否定した昔ながらの暴力的方法だが、映画では前脚を縛るようなことはせず、単に荒馬を乗りこなす西部劇でおなじみのロデオシーンのようになっている。やはり動物虐待を非難されるのを恐れたのだろう。
原作ではこのシーンに限らず主人公は常に馬に語りかけている。日本では馬に語りかけることは「重要だ」といわれる。かの地では馬に語りかけることは普通であり、自然でもあり、当たり前のこと、つまりあらためて「重要」と意識するまでもないことのようであり、そういう意味でも馬との関わり方に関する彼我の差は大きいなあと改めて思った次第。
一文が長く、読点(カンマ)も少ない独特の文体で決して読みやすい本ではないけれど、興味を持った方は是非ご一読を。
雑記(19) 雨上がり
古谷剛彦氏のブログによると非居住外国人馬主の認可について、彼らが外国産馬(○外)を持ち込む場合、内国産馬を5頭以上持つことを前提とするという案をJRAは持っているらしい。外国人馬主が日本に参入する場合、最初は1頭か2頭試しに日本で走らせてみようかという程度だろうと思うが、その段階で日本産馬を5頭買いなさいと言うのは、最初から無理を言うにも程があると私は思うのだがどうだろう。形だけ開放して「来るな」と言ってるようなものでJRAのやる気も底が知れている。それだけでなく、馬主が増えることで馬が今以上に少しでも多く、少しでも高く売れるようになるだろうという生産者サイドの期待にも甘さを感じてしまうのは私だけなのだろうか。
私が思うに金持ちの外国人馬主が内国産馬の市場に参入して割を喰うのは中小の馬主で、彼らの競馬サークルからの退場を早めるだけだろうと思う。彼らが購買する馬のレベルを下げてこれまで売れるか売れないかのボーダーラインにあった馬を新たに買うようになるとは思えない。日本の競馬は賞金の高さも世界のトップクラスだが、馬の価格もトップクラス、維持費に至ってはもうダントツのトップ、それでいて思うようにレースで走らせることが出来ない除外ラッシュ。そんな環境におかれてほとんどの馬主は赤字である。そういう状況で走るか走らないか誰が見ても疑問符がつく馬、判断に悩む馬を敢えて買ってまで馬主を続けたいという人間がどれほどいるか。そう思うのである。更に付け加えるなら、外国人馬主は辞めるときはあっさりと辞めていくだろうが、一度辞めた日本人馬主がおいそれと簡単に戻ってくるとは考えにくい。ただでさえ馬主の激減が心配されているのにそれに拍車をかけることになりかねない。
それを考えると内国産馬を5頭以上持てなどという制限などないほうがいい。日本の競馬を肌で経験し、日本の競馬には日本産馬が向くと思えばそれを買おうという外国人馬主も必ず出てくるだろう。外国人は日本の血統に見向きもしないという説も根強いが、それは日本産馬は弱いという従来のイメージに支えられた現象で強い馬の血統はそれなりに売れるようになる、所詮「金」になるかならないか、そういう側面が強いと思うのだがどうだろう。
それにしても、なぜ5頭なのか?5頭という数字の根拠は何なのか、現状ではさっぱりわからないが、本決まりになったとしても説明されることはないだろう。また、外国人馬主に対してこの種の制限を課すというやり方は海外にもあるのだろうか、おそらく無いと思うのだが詳しい方に聞いてみたい気がする。







