February 17, 2007

大井競馬の「外国現役馬」の導入について〜補足〜

前項『大井競馬の「外国現役馬」の導入について』いただいたコメントに対する回答とあわせて、その後、知り得たことについて補足を書いておく。

コメントに対する回答はコメント欄ですればいいと思うけれど、生産者団体と地方競馬の交流がどのような実態だったかというのは、私の記事の論旨の上で引っかかる部分ではあるし、前項記事のコメント欄の返事をわざわざ再度見に来る人も少なかろうと思いあえて、ここで回答をする次第。

また、笠松の件についておふたりの方から指摘され、私自身も記憶に頼って書いた部分で、まず”あれ、そうだっけ?”という私自身のリアクションがあり、ご指摘いただいたとおり、うろ覚えのことは調べて書かなくちゃいけないと、反省もした、自戒もした。

頂いたコメントのポイントは以下の通りである。

  笠松に寄付していますがね、生産者団体は。
  アクションもちゃーんとやってる方はやってますよ。(以下、省略)
                                        (いちファンさん)

  道営のスタリオンシリーズなんか、資金提供そのものじゃないですか。
  他の競馬場にしても、冠競走があるし、笠松は勿論、この間、ばんえい競馬にだって
  寄付を募ったばかりですよ…。
                                         (別のいちファンさん)


以下、回答。

笠松の件については、支援はしておりません。2005年1月頃に笠松競馬から日高軽種馬農協(HBA)に対して支援要請があったのは事実で、主催者側がHBAを訪問、支援を検討するという返事はしたようだが、結局支援には至ってない。理由は極めてシンプルなもので、1箇所に支援すれば我も我もと全国の地方競馬主催者が支援を申し込んで来かねない。それを断ることが出来なくなるということと、それほど潤沢な資金もない、ということに尽きる。

これは関係者に電話取材して確認済み。軽種馬農協は以後資金的な支援はすべて断っており、金のかからない範囲で(物的、人的に)支援できることは極力支援したい方向でいるが、現実にそうした話がまとまったケースはないそうだ。

この笠松の件については上記のように2人の方が書いていて、案外一般のファンの方はそう信じているのだろうと危惧を抱かざるを得ない。実際、地元である岐阜では、当時中日新聞が組合側が「真剣に取り組んでくれれば協力する」と約束したかのような先走った記事(それも誤報)を掲載したこともあったらしく、そんなところに誤解の原因があるのかも知れない。マスコミはおいしいところは報道するが、最後までなかなか追跡取材をしない、まして「破談」ともなればネタとしてはしょっぱい。この「笠松の支援申し入れ」も失敗に終わったという報道はなかったのだろう。マスコミは忘却を持って旨とするのだ。

道営については後述するとして、冠レースというのは基本的には宣伝が目的でするもの。しかも競馬主催者に何かが手渡されるわけではなく、優勝馬の馬主に賞品なり賞金が渡されるわけで、支援という解釈は当たらない。しかも、馬主に渡される賞品よりも賞品授与に競馬場に行く役員の交通費の方が高いと、口の悪い向きに言われるくらいで、何をどう解釈しても「支援」という実体はない。

次に、ばんえい競馬支援の寄付をしたのは日高農協で日高軽種馬農協ではない。日高農協は競走馬の生産農家も入っているが、牛も豚もあれば米も野菜もある普通の農協である。これは、もうコメントされた方の初歩的な事実誤認。
軽種馬関連では日高の軽種馬生産者の有志が寄付を募った事実はあるが、HBA等の軽種馬の生産者団体が寄付するということは上述の通りありえない。また、寄付を募るということもやってないかどうか調べたが、そういう事実は見つからなかた。

最後に、北海道競馬と軽種馬農協等の生産者団体の関係については解釈の仕方によって、という部分がある。

2001年の主催者側組織の再編で北海道競馬運営改善対策室なるものができてサポーターズクラブが立ち上がった。ここにHBAからスタッフを派遣していて、人件費はHBAが払っている。スタリオンシリーズもある、たしかに。ただしスタリオンシリーズに種付け権利を提供している種牡馬の中にJBBA所有のそうそうたる種牡馬名は見えない。多分全国の生産者団体のTOPとしては1道営のために、とはいかないところはあるのだろう。レースの副賞として提供されているのはHBA所有のキッケンクリスとアドマイヤボスがいるだけである(H18年度の場合)。まあ、そういう事実はある。人や金や種付け権利という賞品の流れだけをここ10年ほどのスポットでみれば、「支援」と言いたい気持ちはわかる。「北海道競馬運営改善対策室」とか「軽種馬農協」とか個別の法人単位で人や金の流れを見れば、そういう解釈は成立しないわけではない。

これについては知らなかったわけでも何でもなく、そもそも前項記事の文脈で言えば、本来「顧客」であったはずの、よその競馬場への支援の話をしているのであって、北海道競馬は生産者や生産者団体にとって「顧客」以上の意味を持っているし、当然ながら「よそ」ではない、と私は思っている。

北海道競馬は馬産地競馬であるといわれる。数多くの生産者(=軽種馬農協の組合員)が馬主として自分の生産した馬を走らせており、中には売りたくても売れなかった馬もいる。購買者には認めてもらえなかったかも知れないが走りそうだと思えば走らせるし、せめて種付け料だけでもレースに出して取り返したい、そんなケースもあるだろう。つまり、北海道競馬には顧客としての馬主ももちろん存在するけれど、それ以上に生産者自身がまず、北海道競馬という小さな競馬サークルの中の当事者なのである。

北海道競馬と生産者団体の関係は、これも案外知られていないのだろうけれど、1976年に北海道競馬の運営を担う「北海道軽種馬振興公社」(100%道が出資)というものができて以降、この公社には日高、胆振、十勝の各軽種馬農協から人が派遣され、競馬の開催執務の仕事をやっていた。つまり主催者の北海道と一体となって、2001年の組織再編まで競馬開催の中枢を担っていたのである。そういう歴史もある。
生産者団体にとって北海道競馬はとうてい「よそ」といえる存在ではないはず、と私は思う。そして、とても「よそごと」とは言えないからこそ存廃論議が深刻化した99年当時、日高・胆振・十勝の3軽種馬農協は「北海道競馬危機突破総決起大会」なんていう集会を自らイニシアチブをとって主催したりもした。道営の存廃論議は生産者の死活問題に直結する要素があるのである。そこで、スタリオンシリーズは「支援」じゃないか、とはどういうことか?

私に言わせれば、これはやって当然の「自助努力」

          ****

前項の記事で、事の経緯を紹介し、私なりにJBBAやその傘下の生産者団体の対応に疑問を投げかけたわけだが、その大きなポイントは日頃の交流の無さであり、「顧客意識」の希薄さであろうという意味で、論旨を変える必要はないだろうと思っている。

ただ今回のケースで知り得た事を付け加えるなら、大井の方も相当に秘密裏に事を進めていたようで、昨秋の段階で生産者側は「噂」として耳に入ってはきていたが、南関4場に情報を確認しても、どこが何をやるのかはっきりとはつかめなかったそうだ。大井側の組織決定後の発表まで打つ手がなかったというのが実情のようである。逆に言えば、大井競馬としては、生産者を相手に事前の根回しなどとても無理という意識があったかも知れない。互いに殻を閉じた形で、いきなりガチンコでぶつかったというわけだ。

ただ、それにしてもなあ・・・と思うのは、JBBAとJRAの協議みたいにとはいわないが、定期的な懇親会をやるとか、人事交流をはかるとか、そういう事を何もしてこなかった、相互の信頼関係を作るという努力をしてこなかったツケみたいなものが出たという気がする。
脚が4本あれば売れた、なんていう時代はとっくの昔に終わっているのだし、売れない時代にこそ売るための努力が必要なはずなのに、セリにおける大井の「団体購買」がなくなった時点でカタログを送るだけで営業にすら行かなくなった。そういう軽種馬農協の姿勢は一般企業ならとっくに倒産していて不思議ない姿勢で、大いに問題がある。こういう時代だからこそ、長い時間をかけてそれなりの信頼関係を築いておくべきであったと思うし、そうであれば大井の財政状態もそれへの対応もわかっていただろうし、施策の根拠としている第3次特別区公営競技振興対策協議会の答申(99年1月)にも目を通す機会もあったかもしれない。結果は同じかも知れないが流れは変わっていただろう。ファンをしらけさせる事も少なかったろうと思う。

JBBAや生産者団体側の絶対反対は基本的な部分でいうと、これを認めると他の競馬場に広がる、原理原則の部分で妥協すると歯止めがかからなくなるという事にある。これは生産者を統べる団体の政治的な姿勢として理解はできる。まあ最初に原理原則を激しくぶつけておいて、今は水面下であれこれの交渉が行われているのだろう。彼らが最も恐れるのは、万一大井でこれが成功した場合にJRAが同じ事を言い出さないか、その一点に尽きるようだ。私個人はこれが成功する可能性は少ないと思うし、5年後10年後はともかく、今JRAにそれを言い出す度胸はないと思うが、どんなものか。

大井競馬は04年までに39億円の赤字、とはJBBA NEWSにあるとおり。05年度も20億くらいの赤字だったらしい。合わせて59億。

さて、事の成り行きがどうなるか。見守っていこうと思う。

          ****

最後に私が思う事を言うならば、生産者はそもそもどれだけ時間があれば「国際化」に対応できるのか?という至極まっとうな疑問がある。

生産農家は1軒あたり平均8000万円の借金をかかえているともいわれている。この半ば不良債権化した借金を早急に整理すべきで、この問題がある限り、何をやっても生産地が活性化する事はあり得ないし、軽種馬農協が半身不随になっているのも元をただせば、返せない借金を抱えた生産者も組合員として守らなければならないからで、「借金の整理」と「国際化」への対応とかかる時間は比例するだろう。ファンはいつまでも待ってはいない、そのことを忘れないで欲しいと祈るばかりである。

          ****

> いちファンさん

で、君は何を知っていたのだ?

「無知」は君の目の前にある。わかるだろう?
当然、私の目の前にもある。そして誰の目の前にもあるものだ。「知ってる」と思った瞬間に、そこに「無知」という闇が横たわってる。怖いと思わないか?

せいぜい私よりは格好良く去ってくれ。頼むよ。(笑)

> 別のいちファンさん

農協の違いなんて私に説明させるなよ(怒)。
まあいいや、せめて君が上の「いちファン」とは違う人物である事を祈ってるよ。

          ****

やれやれ・・・・

birdcatcher at 21:26│Comments(6)TrackBack(2)競馬ニュース 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 見えないものは見えない  [ 血統の森+はてな ]   February 18, 2007 01:14
大井競馬の「外国現役馬」の導入について 大井競馬の「外国現役馬」の導入について〜補足〜(Racing Blog 2007) ファン同士で罵りあってもしょうがないとは思いますが、というのはさておき。 この手の話題ってのは、なかなか見えないというか何がどうなってるのかさっぱり
2. [競馬雑記]かくも深き断絶  [ 傍観罪で終身刑 ]   February 19, 2007 00:15
●Racing Blog 2007:大井競馬の「外国現役馬」の導入について〜補足〜 <関連> ●血統の森+はてな - 見えないものは見えない ▼エントリの本筋に関しては、少なくとも自分あたりの一ファンにしてみたらもう手を打ち膝を打ち腑に落ち感じ入るしかないほど正論であり、それ以

この記事へのコメント

1. Posted by いちファン   February 18, 2007 04:18
やれやれ。
困ったちゃんですね。
上から人を見下しているイヤなヤツというのがよくわかりました。
人のこと、とやかく言う前にご自分は人を批判するほど
ご立派な人間なんですか?
まあ、でもあなた如きが吠えたって、何もかわらないのですけどね。
そんな人を相手にした私がバカでした。

申し訳ないけど、こちらも関係者に確認済みなんですけどね。
(笠松の件)
これに関しては、ある有名ブログも書いていますよ。
まあ、自分で調べてみてください。
2. Posted by BIRD   February 18, 2007 04:38
> いちファンさん

笠松の件は私はHBAに直接確認しました。HBAがしてないというからしてないのですよ。

それにしても、去り際、美しくないなあ・・・
3. Posted by 事情通   February 18, 2007 20:54
ブログ炎上ですか?

笠松へは一生産者が個人で寄付してます。
日高では有名な方です。
4. Posted by arikui   February 18, 2007 21:29
> ある有名ブログも書いていますよ。
> 日高では有名な方です。

「有名」ってのが今流行ってんですか。
5. Posted by BIRD   February 18, 2007 22:08
> 事情通様

いや、炎上というほど大袈裟じゃ・・・(苦笑)。

もうちょっと対話になると良いのですけどね、とにかく支離滅裂な奴でして私としては相当に優しく接してあげたつもりなんですが、不徳の致すところでお恥ずかしい限り。

一生産者(=中村和夫氏)が寄付した事は私も聞いて知っています。金額が1千万とか1億とか2説あったので書かなかったのですが。

> arikui様

お越し頂きありがとうございます。一服の清涼剤として笑わせていただきました。感謝。
6. Posted by 良識的戦後民主主義者   February 18, 2007 22:19
乙です( ^ω^)

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔