担当者より:ライターのたろちんさんは、「ニコニコ動画」で人気のゲーム実況プレイヤーとしても知られる書き手です。現在は、webマガジン幻冬舎で連載企画「実況野郎文芸部(B-TEAM)」などで活躍しています。この原稿では、パチンコを通してこれからのコンテンツについて書いていただきました。

配信日:2009/08/26


最近、僕が耽溺している競技が玉入れである。紅白の帽子を被り、カゴに玉を入れる事を狂騒的に競争する少年達の姿に魅了された、のではない。僕が言っているのは電動式発射装置で銀玉を発射し、規定の入賞口に入れることで賞球を得る方の玉入れだ。一般的にはパチンコと呼ばれている。

世間一般ではパチンコプレイヤーのことを「パチンカス」などと呼称して侮蔑する向きもあるが、それはひとえに彼らの一部が競技に一途過ぎるあまり、経済的に破滅して怖いお兄さんに追われたり子供を炎天下の車中に放置したりするからである。

ただし、その側面だけでパチンコを悪と判断するのは早計だ。酒は中毒性もあるが、「百薬の長」と呼ばれる一面もある。例えば、釘を読み確率と期待収支を計算することで脳を活性化させ、青筋を立ててチャンスボタンを連打することで肉体の運動効果もある。パチンコ店は玉入れ専門のスポーツジムだと思えば、一概に悪とは言えないのではないだろうか。言えるというなら別に否定はしません。

しかし、パチンコには文化的側面もあるのだ。近年のパチンコ台はほとんどが漫画やアニメ、芸能人などとのタイアップ機である。かつての人気作品がパチンコという形で新たに日の目を見るのは、パチンコファンのみならず原作のファンにも嬉しいことであり、『北斗の拳』などはパチスロの大ヒットをきっかけに再ブレイクもしている。僕も昨年の「ぱちんこCR北斗の拳」をきっかけに原作の漫画にも手を伸ばし、震えるほどに感動させてもらった。

実はこれと同様の現象がネットの「ニコニコ動画」でも起きている。ニコニコ動画は、一般ユーザーが作成・投稿した2次創作を中心とする動画で賑わうサイトだ。例えば、松岡修造やマクドナルドのドナルドに不思議な面白さを見出した人達が、テレビなどの映像の1シーンを切り取り、音楽その他の要素と合わせて再構成したMADムービーが数百万の再生を記録するほどヒットしている。また、ゲームをしながら感想や解説をしゃべりあったものを動画として流す「ゲーム実況動画」の分野でもファミコンやスーパーファミコンの時代を彩ったレトロゲームのタイトルが人気を博している。

飽きたらポイするのではなくいいものは何度も使おうよ、ということである。50年前のジーンズを穿いたり、ヒップホップが既存の楽曲をサンプリングするのと同様の行為だ。飽食が叫ばれて久しいこの時代において実にリサイクル精神が旺盛ではないか。エコポイントをあげたいくらいである。

しかし、その一方で新しいものが少なくなってきているようにも感じてしまうのだ。僕の好きなパチンコ一つとっても、『北斗の拳』のような人気作やその続編は話題になるし、新台もたくさん導入される。だけど、ホールの隅に数台導入されて盛り上がることもなく撤去されていった台の中にも、面白くてもっと人気が出てもいい優秀台はたくさんあった。

ゲーム実況動画の話をしたが、実際のゲーム業界においてもそうで、人気になった作品の続編を作ることで無難な収益を確保しているメーカーは実に多い。その中で積極的に新作を世に出し続けるマーベラスエンターテイメントなどは、チャレンジし、手ごたえを感じ、評価をされているにも関わらず売れない嘆きを「まだ死にたくない」とブログで綴って話題になった。

核戦争で水や食糧が激減した『北斗の拳』の世界では、空腹でも種モミを食べずに「今日より明日」と言って育てようとする老人が登場する。そんな健気な老人から「ヒャッハー」などと言って種モミを強奪して食べようとする無軌道な人が大量に出てくるけれど、今の世の中全体がそんな風になってないだろうか。

今、劇場版としてリメイクされている『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督は、エヴァンゲリオンの再劇場化にあたって「この12年間エヴァより新しいアニメはありませんでした」という声明文を出している。その言葉の真偽はともかくとして、かつての大ヒットアニメは、現在も大ヒットを記録して、多くの新しいアニメを凌駕する存在感を示した。

僕は今のタイアップ機のパチンコが好きである。数百分の一のくじ引きをひたすら繰り返すという単純作業の中で、名作のキャラクターや音楽はその退屈をずっと面白いものにしてくれる。自分が好きな作品ならなおさらだ。

でも、10年経っても『エヴァ』や『北斗』の続編をやっていたいか、と聞かれれば答えはノーである。確かに今日、『エヴァ』や『北斗』ほどの大ヒットを飛ばす作品はないかもしれないけれど、やっぱり21世紀の文化は21世紀の人の手で更新していくべきだろう。どんどんリバイバルする作品が古くなって「CRソクラテス」とか「CR壁画」とかになったら僕は嫌だ。「ナスカの地上絵リーチは激アツ」とか言いたくないし、先人達も言われたくないだろう。

新しいことに挑戦している人たちに「死にたくない」などと言わせないよう、我々消費者も種モミを育てる精神で盛り上げていかなければならないのである。コンテンツが育てば、パチンコもまだまだ面白くなる。パチンコだって立派な日本独自の文化の一つであり、明日の日本文化のために欠かせない役割を担ってくれるはずである。

負のイメージが強い射幸性の高さという問題も、慎重な規制が進められ、解決に向かっている。それでも、残念ながらパチンコのせいで人生が狂ってしまったという人は、パチンコ台や店長をサンドバッグに見立ててボクシングを始めるなどすれば、パチンコのスポーツ性も高まっていいんじゃないでしょうか。


●たろちん
ライター。
ブログ:おちんちんbelong