2004年10月06日

『父と暮せば』

 大きいはず宮沢りえ

前から観たいと思っていた、『父と暮せば』を、
先日、岩波ホールに観に行ってきた。
ギンレイ以外で映画を観るのは久しぶりだ。

岩波ホールに来るのは、2回目。
『宗家の3姉妹』を観て以来。

そのとき誘ってくれた友人と音信不通になっている。
また、映画を観に行ったり出来ればいいのだが。


○さて、映画に話を戻そう。
一食抜いても是非!とは言わないが、
自分の子供(まだいませんよ!)や次の世代に観せたいと思う。

「核兵器なんか使っちゃいけない、作っちゃいけない。
広島の惨劇を後世に伝え、今後、繰り返さないようにしなくては。」
と素直に思わせる映画だ。

○原爆映画といえば、悲惨や悲壮さは当然付きまとう。
この映画もその例外ではない。しかし、悲壮さにだけスポットを当てるのではなく、生き残ったあとをどう生きるかという視点で描かれている。
あざとさに対して拒否反応が強い私だが、問題なく受け入れられた。

ピカの事は忘れようとして生きている広島の人たち。
映画の中では、アメリカを怨むような台詞は無い。
ただ、一つの大きな災難のように扱っているような印象がある。

○死ぬのが当たり前の広島を生き残った事をどうとらえるか。

「死んだ人の分まで幸せにならなければならない。」
というのは、陳腐な励ましの言葉だ。
幸運で生き残った側の人間にとっては、自分からは言えないし、軽々しく受け止められない台詞だよなと今更思った。

今の平和は、広島の原爆や度重なる大空襲の上に成り立っている。
大変だった時代の分まで、平和の幸せを噛み締め感謝しながら生きなければならないと思う。
その反面、勿論平和で有難いんだけど、実際問題として生きていくのはいつの世も大変だとため息をつきたくなる自分がいる。

○宮沢りえが素敵。
相変わらず痩せていて、それが映画の中の痛々しい主人公にマッチしていた。
美人が方言を喋っているのって、いいなぁ( ´ー`)
原田芳雄のお父さんも素敵。
日常が丁寧に描かれていて、当時の暮らしぶりが窺える。
大きなすり鉢や味噌の甕、菜っ切り包丁が愛おしい。
女の一人暮らしでも、当時は普通にあったのかな?それとも、家族を失う前から使っていたという設定なのか?


劇場入り口に、千羽鶴を折ってくださいというメッセージと折り紙が用意されていた。
1羽折ってきた。折り紙なんて久しぶりにした。


あらすじは、私の文章特訓(?)として、‘続き’に書いておきます。


舞台は、原爆が落ちて3年目の広島。
原爆で生き残ってしまった事、父を残して逃げたことに負い目を感じ、
幸せになってはいけないとひっそりと生きている美津江。
原爆によって、一人娘を残して逝った父の幽霊。
原爆の焼け野原を歩き、高熱で表面が溶け衝撃で立った棘がそのまま固まっている原爆瓦に衝撃を受け、原爆資料の収集をする木下。
登場人物はこの3人。

市立図書館で司書をする美津江の元を、原爆資料を探す木下が訪れた。
木下を見た美津江のトキメキが、ため息が、死んだ父を幽霊として蘇らせた。
木下もまた、美津江を好いていて、図書館に日参するようになる。
しかし、美津江は自分は幸せになっては行けないと、木下を受け入れることが出来ない。
父としてはせっかく生き残った娘に幸せになって欲しい。
何故幸せになってはいけないと思うようになったか、美津江は、普段記憶の底に沈めている原爆投下直後の体験を父にぶつける。父に語り、木下の集める原爆資料を見て、当時の記憶が鮮明になる中、家屋の下敷きになった瀕死の父を置いて逃げた自分はやはり幸せになってはいけないと更に苦しむ。
父は叱咤激励し、美津江の心を開かせようする。
みんなが死んでいく中、生き残ったお前はしなければならない事がある。
お前がやらないなら、お前の子や孫に託すのだと。

bisuco13 at 01:24│Comments(13)TrackBack(6)映画 

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1. 『父と暮らせば』  [ 京の昼寝〜♪ ]   2004年10月06日 08:40
■監督  黒木和雄(原作 井上ひさし) ■キャスト 宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信 ■物語   「原爆」で自分だけが生き残り、幸せになることを否定しながら生きる娘を、亡くなった父があらゆる方法で娘の閉ざされた心を開いていく。 おススメ度⇒★★★★★(5★満点、
2. 父と暮らせば  [ 2アウト満塁! ]   2004年10月06日 09:38
井上ひさし原作の映画「父と暮らせば」 を観ました 愛する父を原爆で亡くした娘と、その娘がある青年に好意を寄せている事を知り 亡霊となって現れ、なんとか幸せになって欲しいと応援する父 娘は戦火から父を救い出す事が出来ず見殺しにしてしまったと言う罪の意識から 自
3. 父と暮らせば  [ MA&CO. ]   2004年10月06日 15:03
『地球で最後のふたり』で浅野忠信さんにグッと来てなかったら、この映画を岩波ホールまで観に行かなかったかもしれない。でも観てよかった。いや観るべき映画だった。ヒロシマもナガサキも現実で、その上にしかいまの私はいないということを再認識するべきときだと思う。
4. 祈りをこめて  [ 京の昼寝〜♪ ]   2005年02月12日 11:25
昨年の僕が観た映画の中で邦画のベスト1に上げた作品『父と暮らせば』。 この映画の監督である黒木和雄氏(74)が、10日、広島市中区・平和記念公園に立つ「原爆の子の像」を訪れ、上映館の一つ、岩波ホール(東京)に観客から寄せられていた約8万8000羽の折り鶴をさ
5. 父と暮せば 今年の169本目  [ 猫姫じゃ ]   2005年08月14日 05:54
父と暮せば   あたしは、宮沢りえ、好き。貫禄さえ漂わせる、大女優への道まっしぐら! ぁ、貴乃花は、嫌いね。   原爆被弾3年後の、娘と父のお話。 例によって、井上ひさし原作だとか、舞台があったとか、全然知りません。 しかし、なんにも知らずに見る
6. 父と暮らせば(DVD)   [ ひるめし。 ]   2005年09月11日 17:10
おとったん、ありがとうございました。 CAST:宮沢りえ/原田芳雄/浅野忠信    どうやら、原田芳雄は幽霊役らしい。一瞬ファンタジー!?って思ってしまった・・・。 そしてほとんど、というか全て宮沢りえと原田芳雄の二人芝居。 台詞の量がすごく多くてしかも広島弁。...

この記事へのコメント

1. Posted by cyaz   2004年10月06日 08:39
TBありがとうございました。

非常に丁寧なコメントを残されていますね?
観ていない人にもその情景とメッセージが感じ取れる感想だと思います。

僕も『おばあちゃんの家』以来の岩波ホールでした。
映画を観る環境としての岩波ホールは別として、上質の素材を提供して
くれるという意味では最高のシアターですね^^
2. Posted by yocco   2004年10月06日 09:37
TBありがとうございました
『父と暮せば』のこと、きめ細かい感想ですね
どこのブログを訪ねてみても、この映画の感想にはそれぞれ
皆さんの愛情を感じるのは私だけではないような気がします
こちらからもTBさせていただきますね
3. Posted by ビス子   2004年10月06日 13:57
コメント有難うございます。

>cyazさん
岩波ホール、ひざ掛けの貸し出しをしていて吃驚しましたヽ(^▽^)

>yoccoさん
そうですね、他の映画だと面白かったの一言だったりするのに、『父と暮せば』に関しては皆さん長い感想を書いていますね。
4. Posted by てんとうむ7   2004年10月06日 14:55
トラックバックありがとうございました。
このシステム自体よく理解していないのですが・・

折鶴私も折りました。
数枚持って帰って、みんなで折って郵送したんですが、
改めて折ってみると、折り方を知らない人がいたり、
自分自身忘れている部分がありました(笑)

ほんとうにいい映画だったと思います。
5. Posted by marsha   2004年10月06日 15:00
TBありがとうございます。

いい映画ですね。
折鶴折ってこなかったのが心残りです。
郵送できたとは、知らなかった。

トラバしますね。
6. Posted by なずな   2004年10月06日 21:34
シネツインでロングラン予定でかまえている「父と暮らせば」
りえちゃん最高!!りえちゃんのきれいな昔の広島弁と、彼女の美しさに惹かれました。

こまつ座の舞台でのこの作品も見たくなりました。
被爆三世の私としては、主人公と少し重なる経験をしたこともあり、かなり感情移入してしまった。
核兵器・平和・PTSD・女性としての問題・占領時の情報・・・・
いつもの映画と違って、現実に半分頭を置きながら見ていたら、おいおい涙が出ても来ず。
7. Posted by いね   2004年10月07日 00:46
うちのような記事にトラバいただき、ありがとうございました。
結構こきおろして書いてたのに(-_-;)

映画よりむしろ、舞台で観て役者さんの息づかいを直に感じたい作品だと思いました。
8. Posted by moggy   2004年10月07日 00:51
ギンレイホール、子供の頃〜若い頃、よく通ったものだす。

宮沢りえを大昔、見かけたんだが、隣に後藤久美子がいて、二人とも恐ろしいほどに「ビジン」だったよ〜。オーラに圧倒されました。
9. Posted by Yミオ   2004年10月07日 01:37
トラックバックありがとうございました。
いい映画でしたね。良い悪いの基準はたくさんあるかもしれないけど、戦争は悲しいことなんだっていうすごくシンプルなことに気づきました。
丁寧に解説されてるのを読んで、いろいろ思い出しました。
10. Posted by ビス子   2004年10月07日 09:49
>てんとうむ7さん
TBしてみたものの、私もシステムがいまいち分かってないです(^^;;
“あなたのブログ読みましたよ!私も同じ話題を書いてます”という挨拶みたいなものかな?と捕らえてます。
鶴。私ももう少し折ってみようかと思います。

>marshaさん
鶴、郵送する気があれば、情報upしたのでご覧下さい。

>なずなさん
そうですね。いろいろと情報が詰め込まれていて、考えてしまいますね。
原爆資料をおおっぴらに扱えない占領下の状況とか、宮沢りえは一人で暮らしているが安全なの?とか。
そういう意味でも楽しめました。

>いねさん
たしかに、舞台も迫力ありそうですね。
映画として形になっているのと、舞台で誰かが演じ続けるのと、どちらが後世まで残るのかななど観ながら考えてしまいました。

>moggyさん
ギンレイ貧乏人にとってはとても有難い存在(笑
お金を正規で払って映画観るのは久しぶりでした!
ゴクミって今何やっているんだろ?不思議の国のアリスが懐かしい。

>Yミオさん
映画として楽しめ、そこに戦争はいけないというメッセージが煩くなく入っているのが素敵ですね。
11. Posted by reika   2004年10月08日 19:39
TBいただき、どうもありがとうございます。
初めて行った岩波ホールでしたが、映画の雰囲気とマッチしている感じがして、またあんなずっしり静かな映画を観に行きたいな、と思いました。
12. Posted by cony   2004年10月11日 16:43
TBいただき ありがとうございました。
Anyoneさんの とても丁寧なコメントに
再び 映画の端々思い返すことができました。
振り返るには重いテーマだった為 
無意識に余韻を封印していた気がします。
気づかせてくれて ありがとう。
13. Posted by batako   2006年03月02日 16:03
初めまして。

本当に、「死んだ人の分まで」なんて言葉は、
客観的に見た人間の勝手な言い分なのかもしれないですね。

「男たちのYAMATO」の中でも、亡くなった戦友の母親に、
生き残った兵士が挨拶に行ったら、「なぜお前は生きているんだ」
と怒られるシーンがありましが、きっと経験した人にしか
わからないことなんでしょうね。

そんな方たちが、この日本にまだいらっしゃると思うと、
胸が痛みます。

宮沢りえのいじらしい演技と、監督の技量が光る
とても素晴らしい作品でした。

TBさせて頂きます!

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