今回は登山というか、藪漕ぎというかの話です。
タイトルの白見山、長者森、土坂峠は、岩手県宮古市と上閉伊郡大槌町の境に位置しています。これらは知っている人がある程度はいると思いますが、戸沢、さらには小鎚山はほとんどの人が知らないと思います。戸沢は大槌町金沢地区の地名であり、小鎚山は同町にある標高956mの山です。
今回、と言ってももう1ヶ月程も前のことですが、タイトルの順に踏破してみたいと思い、実行しました。
コース概要は、戸沢地区から沢沿いの林道を進んだ後、小鎚山から流れ出す支流を登り詰め、小鎚山から白見山までは尾根筋歩き。白見山から長者森を経て土坂峠までは登山道を辿って、県道26号を戸沢地区まで下る、というものです。
そのコース上で未踏である小鎚山付近から白見山にかけて地図を観たり先人の記録を探したりしましたが、小鎚山に登頂した記録はあかりんさんのものしか見つけられませんでした。あかりんさんが辿った経路は私とは違い東側の尾根筋のピストンでしたし、小鎚山から白見山までの情報はまったく見つけられず、その付近の植生や山様は地図から読める情報しかありませんでした。
今年の4月に土坂峠から白見山樺坂峠側登山口までを往復したときは、まだ豊富な残雪に笹藪も半ば埋もれていてあまり苦にならなかったということもあって、なんとかなるだろう、とあまり真剣に考えませんでした。もし本当になんともならなそうなら引き返せばいいと思いました。
標高約300mの戸沢地区に車を停めて、6:45スタートです。
戸沢地区の県道26号線から南南東方向、谷間の最奥に見える尾根は、左奥にある白見山から北側に伸びている尾根です。右手に下っていけば、鞍部の新田牧場最上部を経て長者森→土坂峠と辿れる今回の帰路です。以前からあの尾根はどこの奥山だろう、と思っていましたが、あの牧野の裏手だったとは意外でした。
今回まず目指す小鎚山は、左奥の白見山の手前側に位置しますが、やはり山陰で見えません。
ウエストの右には鉈、左には初めて持ち出したカウンターアソールト(熊撃退スプレー)を装着しました。暴発を避けるために装着する向きにも気を遣います。願わくばどっちも使わずに済みたいものです。
一瞬、牛?と思いましたが、御姉様方でした。こういう方々が日本の農村を、そしてこの国の根幹を支えてきたのだと思います。こちらの顔は見えなそうでしたが、一礼してすれ違いました。
戸沢集落の外れ付近の進路左側の、小鎚山から北のち北東に伸びている尾根。最奥の尾根が標高約810mです。小鎚山はあの辺りから1.5kmほど右側です。
いつも先に気付かれる鹿ですが、今回は先に気付きました。でも直後、些細な踏み音でこちらに振り向きました。この後林道歩きでは2頭見ましたが、いずれも単独雄でした。
橋の上から。渓流魚の産卵床が二つ見えます。ここまで来るうちにいくつか魚の姿が見えましたが、イワナも既に産卵は済んでいるようでした。
早速出たか!と思いましたが、農林業用シートのようです。
おそらく、2ヶ月前の豪雨の爪痕。他にも土砂流出や路盤欠損がいくつかありました。この奥に人家や田畑はありません。直すのか、直さないのか。
人家や田畑は無くても、この先に私の知る限り二つの人工構造物があります。その建設工事で使ったモノかなと。今では見ないようなタイヤです。そしてこの木の運命は……。
これは、どう考えてもスパイク跡だろう?、と。こんな辺境の無名に近い山中に、誰がスパイク履いてくる? キノコ? 山菜? 猟師? 森林管理署? 物好きな登山者は他にいそうもないけど?
スパイク跡はこれをした人達かなと。森林管理署の仕事でしょうか? この先の構造物はあってもなくても意味が無い物だと思うし、さっき挙げたさまざまな人達も、実際ここにはほとんど来ていないと思います。一度造った物は管理を続けてお金を流し続ける、ということでしょうか。そのお金、我々から集めているものなんですけどね。
こんなモノが落ちていました。かなり古い。にしても、聞いたこともないブランド。ペプシコ?コーヒー出してたんだ。とにかく、捨てるな!と。
7:56、林道歩きの終点に着きました。林道はまだ先がありますが、ここからはこの細流を小鎚山山頂付近まで登り詰めます。ここで標高約520m、山頂までは標高差440mほどです。この区間の植生・山様が最も不安です。
8:05、沢登り開始です。
少し登ったところで作業道が現れ、その先に杉の植林地がありました。また産業廃棄物不法投棄発見。施主、請け負いはどこでしょうか。
やがて、沢の水も無くなり、
露岩も消えました。
数十歩ごとに立ち止まり、呼吸を整え脚の疲労を回復させてはまた登り、を繰り返します。
しばらくは細い木々ばかりだったけれど、やっとミズナラの大木が現れました。
更に進むと、ようやく尾根の先の空が見えてきました。振り返ると、
スタート地点から最奥に見えた尾根が見えます。右側のピークは長者森1010mです。あの辺りには順調に行けば3時間後位でしょうか。
8:55、ようやく尾根に上がりました。やはりというか、はっきりとした鹿道があります。
天気予報どおりかなり強い風が吹いています。
ここから少し北に行った辺りから、東北東に枝分かれしたよく目立つ尾根が伸びています。そのこちら側、南側の谷は大槌川支流の安瀬ノ沢の源頭部で、その南側のこれまた大きな尾根の向こう側は、小鎚川支流の房間沢です。辺境のほとんど誰も知らない山川ですが、見下ろすその景色はダイナミックです。が、木立が邪魔で画像に納めるとただのなんだか見辛い風景にしか見えませんのでここには上げません。
今居る尾根筋の最高地点が小鎚山956mなので、高みを目指して南に進みます。
この付近が山頂のようです。9:15でした。あかりんさんも言っていましたが、プレート的な物は見当たりません。
これから向かう白見山はガスの中です。長者森は見えています。1100m位から上が隠れているようです。南に見える新山の風車がこの強風でブンブンと音を立てているかのように回っていましたが、それも綺麗には写せませんでした。
やがて、ブナの大木が目立ってきました。原生林だとは思うのですが、そんなに大木は多くはないです。尾根筋では風でやられてしまうのでしょうか。
少し進むと、樹間に黒いものが見えました。
洞だ……。やつが入るにはまだ早いはずだけど。静かに、見極めながら近づいていきます。
穴の径はかなり大きいです。クマが入るにはおあつらえ向きでしょう。
ここまで近づいて何もないということは、たぶん入ってはいないのでしょう。もし入っているなら、もうヤバい形での遭遇になります。もし、この距離でダッシュで向かって来られたら、両腰の対策グッズでスムーズに対応できるのか? かなり気構えているか、あるいは戦場の兵士のように訓練されていないと躊躇してしまい、後は………そんな気がします。
大きなトチノキの腰の辺りの高さでした。内部は空っぽでした。降雪は穴に届く位にはあるはずですが、どのくらい積もるかは不明です。東向きなので吹き込みは少ないと思われます。幹にはやはり爪痕がありました。春の暖かい日差しの中、子熊に登って遊ばせるにはちょうど良いように見えます。
この辺りから緩やかに登りになっていきます。やがて傾斜がややきつくなり汗ばんできたので、さっき着足した服を脱ぎました。
そして、徐々にそれまで気にならなかった笹が濃く深くなってきます。やがて、背の高さを遥かに越えて、指の太さに迫るようなのが密に生えるようになってきました。
こうなるともう、手で掻き分けて進むのはかなり困難で、途方にくれてしまいます。左右どちらかにルートを取り直すと幾分ましになることがあるので、少し引き返してから前方に目をやりますが、笹の丈が高過ぎて左右どちらが進みやすそうかが見えません。俯瞰しようにも登るに適した木もそうそうはなく。木の根元付近はやや薄いんじゃないかと予想していくらか木が見える右手に進んでみると、とりあえずさっきよりはましな感じなので分け入っていきます。
1123m峰までくれば、傾斜は緩くなり、やがて白見山山頂付近かそこへの登山道に出るはずなので、スマホの高度計で現在位置を時おり確認しながら進みます。
そんなことを30分ほども続けていると、不意に開けた空間に体が躍り出ました。瞬時には気づきませんでした。登山道でした。
あとは半年前にも辿ったこの道を左手にどんどん進めばいいだけです。半年前よりも繁っている笹を払いつつ進んでいくと、あっ………。
誰だ!?こんなとこに服なんか捨ててくのは!少し違和感を感じましたが、暑くて邪魔になったのか?と思いました。
そこからほどなく、
着いた〜〜〜!10:50でした。
プレートは半年前のままですが、あのときは残雪に押さえ付けられていた笹が繁栄具合を主張しています。プラス、ガスが残っていることもありまるっきり景観は望めません。しかたないです。それが白見山です。
なわけで、写真を何枚か撮って、10:56下山開始です。
すぐに赤トレーナー放棄ポイントに着き、回収していくことにします。袋に詰め込みながら様子を観ていくと、いくらかは汚れていますがそんなに古くないようです。裾の辺りに目立つほつれというか穴があります。獣に引きちぎられたか?
あっ!クマに出会ってしまったときに、相手の注意を引き付けるために何か身に付けていたものを投げ捨てて、その隙に逃げてくる、という方法を聞いたことがあります。もしかしてそれか?と。両脇を密な笹藪に囲まれたここで、誰かがクマの恐怖と対峙したとしたら………鬼気迫る状況が想像されます。というか、今日は出ないでほしいんだけど。
クマの気配に気を張りながらも、その後はすいすい進みました。
11:00、石碑。
早池峰山と薬師岳。
立丸峠に繋がる1139m峰。
ついさっきまで笹藪に四苦八苦していた、1123m峰。
高滝森辺りから鳥古森辺り?
11:24、新田牧場南側。
新田牧場から右手、東側の斜面を下りると戸沢に行き着きます。歩いてみたいし、下りだからなんとかなるかな?と思い、牧野から踏み出して斜面を覗き込むと、濃い笹藪。無しです。
遠くの尾根の左から、1001m峰、オーヅ岳1029m、天狗森998m。オーヅ岳は積雪期しか登れない凄い笹藪と聞いています。国土地理院の方が地元の方に、あの山の名は?と聞いたところ、大きなジダケが採れる山ということでオーヅダケ山と答えたことから、転じてこの名になった、と複数のどなたかのブログにありました。ホントかな〜?
牧野から戸沢に斜面を下りたかったのは、実はここから長者森までの登りとそれを含めた全行程の長さが少し億劫に感じたのもありました。でも笹藪よりはぜんぜんマシ。行くと決まればスタスタ行きます。ここは頑張ればノーストップで行けるので、限界を感じながら進みます。
11:54、長者森。設置者と時期が違う三角点だそうです。おそらくはいずれも明治期のものだそう。やっちゃんさんのブログに書いてありました。因みに白見山の三角点も、ピーク北側の石碑も明治期のものだそうです。
12:30に土坂峠に到着です。
因みに、白見山からの道中で新旧3つのクマの糞を見つけました。
鉈とカウンターアソールトをリュックにしまって、あとはのんびりと県道を下っていきます。
峠から下りはじめてわりとすぐの景色。
左からの尾根は妙沢山1139mからの尾根。右からのはさっき通った小鎚山から。最奥の山々は大槌町と山田町の境の山々で、右側にまとまって、端から小鯨山458m、石坂森573m、鯨山610m、それからずうっと来て、山母森806m、鳥古森850m辺りまで見えているんだと思うけれど、地図と照らし合わせても確信まではいけません。
少し下って大きなヘアピンを過ぎての景色。
画像の中央奥、前から気になっていたあの山は、やはり長者森のようです。白見山はもっとずっと先ですね。と言っても長者森から健脚で歩きやすい状況なら1時間ほどで着きます。つい2時間ほど前までその奥地に居て、そこからただ歩くことでここまで至っていることに満足感を感じます。でも、時おり想いを馳せる古の人々は、もっとずっと健脚だったことでしょう。
さらに下って。画像右端から1/3位のところでぽつりと出っぱっているのが、小鎚山のようです。あそこにいたんだと思うと感慨深い。
最奥集落の大貫台地区まで来ると、
枳(カラタチ)の木。なかなか見なくなりました。
終点ととるか、始点ととるか。
14:15、車に到着しました。予報では持つはずだった空模様でしたが、到着の少し前からぱらつき始めました。
着替えた後、
朝と同じ風景を納めて帰路に就きました。
タイトルの白見山、長者森、土坂峠は、岩手県宮古市と上閉伊郡大槌町の境に位置しています。これらは知っている人がある程度はいると思いますが、戸沢、さらには小鎚山はほとんどの人が知らないと思います。戸沢は大槌町金沢地区の地名であり、小鎚山は同町にある標高956mの山です。
今回、と言ってももう1ヶ月程も前のことですが、タイトルの順に踏破してみたいと思い、実行しました。
コース概要は、戸沢地区から沢沿いの林道を進んだ後、小鎚山から流れ出す支流を登り詰め、小鎚山から白見山までは尾根筋歩き。白見山から長者森を経て土坂峠までは登山道を辿って、県道26号を戸沢地区まで下る、というものです。
そのコース上で未踏である小鎚山付近から白見山にかけて地図を観たり先人の記録を探したりしましたが、小鎚山に登頂した記録はあかりんさんのものしか見つけられませんでした。あかりんさんが辿った経路は私とは違い東側の尾根筋のピストンでしたし、小鎚山から白見山までの情報はまったく見つけられず、その付近の植生や山様は地図から読める情報しかありませんでした。
今年の4月に土坂峠から白見山樺坂峠側登山口までを往復したときは、まだ豊富な残雪に笹藪も半ば埋もれていてあまり苦にならなかったということもあって、なんとかなるだろう、とあまり真剣に考えませんでした。もし本当になんともならなそうなら引き返せばいいと思いました。
標高約300mの戸沢地区に車を停めて、6:45スタートです。
戸沢地区の県道26号線から南南東方向、谷間の最奥に見える尾根は、左奥にある白見山から北側に伸びている尾根です。右手に下っていけば、鞍部の新田牧場最上部を経て長者森→土坂峠と辿れる今回の帰路です。以前からあの尾根はどこの奥山だろう、と思っていましたが、あの牧野の裏手だったとは意外でした。
今回まず目指す小鎚山は、左奥の白見山の手前側に位置しますが、やはり山陰で見えません。
ウエストの右には鉈、左には初めて持ち出したカウンターアソールト(熊撃退スプレー)を装着しました。暴発を避けるために装着する向きにも気を遣います。願わくばどっちも使わずに済みたいものです。
一瞬、牛?と思いましたが、御姉様方でした。こういう方々が日本の農村を、そしてこの国の根幹を支えてきたのだと思います。こちらの顔は見えなそうでしたが、一礼してすれ違いました。
戸沢集落の外れ付近の進路左側の、小鎚山から北のち北東に伸びている尾根。最奥の尾根が標高約810mです。小鎚山はあの辺りから1.5kmほど右側です。
いつも先に気付かれる鹿ですが、今回は先に気付きました。でも直後、些細な踏み音でこちらに振り向きました。この後林道歩きでは2頭見ましたが、いずれも単独雄でした。
橋の上から。渓流魚の産卵床が二つ見えます。ここまで来るうちにいくつか魚の姿が見えましたが、イワナも既に産卵は済んでいるようでした。
早速出たか!と思いましたが、農林業用シートのようです。
おそらく、2ヶ月前の豪雨の爪痕。他にも土砂流出や路盤欠損がいくつかありました。この奥に人家や田畑はありません。直すのか、直さないのか。
人家や田畑は無くても、この先に私の知る限り二つの人工構造物があります。その建設工事で使ったモノかなと。今では見ないようなタイヤです。そしてこの木の運命は……。
これは、どう考えてもスパイク跡だろう?、と。こんな辺境の無名に近い山中に、誰がスパイク履いてくる? キノコ? 山菜? 猟師? 森林管理署? 物好きな登山者は他にいそうもないけど?
スパイク跡はこれをした人達かなと。森林管理署の仕事でしょうか? この先の構造物はあってもなくても意味が無い物だと思うし、さっき挙げたさまざまな人達も、実際ここにはほとんど来ていないと思います。一度造った物は管理を続けてお金を流し続ける、ということでしょうか。そのお金、我々から集めているものなんですけどね。
こんなモノが落ちていました。かなり古い。にしても、聞いたこともないブランド。ペプシコ?コーヒー出してたんだ。とにかく、捨てるな!と。
7:56、林道歩きの終点に着きました。林道はまだ先がありますが、ここからはこの細流を小鎚山山頂付近まで登り詰めます。ここで標高約520m、山頂までは標高差440mほどです。この区間の植生・山様が最も不安です。
8:05、沢登り開始です。
少し登ったところで作業道が現れ、その先に杉の植林地がありました。また産業廃棄物不法投棄発見。施主、請け負いはどこでしょうか。
やがて、沢の水も無くなり、
露岩も消えました。
数十歩ごとに立ち止まり、呼吸を整え脚の疲労を回復させてはまた登り、を繰り返します。
しばらくは細い木々ばかりだったけれど、やっとミズナラの大木が現れました。
更に進むと、ようやく尾根の先の空が見えてきました。振り返ると、
スタート地点から最奥に見えた尾根が見えます。右側のピークは長者森1010mです。あの辺りには順調に行けば3時間後位でしょうか。
8:55、ようやく尾根に上がりました。やはりというか、はっきりとした鹿道があります。
天気予報どおりかなり強い風が吹いています。
ここから少し北に行った辺りから、東北東に枝分かれしたよく目立つ尾根が伸びています。そのこちら側、南側の谷は大槌川支流の安瀬ノ沢の源頭部で、その南側のこれまた大きな尾根の向こう側は、小鎚川支流の房間沢です。辺境のほとんど誰も知らない山川ですが、見下ろすその景色はダイナミックです。が、木立が邪魔で画像に納めるとただのなんだか見辛い風景にしか見えませんのでここには上げません。
今居る尾根筋の最高地点が小鎚山956mなので、高みを目指して南に進みます。
この付近が山頂のようです。9:15でした。あかりんさんも言っていましたが、プレート的な物は見当たりません。
これから向かう白見山はガスの中です。長者森は見えています。1100m位から上が隠れているようです。南に見える新山の風車がこの強風でブンブンと音を立てているかのように回っていましたが、それも綺麗には写せませんでした。
やがて、ブナの大木が目立ってきました。原生林だとは思うのですが、そんなに大木は多くはないです。尾根筋では風でやられてしまうのでしょうか。
少し進むと、樹間に黒いものが見えました。
洞だ……。やつが入るにはまだ早いはずだけど。静かに、見極めながら近づいていきます。
穴の径はかなり大きいです。クマが入るにはおあつらえ向きでしょう。
ここまで近づいて何もないということは、たぶん入ってはいないのでしょう。もし入っているなら、もうヤバい形での遭遇になります。もし、この距離でダッシュで向かって来られたら、両腰の対策グッズでスムーズに対応できるのか? かなり気構えているか、あるいは戦場の兵士のように訓練されていないと躊躇してしまい、後は………そんな気がします。
大きなトチノキの腰の辺りの高さでした。内部は空っぽでした。降雪は穴に届く位にはあるはずですが、どのくらい積もるかは不明です。東向きなので吹き込みは少ないと思われます。幹にはやはり爪痕がありました。春の暖かい日差しの中、子熊に登って遊ばせるにはちょうど良いように見えます。
この辺りから緩やかに登りになっていきます。やがて傾斜がややきつくなり汗ばんできたので、さっき着足した服を脱ぎました。
そして、徐々にそれまで気にならなかった笹が濃く深くなってきます。やがて、背の高さを遥かに越えて、指の太さに迫るようなのが密に生えるようになってきました。
こうなるともう、手で掻き分けて進むのはかなり困難で、途方にくれてしまいます。左右どちらかにルートを取り直すと幾分ましになることがあるので、少し引き返してから前方に目をやりますが、笹の丈が高過ぎて左右どちらが進みやすそうかが見えません。俯瞰しようにも登るに適した木もそうそうはなく。木の根元付近はやや薄いんじゃないかと予想していくらか木が見える右手に進んでみると、とりあえずさっきよりはましな感じなので分け入っていきます。
1123m峰までくれば、傾斜は緩くなり、やがて白見山山頂付近かそこへの登山道に出るはずなので、スマホの高度計で現在位置を時おり確認しながら進みます。
そんなことを30分ほども続けていると、不意に開けた空間に体が躍り出ました。瞬時には気づきませんでした。登山道でした。
あとは半年前にも辿ったこの道を左手にどんどん進めばいいだけです。半年前よりも繁っている笹を払いつつ進んでいくと、あっ………。
誰だ!?こんなとこに服なんか捨ててくのは!少し違和感を感じましたが、暑くて邪魔になったのか?と思いました。
そこからほどなく、
着いた〜〜〜!10:50でした。
プレートは半年前のままですが、あのときは残雪に押さえ付けられていた笹が繁栄具合を主張しています。プラス、ガスが残っていることもありまるっきり景観は望めません。しかたないです。それが白見山です。
なわけで、写真を何枚か撮って、10:56下山開始です。
すぐに赤トレーナー放棄ポイントに着き、回収していくことにします。袋に詰め込みながら様子を観ていくと、いくらかは汚れていますがそんなに古くないようです。裾の辺りに目立つほつれというか穴があります。獣に引きちぎられたか?
あっ!クマに出会ってしまったときに、相手の注意を引き付けるために何か身に付けていたものを投げ捨てて、その隙に逃げてくる、という方法を聞いたことがあります。もしかしてそれか?と。両脇を密な笹藪に囲まれたここで、誰かがクマの恐怖と対峙したとしたら………鬼気迫る状況が想像されます。というか、今日は出ないでほしいんだけど。
クマの気配に気を張りながらも、その後はすいすい進みました。
11:00、石碑。
早池峰山と薬師岳。
立丸峠に繋がる1139m峰。
ついさっきまで笹藪に四苦八苦していた、1123m峰。
高滝森辺りから鳥古森辺り?
11:24、新田牧場南側。
新田牧場から右手、東側の斜面を下りると戸沢に行き着きます。歩いてみたいし、下りだからなんとかなるかな?と思い、牧野から踏み出して斜面を覗き込むと、濃い笹藪。無しです。
遠くの尾根の左から、1001m峰、オーヅ岳1029m、天狗森998m。オーヅ岳は積雪期しか登れない凄い笹藪と聞いています。国土地理院の方が地元の方に、あの山の名は?と聞いたところ、大きなジダケが採れる山ということでオーヅダケ山と答えたことから、転じてこの名になった、と複数のどなたかのブログにありました。ホントかな〜?
牧野から戸沢に斜面を下りたかったのは、実はここから長者森までの登りとそれを含めた全行程の長さが少し億劫に感じたのもありました。でも笹藪よりはぜんぜんマシ。行くと決まればスタスタ行きます。ここは頑張ればノーストップで行けるので、限界を感じながら進みます。
11:54、長者森。設置者と時期が違う三角点だそうです。おそらくはいずれも明治期のものだそう。やっちゃんさんのブログに書いてありました。因みに白見山の三角点も、ピーク北側の石碑も明治期のものだそうです。
12:30に土坂峠に到着です。
因みに、白見山からの道中で新旧3つのクマの糞を見つけました。
鉈とカウンターアソールトをリュックにしまって、あとはのんびりと県道を下っていきます。
峠から下りはじめてわりとすぐの景色。
左からの尾根は妙沢山1139mからの尾根。右からのはさっき通った小鎚山から。最奥の山々は大槌町と山田町の境の山々で、右側にまとまって、端から小鯨山458m、石坂森573m、鯨山610m、それからずうっと来て、山母森806m、鳥古森850m辺りまで見えているんだと思うけれど、地図と照らし合わせても確信まではいけません。
少し下って大きなヘアピンを過ぎての景色。
画像の中央奥、前から気になっていたあの山は、やはり長者森のようです。白見山はもっとずっと先ですね。と言っても長者森から健脚で歩きやすい状況なら1時間ほどで着きます。つい2時間ほど前までその奥地に居て、そこからただ歩くことでここまで至っていることに満足感を感じます。でも、時おり想いを馳せる古の人々は、もっとずっと健脚だったことでしょう。
さらに下って。画像右端から1/3位のところでぽつりと出っぱっているのが、小鎚山のようです。あそこにいたんだと思うと感慨深い。
最奥集落の大貫台地区まで来ると、
枳(カラタチ)の木。なかなか見なくなりました。
終点ととるか、始点ととるか。
14:15、車に到着しました。予報では持つはずだった空模様でしたが、到着の少し前からぱらつき始めました。
着替えた後、
朝と同じ風景を納めて帰路に就きました。