2012年01月

2012年01月17日

スウェーデンの教育と戸塚ヨットスクール

これも昨年末のこと。

スウェーデンのブレーキンゲ工科大学へ留学中の牧原ゆりえさんのお話を伺う機会があった。彼女は、国際基督教大学を卒業してから、公認会計士となり監査法人に勤務していたが、思い描いていた理想との違いを感じ、結婚・妊娠を機に退社。出産後の2年前に、環境問題への関心が強くなり、自然が豊かで、楽しく子育てできそうな場所として、スウェーデンにわたった方だ(HPプロフィールより)。

東京でも講演会をやったからそちらに参加した人もいたかもしれない。

彼女の用意したスライドに映し出された、スウェーデンの教育のキーワードは4つ。

(1)我慢をしない
(2)自分で決める
(3)学びたいときに学ぶ、学びたいことを学ぶ
(4)ゆっくりとよく聞く

いきなり、「我慢をしない」と聞いてびっくりするかもしれない。日本の伝統的教育は我慢させるところから始まるからだ。しかし、「我慢をしない」というのは決して自分勝手ということではない。逆説的であるが、我慢をしないということは、我慢をさせない社会ということであり、結局はそれぞれが尊重される協調的社会の形成に資するのである。

「自分で決める」というのは、自己決定権のこと。期せずして牧原さんが持ち出したのはやはりスウェーデンの医療のこと。医者は治療方針について徹底的に説明をし、「もうわかったから先生決めて」というと「それは出来ない。あなた自身のことであるから。」と言われると。

15年以上も前のカナダで、「インフォームド・コンセントはもう古いのよ。これからはインフォームド・チョイス」と産前学級の看護士に言われて分厚い資料を渡されたことを思い出した。

医療だけでなく、科学技術の選択についても同様のことが求められるはずなのに、原子力村の住人たちは素人には判るまいと高を括り、事実を隠蔽し続けてきたのとは、対極にある。

市民社会の形成の要諦は結局こんなところにある。つまり実はスウェーデンだけが特殊なのではなく、多くの(真の意味での)先進国ではこれらの教育原則は極めて標準的なものとも言える。

「学びたい時に学ぶ。学びたいことを学ぶ。」もしかり。遠山啓も同じようなことを言っていた。

戸塚ヨットスクールでは、今年に入ってまた死者を出した。もっとも直近では2009年にも死者を出している。

スクールのHPに載っている動画の中で、戸塚氏は「再現性のあるのが科学である」と言った主旨のことを言っているが、まさに戸塚スクールは死者を出し続けるという意味では、再現性によって立証されている。

戸塚理論については詳しくは知らないが、石原都知事や田母神元幕僚長が「応援団」であるところを見ると、推して知るべしである。とはいえ、光市母子殺害事件を弁護団の側から取材した阿武野氏らが本を出しているようなので、一度じっくり読んでから論評しよう。

しかし気になるのは、「子ども達を直す」という言葉がいとも簡単に使われるのは、どういうことだろう。例えば、不登校の子どもは直されるべき存在なのか。直されなければならないのは、学校や社会の方ではないのか。そんな簡単な視点が彼らからは抜け落ちているように思う。

「我慢をしない etc」というスウェーデンが(少なくとも外から見ると)豊かな社会を形成しているのを見る時に、戸塚ヨットスクールが今なお存在し、原発事故で喘いでいる日本の姿は、必定であるからこそ、残念でならない。


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2012年01月10日

邂逅

年末に、子どもが行きたいと言っている学校の説明会に行ってきた.

中学の校長先生の口から「遠山啓」の名前が飛び出して、懐かしさと嬉しさを感じた.

正直言って、「とうやまひらく」の名前を思い出すことはここ30年ほどなかった.彼の著作を読んだのは、中学生の頃、教育のあり方に疑問を持っていたまさにその渦中であった.

帰宅後さっそく彼が35年前に書いた本「競争原理を超えて」を取り寄せて読んだが、そこには少しも色あせることの無い本質が書かれていた.なぜ、彼の本が、一部の教育関係者のみならず、広く広く読まれないのか.彼の思想が行き渡れば、いまも苦しんでいる多くの子ども達が救われるであろうことを思うと忸怩たる想いである.

内容を想像してもらうために小見出しを並べてみると

「序列は支配者が使う常とう手段」「テストの結果は校門の外に出してはいけない」「独創的な人間が育たない」「クレバーでなくワイズな人間を」「序列主義を追い出し、楽しい学校に」「学びたいときに学ぶ」「学歴は乱世には役だたない」「内申書と生徒管理」「評価とは何か」「『できる』と『わかる』」「進学指導は教師の仕事か」「おだやかであるが、確実な教育を」「教育研究は仲間とともに」「能力に優劣はない」「子どもの側にたつ」「能吏養成学校」など

当たり前のことしか言っていないと思うかもしれないが、果たして彼の提案が実現出来ている学校は少ない.

今日の東京電力や原発村の住人たち、官僚、政治家などをみていると「能吏養成学校」の成れの果てを見るようだし、「学歴は乱世に役だたない」ということがよくわかる.

時間内に解くこと、ショートカットで解くことを求められて育った学歴エリート(揶揄を込めて「能吏たち」)は「想定外」に出会うと忽ち思考停止に陥る.現実を認めることが出来なくて、隠蔽に走る.

時間をかけて寄り道をしてきた子どもは、大抵のことが「想定内」に収まっているし、例え「想定外」の出来事に出くわしたとしても、自立して考えて対処することが出来る.

「創造的な子どもをつくるの簡単である.それは『少なく教えて、多く考えさせる』ことである.だが、この言葉の中身はそれほど簡単ではない.」(遠山啓)

また彼は「進学指導は教師の仕事か」という項で、「教師の本来の義務は、子どもが在学している3月31日までに全ての子どもを賢く丈夫にするような教育に全力を注ぐことである.4月1日からどうなろうと本当のところは知ったことではない」と言い切ることではないかという.もちろん、この時の「賢い」というのは本当の意味で賢い(ワイズ)という意味である.「どうなろうと」というのは、どこの高校に行ったとかいうのは些末なことでしかないということだ.

いま、大学ですら、どこに就職させるかということに教員が腐心しているが、馬鹿げた話である.

そしてそれは親にも言える.「どこの高校(大学あるいは会社)に行ったか」ではなく、本当の意味で、子どもの成長を見守ることが出来るのかということだ。

もう一つ面白かったのは、彼が教育を「術(感性)」「学(悟性)」「観(理性)」の3つに分けて、術が土台となり、学は柱、そして観は屋根に相当するものとしている点である.

脳科学などという言葉が今日もてはやされているが、ヒトを丁寧に観察すればダニエル・ゴールマンが「EQ-心の知能指数」で書いているようなことは、簡単に理解されるということである.

子どもが自ら探してきた学校での遠山啓と「再会」は嬉しい必然であったと思うのである.

biwako_strawbale at 00:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!

2012年01月09日

情報

※相変わらずの更新頻度でありますが、Facebook では時折つぶやいておりますので、ご興味のある方はそちらをご覧ください.

野田首相の危機意識ゼロの「収束宣言」によって、公にされる情報量が大幅に減ってしまった.

なにしろ文部科学省は土日祝日の放射線量の公開を休止するというのだから、危機意識の無さにあきれるしか無い.こういう体質だから、原発事故を招くということが未だに判らないらしい.

実際、1月2日〜3日にかけて、福島市をはじめ各地で高い線量が確認された。1日のM7.0の地震との関連が疑われている.

そして、4号機の状態は相変わらず良くない.昨日の東電の発表で、2系統あるうちの一系統で漏洩.今は残りの系統に頼っている状態.2次系(淡水)ではあるけれどもボロボロの危機的状態であることは間違いない.

※1月8日午後1時頃、4号機使用済燃料プール循環冷却システムにおいて、2次系エアフィンクーラーの定例切替(A系からB系)を実施しようとした際、エアフィンクーラー(B系)の冷却管4箇所から水の漏えいを確認。現在、漏えいした原因を調査中。漏えいした水はろ過水(淡水)*であり、放射性物質は含まれていない。また、漏えいの拡大防止のため、当該のエアフィンクーラーを系統から隔離済。なお、使用済燃料プールの冷却はエアフィンクーラー(A系)を使用しており、冷却には問題なし。

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2012年01月02日

4号機スキマサージタンクの水位低下

強い地震が毎日のように続くなか、昨晩、東電より一部報道関係者に流されたとされるメールがこれ

この内容は現在は東電のHPにも掲載されている.

1時間に9センチという凄まじい早さで水位が低下しているという内容である.使用済み核燃料プールそのものでないのが幸いしているが、同じようなことが核燃料プールで起ったならば、再び溶融や再臨界の危険もある.未だ、危機は脱していないと考え東電任せにするのではなく総力を挙げて対処すべきである.

===東電HPより引用==
※1月1日午後5時30分頃、4号機使用済燃料プールのスキマサージタンク*1の水位が午後2時から午後5時までの3時間で約240mm低下していることを確認(これまでの運転実績では3時間で約50mm程度の低下)。その後、現場確認を行った結果、4号機原子炉建屋外廻りおよび同号機使用済燃料プール代替冷却システムの一次系配管接続部や設置エリア等に、漏えいは確認されなかった。なお、1月1日午後5時現在の4号機使用済燃料プール水の温度は23℃(1月2日午前5時現在22℃)であり、現在も使用済燃料プール代替冷却システムは運転しているため、同プールの冷却に問題はない。また、使用済燃料プールの水位も維持されており問題はないものの、スキマサージタンクの水位低下は継続しているため、1月1日午後10時27分から同日午後11時13分にかけてスキマサージタンクの水張りを実施。現在のスキマサージタンク水位低下は1時間あたり約90mmで継続中であり、スキマサージタンクの水位確認を3時間に1回から1時間に1回に強化する等の監視強化を継続するとともに、使用済燃料プールから原子炉ウェル*2への水の流れ込みの可能性等を踏まえ、現場確認を行うなど、引き続き水位低下の原因について調査を行う。
 なお、現時点では建屋外への漏えいは確認されておらず、建屋内の滞留水の水位にも顕著な変化は確認されていない。

 *1 使用済燃料プールからオーバーフローした水を受けるため設置されているタンク。使用済燃料プールの水は、通常、燃料集合体の冷却および水の不純物を取り除くため、スキマサージタンクへオーバーフローさせ、熱交換器およびフィルタを通した後、再び使用済燃料プールへ戻している。

 *2 原子炉ウェルは、原子炉圧力容器および原子炉格納容器の蓋を収納している空間で、定期検査中はこの空間を満水状態にし、燃料交換などを行う。

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さらにその後のプレスリリースでは水位の低下は今日の4時現在では止まっているとのこと.

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その後の調査により、スキマサージタンクの水位低下に相当する減少量と原子炉ウェル*2の水位上昇に相当する増加量がほぼ同等であること、および原子炉ウェル水位が使用済燃料プール水位より低いことを確認。これらのことから、1月1日午後2時30分頃に発生した地震の影響で原子炉ウェルと使用済燃料プール間のゲートの隙間の状態が変化し、使用済燃料プールから原子炉ウェル側への水の流入量が増加したことにより、使用済燃料プールからスキマサージタンクへのオーバーフロー量が低下し、スキマサージタンクの水位低下が通常よりも多くなったことが原因であると推定。原子炉ウェルと使用済燃料プールの水位差を低減させるため、1月2日午前11時50分から午前11時59分にかけて原子炉ウェルへの水張りを実施したところ、午後4時現在、スキマサージタンクの水位低下は確認されていない。今後も引き続きスキマサージタンク水位の監視を実施予定。
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つまり1月1日の地震の影響でこうなったらしいが、あの程度の地震でこんなことが起るのなら、もっと大きな余震の時はどうなるのか.前からいっているように4号機については、冷却水の漏洩どころか、倒壊の恐れもある.「事故そのものは収束」なんて呑気なことを言っている場合ではない.

biwako_strawbale at 19:09|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!

2012年01月01日

気がつけば・・・

気がつけばひと月以上も更新をしていなかったのか・・・

たびたび来ていただいた方、スミマセン.

ともかくまさに「二の句が継げない」ようなことばかりが多くて、書く気も失せていたし、また一方で書く暇もないくらい忙しかった.

原発事故の状況について、テレビを通じて得られる情報はもとよりいい加減なものが多かったが、いまとなってはたまに特集でやる程度になってしまった.

「冷温停止状態」という人類史に残る「虚構」にも、国民の大多数が怒る気配もない.

この間にも「日本原燃、青森・六ヶ所村の核燃料再処理工場の試験運転を2012年1月から再開と発表」などとんでも無いことばかり.

とはいえ、新年になったので、またぼちぼち書いていこう.

biwako_strawbale at 00:17|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!