2012年12月

2012年12月01日

ステップダウン

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか (青春文庫)

最初の一行目から、うれしくなった。

「人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。僕は逆に、積みへらすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれていつの間にか身動きできなくなる。」(岡本太郎)

折しも、今日から就職活動が解禁となり、3回生(!)の学生の東奔西走が始まる。

さて若者の間でよく使われる言葉にステップアップという言葉がある。「大学入試ではセンター試験に失敗したので、就職では就職偏差値の高い(!)いい会社にいってステップアップしたい」「いったんは就職するけれど、2〜3年後には転職してステップアップしたい」などなど。

しかし、よくよく聞いていると、学歴や職歴を積みますことばかりで、およそ人生の深みや幅を増やすこととは無縁のことがある。

誤解のないように補足すれば、岡本さんの知識やおそらく財産も決して少なくはない。むしろ年ごとに増えていっているだろう。岡本さんが言っているのは、そうしたものに捕われずに、自由さを獲得していかなければならないということだ。真の成長はそこにある。そして、皮肉なことに、肩書きや財産は後からついてくることがある(ついてこないこともあるが、それがどうした!)。

6年ほど前に「A倍晋三的ものからの脱却」というエッセイをブログに書いたことがある。

締めくくりはこうだ。

「親の肩書きに頼らない、自分の学歴に頼らない、ひいては自分の肉体にも頼らない。いろいろなものをそぎ落として、結局それでも存在しうるナニモノかを見つけ出す内省的な営みを続けていきたい。それは、家柄、学歴、派閥、国家と外向きのベクトルをもつA倍晋三的なるものからの脱却への営みである。すべての人の涙とつながる営みである。容易ではないけれど。」

1988年に上梓された本であるが、技術や文明に対する視点も、フクシマを経て、なお新しい。多くの若者に勧めたい本である。


biwako_strawbale at 18:29|PermalinkComments(4)TrackBack(0)clip!