罪状 連鎖呪殺、嬰児喰らい

殺傷人数 13人+多数の犬と胎児

攻撃性能☆4 残虐性☆1 執拗さ☆3 不死性☆5

罪人ランク B

「真実を知りたい。たとえそれが、おぞましいことであっても」
上は小林雅文という人物の座右の銘である。
怪奇実話作家として1995年にデビュー。主な著作に『超能力者たちの人生』、『怪奇現象ルポ!』、人気シリーズとなった『怪奇実話ファイル』などがある。
デビューから数年後には取材にビデオカメラを携行し、『憑依』、『心霊スポット案内』などの映像作品も手掛けるようになった。
2004年4月、彼は新作『ノロイ』を完成させた。数日後、小林の家が火災で全焼し、妻が焼死、小林自身も消息を絶つという事件が起きた。
これも全て彼が追っていた「かぐたば」の呪いなのだろうか。(以下カグタバと表記)

【復活までの経緯】
カグタバは長野県渡喜多(ときた)郡鹿見(しかみ)町の下鹿毛(しもかげ)村に伝わる災いをなす存在である。
歴史は古く、江戸時代に書かれた『信濃国渡喜多郡風土記』にも記述がある。
それによればカグタバは「禍具魂」とされ、下鹿毛村に住みついた呪術師の一族が使う「禍具魂法」という秘術によって現れるという。
禍具魂法とは、1人の巫女に猿の子を大量に食わせてカグタバを生み出すというものである。
呪術師たちはカグタバを召喚し、呪い殺させる方法で暗殺業を営んでいた。一度召喚されたカグタバは現世に残り、災いをもたらし続けた。そこで呪術師たちは、下鹿毛の地の奥深くにカグタバを封印したといわれる。
表向き呪術師の一族が消えた後も、下鹿毛村ではカグタバを鎮める鬼祭(きまつり)が鬼神社で行われていた。
カグタバの面を被った演者が子供を攫い、それを神官が退治するという神楽が祭りの目玉である。
祭りに登場するカグタバは、左右で目の大きさが異なり、口がへの字に歪んだお面で表現される。土気色の地に血液を散らしたような色で、額には短い一本角が生えている。仮面以外は、小豆色の狩衣と何らかの模様の入った白い袖を身に付けている。
子供を攫ったカグタバは、ハトの置物が載った2本の柱に綱を渡す。神官は綱を鎌で切り、「一礼四拍一礼」をしてカグタバを鎮めるというのが神楽の大筋である。
祭りは1978年まで毎年続いていた。

1978年は下鹿毛村がダムに沈んだ年である。文化の保存のため最後の祭りだけは撮影が許可された。
祭りは今までと同じように行われていたが、神官が一礼四拍一礼をし終えると異変が起きた。
カグタバ役だった神官の娘・石井潤子が突如錯乱したのだ。奇声を上げて地面を転げまわる姿が、カメラに収められていた。
石井の友人の話では、祭りの後から「神の命令が聞こえる……」などと呟くことがあったらしい。この時点で石井はカグタバに憑りつかれていたと思われる。

石井の錯乱は一時的なもので、すぐに社会復帰を果たした。東京の武蔵看護学校を卒業し、八王子の病院の産婦人科に就職する。
その病院は妊娠22週以降の胎児の堕胎(違法)を請け負っていた。石井は中絶の後処理を一手に引き受けており、噂では胎児の遺体を持ち帰っていたとも言われている。猿の子の代わりに、カグタバに捧げる生贄だったのだろう。(猿の子は比喩で、元々赤子だったという可能性もある)

2002年10月、鬼神社と思われる神社での怪奇番組のロケでその姿が確認された。カグタバは一貫して小学生程度の男子の姿を取っているが、この時点ではおぼろげなまさに幽霊という風体であった。
2002年11月、東京で石井が借りていた家にも出現している。ここではすでに人間として物質化できていた。1ヶ月の間に石井自らが巫女としてカグタバに力を与えていたと考えられる。

2003年12月、テレビ出演していた超能力少女・矢野加奈が行方不明になる。彼女は以前からカグタバの存在を超能力で察知していたが、逆に干渉され操られていたようだ。
加奈は石井の元に行き、巫女としてカグタバの完全復活の片棒を担いでしまう。すなわち無数の死んだ胎児を食べさせられる、与えられるなどされていたと思われる。

2004年2月、下鹿毛村跡のダム付近にある廃墟になった祭壇?で加奈が捉えられる。
青白い無数の赤ん坊に纏わりつかれた姿で、幽霊としてカメラに映り込んだのだ。この少し前に儀式は成功し、カグタバは力を取り戻したと思われる。
小林は三日石村(下鹿毛村からの移住民が多い)の石井の家を訪ね、石井と加奈の死体、そばにいたカグタバの少年を発見。被害者と勘違いし、カグタバの少年を保護してしまう。

2004年4月、カグタバ本人だとは知らずに一緒に暮らしていたが、霊能力者・堀光男が家に乱入。カグタバの正体を暴くも、呪いの力には勝てず洗脳。カグタバを連れて行方を晦ましてしまう。その3日後、堀は怪死した。
小林の妻は発狂して自宅もろとも焼身自殺、小林も消息を絶った。小林は少なくとも5月までは生きており、この日の映像を出版社に送り付けている。

【能力】
強力な呪いの力の持ち、対抗するのは不可能。
呪いの標的になるのは関わった者から無作為に選ばれる。呪われた場合確実に死亡するが、死ぬまでの時間はバラバラで、死因も一定ではない。
呪われた者の前にはハト(多くは窓にぶつかって死ぬ形で)が現れる。ハトが呪いを運ぶのか、呪われた人の元にハトが来るのかは不明である。禍具魂法の儀式の様子が描かれた絵巻『下陰流 禍具魂法』では、巫女からハトが飛び立っているため、前者の可能性が高いと思われる。
カグタバは自身の強化のために巫女を必要とする。巫女になる素質のある者は、霊媒体質の女性である。
カグタバは霊媒体質の者を取り込もうと非物理的な接触を行うことがある。すると彼女らの周囲には呪いが拡散し、カグタバに無関係であっても死に誘われることがある。

【対策】
カグタバの少年、影響を受けた霊媒体質の人間、下鹿毛村および三日石集落周辺に近寄ってはいけない。接触の度合いに関わらず、呪い殺される可能性がある。
下鹿毛村および三日石集落では、カグタバ除けに犬が多数飼われていた。カグタバの力の源であった猿の子が嫌うものとして用いられていたと思われる。
犬は呪いの初期段階では効果があるようだが、カグタバが誕生してしまうと効果を失ってしまう。絵巻にも儀式後、犬が死んでいる様子が描かれている。小林の映像においても、加奈の亡霊がいた廃祭壇に大量の死骸が散乱していた。
こちらも一時しのぎ程度でしかないが、鬼祭においてカグタバが仕掛けた綱を切ることから鎌もお守りになる。下鹿毛村の人々も玄関に鎌を飾っていた。
目下のところ、小林家から姿を消したカグタバの行方がようとして知れないのが最大の問題である。いついかなる場所で遭遇するとも限らず、不意に出会ってしまったらと思うと震えが止まらない。