罪状 見るなの禁死

殺傷人数 人類絶滅級

攻撃性能☆5 残虐性☆1 執拗さ☆4 不死性☆5

罪人ランク S

その終末は、ルーマニアから始まった。
“何か”が人々の目に映るようになったのだ。目撃した人々は、何もない空間に向かって喋りだし、最終的に自殺する。
原因不明の大量自殺がそこかしこで起き、政府・国民はパニックに陥った。生物兵器によるものでもパンデミックによるものでもない死は、恐るべき速さで近隣諸国へ飛び火した。
東欧からロシア、ベーリング海を渡ってアメリカへ。無論、ロシアから南下し、アジア・日本を目指す動きも確認された。
あまりに謎めいた現象である。これに直面した人々の中には、こう言う者もいた。
「判決が下されたんだ。人類は不合格だった」

【禁視の者】
“何か”の正体、これは誰にも分からない。何しろ視界に入ると数十秒で自殺してしまうのだから、見た目も定かではない。
ただいくつかの特徴が判明しているので、書き記していきたい。

・心に語り掛けてくる
例え獲物の至近距離まで接近したとしても、肉体的な接触をしてくることはない。
代わりに、対象の親しい人の声で話しかけてくる。何もない場所に喋っているという犠牲者は、まさに“何か”がもたらす幻聴と会話しているのである。
人々が対策のために目隠しをし始めると、しきりに目隠しを取るように知人の声で誘うようになる。

・映像を見ても死ぬ
直接目視しなければいいというわけではない。カメラ越し、モニター越しに目撃したとしても死からは逃れられない。

・物理的存在?
自動車の安全装置は、何かを捉えていた。車の前後180度の範囲を一度に覆える程度の大きさ、または数がいるらしかった。
また獲物を追いかける際に、草木を押しのけるように進む、落ち葉を巻き上げるなどの現象が確認された。一応物理的に存在しているということなのだろうか。
ただし獲物が籠城している家に押し入るようなことはしない。

・目撃者の3通りの反応
1つは、悲しみ。亡き家族との思い出に浸るような反応をした後、自殺する。
もう1つが、喜び。その存在は美しいとされ、それにまみえた喜びのうちに自殺する。

最後は、暴徒化。精神病院に入院していたような、精神に問題のある人々が対象になる。彼らは“何か”と邂逅しても自殺せず、その美しさに魅了されるに留まる。そして他の人々にもこの美との遭遇を体験させようと、行動を起こす。
“何か”は建物内に入らない(入れない?)ため、彼らを使って獲物を炙り出そうとしているのかもしれない。

【対策】
目隠しせよ。いっそ目を潰せ。
とにかく外の風景を目に入れないことが第一になる。安全な建物に入ることができたら、まずすることは窓を新聞紙などで塞ぐことだ。
家の中でも気は抜けない。玄関を開ける際などにチラリと外が見えるのも危険なので、カーテンを拵えるような工夫が必要である。

また鳥は、“何か”が接近すると騒ぎ出す。ぜひ鳥かごに入れて持ち歩いてみよう。ある程度、屋外で目を開けてもよい時間を確保できるかもしれない。

必要な時に目隠しして、屋内に留まるのであれば、“何か”への対処はほぼできたも同じである。
恐ろしいのは暴徒の存在。目隠しをしない彼らは、こちらに対して圧倒的に優位である。車を乗り回し、銃や刃物で武装し、遠くから目隠しを外すためのフックなども装備している場合がある。
そういった露骨な輩のほかに、目隠しをして獲物になりすまし、家に入り込もうとする知能犯もいる。この手合いを入れてしまうと、もう籠城は成り立たなくなる。
“何か”の影響を受けた人間は、瞳が溶けて白目部分へと拡散しているという特徴がある。これが1つの判断方法になるだろう。

アンカレッジ近辺にあるジャネット・タッカー盲学校には、生存者が集まっていた。多くは盲人だが、目が見える人もいる。このようなコロニーで身を寄せ合うのも、生きていく上では役に立つだろう。
まずコロニーの存在を察知できるように、無線は使えるようにしておきたい。目隠しのままでの大冒険となるが、近くにあればイチかバチか訪れるのもありではないか。

無線で拾った情報の真偽、相手が暴徒であるか否か。禁視の世界でも識別眼は必要だ。
目が見えぬなら、心の目を磨き、形のない絆を大切にしなければいけない。
それができる人間だけが、“何か”が選んだ新人類なのかもしれない。