実際見ると、どう見ても青ではなく、薄紫くらいの色だったが、遺伝子的には100パーセント青いらしい。もともと薔薇には青色の色素を生成する遺伝子が無いことから、長い間幻とされ、様々な文学にも取り上げられている。
私が一番印象深いのは、中井英雄さんの『虚無への供物』だ。ゴシックロマンめいたミステリーなのだが、その中で象徴的に使われているのが、青い薔薇。
ヒトは美しいものが好きだ。
けれど、ヒトの感じる美醜というのは、動物や自然の枠組みの中では、瑣末なことに過ぎないかもしれない。

動物はシーズンを迎えると発情する。
では、ヒトはというと頭で考えて発情する。だから、一年中、発情している。
恋とか、愛とか精神論はいくらでもブチあげられる。
子孫繁栄、自らの存在の証を残すための行為は、たくさんの飾りをつけて、語られる。
ヒトの目からみれば、白い孔雀は珍しく、美しい。けれど孔雀の牝にとっては、それは劣性遺伝の産物に他ならず、人が美であるとするものは無視され、せのびーる的な排除される要素でしかない。
身近で言えば、何処から見ても器量よしで可愛い雌猫がいたとして、雄猫が選ぶ基準は全く違うところにある。

青い薔薇もまたしかり。
品種改良や遺伝子組み換え技術の果てに生まれた幻の薔薇は、歪んだ美、虚無への供物そのものに他ならない。