実験記録 No.02

大阪市在住プログラマ 翻訳したり、本読んだり。

【日本語訳】書評 アドルフ・ヒトラー著「我が闘争」(Review Of "Mein Kampf" by Adolf Hitler)

書評 アドルフ・ヒトラー著「我が闘争」(Review Of "Mein Kampf" by Adolf Hitler, 1940)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
ライセンス:クリエイティブ・コモンズ 2.1 表示 - 非営利 - 継承

ほんの一年前に出版されたハースト・アンド・ブラケット社による無修正版「我が闘争」がヒトラー支持の立場から編集されていることは事態がいかに急速に動いたかを示している。翻訳者による前書きと注釈にはこの本の残忍性を薄め、ヒトラーをできるだけ慈悲深い指導者に描こうという意図がはっきりと見て取れる……続きを読む

ReviewOfMeinKampfByAdolfHitler

「我が闘争」のジョージ・オーウェルによる書評の日本語訳。(説明不要かもしれないが)「我が闘争」はナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーが自らの生い立ちと思想を書いた自叙伝。


わが闘争(上)

この書評が掲載されたのは1940年3月のことだ。ドイツのポーランド侵攻が1939年9月なので第2次大戦の勃発から半年後に書かれたものということになる。

この書評でオーウェルはなぜヒトラーがこれほどの支持をドイツ国民から集めたのかを考察している。ヒトラーは「偏執狂的人物」であるとしながらも彼には不思議な人間的魅力があるとオーウェルは書く。安楽を拒絶し苦悩するいわば殉教者のような雰囲気を持っていると言うのだ。

彼独自の個人的魅力がなければヒトラーが無数のライバルに対抗して打ち勝つことはできなかっただろう。その魅力は「我が闘争」のぎこちない文章からさえも感じ取ることができる。彼の演説を耳にすれば圧倒されるであろうことは疑いない……(中略)……もしヒトラーに近づくことができれば私が彼を殺すだろうことは間違いないが、個人的な憎しみを彼に感じることはできないだろうと思うのだ。何か深く訴えかけるものが彼にあることは事実だ。(ジョージ・オーウェル, "書評 アドルフ・ヒトラー著「我が闘争」"

そしてこの「喜びなき精神」の持ち主はその精神ゆえに人々が欲するのは安楽だけではなく、闘争・自己犠牲・忠誠であるということを本能的に知っているのだ、とオーウェルは続ける。

ヒトラーは、人類が欲するのは安楽と安全、短い労働、衛生状態、避妊、一般化して言えば常識に適ったもの、それだけでないことを知っているのだ。少なくともときおりは闘争と自己犠牲、そして言うまでもなく太鼓と旗、忠誠を誇示するための行進を人類は求める。(ジョージ・オーウェル, "書評 アドルフ・ヒトラー著「我が闘争」"

(古典的な意味での)社会主義や資本主義では提供できていないもの、「進歩的・合理的」な考えが切り捨ててきたものをときに人間は求めるというのだ。

社会主義は、そして不承不承ながら資本主義でさえもが人々に対して「心地よい暮らしを提供する」と説く。ヒトラーは人々に「闘争と危機、そして死を提供する」と説き、その結果としてひとつの国全体が彼の足元にその身を投げ出しているのだ。(ジョージ・オーウェル, "書評 アドルフ・ヒトラー著「我が闘争」"

このあたりの議論はオーウェルの別の評論「ウェルズ、ヒトラー、世界国家」にも通じるものがある。

現代の映画やスポーツを見ても、本能的に人間が闘争や自己犠牲、忠誠を求めるというのは確かなことの様に思われる。動物的(あるいは文化的)な本能である以上、消し去ることは難しいだろうが、それに自覚的になること、抑制的にふるまうことは可能なのではないだろうか。


帰ってきたヒトラー

わが闘争 (まんがで読破)

【日本語訳】象を撃つ(Shooting an Elephant)

象を撃つ(Shooting an Elephant, 1936)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
ライセンス:クリエイティブ・コモンズ 2.1 表示 - 非営利 - 継承

ビルマ南部のモーラミャインでは私は大勢の人々に憎まれていた……そんなことが起きるほどたいそうな地位にいたのは私の人生でもその時だけだ。私はその町の警察分署の副署長で、そこには漠然とした反ヨーロッパ感情とでも言うべきものが非常に強く存在していた。暴動を起こすほどの気概がある者は……続きを読む

ShootingAnElephant

ジョージ・オーウェルの「Shooting an Elephant」の日本語訳。

オーウェルは19歳から5年間、当時イギリスの支配下にあったビルマ(現在のミャンマー)で警官として過ごした。この「象を撃つ」はビルマ時代を描いた作品の中でも代表的なもののひとつに数えられている。

当時、警官だったオーウェルは脱走して暴れた象を追い、最終的に「意に反して」その象を撃ち殺すことになる。

私はその象を撃ちたくなかった。草の束を膝に叩きつける象を私は見つめた。象は何かに没頭している老婦人を思わせる雰囲気を持っていた。象を撃つことは謀殺のように思われた。(ジョージ・オーウェル, "象を撃つ"

なぜ象を撃つことになったのか。支配-被支配の関係は時に反転し、支配者自身が「支配される」のだというのがオーウェルの考えだ。

物語の主役は一見したところ私だ。しかし実際のところ、私は背後に立つこの黄色い顔々の意思に背中を押されて惑う、とるにたらない人形に過ぎなかった。白人が暴君へと変わる時、破壊しているのは自らの自由なのだということをこの瞬間に私は理解した。(ジョージ・オーウェル, "象を撃つ"
岐路に立たされれば決まって「先住民」の期待することをおこなうのだ。仮面をつければその顔は仮面に合うように変わっていく。私は象を撃たなければならなかった。(ジョージ・オーウェル, "象を撃つ"

権力を振るう人間は同時ににその権力に縛られている。

実はこの作品が実話なのかどうかには議論がある。当時の同僚の証言(「象を撃った処分としてオーウェルはミャンマー北西部のカタへ転属された」)がある一方、1926年に起きた類似の事件を題材にしたフィクションではないかという主張もある。

そういう意味では自分が嫌う植民地政府の警官だったオーウェルが自身の道義心を「撃ち殺される象」という形で描写したのだという読み方もできるかもしれない。

FreeCAD 構造解析チュートリアル

オープンソースの汎用3D-CADであるFreeCADのFEMワークベンチを使用した構造解析例。

FreeCADの機能別の使い方については「FreeCAD使い方メモ」、モデル作成例については「FreeCAD - 初心者向けチュートリアル」を参照。

応力の計算

応力の計算 - ステップ1
応力の計算 - ステップ2
応力の計算 - ステップ3

固有振動の計算

固有振動の計算 - ステップ1
固有振動の計算 - ステップ2
固有振動の計算 - ステップ3

有限要素法ソルバー CalculiX のドキュメントを翻訳

CalculiXのドキュメントを翻訳したので、WIndowsでのインストールと簡単な片持ち梁の解析と合わせてまとめページを作成しました。内容は随時追加予定。

Calculix
CalculiX使い方メモ

CalculiXはオープンソース(GPL)の有限要素解析ソフトウェアで、応力解析、座屈解析、固有値解析など主に構造解析を中心にした解析ができます。FreeCADに搭載されているソルバーでもあります。

構造解析の学習をしながらの翻訳なので、訳し間違いなどあるかと思いますが指摘があれば直します。

ディストピア小説のまとめ

自分用の備忘録として未読・既読を問わずにまとめ。発表年順。

献灯使

多和田葉子、2014年

献灯使

放射能汚染、少子高齢化

ザ・サークル

デイヴ・エガーズ、2013年

ザ・サークル

グローバル企業、プライバシー

ハーモニー

伊藤計劃、2008年

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

監視社会、生命倫理

私を離さないで

カズオ・イシグロ、2005年

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

生命倫理、主体性

侍女の物語

マーガレット・アトウッド、1985年

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

キリスト教原理主義による革命後のアメリカ、環境汚染によって子供が生まれにくくなっているこの世界では権力者の夫婦は子供を産む器としての「侍女」を持つことができる。そこで「侍女」として暮らす主人公の生活を描く作品。明言はされていないが1979年のイラン革命の風刺を意識していることが見て取れる。

肩をすくめるアトラス

アイン・ランド、1957年

肩をすくめるアトラス

資本規制、大きな政府

華氏451度

レイ・ブラッドベリ、1953年

華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)

メディア、焚書、知識の継承

プレイヤー・ピアノ

カート・ヴォネガット、1952年

プレイヤー・ピアノ (ハヤカワ文庫SF)

機械化、社会分断、格差社会

一九八四年

ジョージ・オーウェル、1949年

一九八四年 [新訳版] (ハヤカワepi文庫)

監視社会、歴史の改竄、全体主義

すばらしい新世界

オルダス・ハクスリー、1932年

すばらしい新世界 (講談社文庫)

科学万能主義、快楽主義

われら

エヴゲーニイ・ザミャーチン、1927年

われら (岩波文庫)

監視社会、全体主義

鉄の踵

ジャック・ロンドン、1908年

鉄の踵

社会分断、労働問題

今より三百年後の社会

H・G・ウェルズ、1910年

The Sleeper Awakes (英語)

社会分断。1899年版は「When the Sleeper Wakes」、1910年版「The Sleeper Awakes」が原題。

二十世紀のパリ

ジュール・ヴェルヌ、1863年

二十世紀のパリ

科学万能主義。長く原稿が失われていたが1991年に発見された。

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