実験記録 No.02

大阪市在住プログラマ 翻訳したり、本読んだり。

【日本語訳】ラッフルズとミス・ブランディッシ(Raffles and Miss Blandish)

ラッフルズとミス・ブランディッシ(Raffles and Miss Blandish, 1944)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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半世紀近く前に初めて登場して以来、「アマチュア泥棒」ラッフルズはイギリスのフィクションの中でも最もよく知られたキャラクターであり続けている……続きを読む

オーウェルによる評論「Raffles and Miss Blandish」の日本語訳。

この評論でオーウェルは2つの犯罪小説を比較し、そこから見える世相を論じている。1冊目は1900年頃に出版された「紳士泥棒ラッフルズ」シリーズ、2冊目は1939年に出版された「ミス・ブランディッシの蘭」だ。

ラッフルズは「アルセーヌ・ルパン」シリーズや「シャーロック・ホームズ」シリーズと同時代の作品で、その雰囲気も近いものがあったようだ。主人公は社交界の人間で、泥棒ではあるが暴力や性的な罪は犯さず、愛国的な人物として描かれている。

一方の「ミス・ブランディッシの蘭」はいわゆるハードボイルド小説の走りで、凄惨な暴力描写や性描写によって出版当時は激しい賛否を呼んだらしい。

オーウェルは「ミス・ブランディッシの蘭」の文章を「珠玉の美文」とほめつつもその内容に対しては否定的で、2つの作品を比較しながら、戦争の影響、リアリズム(オーウェルはこの言葉を否定的に使うことが多い)、アメリカ的価値観の高まりについて論じている。

【日本語訳】アーサー・ケストラー(Arthur Koestler)

アーサー・ケストラー(Arthur Koestler, 1945)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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今世紀における英文学で目を引くひとつの事実は、それがどれほど外国人……例えばコンラッド、ヘンリー・ジェイムズ、ショー、ジョイス、イェイツ、パウンド、そしてエリオットといった人々……によって占められているかということだ……続きを読む

まぎらわしいがジョージ・オーウェルによって書かれた「アーサー・ケストラー」というタイトルの評論。アーサー・ケストラーは1905年生まれの小説家、哲学者。オーウェルは1903年生まれなので二人はほぼ同世代だと言っていいだろう。

この評論では当時ケストラーが発表していた「スペインの遺書」、「剣闘士たち」、「真昼の暗黒」、「地上の屑」、「到着と出発」の5作品を取り上げて、ケストラーがいかにして社会主義革命に幻滅し、決別したかを分析している。

革命は常に堕落する……これこそが主題なのだ。なぜ革命は堕落するのかという疑問について彼は口ごもる。(ジョージ・オーウェル, "アーサー・ケストラー"

中でも特に「真昼の暗黒」はオーウェルに大きな影響を与えたようで、オーウェルの「一九八四年」の第3部での尋問場面は明らかに「真昼の暗黒」を踏まえたものになっている。

さらにこの評論では「大衆への教育なしには社会の進歩はない。社会の進歩なしには大衆への教育はない」というケストラーの言葉が引かれているが、後にオーウェルが書いた「一九八四年」では次のような言葉が主人公によって語られた。

彼らが反抗するにはまず目覚めなければならない。そして目覚めるためにはまず反抗しなければならないのだ。(ジョージ・オーウェル, "一九八四年"

ほぼ同世代であり自分と同じようにスペイン内戦を経験し全体主義への懸念を持っていたケストラーへの親近感のようなものが評論からは感じられる。

ケストラーと言えば共産主義と決別して以降にも「機械の中の幽霊」や「第十三支族」といった著名な作品がある。オーウェルの死後に発表されたこれらを読んだらオーウェルはどのような反応を示しただろうかと想像させられた。

FreeCADのFEMワークベンチを試してみる

FreeCAD 0.16がリリースされたがリリースノートによると応力解析(構造解析)を行なうためのFEMワークベンチがかなり改善されたらしいので簡単に試してみた。

形状作成

まず題材として自転車のフレームの簡易モデルを作成した。

Bicycle-frrame
Keithonearth https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Bicycle_Frame_Diagram-en.svg

パートデザインワークベンチでスケッチを描いておおよその形状の寸法を設定
Sketch

パートワークベンチでスケッチに沿ってスイープを行って3次元形状を作成。ソリッドのパイプ化、結合など行って形状完成。
Solid

前処理と計算

FEMワークベンチに移動してメッシュを作成。デフォルトの設定で作成したところメッシュ数は12万弱になった。
Mesh

適当に材質、境界条件を設定し、ソルバーのタスクパネルで静的解析を選択して計算を実行した。計算にかかった時間は169秒だった(CPU:Core i7-2600 3.40GHz)。
Solver

結果表示

結果表示では各方向の変位、変位の絶対値、ミーゼス応力が選択でき、それぞれの最小値・最大値・平均値を確認できる。また変位をメッシュ形状に反映させるための機能もある。
Post

変位の絶対値のコンター表示
Disp-Abs

X・Y・Zの各方向の変位のコンター表示
Disp-X Disp-Y Disp-Z

ミーゼス応力のコンター表示
VonMisesStress

変位を3000倍に拡大してメッシュに反映させた場合の表示
Disp-Abs-3000

まとめ

簡単に試した限りでは以前のバージョンよりもかなり使いやすくなっている。計算精度の評価に関しては別に行なう必要があるにせよ、使い勝手という点では解析の内容によっては実用に耐えるのではないかと思う。

今回は全ての機能を試してはいないが、バージョン0.16では次のような改善が加えられているようだった。

  • 使用できる材質の種類が増えている
  • 部分ごとに異なる材質を設定できるようになっている
  • ビーム要素・シェル要素を使用できるようになっている
  • 境界条件の種類が増えている(変位指定、圧力指定など)
  • 解析タイプに周波数解析が追加されている
  • ユーザーインターフェイスが整理され、以前のバージョンより使いやすくなっている

【日本語訳】荒廃したドイツの未来(Future of a ruined Germany)

荒廃したドイツの未来(Future of a ruined Germany, 1945)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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ドイツの中心へと進んで行くに従って連合国の爆撃機によって作り上げられた廃墟がますますあらわにされていく。これらを目にしたほとんど全ての者にわきあがる感想が三つある。一つ目は……続きを読む

爆撃後のベルリン

1945年の2月から従軍記者としてフランスやドイツを訪れていたオーウェルはその経験を元にこの「荒廃したドイツの未来」や「復讐の味は苦い」といった記事を書いた。

第2次大戦を特徴づけるもののひとつに大規模な空襲がある。1937年のゲルニカ爆撃を皮切りに、重慶爆撃、ロンドン大空襲、ドレスデン爆撃、東京大空襲といった都市に対する無差別爆撃が盛んに行われた。

無差別爆撃の「非人道性」は当時から議論されていたが、オーウェルはそれは的を外した議論だと考えているようで皮肉を交えてこう書いている。

爆撃がとりわけ非人道的であるということはない。戦争そのものが非人道的であるし、産業と運輸を麻痺させるのに使われた爆撃機は比較的文明化された兵器だ。「通常の」あるいは「まっとうな」戦争とはまさに無生物と莫大な数の人命を灰燼に帰す行為なのだ。(ジョージ・オーウェル, "荒廃したドイツの未来"

それでも直接目にした都市に対する無差別爆撃の結果はオーウェルに強い衝撃を与えたようだ。

ドイツではいったいどれほどの家屋が足りていないのだろう? ポーランド、ソビエト連邦、あるいはイタリアでは? 数百におよぶヨーロッパの都市を再建する途方も無い仕事について考えれば、一九三九年当時の標準的な生活水準に戻るのにさえ長い期間が必要なことに気がつく。(ジョージ・オーウェル, "荒廃したドイツの未来"

オーウェルを驚かせたのは他の手段ではあり得ないほどの大規模な破壊とその経済的な影響だった。

どのような国であれ貧困化は世界に対して全体的に好ましくない作用を与えるということはあまり理解されていない。(ジョージ・オーウェル, "荒廃したドイツの未来"

戦争による貧困を予感させたこの体験が「一九八四年」の薄汚れたみすぼらしい世界観を作りあげるきっかけになったのではないかと感じさせられる。

【日本語訳】ファシズムとは何か(What is Fascism?)

ファシズムとは何か(What is Fascism?, 1944)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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私たちの時代において答えが出ていない問題のうち、おそらくもっとも重要なものは「ファシズムとは何か?」というものだろう。最近アメリカでおこなわれた社会調査の一つではこの質問が百人のさまざまな人間にされたが、得られた答えは「純粋な民主主義」から「純粋な悪魔崇拝」まで幅広いものだった……続きを読む

ジョージ・オーウェルによる「What is Fascism?」の日本語訳。

ファシズムという言葉はイタリアのファシスト党に由来するが、オーウェルがこの評論を書いた1944年には既にこの組織を離れた一般的な非難の言葉として使われていたようだ。オーウェルはこの「ファシズム」という言葉が具体的に何を指しているのかについてこの評論で考察している。

私たちの時代において答えが出ていない問題のうち、おそらくもっとも重要なものは「ファシズムとは何か?」というものだろう。(ジョージ・オーウェル, "ファシズムとは何か"

オーウェルはこの言葉が使われる対象を列挙していく。

例えば活字媒体では保守主義者、社会主義者、共産主義者、トロツキスト、カトリック、戦争反対者、戦争支持者、ナショナリストに対してこの言葉が使われているという。さらに日常的会話では多くの政治組織、小店の店主、体罰、狐狩り、闘牛、キップリング、ガンジー、蒋介石、同性愛者、テレビ番組、ユースホステル、占星術、女性、犬、そして「その他の私のあずかり知らぬもろもろ」にこの言葉が使われているのだとオーウェルは書く。

報道をよく調べれば、過去十年の間にファシストと非難されたことがない人々は……それが政党でも、その他の組織でも……ほとんどいないことに気がつくだろう。(ジョージ・オーウェル, "ファシズムとは何か"
使われ方からして「ファシズム」という言葉がほとんど完全に意味のないものであることがわかるだろう。(ジョージ・オーウェル, "ファシズムとは何か"

しかしそれでもいくらかの意味がその言葉には込められているとオーウェルは書く。

彼らが「ファシズム」という言葉で表したいものはおおざっぱに言えば何か残酷なもの、不公正で尊大で蒙昧で、反自由主義、反労働者階級的なものなのだ。(ジョージ・オーウェル, "ファシズムとは何か"

端的に言えばそれは「bully(弱い者いじめをする者・いじめっ子)」という意味なのだ。

ほとんどのイギリスの人間は「ファシスト」の同義語が「弱い者いじめをする者」であると言われて納得するだろう。これこそがこの乱用されている言葉の意味の定義にもっとも近いものなのだ。(ジョージ・オーウェル, "ファシズムとは何か"

言葉から意味が薄れていって感情を表す叫び声になることへの警戒で評論が終えられているところは「ニュースピーク」を生み出したオーウェルらしい。

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