一書評家の告白(Confessions of a Book Reviewer, 1946)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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寒く、しかし空気のよどんだワンルーム・アパート、タバコの吸い殻と飲みかけの紅茶のカップが雑然と置かれたそこで虫に食われた部屋着を着た一人の男がおんぼろのテーブルに向かい、周りに積まれた埃っぽい書類をどかしてタイプライターを置く場所を作ろうとしている……続きを読む

ConfessionsOfABookReviewer

ジョージ・オーウェルの「Confessions of a Book Reviewer」の日本語訳。

オーウェルは1945年に刊行された「動物農場」で小説家として一般に知られるようになったが、作家人生の前半では主にジャーナリスト・ルポルタージュ作家として活動していた。しかしその作品は(後年の小説に比べれば)売れたわけでもなく、経済的理由もあったのだろうが雑誌に書評を書くという仕事を多くしていたようだ。

このエッセーはそんな書評家オーウェルの「楽屋ネタ」、「愚痴」ともいえるものになっている。

朝には目はかすみ、死んだような表情で、無精ひげは伸び放題だ。一、二時間、真っ白な原稿をじっとにらみ、それから威嚇する時計の針に脅されるようにして彼は作業にとりかかる。(ジョージ・オーウェル, "一書評家の告白"

編集者から送られてくる本を、それがどんなものであれ読んで、書評を書くという仕事はなかなかつらかったようだ。

本を扱う仕事に就いて初めて人はその大多数がどれほど粗悪なものであるかに気がつく。客観的で誠実な批判をおこなえば九割を超えるものに対して与えられる評価は「この本は無価値だ」というものだし、実際のところ書評家がそれらにとる反応は「この本にはまったく興味がわかない。金を貰わなければこれについて何か書こうとは思わない」というものだろう。(ジョージ・オーウェル, "一書評家の告白"

あるいはこのエッセーそのものもネタ切れの末に苦し紛れに書き上げたものなのではないかと邪推してしまうが、図らずも現代の職業ライターと変わらないであろうオーウェルの姿がかいま見れる。