スペインの秘密を明かす(Spilling the Spanish Beans, 1937)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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おそらくスペイン内戦は一九一四年から一九一八年の大戦の後のどの出来事よりも多くの嘘を生み出している。しかしデイリー・メールの記者の眼前でレイプされ磔にされた修道女たちの虐殺が繰り広げられたというあの件のことを考えに入れても、正直言って私はそれがもっとも有害な親ファシストの新聞かどうかは疑わしく思っている……続きを読む

SpillingTheSpanishBeans

オーウェルの「Spilling the Spanish Beans」の翻訳。「spill the beans」は英語の慣用表現で「秘密を漏らす」という意味がある。

このエッセーはスペイン内戦の内情を明かしたものだ。

スペイン内戦はフランコによる軍事クーデターによって開始され、クーデターに対抗する共和国派にはスペイン外からも多くの義勇兵が参加した。オーウェルもそのひとりだ。当時、共和国派はソ連からの支援を受けた共和主義左派・スペイン共産党を中心とする派閥が主流だったが、オーウェルが参加したのはPOUMと呼ばれる別の組織だった。

オーウェルによればスペイン内戦はフランコの率いるナショナリスト派との戦いであると同時に、共和国派による同盟内部での戦いでもあった。

同盟のいたるところで共産主義者は中産階級的改革主義を標榜し、その強力な機構全体を使って革命的傾向の党派を弾圧、誹謗中傷しているのだ。(ジョージ・オーウェル, "スペインの秘密を明かす"

中産階級(そして一国社会主義を標榜するソ連)の支持する共和主義左派・スペイン共産党が労働階級の支持する組織を弾圧していたのだとオーウェルは言う。

労働者と中産階級の双方がファシズムと戦っている時でさえ、彼らは同じもののために戦っているわけではない。中産階級はブルジョア民主主義、つまり資本主義のために戦い、労働者は彼が考えるところにおいては社会主義のために戦っている。(ジョージ・オーウェル, "スペインの秘密を明かす"

そしてこの事実がイギリスでは報道されおらず、そのために自分はこれを書いたのだとオーウェルは続ける。

スペイン内戦は1936年7月に始まり、1939年3月にナショナリスト派の勝利で終わった。このエッセーが発表されたのは1937年7月だが、この時点で、おそらくは共和国派の勝利で内戦が終わるだろうとオーウェルが考えていることは印象的だ。

ナショナリスト派の勝利は、ひとつにはナチス・ドイツやイタリアの支援でフランコが大きな空軍力を得たためとも言われるが、同時に共和国派のこうした内部分裂の影響も大きいのだろうと思う。