2013年01月27日

RED EARTH 弾き語り情報

弾き語りトリオRED EARTHライブ今年の分が決まっております。

ちなみにRED EARTHとはわたくし寺澤尚史のアコギボーカルと田中フェアリー健一郎(HIGH-D4)のドラムとギターハタケンからなるフォークトリオバンドです。


12月27日 ファイヤーループピン祭 寺澤一人で出演
12月29日(木) 天王寺ファイヤーループ2001
RED EARTHで出演

1月27日(日)天使と悪魔企画VIP領域 ファイヤーループ2001
RED EARTHで出演

1月28日(月)堀江ビジョン
RED EARTHで出演


PV 「IMAGINE WORLD」
http://youtu.be/-pjEhK13JGE

blendymotherfather at 00:05|Permalinkコラム 

2012年12月24日

灰色のサンタ【第十六話 クリスマス灰色のサンタ】

 クリスマスだというのに私は何をやっているのだろう。すう子はポケットに入れたカイロを擦りながら、小西が出てくるのを待っていた。12月24日の時間は20時。

「そうなんです。うちの子サンタクロースなんか信じないって言うんです。まだ9歳なのになんだか可哀相で」男の声は暗い。


小西は見知らぬ家に預かった鍵で扉を開け入ったところだ。居間で9歳の男の子が一人テレビを見ている事は知っていた。
小西は居間の扉を開けた。男の子はこちらを振り向いた。父親が帰ったかと思い一瞬喜びの表情を浮かべたが、すぐに興味のない表情になった。
「おじさん誰?」別に怯えた様子はない。
「私はサンタクロースだ」スーツ姿の小西は答えた。
「馬鹿じゃない。サンタなんているわけないよ」

「いるんだなこれが」

「知ってるよいないのは。父さんがプレゼント夜中に枕元に置いてるの見たし。てかおじさん誰なの?父さんの友達?」

「だからサンタクロースなんだよ。我々も人数が少ないからね、サンタに会えない子供が多いだけなんだよ」

「へっ、サンタはそんな父さんみたいな洋服着てないよ」

「あれは昔の衣装だよ。今はこれが主流さ。あんな格好じゃ目立ち過ぎるからね」

「ほんとかよっ。じゃ早くプレゼント置いて帰ってよ。僕はゲームが欲しいんだ」

「君はサンタを分かってないようだね。サンタはそんな子供が喜ぶプレゼントは上げないんだ」

「じゃ意味ないじゃん。知らない人をうちにあげたら父さんに怒られるから帰ってよ。てか鍵閉めてたはずなのにな」

「まぁサンタだからね、鍵がかかってても入れるんだよ。サンタてのは悪い事でも良い事でも何をやっても許される存在なんだ」

「変なの。で何くれるの?」

「君は散々母さんに会いたいと父さんに言っているそうじゃないか」

「べ、別にそんな事言わないよ」

「強がっても無駄だよ。私には分かっているんだ。ここに二つのペンダントがある。一つは君の名前だけが彫ってある。もう一つは君の名前と母さんの名前が彫ってある。これのどちらかをあげよう。わかるか?」

「それぐらい分かるよ。でもそんなのいらないよ」

「君と母さんの名前が彫ってあるペンダントを選べば、今すぐ母さんの元へ連れてって一緒に暮らさせてやる。君だけの名前のペンダントを選べばここで父さんとこのまま暮らしていける。どうだね?君はどちらを選ぶ?」
男の子は悩んだ。母親が父親以外に好きな人を見つけて出て行った事を知っていたからだ。
「酷だろうが、果たして今、母親と君が一緒に暮らして幸せになれるだろうか?見ず知らずの男を父さんと呼べるかね?父さんは君を大切にしてくれているんじゃないのかい?」確かに男の子は父親が必死に自分を育ててくれている事も知っていた。しかし幼い男の子は甘えたくなっているのも事実だった。
「母さんの名前が入ってるのを選べば本当に母さんと暮らせるの?」

「もちろん。しかし父さんとはもう会えない。君だけのペンダントを選べはこのまま父さんと暮らせる。母さんとは自分がもう少し大人になってから自分で会う事は可能だがね」

「分かったよ。サンタて本当にいるんだね。でもおじさん怖いからサンタなんて知らない方がよかったのかもね」

「全くその通りだよ」小西は片眉を上げニヤリと笑った。男の子はサンタクロースの左手からペンダントを一つ手にとった。そして書いてある名前を眺めた。顔を上げると男はそこにいなかった。玄関まで行くと鍵はきちんとかけてあった。もう一度ペンダントを見た。今あった事は現実だったようだ。フワフワとした夢みたいな感覚だった。
その時鍵がガチャリと開いた。父親が大きなゲーム機であろう包みを持って立っていた。
男の子は安堵からか、今までの恐怖心が溢れたからか父親にしがみつき泣いた。
やっぱり父さんがサンタなのがいいや。男の子は心底そう思った。


「先生どうでした?」

「何度やってると思ってるんだ。いつも通り大丈夫だよ」
「後6件回らないといけないので次行きましょうか」
「そうだな。これで自分の名前だけじゃないペンダントを選ぶ子供はいないものなのかね。面白みがないな」

「子供なら尚更選ばないでしょうね。だって先生脅してるようなものですもの」

「まぁ児童相談所から毎年の依頼だからな。安いが数があるからな、ある程度は稼げるしな」

「片親で育てるのって精神的に参る人が多いんですね」

「まぁ精神的に参って児童相談所に相談する人間がいるから我々の仕事があるんだからね。なんとも言えんよ」

「これで親子間が上手くいくならやりがいはありますよね。私にも一回サンタ役やらして下さいよ」

「これは憎まれ役じゃないと無理だから君には無理さ。それより早く恋人見つけてクリスマスくらいは仕事休むんだな」

「先生ひどい」

END

blendymotherfather at 00:00|Permalink小説 

2012年09月05日

灰色のサンタ【第十四話 BAR CHELSEA殺人事件】

ヒデアキは夜にもアルバイトをしていた。東心斎橋にあるcafe&bar CHELSEAのバーテンである。
ヒデアキ自身もバンドをしている。このバーはいつもロックがかかっていて居心地よく感じていた。
朝からのアルバイトを終えて店に向かった。店はビルの3階でエレベーターで上がる。
エレベーターの3階ボタンを押した。
「あーちょっと待って」そう言って同僚のユウマが入ってきた。急いで開くを押し、二人は3階に向かった。エレベーターを降りて右側奥がチェルシーだ。既に店長ミホがいるはずだったが、何故だか明かりはついていなかった。
二人は顔を見合わせた。
「あれ?ミホさん寝坊したのかな」ヒデアキが言う。

「いや、さすがにもう18時だし寝坊してたら連絡入ってるだろ」

「確かにそうだね。買い出しかなぁ。先に入って準備しとこうか」そう言いながら鍵で扉を開けた。「ミホさーんいますか?いないか」ヒデアキは扉の中にそろりと入った。ユウマも続く。
「あれ鍵カウンターにあるよ」ヒデアキがつまみあげた。
「なんでだろ?でもやっぱり買い出しじゃないかな」ユウマが言いながらバーカウンターの中に入り電気をつけようとして体が固まった。息も止めていただろう。「ヒ、ヒデアキちょっと」顔が引き攣っている。

「んー、どうしたの?」いつもの呑気な声を出しヒデアキもバーカウンターを覗いた。ウッ。唸った。ミホさんが倒れていた。
バーカウンターの地面は一面真っ赤な血で埋め尽くされていた。夕暮れの光りが窓から入りいつもの楽しい場所が、異様な光景になっていた。
横向きに倒れており、脇腹のところには大きな包丁がぐさりとささっている。ピクリとも動かない。死んでいる事は二人ともすぐ分かった。

「まじか」ヒデアキはよろよろと客席の地べたに座り込んだ。ユウマは頭をフラフラさせながらヒデアキの隣に三角座りをした。

「だめだ。貧血起こしちゃった。血見るとダメなんだ」ユウマは頭を足に入れ言った。

「実は俺も、ちょっと立てないや。おさまったら隣の警察署に行こうか」ヒデアキは消え入りそうな声で言う。南警察署のすぐ横のビルだから電話するより行った方が話が早いという感覚があった。

「あぁ、ちょっと待ってくれ。今動けないから。でもどうして」ユウマも参った声を出す。

「完全にこれ殺されてるよね」

「そうだよね」ユウマがそう答えたが沈黙になった。
「でも鍵掛かってたよね?」ヒデアキが何気に言った。

「確かに。でも鍵持ってるのってミホさんと俺とヒデアキだけじゃん」ユウマがそう言うと再び沈黙になった。

「こんな事言いたくないけど、も、もしかしてユウマがやったのか?」ヒデアキは消えそうな声で聞く。

「な、なに馬鹿な事言ってんだよ。殺すわけないじゃん」

「でも、俺は朝からバイトで終わって直接来たけど、ユウマ今日昼間なんにもなかったんだろ?」

「だからって犯人扱いしないでくれよ。ミホさんを俺が殺す理由がないじゃん」
「だってユウマ、ミホさんの事好きだったじゃないの?年上がタイプって言ってたじゃん。で、告白して振られたんじゃないの。ミホさん綺麗だし」ヒデアキの声は戻ってきた。

「いや、ミホさんの事は好きだよ。でもそれは恋愛とかじゃなくて、やっぱり人として尊敬しているからだよ」ユウマの声も戻りつつある。「そんな事言うならヒデアキだって昼間のバイト終わって速攻来たらもうちょっと早く到着出来るんだから、ヒデアキだって怪しいよ。だって俺が殺してないからヒデアキしかいない訳だし」

「いやいや、それはユウマが一番分かってるんじゃないの。俺は殺してないからユウマしかいないんだよ。俺は動機すらないし」二人は声を荒げてきた。

「いや、いつもいじられるのが本当は嫌だって言ってたじゃん。堪えられなくなったとかだろ?」

「あれはミホさんを信頼しているから何言われても大丈夫なんだよ。嫌って言ってたほうが面白いと思ったから言ってただけだし」ヒデアキがそう言い終わるとしんとした沈黙が流れた。

「そだよな。てか俺ら二人共みほさんにはこれだけお世話になってるんだから殺すわけないよな。ヒデアキも俺もそんな事出来る肝っ玉持ってないしな」落ち着いた声てユウマが言う。

「そうだよね。ごめんな、疑って。動揺してたんだと思う。俺達なんだかんだ言いながらミホさん尊敬してたもんな」

「いやお互い様だよ。ちゃんと警察に調べて貰ったら犯人もわかるよ」

「そうだね。鍵は合い鍵とか作れるもんね。さっ警察行こうか」ヒデアキがそう言い二人は立ち上がろうとした。目の前を見た瞬間二人はまた尻餅を付いた。包丁が脇腹に刺さって血まみれのミホが立っていたのだ。二人は悲惨な顔をしている。

「あーあ、二人共合格」

「えっへーお化け」ヒデアキは情けない声を上げた。
「失礼ね。お化けじゃないのちゃんと生きてますよ」そう言いミホは包丁を抜いた。包丁は先半分がないものだ。

「えへードッキリですは?」ユウマの声もヘナヘナだ。

「実はね経営が結構やばいからどっちかにやめてもらおうと思ってて、悩んでたらお客さんが提案してくれてね。私が死んでて私の悪口言うようだったらそいつをやめさそうと思ってたんだけど、ダメね。二人共今後も頑張ってね」ミホは血まみれの笑顔で言った。

「「えーひどいー」」二人は声を揃え言った。

「ちなみに動画撮影しておいたからYouTubeにアップして店の宣伝に使わせてもらうね。はいっじゃあ準備準備、この床の血糊ちゃんと拭いておいてよ。私は銭湯に行ってくるから。ふふっごめんね」そう言いミホはひらひらと出て行った。
ヒデアキとユウマは座ったまま顔を見合わせ声を出ししばらくの間笑いが止まらなかった。


「えーえー、で、お二人はそのチェルシーてバーが好きだから働いていたいけど、経営上もしかしたらどちらかが辞めさせられるかもしれないのですね。で、二人とも辞めないでいい方法がないかと、そういう御依頼ですね」小西は片眉を上げ何かを思い付いたようにニヤリと笑った。


END

blendymotherfather at 12:24|Permalink小説 

2012年09月02日

灰色のサンタ【第十三話 若者の滑って】

木下さんは小説家になりたいようだ。22才の彼が訪ねてきたのは夕暮れが綺麗な9月始めだった。

「で、木下君は小説家になりたくて色々書いてはいるけど、何処に送っても受賞されないか。で、今スランプなんだね」

「はい。どんなものを書けば自分らしいものが書けるかが分からなくなってきたんです。受賞出来るような作品を書こう書こうとしていたら、ありきたりなものしか書けなくなって。しかも大学はもうすぐ卒業ですし、なんとか小説家になりたいんです。ここはどんな依頼でも聞いてくれるって聞きましたからほんとお願いしますよ」22才の木下は爽やかな悲しみを浮かべ言った。ほんとに都市伝説みたいになってきたなここ。すう子はげんなりした。これは断ってもいいのかも。

「わかりましたやりましょう」えーー。小西がそう答えた瞬間すう子は声が出た。先生そんな無茶苦茶な依頼出来るんですかね。

「ありがとうございます。僕も頑張りますので」

「私の友人に小説家がいるから彼の家に泊まり込みで一ヶ月まず行ってみたらどうだね」

「はい。是非勉強させて頂きます」木下は小西の友人の住所を聞き、帰っていった。

「先生、ほんとに小説家の友人なんているんですか」小西は片眉だけ上げてニヤリと笑っただけだった。

5日が経った日の昼下がり、木下は事務所に青ざめた顔でやってきた。

「あ、あのすいません。もう僕小説家は諦めて就職活動に専念します。料金はちゃんと振り込んでおきましたんで。ほんとすいません。失礼します。」本当にあっという間に帰って行った。

「あ、あの先生どういう事ですか?」

「まぁ、こうなるのは分かってたがね、予想以上の早さだったよ。なにをされたんだか」

「どういう事なのか教えてもらいますか」すう子は訳がわからなかった。

「二階堂陣のマンションにやったんだよ」

「えーあの人小説家だったんですか」

「なんか私も知らないがね、卑猥なやつをアルバイト程度に書いているらしいね」

「まぁ、陣さんと5日も一緒にいたら嫌になりますよね」すう子は想像してぞっとした。

「ずっと家にこもりっぱなしでパソコンの前にいて何かをひたすらに食べているからね。小説家ってこういうもんなんだって思っちゃったんだろうね。あんなに太りたくないだろうし」

「でも夢を諦めさすのってなんか心が痛みますね」

「これくらいで諦めるようならほんとにただの夢だよ」

「確かにそうですね」

「まっ今回の依頼は彼の両親の依頼だからね。小説家になりたいならここに相談したらどうだと勧めてもらって彼はやってきたんだ。両親は普通に就職してほしかったみたいだね」

「またそういう事内緒にするんだから」すう子は口を尖らせた。

「これで彼も就職するだろうね。小説家なんて就職しながら目指せばいいんだから。小説家になりたくて書くのじゃ小説家になるのは無理だろうな。書かずにはいられない人間じゃないとなかなか難しいのかもだね」あぁ私の夢は探偵でよかったとすう子は何故だか安心した。


END

blendymotherfather at 19:18|Permalink小説 

2012年09月01日

灰色のサンタ【第十二話 鳴かなくなった猫】

その依頼が入ったのはまだ夏の暑さが残っていて、先生と私すう子が事務所でかき氷を食べている時だった。
事務所に入ってきたのは頭のはげ上がった小さな老人だった。
「変な頼みなんじゃが、是非聞いてくれんかの」はげ上がった頭を撫でながら老人は申し訳なさそうに言った。

「えーえー変な頼みこそ大歓迎ですよ。さぁさ、こちらへどうぞ。すう子君、冷たいお茶を出して差し上げなさい」小西はそう言い椅子を勧め自分も正面に座った。「それで、どういった御依頼ですかな」

「実はうちの婆さんがなくなってから、わし一人になって寂しくなってしまいましてな。15年程前かの、忘れてしもうたが、猫を飼う事にしたんじゃ。ハギと言う名前でしてな。あー私は権兵衛と申します。で、ハギはもう子供のようでもあり、妻のようでもあり毎日仲良く暮らしていたのです」

「猫ですか…」小西は明らかに嫌な顔を作ったが権兵衛には見えていなかった。先生は子供も動物も確か苦手だった。

「しかしですな、このところわしが入院しましてな、その間お隣さんに預かって頂いてたんじゃが、退院して戻ってくるとハギが全くもって鳴かなくなってしもうてたんじゃ。動物病院に連れて行ってもですな、もうハギもええ年だから鳴かなくなっただけじゃないか、気にしない方がいいですよと言いよるんです。でもわしは何故だか納得出来ませんでな。こうしてこちらのファッション探偵事務所になんとかもう一度ハギの声が聞けないものかとお願いにきたんです。声が聞けんから寂しいて仕方がないんです」

「そうですか。うーん」小西は唸った。すう子は二人の前にお茶を並べた。そして小声で言う。
「先生とにかくやりましょ。私猫平気ですから」

「いやでもなぁ、猫なぁ。ハギなぁ」

「ダメです。やるんですから。権兵衛さんおひきうけします。また明日改めておうちにお伺いしますので住所だけ教えてくださいね」
「えー君、勝手に受けちゃったのー。まぁ仕方ないですな。なんとかしましょう」

「ありがとうございます。是非よろしくお願いします」権兵衛は住所を書きその日は帰っていった。

「ちょっとすう子君どういうつもりだい。私が探偵で君が助手だろ」

「そんな事言うなら早く今月の給料を下さい。私だってボランティアじゃないんだから。とにかく稼いでください。」

「はいはい分かりましたよ。うーんでも困った。猫とB型の女は本当に苦手なんだ。」

「何言ってるんですか、猫みたいなB型の女がモテるんだから」まさしくすう子がそうであった。

「仕方がない。やつに頼むか。明日は私の友人と権兵衛さんのところへ言ってくれ。電話くれれば指示を出すから」

「やつ?って誰ですか?てか先生友人なんているんですか」小西はニヤリと笑うだけだった。



そして次の日、小西の友人と言う男と駅で待ち合わせていた。名前しか知らない。二階堂陣という名前のようだ。先生も喋らなければ背が高くてモデルみたいに細いし、顔もまぁまぁ怖いけど男前な部類のはずだ。その友人でこの名前、どんな人がやってくるのかすう子は待ち遠しかった。めちゃくちゃなイケメンを想像していた。
もしもし。そう後ろから肩を叩かれ振り向くとすう子とほぼ身長が変わらないが体重が3倍くらいありそうなマッシュルームカットの男が肉まんを食べながら立っていた。えっ?この人じゃないよね。
「ねー君でしょ。すう子ちゃんて。早く権兵衛さんとこ行って仕事終わらそう」この人だったーー。名前と見た目があわなさすぎる。しかも汗がすごい。

「あっはい、すう子です。二階堂さんですよね。今日はよろしくお願いします」きっと笑顔が引き攣っているはずだ。

「そんな緊張しなくていいよ。陣さんて呼んでくれたらいいから」嫌だー、だってこの人見た目が陣じゃないよ。

「はい。じゃだいたい場所は分かってるんで行きましょう」二人は並んで歩いた。駅からそんなに遠くないはずだが二階堂さん、いや陣さん、いやこのオデブちゃんと歩くのが嫌だった。どうしてなのかぴっちぴちのTシャツを来ているし、歩きながらずっと何かを食べ口の回りがどえらい事になっている。

「ねー、僕も昔ファッション探偵事務所で働いてたんだよ」

「えーそうなんですか」

「僕ね、霊感がちっとあったり動物の事が少し分かったりするんだ。だから小西さんが出来ない仕事を僕がやってたりしたんだ」

「あーなるほど。それで今回の依頼を先生はお願いしたんですね」うんうんとまだ何かを食べながら二階堂は返事した。

権兵衛の家は老人が一人で住むには少し大きいくらいの木造平屋だった。

「よくいらっしゃいました。さぁ上がってください。」そう言われ二人は家に上がった。中は綺麗に片付けられていて、低い丸机の横にハギは丸くなっていた。
「この子がハギなの?」二階堂は早速畳に座り、ハギを撫でた。

「そうですそうです。今お茶入れますね」権兵衛はそう言い台所へ入った。すう子も腰を下ろした。

「あっ権兵衛さん。お菓子あったら出してください」なんてずうずうしいやつなんだ。すう子は二階堂をあまり好きにはなれなかった。

「どうですじゃ?ハギどっかおかしいんですかの」お菓子を置きながら権兵衛が聞く。すぐさま二階堂は煎餅を口に入れた。もう片方の手はハギを撫でたままだ。
「ちょっくら電話してくる」そう言い二階堂は外へでていった。すう子は何もやりようがないので煎餅をかじりお茶を飲んだ。
二階堂がドタドタと帰ってきてまたすぐ座り煎餅を口に入れた。

「権兵衛さん。正直に言って下さいよ。もう余命少ないんでしょ」そう言われ権兵衛は悲しそうな顔をした。

「いやはや探偵さんにはなんでもお見通しじゃな。もう一ヶ月もたんと言われてな。ハギがいるこのうちに戻ってきたくて帰ってきたんじゃ」

「そんな」すう子は涙ぐんだ。

「権兵衛さん。もう正直に言いますよ。ハギは今鳴いたらすぐに死んじまうね。本当はもっと前に死んでてもおかしくないくらいに魂が弱ってるよ。権兵衛さんを必死で待ってたんだよ。後少ししかお互い一緒にいられない事も分かってる。だからこうしてじーっとして鳴かずにいて、あなたと少しでも一緒にいようとしているんだ。だからね、鳴いて欲しいなんて思わずただ一緒にいてやるだけでいいんじゃないかな。権兵衛さんの為にもハギの為にも」

「そうじゃったのか。ハギすまなかった。お前気付いとったんじゃな、わしがもうすぐいってしまう事を。それなのに鳴いてくれんかと毎日言ってすまんかったな。後少しじゃが二人でのんびり過ごそうか」権兵衛の目には涙がたまっていた。すう子はいつものごとくわんわん泣いていた。二階堂の口には煎餅が溢れていた。ただハギだけは静かに身体をくねらせていた。



「最初なんだこの人大丈夫なのかって思いましたけど、なんか結局、陣さんやっぱりすごいんですね」すう子は二階堂と別れ事務所に戻り小西に言った。

「なんでだい?」片眉を上げ聞き返した。

「だって動物の心が読めちゃったり霊感だってあるって。ただのオデブかと思ってたけど、なんか人は見かけじゃないって思いました。」

「ふふっ。そうかあいつ尊敬されたか。確かにあいつは多少の霊感や多少動物の事には詳しいがそれだけだよ。」そう言い小西は笑った。

「どういう事です?」すう子は口を尖らせて睨んだ。

「やつが電話をかけてきたからね。私が調べた情報を教えただけだよ」

「どんな情報ですか?」

「そりゃ知っての通り権兵衛さんの余命が短い事やハギが行った動物病院に聞いてハギはもういつ死んでもおかしくないって事とかだね。動物病院の人も権兵衛さんショック受けるだろうから言わなかったんだろねそこまでは。まっあいつが何を言ったか知らないが、口はうまいからね。とにかく解決してよかったよ」口が上手いのは先生に似たのだなとすう子は思ったが口にはださなかった。

「でもなんだか寂しいですね」

「確かにそうだな」

「ところで陣さんはここを辞めて自分で探偵事務所開いたんですか?」それならいつかすう子が目指しているところだから興味津々だ。

「いや優秀なんだがね、太ったから辞めさせたんだ。昔は細かったからね、一緒にいれたが、もう無理だね」

「そうなんですか。でもそれって先生ひどいですよ」

「いや、だから探偵の仕事は回してるよ。パソコンとかも得意だから調べてもらう事とかは全部あいつがやってるんだ」

「えー知らなかった。でも次会う時は涼しい時がいいですね」

「全くそれだ」そう言い二人は笑った。

二ヶ月後、権兵衛さんの隣人が帰宅すると猫の泣き声がしたので、権兵衛さんちの前に行った。玄関が少し空いていてそこからハギが入っていった。権兵衛さんと声かけたが返事がなく不審に思った隣人は、中に入った。そこには権兵衛さんが布団の上で眠るように亡くなっていたようだ。その脇のあたりに寄り添うように、ハギも丸くなっており、もう一度ニャアと泣いたかと思うとハギも静かに亡くなっていったそうだ。



END

blendymotherfather at 22:39|Permalink小説