今回の参議院議員選挙で消費税率の引き上げが議論になっている。確かに日本の消費税率は欧州諸国と比べてかなり低く、少子高齢化が進展している状況に鑑みれば、社会保障費の財源として消費税を充て、その率を引き上げることはやむを得ないものだと考える。
社会保障費の財源をしっかりと確保することで、将来不安等を解消し、もって国内需要を高めることにより、持続可能な社会を実現することは間違っていない。しかし、その財源論議では、現状では消費税の論議が中心となっており、税制の抜本改革が抜け落ちているのではないか。今後、幅広い論議がなされるのであれば問題ないと思うが。
一方で、過去の税制改正がどのようなものであったか。各年度別の税制改正の内容(財務省)
新自由主義をその基調とした税制改革を進め、租税特別措置法の改正や相続税率の引き下げ、配当課税の引き下げなど企業や資産家を優遇し、一方で定率減税の廃止など多くの庶民にとっては増税となっている。国際競争に晒されている企業への負担軽減策は必要であるが、税制全体を見渡したときに、企業の社会的役割が果たされていると言えるのだろうか。法人税法や地方税法(法人事業税等)の税率のみを比較対象とせず、租税特別措置法で軽減されているもの等を反映した実際の税負担がどのくらいになっているのか、そういう点を明確にし、税負担のあり方をしっかりと議論する必要があるだろう。
納税者背番号制の導入も具体的に検討されているようであるが、税制改正にあたっては、法人、個人すべてを対象に、その負担割合をしっかりと議論し、薄く広く課税する消費税に偏ることがないようにするべきである。そして、消費税についてもインボイス方式の導入など益税問題も解決する必要がある。
企業や資産家、高額所得者への減税を無視し、大衆課税の強化を中心に税制改革を行うのであれば、新自由主義による税制改革と変わらない。政権交代をした意義をしっかりと考え、税制の抜本改革についての議論を深めて欲しい。