2012年01月10日

消費税の複数税率−物品税との比較−

 消費税率の引き上げに伴い、消費税の逆進性を緩和するため複数税率を導入してはどうかという意見がある。政府与党案では複数税率は認めず、単一税率による消費税率の引き上げを考えているようである。

 消費税が導入されるまで、日本では物品税が課せられていた。この物品税は課税対象となる物品によって税率が異なり、また同一物品でもその性格により課税対象になるのか非課税扱いになるのかが異なり、その運用の曖昧さが批判の対象となっていた。そこへ単一税率の消費税が導入され、宝石や毛皮、ゴルフ用品、自動車など、物品税が課税されていたものが消費税導入により価格が下がり売り上げが伸びたという歴史がある。

 さて、ここで消費税率を複数税率にした場合、どのような事が起こるのかと考えてみよう。例えば食料品を非課税にした場合、米や塩のような生活必需品とキャビアやトリュフのような嗜好品が同じように非課税になるのか、という問題が生じると想像される。これは物品税のときにもあったような議論である。このようなあいまいさを経済界から批判されたこともあり、消費税の導入に繋がっていることを考えると、複数税率の導入を財務省が拒否することは容易に想像される。さらに、経済界からの反対も起こるであろう。

(参考)
昭和59年度の物品税税率の一部
 ・全自動以外の電気洗濯機 10%
 ・グラフィックイコライザー 15%
 ・録音・録画用磁気テープ 10%
 ・電磁調理器 15%
 ・電気楽器 15%
 ・ビデオディスクプレーヤー 15%
 ・CDプレーヤー 15%
 ・普通乗用車 23%
 ・小型普通乗用車 18.5%
 ・軽普通乗用車 15.5%

(昭和59年度税制改正の要綱(pdf))
 当時の所得税率や法人税率、物品税の税率(一部)がわかります。今と大きく異なります。

 過去のものは、財務総合政策研究所に掲載されています。

 いずれも現在の消費税よりも高い税率でした。
 昔の事は忘れて、今の消費税のことしか念頭になければ、消費税導入によって、多くの商品の価格が下がったことも理解できないでしょう。消費税は、食料品などの生活必需品にまで広く課税されることで、逆進性があるという点、物品税はその逆進性を一定程度防ぐことができるという点が、この2種類の税の大きな違いである。

 逆進性緩和のために、複数税率を導入することも考えられるが、それならば消費税を廃止して物品税を導入してはどうかという議論も考えられる。原則として全ての付加価値に課税し、その後、生活必需品などに対する税率を軽減させるのではなく、最初から課税対象品目を限定する物品税の方が理解されやすいかもしれない。かつての日本では、物品税が課税されていたのだから。

 一方で、イギリス、フランス、ドイツなどの国では複数税率が導入されている。消費税率を上げるのであれば、徴税に係る事務負担の増大等の問題があろうが、複数税率の導入についてしっかりと議論をして、国民に情報を提供する必要がある。

 日本においても、欧米のようにインボイスを導入することで複数税率の問題や、小売業者が消費税をねこばばする益税の問題も解決できるかもしれない。そういった議論は全く表に出てきていない。

 低所得者にも富裕層にも同じ負担を求める消費税を増税することが望ましいのか、あるいは、現在の政治・経済システムで多くの権益を得ている(最近の言葉で言えば既得権益を享受している)富裕層に相応の負担を求めること(資産課税の強化)が望ましいのか、国民に情報を提供し、みんなが納得できる税制にすることが必要なのではないか。
 株の平均配当利回りが3%であれば、株式を10億円所有している人は3000万円の配当収入があるが、税率は20%となる。これが給与所得であれば所得税率は40%となるが、配当収入は20%で済む。富裕層への負担を求めるとすれば、配当所得への課税を所得税率と同じ率にする、つまり課税強化することが考えられる。

 消費税増税しか解決方法が無いような情報提供の仕方ではなく、国民に対して多くの選択肢を提示し、国民的な議論を経た上で、より公正で公平な税制を構築することが求められている。国民総背番号制と言えば印象は悪いが、名寄せにより国民一人ひとりの所得や資産を把握し、その所得や資産に応じた課税の方が社会的に公正な税制であると考えられる。
 公正で公平な税制を国民は求めている。

(参考)申告納税者の所得税負担率(平成20年分)
申告納税者の所得税負担率(平成20年分)

[出展]政府税制調査委員会 第9回 専門家委員会(平成22年10月21日)資料

※所得が1億円を超えると所得税負担率が下がるのがわかります。所得に占める株式等の配当所得、株式譲渡による利益の割合が大きいため(資産家の不労所得)。

Posted by blog_de_blog at 21:33│Comments(4) 政治 | 社会
この記事へのコメント
なんだかね:消費税の複数税率−物品税との比較�%d
Posted by ゴヤール 店舗 at 2013年04月25日 15:59
5
物品税に戻すというのに大賛成です。
Posted by rxtype at 2013年11月04日 22:27
消費税率10% 軽減税率 "物品税" で検索しここにたどり着きました。
過去の記事の内容が実際起こっていることに何か感じるものがあります。

複数税率が軽減税率と名称が変わっていますが、税率が低くなるようなイメージを持たせ、消費税率を10%に上げる狙いがあると思われます。

今後、結局物品税時代に戻ってしまうのでしょうか?こういった物事の流れを見ることに興味を惹かれます。
Posted by 通りすがりの者 at 2018年11月09日 23:26
物品税を検索してこの記事に来ました。奇しくも同じく2018年に別の方からコメントが付いているのが興味深いです。
Posted by 通りすがりの者2 at 2018年12月01日 22:47

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