2005年11月11日

中国映画が嫌いだった理由

わたしは長いこと中国映画が嫌いだった。
中国語学習者が、中国映画に親しむことは学習効果も上がるしモチベーションも上がるしいいことだらけだ。けれど、そういう意識がわたしを中国映画嫌いにした。

わたしが初めてちゃんとした中国映画(香港映画などではなく、大陸で作られた普通話の映画という意味)を観たのは大学1年の時だ。
映画のタイトルは覚えていない。
ただ、映画を観に行った場所とか、周りを取り巻く雰囲気はとてもよく覚えている。

なぜその映画を観に行くことにしたのか。
「勉強になるから」と誘われて、特に断る理由もなかったので行くことにしたのだ。
季節は晩秋か冬だったと思う。底冷えのするほどの寒さではなかったけれど、空気が冷え冷えとしていた。街が華やいでいたような記憶はないから、クリスマスとかバレンタインとか、そういう時期ではなかったと思う。学校が終わってから出かけたので、映画館についた時はもう街は暗かった。

映画が始まった。
最初は、おもしろかった。字幕を見ながら耳をすませて、ところどころ聞き取れる中国語があるのが嬉しかった。映画のストーリーも、悪くなさそうだった。
映画の中の時代はちょっと古かったが、その分風景が味わい深く感じられた。身分違いの恋の話みたいで、男性のほうがお金持ちのようだった。
障害のある恋愛の話はそれなりに面白く、わたしは主人公2人を応援しながら次第に画面に引き込まれていった。そして、2人はたくさんの障害を乗り越え、ついに結婚することができた。中国の結婚式は華やかだった。ましてや、主人公の男性はお金持ち。着飾った花嫁も美しかった。幸せそうな2人を見て、「中国映画っていいなぁ」と思った。わたしは、中国映画を好きになりかけていた。

映画が、ここで終わっていればよかったのだ。
というか、てっきり映画はコレで終わりだと思った。だって、2人が結婚にこぎつけるまで相当に長かったのだから。この時点で、もう映画は十分堪能したと思ったのに。

終わりではなかったのだ。むしろ、この後が本番なのだった。幸せの絶頂から、場面はどんどん暗くなり、新婚夫婦に不幸が、これでもかこれでもかと降りかかった。最初は「主人公がかわいそうだ」という気持ちで見ていたが、だんだん不幸の描写がくどいのでウンザリしてきた。椅子の座り心地の悪さも気になりだしてきた。スクリーンが席から近すぎたせいか、だんだん頭も痛くなってきた。気分も悪くなってきた。

相次ぐ不幸に翻弄される2人。翻弄されるだけでそれに対抗することもできない2人。
案の定、金持ちだった夫は貧乏になり、美しかった妻は病気になる。そして救いようのない状況の中で妻は死んでしまい、夫は号泣する。そして夫も絶望のあまり自殺を図る。幸せだった2人の人生が不幸のどん底で終わったところで、映画も終わった。

なんなんだこの映画は。

こういう映画は大嫌いだ。わたしは物凄く腹を立てていた。

わたしにとって映画とは、ひとときの夢やファンタジーや冒険を与えてくれるもので、こんなどんよりとやりきれない気持ちを与えるものではなかった。
そもそも、人が死ぬ話が嫌いだ。人間はいつかは死ぬんだ。放っておいたっていつかは寿命やら何やらで死ぬんだ。なのになんでわざわざ映画の中で人が死ぬのを見なくちゃならないんだ。
せめて映画の中で人が死ぬ時は何らかのロマンやら冒険やら愛やら友情やらで味つけしてほしいのに、これは何だ。貧乏の中で病死、おまけに自殺。映画の中のくせにあまりにも辛すぎる話じゃないか。
最低だ、こんなの。

映画館を出て暗い道を歩きながらわたしはむっつりとしていた。けれど、周囲の誰も、むっつりとはしていなかったし怒ってもいなかった。映画を楽しんだ後の満足そうな空気が流れていた。
思い切って「この映画暗すぎだったと思う」と言ってみると、周囲の誰かが「まぁ中国映画って悲劇が多いよねー」と答えて、終わりだった。
数人でこの映画を見に行ってよかった。帰り道が暗くてよかった。そうでなければわたしがひとりでむっつりと怒っているのが伝わって、帰り道の雰囲気を悪くしてしまっただろう。

その後大学4年間でいろいろな中国の物語と出会った。3、4年時代はほとんど魯迅一色に塗りつぶされた。魯迅のものは全部一通り目を通したと思う。
全部中国語で読むのが理想だけれど、日本語でかなりのものをカバーした。
魯迅の書いたものは血中のアドレナリン濃度を上げてくれるから好きだったけれど、(そして今でも好きだけれど)読んでいて楽しいかどうかというと、楽しいとは言えなかった。学問的には楽しくても、書いてある内容は楽しいとは言い難く、ガッカリしたりイライラしたり、フラストレーションがたまるものも多かった。
いや、学問的にも結構辛かったかもしれない。魯迅を読みこなすには自分の知識がかなり足りなかったから。今思えば楽しかったような気がするのは、思い出は美化されるものだからだろう。

魯迅以外の作家のものはこれまた悲劇が多く、登場人物が病死したり殺されたりするものが多かった。冷静に考えれば、そんなものばかりではなかったと思うのだけれど、どうもそういうものばかりが記憶に残ってしまっている。

そんなわけで、中国映画との最初の出会いが最悪だったこともあり、かなり長いこと中国映画に食指が動かなかった。というか、避けていた。自分が読んでいるもの、読まなければならないもの、授業で触れるものだけでもう十分、お腹いっぱいだった。映画でまでそんな世界を見たくなかった。

わたしは自分が思っていたよりも、映画が好きで、映画の好みもはっきりしていて、映画を観るスタイルにもかなりこだわりを持っていたのだと思う。
だから、映画の内容や観に行くシチュエーションを考慮せずに、ただ「勉強になるから」という動機で、中国映画を観るべきではなかったのだ。だから、「中国映画=悲劇・絶望・暗い・辛い」と思い込んでしまうという呪いがかかってしまったのだ。

わたしにかかっていた「中国映画の呪い」を解いてくれたのは「初恋のきた道」だった。呪いが解けるまで、とても長かった。呪いが解けた今となっては、中国映画も普通に楽しんでいる。過去にダメだった作品も、改めて観てみると全然違う作品のように感じる。

けれど、わたしに呪いをかけたあの映画の作品名は、いまだに思い出せないままだ。思い出ださなくてもいいと思っている。ヘタに思い出してまた呪いがかかったら面倒だ。

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blue4u at 00:00│Comments(11)TrackBack(0)中国語 

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この記事へのコメント

1. Posted by 鳳璃雛   2005年11月12日 01:02
 ブログでは初めてですね。こんばんは。
 大学で中国語を学ぶ中で、私も
・初恋の来た道
を見ました。今から3年位前ですが、私も、その頃からちょっとずつ中国映画を見る様になったかなと思います。
 さて、私の場合、中国映画と言えば、最初の印象は香港映画だったので、お笑いを楽しめるという感じでしたね。
2. Posted by あおい   2005年11月15日 10:47
> 鳳璃雛様

お久しぶりです。コメントありがとうございました。

わたしも、中国人が出る映画といえば香港映画というイメージが強く、中国語を勉強する前から楽しんで見ていました。中国語を始めたばかりの頃も普通話と広東語の違いをよくわかっていなかったので「勉強すれば香港映画も字幕なしで観られるようになるのかな」なんて思っていました。香港映画の楽しいイメージが強かっただけに、最初に出会った普通話の映画の悲劇ぶりは本当にショックだったのですよ。

「初恋のきた道」はいい映画でしたねぇ♪
3. Posted by Piko rin   2005年12月09日 05:57
5 はじめまして(´▽`)/ Mixiから来ましたPiko rin です! びっくりしました!「AllAbout中国語」のあおいさんだと分かって感激です!『NHK講座の120%活用術』など、独学なのでとても参考になりました。ありがとうございます!

私も『初恋のきた道』は大好きです
自分のお弁当を、彼が食べてくれるか、ソワソワしてる章子怡がとても、可愛かったですね〜☆

韓国ドラマ「チャングムの誓い」ご存知ですか?
私,BS放送の前半を見逃して残念がっていたら、台灣の友人が前編のDVDを送ってくれたのです。感謝!感謝!ですが…韓国語か中国語しか選べなくて。 結局、韓国語発音に中国語字幕で、なんとか観ることが出来ました(汗)今度は字幕なし中国語発音で観ようかと、思ってます!
長々と失礼しました <(_ _*)> こんな私ですが、よろしくお願いします!
4. Posted by あおい   2005年12月12日 18:03
> Piko rinさま
お返事が遅くなってしまってごめんなさい!
コメントありがとうございました♪

AllAboutのユーザーの方は、アンケートによると独学の人がとても多いようです。
独学ってヤル気を保つのが大変ですよね。
「楽しい♪」という気持ちがあれば続けられる…と思うので、楽しめるような内容のものをいつも考えています。ご意見をお気軽にお寄せください!

「チャングムの誓い」は観たことがないのですが、Piko rinさんは韓国語発音に中国語字幕で観る…くらいですからかなり面白そうですね♪機会があったら観てみたいと思います。

これからもどうぞよろしくお願いいたしますヽ(^ー^)ノ
5. Posted by シノビ   2006年03月03日 18:02
コメントありがとう。

猫ジャンキーなんでいやされますお。
6. Posted by matu   2006年03月14日 21:26
話題の高倉健主演、張芸謀監督の「単騎千里を走る」を見てきました。
2時間の映画では展開にやや無理があったかな?
中井貴一は顔が出なくてむしろ良かった。高倉健や寺島しのぶなど日本の役者はともかく、中国の出演者の好演が光った。翻訳のできない通訳チューリンはいい味出していたし、特に良い出来栄えだった。村長などのエキストラも無理ない演技でよかった。
題名忘れたけど、仮面百面相の映画や「息子の告発」などに次ぐ出来だったかな。
7. Posted by みずぶぅ   2006年03月19日 01:13
初めまして!
mixiの足跡たどってきました☆
私は大学で中国語を専攻してます。
今三年でまさに就職活動中です
私も、まさに中国語の上達につながるのでは!?
という理由から中国映画を見始めた一員ですが…
あおいさんが一発目に見た映画は
日記を読ませて頂いた限り
ひどいですね、確かに
私はもともと英語好きだったのですが、
大学入学を機に視野を広げようと思ったのと
言葉を学ぶのは基本的に好きだったので
始めたのですが、
大学の先生の影響で
ジェット・リーにはまってしまいまして(笑)
彼の映画は全部持ってます。
まだ見切れていませんが
あおいさんは中国人でどなたか
好きな俳優さんはいますか??
8. Posted by めいつん   2006年04月13日 23:50
こんにちは!早速登録しました。

どうやら韓国の映画も「悲劇」がおおいみたいです。
本当かうそかはわかりませんが、
韓国の人は「自分はどれだけ悲惨か」というものを
みせたがるそうなんですが・・
実際そんな韓国の人をみたことがありません。
でも、それで韓国のドラマや映画には悲劇が多いと
本で読んだことがありました。
中国はどうなんでしょうね。
私もハッピーエンドが好きです。
9. Posted by あおい   2006年04月18日 10:09
うはぁ、いただいたコメントのお返事がめちゃめちゃ遅れておりました。大変失礼いたしました。

シノビ様、ウチの猫写真を見てくださったのですね。
ペット親バカですので、愛猫をほめていただくと有頂天になります。ありがとうございます。
10. Posted by あおい   2006年04月18日 10:12
> matu様

コメントありがとうございました。メルマガでブログとコメントをご紹介させていただきました。ブログの内容が非常に充実していて敬服いたしました。またお邪魔させていただきます。

> みずぷぅ様

ジェット・リーさんはわたしも大好きです。
あの身のこなし、常人とは思えないですよね。ワイヤーとか使っているんでしょうけれど、あの方ならワイヤーなしでも空飛べそうな気がします。
どことなく、瞳の中に憂いがあるところも、深みがあって素敵だと思います。
11. Posted by あおい   2006年04月18日 10:17
> めいつん様

考えてみれば、日本のドラマも「おしん」とか、アニメも「蛍の墓」とか、見ていてツラいものはたくさんありますよね。東洋人のメンタリティに悲劇を好む部分があるのかもしれません。日本の演歌とかも悲劇的ですし…。

でも、やっぱり映画の中では夢を見たいです。
映画は多少嘘っぽくたってオッケー♪と思ってます。
現実でありえないような風景を映画の大スクリーンで観るのが大好きなので、特撮とかCGとかワイヤーアクションとかSFとかが大好きなんです。

リアルなのとか悲劇は、小説とかレンタルの小さい画面でしんみりと味わうので十分です。

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