第9回電撃ゲーム小説大賞・大賞受賞作。
あらすじはこんな感じ。


惑星へ移民をして繁栄したものの、資源争いの果てにゆるやかに文明は後退している世界。
寄宿学校で生活するキーリは、霊が見える体質だった。
ルームメイトのベッカも幽霊だった。

ある日、死んでいるのに動いている人と出会う。ハーヴェイと名乗った。
戦争中に生み出された、死体に動力を組み込んで動かす不死者。
ハーヴェイは亡霊の取り付いたラジオのために旅をしていた。死体のある元戦場へ行く途上。
いろいろあってキーリは一緒に行くことにする。


乗った列車には車掌の霊が乗っていた。しかし列車事故の映像を繰り返し見せてくる。不審に思ったキーリは車掌の霊の後をつけて連結が壊れかけなのを知る。事故を防ぐ。


列車事故復旧のため、次の町で足止めされる。町はお祭りをしていた。
ハーヴェイは知り合いのサーカス団と会う。年老いていく友人と変わらない自分。
キーリはピエロの男の子の霊を見る。


戦場近くの町に来る。
ハーヴェイは昔暮らした家に出かける。家族のように暮らした人たちはすでに年老いて亡くなっていた。キーリはその幸せだった頃の残滓を視る。

キーリはハーヴェイと雰囲気の似ているけど嫌な感じの神官と出会う。
ラジオの霊が街の悪霊に襲われ連れ去られる。追いかけるキーリ。途中でハーヴェイと合流してラジオ霊を助け出す。

神官は不死人を始末しに来ていた。


炭鉱近くに来る。トンネル内で幽霊列車を見る。
霊的な物が溜まり易い石。坑道に逃げ込んだ敗残兵を殺戮するシーンが蘇る。
ハーヴェイは取り乱す。殺す側が殺される側になる過去を思い出す。
ラジオ霊の兵長を殺したのもハーヴェイだった。

老人の霊が運転するトロッコが出迎える。
トロッコに乗って進む。周囲の荒野には墓標が林立している。
旅の終わりだが、別れたくないキーリはわがままを言って泣く。霊になったら一緒にいられるから私を殺して、兵長を殺したみたいに、と口走ってしまう。

次の日兵長消える。そしてハーヴェイを始末しに教会の装甲列車が現れる。
ハーヴェイは逃げる。しかしかつての仲間で今は教会に使われている神官に殺される。


キーリは神官の勧めで首都の神学校へ転校が決まる。
列車で移動中、ラジオから呼ぶ声がして、貨車に行くとハーヴェイの死体。
兵長の霊がハーヴェイの体を動かしてここまで連れてきた。

そしてキーリは不死人を動かす核を取り返し、死体に収めて。
いろいろあって別々に逃亡することになって。
最後は駅で落ち合うことができて、終わり。



道連れに付き添って旅をする連作短編風の作品。
一期一会の短編の旅という点では、キノの旅と似ていた。
こちらは死者との一期一会も含んでいるから、より感傷的になります。
哀しい物語になりそうだなという感じがしました。


死んでいるものが見えるために、生きてる人よりも死んでいる人と交流してしまう少女キーリ。
ストーリーの大きなうねりというか起伏には乏しいものの、その分しっかりとキーリの心情を描くことに費やされていたと思いました。
文章うまかった。


なんだろう。
突飛なアイデアや奇抜なアイデアは見受けられないのだけど、アイデアの組み合わせがとてもうまい気がしました。

衰退していく途上にある惑星、死者の見える少女、不死者、そして死者の声が聞こえるラジオ。
一つ一つはわりとありそうな設定なのに、この作品では魅力的にまとまっています。


それにしても、旅ものはいいですよね。
次々と現れる未知の場所、人々との出会いと別れがあって。
できの良い旅ものを読むと、自分でも書きたくなります。
さすが大賞といったところ。


終わり。