5分で分かるインドネシアビジネス。

日系企業を取り巻く海外ビジネス環境は年々厳しくなっており、海外ビジネスのあり方そのものを考える中堅中小企業がここ最近では多くなってきたように感じます。 海外では知識レベルによって人を評価するローカル社員も多く、経営スキルではなく知識レベルによってローカル社員から信用されない現地法人の社長も散見されます。 会計・税務・労務の専門家が貴社の知識面でのサポートを当ブログにて行うべく、各種法律を基礎とし実態と比較しながら(実態よりに)執筆しています。 また、グループ全体のリスク管理の観点からも記載することが多いため、インドネシアビジネスだけではなく日本も含めたグループ全体のリスク管理のためにもご確認いただければ大変嬉しく思います。

2017年09月

皆様いつも大変お世話になっております。㈱フューチャーワークスの片瀬です。インドネシアの最新事例と最新の法改正の内容を下記にてお送りいたします。ご一読いただければ幸いです。

 

【やっぱりロイヤルティは否認なのか!?

先日、製造業の日本本社から「税務調査でロイヤルティが全額否認と言われているが何とかならないか」と質問をもらいました。よくよく話を聞いてみるとローカルコンサルが過去に3%で設定したロイヤルティ料率が次の理由に認められないと言います。

 <認められない理由>

①対価性が認められないため

②陳腐化により超過収益力が既になくなっているため


ローカルコンサルは調査担当官と「アンダーテーブルの交渉」に入る気満々で、自身が設定したロイヤルティ料率に対する責任はないと言っているそうです。また、日本側では研究開発機能を一手に担っており、毎年高額な研究開発費を計上していますが、インドネシアにおいてロイヤルティの正当性について反証するためには裁判を起こさないとならないそうで、ローカルコンサルからは穏便に済ますためにも「アンダーテーブル」を支払った方が良いと言われています。ちなみに毎年ロイヤルティを支払ったとしても、なお一定の利益を計上しているそうですが、移転価格ドキュメントの作成はしていないそうです。

 インドネシアの税務調査担当官は過分な権限を持っている(詳しくは「税務調査に係る調査担当官の権限)ために、確かにアンダーテーブルが横行している現状があります。ロイヤルティは税務調査担当官の匙加減によるために、否認される可能性は依然として高いものであります(上記事例では「アンダーテーブル」を支払うか、「裁判」で戦うか、のいずれかになるでしょう)。

ただし、別会社において「ロイヤルティ(3%)」を支払っているにも関わらず、移転価格ドキュメントを提出したところ、その後に特に音沙汰がない会社があります。ロイヤルティの価格設定はTNMM(取引単位営業利益法)に含めて行っています。これがドキュメント提出の恩恵なのか、偶然なのかはもう少し数が集まらないと何とも言えませんが、少なくとも移転価格ドキュメントが意味のないものではないようです。

ちなみに現状は「移転価格調査」ではなく、上記のように「通常の調査」において価格の適正性を指摘されていますので、税務当局に移転価格の知識がある担当官が殆どいないことが明らかであり、こちらが提出している「移転価格ドキュメント」に対してケチは付けづらいように思います。今後(もう少し検証数が集まった後に)、移転価格文書を作成していても強引にロイヤルティを否認されるようであれば、すぐに当ニュースレター等でお伝えいたします。また、その場合には親会社への利益の還流は「棚卸取引」以外は考えられなくなるのでその点もしっかりと認識していただければと思います(詳しくは、上記のコラムへGO!)。

  

【みなし配当課税!?】

インドネシア法人が、一定の要件に該当する外国法人の株式を保有している場合に、たとえ配当が無かった場合でも「配当金があったものとみなして」、インドネシア法人の課税所得として申告・納税する、という「被支配外国法人(CFC:Controlled Foreign Company)規則」が定められています。

※CFC税制は日本では「タックスヘイブン税制」と捉えられていますが、インドネシアにおいては「みなし配当課税」と捉えられています。

2017年7月27日に発行された財務大臣規則第107号により、対象となる外国法人の範囲の拡大と、「みなし配当金」の計算方法の変更がありました。一般に、インドネシア法人が配当で海外に利益を還流するケースは多いかと思いますが、逆に海外から配当を受け取るケースは通常は少ないかと思います。しかし、本規則では、外国法人の株式を直接的に保有していない場合でも、「みなし配当金」を計算し、法人税を納める必要が出てくる可能性がありますので、要件の確認が必要となります。

該当する外国法人の要件

「みなし配当金」を認識する必要のある外国法人の要件は下記になります。

   インドネシア納税者が「単独で」50%以上の株式を直接保有している外国法人

インドネシア法人がいわゆる子会社を保有している場合です。

   インドネシア納税者が「集団的に」50%以上の株式を直接保有している外国法人

個人を含む複数のインドネシア納税者が、合計して50%以上の株式を保有している場合です。

   インドネシア納税者が「単独」もしくは「集団的に」50%以上の株式を間接保有している外国法人(本規則から追加)

間接保有している外国法人については、本規則から追加になりました。

例えばPT.A社がB社(外国法人)の株式を50%保有し、B社がC社(外国法人)の株式を50%保有しているケースを想定します。実質的な支配で見ると、PT.A社はC社の25%を支配していることになります(50%×50%=25%)が、このケースでは「間接的に」B社がC社の株式を50%以上保有していますので、「みなし配当金」を認識する必要のある外国法人に該当してきます。計算上の株式保有割合は、払込資本金によって判定されますので、例えば優先株などによって議決権が制限されている場合でも、払込資本金の50%以上にあたる株式を保有していれば本規則に該当してきますので、留意が必要となります。

みなし配当金の認識・計算

前述の要件に当てはまる外国法人の税引後利益に実質的な所有割合(③のケースでは25%になります)を乗じた額は、インドネシア株主が受ける配当所得とみなされ、合算して課税が行われることになります。このみなし配当所得の認識は、外国法人の法人所得税申告書の提出日から 4 カ月後になります。(外国法人に申告書の提出義務がない場合は、事業年度終了の日から 7 カ月後になります)。外国法人から実際に配当が支払われた際は、過去に申告済みのみなし配当金と相殺処理し、非課税処理とすることができます(過去5年間のみ相殺可能です)。

みなし配当金の意義

そもそも、受取配当金に対して課税されるべきかどうか、という議論があります。本来の考え方として、配当金は法人税控除後の税引後利益から配当されるため、配当金を受け取った際に課税所得としてしまうと、二重課税になってしまいます。シンガポールなどの国では、上記の考え方に基づいて、配当金に課税がされませんが、インドネシアでは一部の場合を除き、受取配当金に対して通常の法人税率で課税がされます(日本でももちろん課税はされません)。

つまり、このCFC税制とはインドネシア納税者が外国法人(海外子会社)を支配している場合(間接支配・直接支配含む)には、故意に配当を行わないことができるために外国法人(海外子会社)の利益をもって配当とみなそうという規定です。受取配当金が法人税課税されるインドネシアならではのCFC税制(他国のCFC税制とはちょっと異なる)のために外国法人(海外子会社)を実質的に支配している企業はご注意ください。


【新規赴任者がローカルスタッフを管理するために必要なもの Part②】

新規赴任者がローカルスタッフに言うことを聞いてもらえない原因が「赴任直後の業務知識のなさ」にあると前回のニュースレターで記載いたしましたが、それを補助する「業務フロー(業務マニュアル)」とは一体どのようなものかを今回のコラムでは記載します。

業務フロー・業務記述書

会社が行っている業務を分解すると、細かなプロセス(サイクル)に分類することができます。新規赴任者が外してはいけないポイントは、「業務フロー(業務マニュアル)」に記載されている「プロセス(サイクル)」を確認し、その「承認ポイント」で実際に何が行われていることを確認することにあります。

例えば製造業の場合は「販売プロセス」、「購買プロセス」、「原価計算プロセス」、「在庫管理プロセス」、「固定資産プロセス」、「人件費プロセス」、「決算プロセス」、「税金プロセス」など管理しなければならないプロセスが多岐にわたり、更に(例として「販売プロセス」を更にブレイクダウンすると)、「見積サイクル」、「受注サイクル」、「出荷サイクル」、「債権管理サイクル」、「仕訳計上(売上)サイクル」、「得意先マスタサイクル」、このようないくつものサイクルに分類することができます。この11つのサイクルに対して、業務フローを作成していくのですが、全てのサイクルに対する業務フローを作成すると、その数が70~80個ほどになるためにかなりの手間がかかります。そのため、まずは外してはいけない「承認ポイント」から順を追って業務フロー(業務マニュアル)を作成していきましょう。

下記に以前作成した「見積サイクル」に対する業務フロー(実務で作成したものですが、中身は大きく変えています)を参考のために貼りつけます。

1

ひし形のマークは「承認ポイント」を表すものであり、実際の赴任者(責任者)が承認するのは赤丸の部分です。その部分を更にブレイクダウン(下記のように“実際の帳票類に日本語でコメント”)して、業務マニュアルを作成していくのです。

※実際の資料をお見せすることができないので、ネットで落ちていたものを参考として使っています。“日本語のコメント”書きに関してもイメージ付けのために入れているものであり、実際はもう少し細かく記載します。

2

業務マニュアル作成時には、その他に各種業務のスケジュールに関しても把握しなければなりません。業務フローにスケジュールの概念も含めて作成してください。もちろん業務記述書(業務フローを文章に落し込んだ「業務の説明書き」)に含めても構いません。

母国語とは不思議なもので、インドネシア語や英語の資料では全くイメージが付かない資料であっても、日本語でコメントが入っているだけで一気にイメージ付けが容易になります。マニュアルの目的が「赴任者のためなのか」「ローカルスタッフのためなのか」によってコメントを付す言語は変える必要があります。折衷案での英語のコメントは上手くいかない原因となるのです。

業務マニュアル作りは、「業務フローの視覚化」、「実際の帳票類に直接母国語で記載」が大きなポイントとなりますので、実際に作成する際にはその辺りに注意して作成してみてください。

さて、次回は、「財務分析」「業務フロー」「業務改善」のそれぞれの関係を確認しようと思います。数字を確認(財務分析)しただけでは業務改善することができないのですが、数字から改善を行おうと考えている経営者(コンサル)が多いので、その辺りの考え方をしっかりと整理します。次回もお楽しみに!


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※本ニュースレターに記載の内容は、作成時点で得られる法律、実務上の情報をもとに作成しておりますが、本ニュースレターの閲覧や情報収集については、情報が利用者ご自身の状況に適合するものか否か、ご自身の責任において行なっていただきますようお願いいたします。 本ニュースレターに関して発生トラブル、およびそれが原因で発生した損失や損害について、㈱フューチャーワークス及び執筆者個人.は一切の責任を負いかねます。また、本ニュースレターは一部で外部サイトへのリンクを含んでいますが、リンクする第三者のサイトの個人情報保護の取り扱いや、そのサイトの内容に関して一切責任を負いませんのであらかじめご了承ください。

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※なお、本メールは以前名刺交換をさせていただいた方を中心(情報サイトからも一部抽出)にお送りさせていただいております。

皆様いつも大変お世話になっております。㈱フューチャーワークスの片瀬です。インドネシアの最新事例と最新の法改正の内容を下記にてお送りいたします。ご一読いただければ幸いです。

【USD建ての親子ローン金利3%で税務否認!?】
最近、ある企業の社長様から「税務署に、ルピア建ての借入は利率3%で良いが、USD建ての借入は利率3%ではだめだ。全額否認。」と言われているとのお話を聞かせてもらいました。税務担当官が言うには、1.5%が適正な利率らしいのですが、その根拠は当然に示してもらえません。その他各国の事例をみると、①親子ローン以外の第三者からの借入がある場合(親会社から第三者への貸付がある場合)にはその金利との整合性、②第三者金利がない場合には、借り手の調達金利、③それも不明確な場合には貸し手の調達金利、④それも不明確な場合には貸し手の国債利回りなどにより検証します。

借り手のUSD建て調達金利は日系メガ(2~3%)から調達するかインドネシアの銀行(8%~10%)から調達するかによって利率がかなり違います。調達金利は低くても2~3%なので一定のスプレッドを付せば3%を超えます。また、LIBORのUSD-SWAP RATE(10年)が2%程度なのでそれにスプレッドを付したとしても3%程度(10年の親子ローン契約、5年では1.75%+スプレッド、1年では1.42%+スプレッド)までなら正常な取引と主張できます。・・・ただしインドネシアなので、理論的に主張することがどこまで通用するかが不明です。上記の1.5%の利率が税務当局のスタンダードではなく、その担当官のスタンダード(その他の会社で同様の指摘は聞かないため)と考えられますが、どのように対応するかは事前に検討しなければなりません(あまりにも低くすると今度は日本の税務調査で利息収入が少ないと言われてしまいます)。
※また、3%を超える利率で設定している場合には、インドネシアの銀行からの調達利率(類する資料を保存)と比較するなどその他の方法で主張するようにしますが、その場合にはリスクもありますので、なるべく上記の方法により金利設定をするようにしてください。

【所得税法の改正(草案)】
昨年末から財務省(Ministry of Finance)が、2008年から改正のない所得税法(Income Tax Law)の改正を検討しているようです。法人税の引き下げ・中小企業に対する源泉分離課税(Final Tax)の廃止・E-Commerce事業から発生する所得への課税方法などが検討されています。現在は草案の段階ですが、改正されればインパクトは大きいので引き続き注視が必要です。

新規赴任者がローカルスタッフを管理するために必要なもの
3~5年前にインドネシアに進出した日系企業はそろそろ駐在員の交代の時期です。新たに赴任した駐在員はなかなか仕事になじめないことが多いのですが、それは何故でしょうか。

業務知識がある人こそ仕事ができる人と考える
「上司に現場を知らない奴がやってきた」とインドネシア人は良く言っています。全くもって使えないと。そんな上司の言うことは一切聞きこうとはしません。スキルレベル(業務知識)が彼らの中で上司としてついていくべきか否かの判断の基準になります。一度言うことを聞かなくなってしまうと、新たに採用する以外に手が打てなくなってしまいます。そのため、特に新規の赴任の際には(表現は良くないですが、)なめられように注意しなければなりません。

新規の赴任の際にも、着任してすぐに、「あれはやったのか? これはやったのか?」とスケジュールに沿って業務内容を理解していることのアピールは重要です。インドネシア人に「おっ、この人知っているな。」と思わせなければなりません。細かな業務はインドネシア人スタッフに任せるしかありませんが、横断的な業務管理やスケジュール管理は日本人責任者が行わなければなりません。資料がインドネシア語だとしても内部資料であれば見るポイントは限られます(不明費用の支出や請求書の金額、資金繰り確認、残高の一致など)。

新規赴任者のために、業務マニュアルを整備することが重要です。スケジュールと承認ポイント(社内資料は毎月同じものが出てくるために、それをどのようにチェックし、承認するかの細かなルールまで含められれば尚可)をしっかりと取り込んだ業務マニュアルさえあれば着任してすぐに業務の管理を行うことができます。引継ぎがスムーズにいかなければ余計な費用が掛かってしまいます(管理部門員の再雇用もこのタイミングが多いです)。引継ぎでトラブルがないよう業務マニュアル(業務フローと業務記述書)をご準備いただければと思います。

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