皆様いつも大変お世話になっております。㈱フューチャーワークスの片瀬です。前回のニュースレターをお送りして2週間の間に質問を3件いただきました。その中の1つを今回のニュースレターでお伝えいたします。皆様から頂いた質問の形を変えて、皆様と共有することによってインドネシアの現場で起こっていることをリアルタイムにお伝えできると考えています。表面的な規定の取扱いではなく、「現場の今」をお伝えします。ご一読いただければ幸いです。

※もちろん頂いた質問は、本質的な部分は残しますが大きく内容は変えております。


【実務でどうするCbCR?】

お客様:「先日、現地のコンサルからCbCRをマスターファイルに含めて欲しいと依頼がありました」

私:「法律上、マスターファイルとローカルファイルは保存義務。CbCRは提出義務のために、(CbCRの内容は)マスターファイルに含める項目ではありません」

お客様:「税務当局からの指示があったのかもしれません?」

私:「税務当局からのマスターファイルに含めるという指示は考えられません。税務当局が公表しているフォームがあるので、弊社ではそれを2017年度の申告書に添付して申告を行います(内容は2016年度のもの)。なので現地のコンサルからの独自の指示でしょう。」


・・・・と、いきなりローカルのコンサルファームから言われても困ってしまいますよね?なので、CbCRがどのようなものかを確認し、しっかりと対応できるようにしておく必要があります。具体的な対応は下記の通りです。


【具体的対応】

移転価格文書に関しては、マスターファイルとローカルファイルを作成して安心されている方も多いかと思いますが、2017年の申告書の提出と同時にCbCRも提出しなければなりません。コンサルに申告書の作成を任していたらCbCRを作成してくれなかったなどという事態も起こり得ますので、事前にコンサルにどう対応するかの確認をしていただければと思います。

※申告書の添付書類ですが、通常の申告書とは違うものを新たに作成(親会社からのヒアリング等あり)するために、業務として分けるコンサルが殆どです。


<CbCR対応のポイント>

①税務当局からフォームが公表されている※1

②グループ会社を納税地毎に分類し、定量的な情報(及び機能リスク)を記載する

③2018年からオンライン申告によって提出できる(と言われている)

④ハードコピーでの申告ももちろん可能

⑤保存義務でなく、提出義務のために確定申告書に添付して提出しなければならない

⑥2017年度に申告するCbCRの内容は2016年度の内容である

⑦ローカルファイルで行った機能分析と齟齬がないように記載する

※1公表されているフォームの一部を下記に差し込みますので、参考にしてください。

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 ※4枚綴りになっているCbCRの一枚目を添付


具体的な取り扱いはそこまで難しいものではありません。まずは、税務当局から公表されているフォームを手に入れて、内容を確認してみてください。その上で、担当するコンサルファームに作成予定を確認し、不備なく申告を行っていただければと思います※ただし、親会社とのコミュニケーションが必要になる項目:「他国の関係会社の情報」がありますので、情報のやり取りは日本語で行えるコンサルが良いです。


【新DGT-1フォームの問題点・実務上の対応】

日本法人へ配当などで利益の還流を行う場合、インドネシア側で源泉税が徴収されますが、例えば非居住者への配当金支払にかかる源泉税率は国内法では20%とされています。しかし、日本とインドネシアは租税条約を結んでおり、租税条約上では10%となります。どちらか低い税率が優先されることになっていますので、この場合10%となりますが、この租税条約上の税率を適用するためにDGT-1というフォームを税務署に提出する必要があります。

このDGT-1は2017年8月1日からフォーマットが改訂されていますが、実は新DGT-1フォーマットについてインドネシア税務署と日本税務署の連携がうまくなされていないという問題があります。そのため、この新DGT-1フォーマットの書き方について困っている企業も多いようです。この問題点と、実務上の対応方法について見ていきたいと思います。


DGT-1フォームは、支払いを受ける側の日本法人が日本の税務署で認証を貰ってインドネシア法人へ送付し、認証済みのフォームをインドネシア法人が月次の源泉税申告と共にインドネシア税務署に提出します。これによって、このフォームに記載されている日本法人が、実態のある日本居住者であることの証明となり、租税条約上の税率の適用を受けることができます。

今回問題となっているのは、3ページある内の1ページ目の下記のフォームです。

旧フォーマットでは、下記図の通り、PartⅢの「Date」の欄に発行日(日本の税務署に認証を依頼した日付)を記載することになっており、この日付から1年間は有効とされていましたので、1年に1回の発行で問題ありませんでした。

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旧フォーマット。1ページ目は発行日から1年間有効とされており、PartⅢの日付の記載は発行日のみ。

出典:インドネシア国税庁(http://www.pajak.go.id/?Itemid=156&option=com_docman&limitstart=5

しかし、新フォーマットのPartⅢでは下記のように、「居住証明を受ける期間」を記載することになっています。

日本の税務署としては、「将来の日付の居住証明」をすることはできず、PartⅢの期間も過去の日付でしか記入できないとしています。そのため、取引ごとにDGT-1を作成し、インドネシアで申告しなければいけないという問題が発生しています(空欄にしておいたまま認証を受けることも不可です)。

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新フォーマット。PartⅢの日付の記載は「居住証明を受ける期間」を示すが。。

出典:インドネシア国税庁(http://www.pajak.go.id/?Itemid=156&option=com_docman&limitstart=5


実務上の対応として、下記が考えられます。

(1)取引が行われる月ごとにDGT-1を作成する。

(2)現在までの日付にて税務署から認証をもらい、複数枚作成しておく

(3)過払いがあった場合には還付を受けることができるとされていることから、国内法の源泉税率で一旦納めておき、会計期末に過去1年分の期間を証明したDGT-1を発行した後、還付申請をする。


(1)が一番手間ではありますが最も安全であり、現状は実務上この方法で行っている企業が多いようです。(2)では、実際は各取引について、過去の日付の居住者証明にて対応することになりますが、これによって指摘を受けるケースは今のところ少ないようです(2017年10月現在)。(3)は可能ですが、還付申請による税務調査が入る可能性が高いです。

このような実態から、再度運用方法やフォーマットが変わる可能性がありますので、注視していく必要があります。

【日本本社への利益の還流】

インドネシアにおいて利益が出始めた日本企業は、日本本社へどのように利益を還流しようかと考え始めます。ルピアが安定していない中、ルピアで持ちたくないという思惑が日系企業にはあり、結構無茶な方法で利益を還流している会社も中にはあるようです。基本的に親子ローンの返済は現地の資金繰りを圧迫するので、利益を打ち消せる方法(税金を支払わないで良い方法)を模索し始めます。※親子ローンの返済は、負債の返済であり、利益の還流ではありません。そのため資金繰りが圧迫してしまわないように注意が必要です。


ただし、日本親会社への利益の還流方法として取れる方法は実はそこまで多くはありません。基本的には、以下の3つぐらいしかありません。

※念のためにそれぞれの方法でインドネシアから日本に還流した場合の源泉税率を記載しておきます。


【利益還流方法】

①配当により還流      ⇒10%

②利息により還流      ⇒10%

③取引(棚卸・役務・無形資産)により還流       ⇒ロイヤルティ10%

※租税条約上のパーセンテージ(一定の場合を除く)。租税条約適用の実務対応は上記の「●新DGT-1フォームの問題点・実務上の対応」をご確認ください。


配当による還流は、「課税済利益の還流」であり、既にインドネシア国内においてインドネシアの法人所得税が課税されています。利息による還流と取引による還流は、「課税前利益の還流」であり、インドネシアの課税対象となる所得金額を減少する効果があります


【配当により還流する場合】

配当での還流は「課税済利益の還流」であり、インドネシア子会社から日本親会社への支払いの際に10%の源泉税が課税されます。日本本社側では「外国子会社配当益金不算入制度」の適用となり、「課税済利益の還流」であるために日本で益金に算入(税務上の収入として計上)する必要はありません。この配当に係る源泉税の取扱いは「外国税額控除の対象」とならず、「損金算入(税務上の費用として計上)」もなされません。

※この部分は2015年に日本において税制改正があり、経過措置を経た2018年4月1日より開始する事業年度から下記の通り取り扱うこととなります(配当が海外で課税されない場合には、日本において課税しましょうという改正)。

<2015年税制改正>

①海外の法令において配当額の損金算入するものとされている場合には、その配当額における日本の取扱いは「外国子会社配当益金不算入制度」の対象外(海外:損金算入、日本:益金参入)

②海外において配当額の一部損金算入がなされた場合には、一定の要件の下、その損金算入額に対応する配当額については「外国子会社配当益金不算入制度」の対象外とすることも可能

③これらの場合(①及び②の場合)において、「外国子会社配当益金不算入制度」の対象外とされた配当に係る源泉税については、外国税額控除又は損金経理をすることが可能


【利息により還流する場合】

利息での還流は「課税前利益の還流」であり、インドネシア子会社から日本親会社への支払いの際に10%の源泉税が課税されます。「課税前利益の還流」であるために、インドネシア子会社側で「損金へと算入」することが可能であり、日本親会社側では「益金へと算入」する必要があります。既に支払っている源泉税について、二重課税を排除するため(利息は日本親会社側で「益金へと算入」され課税されるため)に、日本において「外国税額控除」の規定の適用を受けることができます。

なお、インドネシアにおいて「過少資本税制(「資本金」と「借入金」、資金を調達するという意味では同じ性格ですが、利益の還流にあっては「配当」と「利息」と、その還流方法は異なります。配当は「課税済利益の還流」であるためにインドネシアにおいて法人税が課されますが、利息は「課税前利益の還流」でありインドネシアの法人税額を減少させる効果があります。過少資本税制とは、有利な利息での還流を制限する法律。)」の適用があり負債資本比率が4:1を超える場合に対象となります※2015年9月9日の税制改正。

そのため負債資本比率が4:1を超える借入を行っている場合には、その超える部分に対応する支払利息が「損金不算入」となってしまいますので、特に製造業等の借入が多い会社様はご注意ください(そのためDES:「負債と資本の交換」を行っている会社も多い)。


【取引によって還流する場合】

取引での還流は「課税前利益の還流」であり、その内容は更に3つに分類することができます。

①棚卸資産の取引価格による還流

②役務提供(事業所得)の取引価格による還流

③無形資産(使用料)の取引価格による還流

この中で源泉税が課されるものは③の使用料(ロイヤルティ)の取引価格による還流だけであり、その源泉税率は10%です。それ以外の取引では源泉税が必要ありません(租税条約を結んでいるため、本来②の事業所得に該当する場合の役務提供については、源泉税が必要ないのですが、税務調査時に源泉税の徴収漏れを指摘されることがかなり多いようです)。

既に支払っている(使用料の)源泉税については、二重課税を排除するため(使用料は日本親会社側で「益金へと算入」され課税されるため)に、日本において「外国税額控除」の規定の適用を受けることができます。ちなみに源泉税を支払わない①と②の取引に関しては、当然ながら「外国税額控除」の適用はありません。


また、「役務提供(事業所得)」と「使用料」の違いは、無形資産などの権利、技術やノウハウが他方(親会社から子会社)へ移転しているかによって判断されます。こちらは判断が難しいところなので個別に確認が必要になりますし、(慣行としての)取り扱いも不透明な部分がありますので担当するコンサルに確認をお願いします。


※その他に、日本負担給与の支払や出張者の日当の支払等でも利益の還流を行うことができます。


このように利益の還流については、その取るべき方法の数自体は少ないですが、税務リスクが複雑に絡む部分となります。いずれの方法を取ったとしても、税務リスクを確実に排除することは難しいため、(少し語弊があるかもしれませんが)現状のインドネシアでは、「当局が発見しづらくなる方法」と「正常な方法」についても比較検討することが必要になるかもしれません。※「当局が発見しづらくなる方法とは」、例えば日本としてはロイヤルティで回収したいけれどもロイヤルティは税務調査で指摘を受ける項目なので、棚卸資産取引にその分の利益を負担してもらう方法など。←移転価格文書を作成するので、その上で利益は出ていなければなりません。


弊社関連ブログの人気記事(ご興味があれば是非お読みください!)。

【税務調査の本質~日本の税務調査と海外の税務調査~】

http://blog.livedoor.jp/bnthailand/archives/19339220.html

【インドネシアの移転価格税制㉖ ~税務調査に係る調査担当官の権限~】

http://blog.livedoor.jp/bnthailand/archives/18703546.html


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