2015年12月25日

ぼくらの共犯同盟〜冬斗亜紀×三浦しをんトークセッション

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アドリアンシリーズでアドリアンが経営しているような個人書店は、アメリカではインディペンデント系と呼ばれて、リアル書店が退潮する中でも、一定の影響力を持つらしいです。
アドリアンも、一生懸命イベントを仕掛けたり、読書会を開いたりして頑張ってます。

その一つが毎週火曜の夜に開かれる「共犯同盟」とい名のミステリーファンのミーティング・・・それになぞらえて、シリーズ完結編「瞑き流れ」刊行直後の12月15日火曜日の夜に開催された、冬斗先生と三浦しをん先生のトークセッションに行ってきました。

場所はジュンク堂池袋本店の4階喫茶。
そんなのあったっけ?と少し早めに行ってみたら、分かんないはずだ、4階の奥の小さなスペース。
えっ、ここでやるの?とちょっと動揺。

参加は事前予約、結構早い段階で「満員御礼」になっていましたが、喫茶の営業を終えてテーブルを片付けて椅子をぎっしり並べると・・・7、80人ぐらい入ったのかな。
(予想どおり、自分と似たような人ばかりだった・・・つまりあまり若くない)

とにかくびっしりギュウギュウで、文字通りお二人を至近距離で囲む感じになり、お二人が登壇して自己紹介されたときには、皆さんちょっと緊張した雰囲気でした。

・・・が、しをん先生が、「瞑き流れ」について、「では、みなさんの気持ちを代弁して言います。めっちゃよかった〜」と口火を切ったとたんいきなり、「きゃージェイクってもうー」「アドリアンったら〜」みたいな、オタ友同士の萌え語りテンションになり、熱い語りであっという間の90分でした。

しをん先生は、テレビや雑誌でお顔は知っていましたが、そのまま客席に座っても違和感ない一見普通の人、冬斗先生は、作家か翻訳家じゃなかったら、大学院生か教員か、年齢は存じませんが、恐らく実年齢よりかなり若く見えるタイプではないかと。

はじめにアドリアンシリーズについて、それから冬斗先生作成の素晴らしい資料に沿って、M/M小説の成り立ちと現状についてのお話がありました。

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bokaboka3 at 17:18|PermalinkComments(4)M/M小説 

2015年12月21日

瞑き流れ ジョシュ・ラニヨン/冬斗亜紀訳



モノクロームロマンス文庫2015年12月

【ネタバレ注意】

今年2月に「海賊王の死」をエントリーして、気が付けば12月、結局、原書を読むヒマもなく完結編が出てしまった。
ドンマイ。まだ年は越していない。

アドリアン・イングリッシュ・シリーズ5冊目にして、完結編は文庫で1000円越え、500ページ越えの大作なのだが、読み終わってしまうのが惜しいぐらいの充実した面白さだった。

始まりは、前作のラストから3週間しかたっていない。
ポール・ケインの船で肩を撃たれ、心臓の手術をしてから3週間、アドリアンはようやく自宅兼店舗に戻ってきている。

あやうく死にかけ、開胸手術からたった3週間で退院。
さすがアメリカ。
と思ったけど、日常生活にはいろいろ厳しい制約が付いていて、週に3回リハビリに通院している。
アドリアンの気力・体力も全く回復していない。

ジェイクとの関係は、読者視点からは既に「相思相愛」にしか見えないのだが、病み上がりのアドリアンはすっかり臆病になり、以前とすっかりキャラ豹変、人目も気にせずアドリアンを優しく見つめ、手を貸してくれるジェイクに対して、「何でだよ!?」とときめいているくせに、「いや、きっと気のせいだ」とか思って、ジェイクの気持ちを振り回す。

ここでシリーズの復習です。
 崚兄箸留董廖.▲疋螢▲鵑療垢覇いていた高校時代の同級生が殺される。
◆峪犲圓林颪」 休暇で祖母の牧場にやってきたアドリアンが死体に遭遇。
「悪魔の聖餐」 アドリアンの店の店員がカルト殺人事件に関係する。
ぁ岾ぢ渦Δ了燹廖.僉璽謄ーでアドリアンの目の前に座っていた映画プロデューサーが毒殺される。

そして、今回は拡張工事中の店の床から白骨化した死体が発見される&何者かが店に侵入しようとする事件が、回復途上のアドリアンを見舞う。

アドリアンが心血を注いでいるクローク&ダガー書店は、古書から新刊まで扱うミステリー専門書店で、1930年代にホテルとして建てられたというクラシックなその建物は、不動産屋から50年前にここで殺人事件があったという話を聞いてこの物件を買うことに決めたと、1冊目の最初のほうに書かれている。

思うに、この書店にはアドリアンの、そして作者の、本好きの愛と理想が込められている。
完結編は、その書店を舞台にして大団円に向かう。


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bokaboka3 at 09:58|PermalinkComments(4)M/M小説 

2015年02月20日

海賊王の死 ジョシュ・ラニヨン/冬斗亜紀訳



モノクローム・ロマンス文庫 2015年2月

アドリアン・イングリッシュシリーズの4冊目。

※閲覧注意。盛大にネタバレしてます。

アドリアンイングリッシュシリーズの4冊目。

ちょうど発売日から札幌に行くことになってしまい、前日に神保町でゲット。
機上で読み始めたら、舞台の一つになっているハリウッドのフォルモサカフェが、たまたまJALの機内誌で紹介されていた。アドリアンが注文するワンタンの皮入りサラダみたいな料理も紹介されてたわ。

結婚したジェイクと別れて2年、アドリアンは前回の事件で知り合ったUCLAのガイ・スノーデン教授と付き合っている。
かなり年上のガイは、スマートで気配りのできる大人のゲイで、肺炎で入院していたアドリアンをかいがいしくケアし、熱心にプロポーズしている。

もうガイでいいじゃん。
本人もそうは思っているんだけど、なぜか踏み出せない。
それはジェイクのことが忘れられないからなんだけど、悲しいことに本人にはその自覚がない。

アドリアンはまたまた殺人事件に遭遇、その現場で出世して副署長になったジェイクと再会する。
止まっていた時間が動き出し、2年前に結婚すると告げたジェイクの話の続きは、
「結婚するけど、おまえとは友達でいたい」ということだったということが判明。

おいおい。

しかも、付き合っているとき、婚約者のほかに、5年続いている男の恋人がいたことも発覚。
(ただし、これは自称恋人の自己申告で、実態は不明なのだが、アドリアンは深く傷つく)

そして、理想の恋人と思えたガイも、因縁のある元教え子との関係を復活させたりして、怪しい雰囲気になっていく。そもそもガイは複数との関係を肯定する考えのゲイだったのである。

さらに肺炎のせいでアドリアンの心臓病が悪化し、手術を迫られる。

全25章のうち23章まで、アドリアンはこれでもかというほど追いつめられる。
このアドリアンの病弱さと、不幸体質が私のツボなんですな。

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bokaboka3 at 09:44|PermalinkComments(6)M/M小説 

2015年01月13日

ここで死神から残念なお知らせです。 榎田ユウリ



死神×ニート 
新潮文庫nex2014年12月

榎田尤利の榎田ユウリ名義の非BL。

人は必ず死ぬ。例外はない。
自分もいつか必ず死ぬと知っているのに、なぜ些末なことに悩んだりしながら、のほほんと暮らしていられるのだろうか。

その答えは、本作にもあるとおり、「そんなことばかり考えていたら楽しくないから」だろう。
だから、「自分もいつか必ず死ぬ」という真実だけは、リアルに実感することができないように仕組まれているのだと思う。

だけど、時々、一瞬、「自分も死ぬんだな」という実感のある認識が降りてくることがある
例えば、一緒に過ごした時間の長かった同世代の友人が死んだとき。

昨年末、親しかった友人がガンで亡くなった。
最後の言葉は、twitterの「二度目の一時帰宅中」で、亡くなる2週間前だった。
それまで、毎日大量のつぶやきを発信していたのが、その言葉を最後に途切れたので、予感はあった。

その死を知ったとき、彼女に二度と会えなくなって悲しいという気持ちと同時に、「自分も死ぬときがくる」という鮮明な認識・・・まるで、死神が自分の後ろに立っているような、ひんやりした感覚を久しぶりに体感した。

でも、その感覚は長くは続かなくて、もう一度呼び覚まそうとしても、再現できない。
たちまち日常の些末な心配事が、自分の死の心配を覆い隠す。

まるで、死神が一瞬自分のところに立ち寄って、「またね」と挨拶をしていったような。

本作は、つまりそういう話だと私は解釈した。

ついでに言うと、エダさんはこのテーマを既にBLで書いている。
「永遠の昨日」
「神様に言っとけ」あたりとか。

作家にとって、言いたいことは一つである。
それを違う読者(新潮文庫の読者)に向けて書いてみたという感じかな。

男性が主人公とはいえ男女の恋愛は出てこないし、死神が美形なので、BL読者にとっても抵抗なく(?)読めると思う。

ところで、「新潮文庫nex」とは、新潮文庫のライトノベル用レーベルかと思ったらそうではなく、版元の説明によれば、キャラクターを前面に押し出した「次世代の小説」ということである。
何だかよくわからないが、新潮文庫が新しいお客様を開拓したいんだなという意図はわかる。

実際のところカバーの背のデザインがちょっと違うだけで、カバーをはがすと普通の新潮文庫と同じ体裁なので、これは「新潮文庫がラノベ?」と言われたときの、内外へのエクスキューズなんじゃないかな。

それより、新潮文庫は著者プロフィールに、「榎田尤利名義でボーイズラブ作品を多数発表」とちゃんと明記しているところが偉い。

それに比べて角川文庫は・・・。



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bokaboka3 at 10:25|PermalinkComments(0)榎田尤利 

2015年01月08日

狼を狩る法則 J.L.ラングレー/冬斗亜紀訳



モノクローム・ロマンス文庫2013年10月
獣医(30)×大学教授(25)

こちらは、女性作家による人狼もののM/M小説。

BL以外でファンタジー小説ってものをあまり読まないので、人狼(ワーウルフ)ものも、巨匠・剛しいら先生の狼伯爵シリーズぐらいしかちゃんと読んでいないんだけども、これって吸血鬼のように国際規格(?)のある定番ジャンルだったのね。

訳者の解説によると、英語圏ではロマンス小説の一大勢力で、メイト(つがい)に運命で結ばれ、群れの中で、アルファ(リーダー)、ベータ(副官)、オメガ(最下位)という位置付けがあり、その細かい設定はさまざま・・・とのこと。

現代ものであるこのシリーズでは、剛先生の人狼のように、500年生きるとか、生肉しか食べられないとかの設定はなく、非常に人間的というか、ほとんど人間である。

ハンバーガーとピザばっかり食べてるし、人間との緊張関係もなく、人間社会に混ざって普通に生活している。
むしろ問題は、ゲイであることでの、家族的な軋轢である。

獣医のチャイは、クリニックに運び込まれた傷ついた狼が、自分のメイトであることに気が付く。
チャイはヘテロなので、最初はメイトが同性だったことに驚くが、すぐに受け入れてキートンにメロメロになる。
しかし、ゲイのキートンは、ヘテロだったチャイの愛情を素直に受け入れることができない。
実は、キートン自身も、ゲイであることで家族と断絶し傷ついているのだった。

・・・というような、ある意味、王道BL。
別に人狼でなくてもいいのでは?
という気もするが、要するに、2人はお互いに運命的な唯一無二のつがいの相手(メイト)で、出会ったら最後、強烈に魅かれあい、離れることはできないという設定がロマンスとして最強なんだと思う。

チャイに、リトルビット(ちっちゃいの)というあだ名をつけられるキートンは、小柄でかわいくて、癇癪持ちですぐ拗ねる受けキャラ(ただし、股間のモノはでかい)。
年上のチャイは、世話焼きで思いやりのある理想の攻め様タイプ(ただし、自然な流れでリバあり)。

日本のBLに見られないところとしては、まず人種問題。
チャイはネイティブアメリカンで、キートンは金髪碧眼の白人。
キートンの視点から、ネイティブアメリカンの黒い髪、褐色の肌は美しいものとして描かれているが、チャイの母親は、白人が大嫌い。

狼なのに人種問題?そこですか?
正直、そのへんはあまりピンと来ないところではあるが、それでもこれは普通にBLの世界じゃないかと思う。
そして、秩序を重んじる人狼の群れ=ファミリー=家族(親と子)の問題は、万国共通でもある。

続編の「狼の遠き目覚め」は、チャイの友人のレミ(消防士)と探偵のジェイクのカップルで、これもまた、父親のDVと共依存の母親というレミの家族の問題がテーマになっている。



モノクローム・ロマンス文庫2014年5月

私は「やおい」「腐女子」という言葉もなければ、「BL」もなかった時代から、男×男に妄想し続けてきた(萌えという言葉もなかった)。

最初はこんな妄想をしているのは、世界中で自分1人だけだろうと本気で思っていた。

しかし、誰かが「やおい」という言葉を発明したとたん、「あたしだけじゃなかった!」という連帯が生まれ、今では世界中に同志がいることを知っている。

作者のラングレーさんに、「なんでこの話は男同士なんですか?男×女じゃだめなんですか」と聞く人は、アメリカにもいるだろう。
日本でも、BLは商業的には盛んでも、公平に見れば世の中で少数派の趣味である。

それでも私たちは1人じゃない・・・世界中に仲間がいて、今日も男×男の妄想を広げている。
M/M小説を読んでいると、それを実感する。






bokaboka3 at 21:36|PermalinkComments(2)M/M小説