英田サキ

2011年03月26日

ダーティ・ダンス 英田サキ

 リブレBBN 2011年

暴力団組長(34)×暴力団組長(28)

気がついたら1か月以上のご無沙汰でした。

3月11日以前の生活が、もう遠いことに思えます。

幻だったんだね、ぜんぶ

震災後、よく行く飲食店でランチをしていたら、隣の席の女性がぽつりと言いました。

ダイヤどおりに電車が来て、落雷でもない限り停電の心配もなく、水道水は安全。
都心は深夜までネオンで明るく輝いて・・・当たり前だと思っていたことはすべて、危険な原子力発電が見せていたイリュージョンだったんだね・・・という。

私にとって、浮世の憂さを忘れさせてくれるファンタジーであるはずBLも、原発事故というシリアスすぎる現実の前にはなかなか効力が発揮されず・・・やっと英田さんの新刊でちょっと浮上。

組長×組長というカップルで、いわゆるBL的ハッピーエンドにはなっていないという、久々に英田さんらしい話を読んだ気がする。

病に倒れた父親のあとを継いで若くして組長になった深弦(みつる)にとって、忘れられない男、鼎(かなえ)が組長になって戻ってきた。

かつては組長の坊ちゃんと世話係の舎弟だった二人、ぶっちゃけ、お互いに最初からLOVEだったのに、仁義がすべてのヤクザの世界は二人の道を分かち・・・敵として戻ってきた鼎に肉体関係を強要される。

こういう展開だと普通は、相手の気持ちがわからないまま受けが翻弄される。
そしてなんだかんだあって、攻めの本心が割れて「そうだったのか」と二人の気持ちが通じてハッピーエンド、となるのが王道。

でも英田さんの場合、男が口に出さない本心を正しく読むことが多い。
そこが英田さんの小説のいいところであり好きなところなんだと、あらためて思った。

関係を続けていくうちに、鼎は自分を守るために戻ってきたのではないかと思い始める。
10年前に自分を傷つけて出て行ったのも本当は・・・と。

それでもド石頭の鼎は、最後まで自分の仁義を守り抜き、けして満弦の望んでいる愛の言葉を語らない。
う〜ん、なんという頑固者!だけど、鼎は行動ですべてを表し、それを満弦もわかっているからこれでいいのだ。

初期の英田さんってこういうかんじだったなあと、久々に初心に戻り「今宵、天使と杯を」を再読したりして、ただいまBL脳のチューニング中です。


bokaboka3 at 19:05|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年11月23日

心乱される 英田サキ

 講談社X文庫 2010年

高校生(18)×会社員(34)

好きだった男の忘れ形見を引き取って育て、子供が立派な男に育ったところで押し倒される・・・定番設定のような気がしたけれど、自分の読書履歴を遡ると、この手の話は崎谷はるひの「ハピネス」しか読んでない・・・と思う、たぶん。

一見「ハピネス」と似ているところは多く、養父の職場の同僚に事情を飲み込んでなにかとアシストする親友がいること、セフレの存在(崎谷では息子に、英田では双方に)、息子が家出してセフレの家に転がり込んでしまうところなど。

が、根本的なところで違うのは、「ハピネス」では単なる恩人、恋愛感情も関係もなかった男の息子を引き取るのだが、「心乱される」では、かつて関係のあった男の息子を、婚約者から奪って引き取っていて、その事実を互いにどう乗り越えるかが肝になっている。

でもそれ以上に、作家の作風の違いが大きい。
崎谷さんの養父は、父であるより男に育った攻めに支配される「受け=ヒロイン」で、英田さんの養父は、役割的には受けでも最後まで父親目線、大人目線が残る。
どちらがよりリアリティがあるかといえば、英田さんのほうだけど、じゃあ萌えはどちらにあるかというと??
そこは好みの問題でしょうね。

ところでセフレの定義ですけど、恋愛感情のないカラダだけの関係・・・というのは、そういうものを必要としたことがない私が想像するに、セックス以外の関係はない即物的な付き合い・・・じゃないかと思うのだが、主人公の一聡(かずあき)と大宮の関係は本当に「セフレ」だったのだろうか?

大宮は一聡の抱える誰も知らない事情を知った上で、誰よりも親身になって心配してあれこれ口を出し余計な手出しもし・・・肉体関係がなければ「親友」といっていいポジションだと思われるのだが、セックスもする親友、それをセフレと言っていいのだろうか・・・そこがちょっと疑問。



bokaboka3 at 23:28|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2009年12月15日

最果ての空 英田サキ

 SHYノベルズ2009年

【ネタバレあり】

「エス」の脇役、篠塚で1冊っていうのはあまりに地味なんじゃ?と思ったけど、「恋ひめやも」のあとに読むと、やっぱり警察ものは展開に華があるなーと思う。

読者のお目当ては「エス」シリーズの椎葉の義兄・篠塚(公安部参事官40歳・キャリア官僚)だけど、この話の主人公は、ペーペーの捜査官、江波(28)である。

ちょっとブラコン気味の江波が、上官の篠塚を好きになって告白したけど、振られました。という話。
篠塚は12年前に身重の妻を事件で失い、以来優しい顔を見せるのは亡き妻の弟に対してだけ・・・その孤高の人生そのものが篠塚なので、誰かとラブラブハッピーになってしまったらそれはもう篠塚ではない。

篠塚が読みたい・・・けれど篠塚が攻めだったり受けだったりするのは誰も読みたくないという、そんな読者のニーズにこたえつつBLであるという使命は、ゲイの江波が一手に担っている。

尾行すれば気付かれてまかれ、大物スパイの元愛人にたぶらかされ、捕り物の最中にすっ転んでイヤホン紛失・・・このドジで間抜けな新人を主役に抜擢したことで、クールでストイックな篠塚の魅力がいっそう引き立つようになっている。

いや〜篠塚さんほんとにかっこいいわ。
井澤の脅迫から江波を救うところにシビレた。
「エス」ではひたすら優しい義兄で、いいところを宗近にさらわれる寂しい脇役だったけど、「昼間の篠塚」は文句なしにかっこいい。

好きになってはいけない、好きになっても報われないとわかっていても、恋に落ちるときは止められない・・・そんな不条理な恋心は「恋ひめやも」にも共通していて、実らない恋を描くというBLとしては反則行為なのに満足できるのは、やはり作者の力量か。

こたえられなくてすまないと謝る篠塚に
「もう謝らないでください。いいんですよ。俺だったら、またすぐに好きな相手ができます。恋人ができたら篠塚さんのことなんか、もう思い出しもしないだろうし」
と強がりを言う江波がカワイイ。

江波と神津の兄弟関係、篠塚と神津の同期関係・・・それぞれにも微妙な引力があって、そもそもの篠塚×椎葉の誰にも入り込めない「特別な関係」も含めて、イロ恋以上にモヤモヤする・・・様式的なBLに食傷したときに読む本だと思います。
続きを読む

bokaboka3 at 16:18|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2009年12月08日

恋ひめやも 英田サキ

 キャラ文庫2009年

会社員(25)×高校教師(32)

同窓会で高校時代の担任に7年ぶりで再会したら、冴えない国語教師と思っていた男の印象がだいぶ違う・・・。

なんだかつい最近読んだような・・・榎田尤利の「はつ恋」からファンタジー要素を除いたような話だなあと最初は思った(挿絵も同じ人だし)。

作者があとがきに書いているように、刑事もヤクザもFBIもサイコキラーも出てこない、大きな事件も起こらない、ひたすら恋する心のジタバタを描く地味〜なお話。
主人公は電機メーカーの営業職と書かれているけど、仕事の描写もほとんどない。

周囲から「あんな男(女)はやめておけ」と言われ、自分でもそう思っていても止められないのが恋という病気。
そんな誰でも知っている恋の不条理を軽妙に描いて、地味なのに味わい深い。

棚橋(たなはし)は、付き合っている彼女と婚約寸前なのに、高校のクラス会で再会した担任、水原のことが気になって仕方がない。

BL的に分類すれば、年下攻め×トラウマ持ち年増受けというパターンだけど、こういう場合、年下攻めは若さと情熱で、恋に臆病な年上を一途に口説かねばならないのだが、彼女持ちでストレートな性志向の攻めくんは、最終的には「一途な年下攻め」になるのだけど、そこに至るまでがずいぶんな男なのだ。

確かに僕は先生に恋している。それは認めよう。
だけど同時に気の迷いだとも思っている。僕はゲイじゃないし、先生を自分の恋人にしたいわけじゃない。(中略)好きという気持ちはあいまいで不確かなものだから、そのうち霧が晴れるみたいに、サーッと消えてなくなるかもしれない。


そう思って、一度は会わないと決心する。

しかし、それは逆効果だった。

棚橋は、古今和歌集や万葉集の歌には明るいが、昭和の歌謡曲を知らないようだ。

♪会えない時間が愛育てるのさ
 目をつぶれば君がいる

(やっぱ故・安井かずみは天才作詞家だったな!)

まさしくこの状態に陥る。
会わないと決めて、好きになっちゃいけないと思いつめるほどに、会いたいという恋情にのた打ち回る。

そして棚橋は、彼女との結婚はやめないが、諦めがつくまで水原のそばにいる、という結論を出し、それを水原にも告白してしまう。

・・・バカだ。
なんという最低な男
続きを読む

bokaboka3 at 23:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2009年07月07日

たかが恋だろ 山田ユギ・英田サキ

 大洋図書2009年 

元同級生(27)×喫茶店マスター(27)

「原作付きコミック」というより、英田サキと山田ユギのコラボと言った方がいいだろう。人気作家どうしのタッグに期待していたが、期待以上に面白かった。

若くして妻を亡くしたコブつきヤモメの倉田をめぐって、中学の元同級生と義兄(ヤクザ)が火花を散らす・・・同級生再会とか子供とか、ユギテイストな題材を使っているが、やっぱり山田ユギの漫画とは違う。

偶然再会した元同級生が実は・・・という展開は英田さんらしいストーリーだけど、英田サキの小説に沿って山田ユギが絵を描きました・・・というわけでもなく、個性のある2人の持ち味がうまく溶け合って、まさしくコラボレーション。

「不器用な男だな」
「あんたに言われたくない」


不器用な男たちが「たかが恋」にバカみたい振り回されてる・・・タイトルの小気味よさを裏切らない話だった。

義兄のスピンオフが雑誌連載中とのことで、これも先の楽しみ。

bokaboka3 at 22:51|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2009年05月16日

この愛で縛りたい 英田サキ


リブレ出版BBNスラッシュノベルズ

会社員(27)×会社員(27)

英田さんって「デコイ」のような重厚長大なものを書く人なのに、ときどきユルユルなものを書くことがあって、その落差の激しさは他の追随をゆるさない。

隠れゲイの阿木(受け)は親友の永瀬に何年も片想い。
ついに思い余って、貸し別荘に監禁、一服盛って眠らせてチェーンで拘束し、性的関係を強要。しかし永瀬もそれがきっかけで「友情ではなく好きだ」という気持ちに気がつき、めでたしめでたし。

そんな話ってあるかい・・・いや、そんな話を書く人もいますけど、リアリストの英田さんが書かなくても。
ボーイ・ジョージだって「知人男性」を監禁したということで刑務所に入ってたんですよ?

で、雑誌掲載の「この愛で縛りたい」は「監禁もの」かと思いきや、ハードな陵辱プレイがあるわけでもなくさらっと終わっているのだが、書き下ろしの「この愛で守りたい」は、永瀬の元彼女の登場に阿木が拗ねちゃって・・・というバカップルの痴話げんか的な話。

さらに「この愛で誓いたい」は、永瀬が阿木を家族に恋人して紹介したいと、無理矢理大阪の実家に連れて行くというカミングアウトもの。
無口な職人の父親と、サバサバした大阪のオカン、フレンドリーな出戻り姉、兄夫婦と子供たちに・・・緊張している阿木を家族として自然に受け入れてくれるというちょっといい「人情話」になっている。

出発点と着地点があまりにも遠すぎる・・・。

初稿は阿木がいわゆるクールなビッチ受けだったのが、編集の意見をいれて乙女で一途な受けに変更したとのこと。そこで計算が狂ったのではないだろうか?

このBBNスラッシュノベルズというレーベルの位置づけもよくわかんないんですが・・・これは最初からライトな人情コメディにすればよかったんじゃないかと思う。
はじめに監禁・拘束ありきだったのかもしれないけど・・・こういうのはメイドプレイと同じくらい向いてないです。

久しぶりに英田さんの珍味コレクションを読んだな。



bokaboka3 at 16:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2008年12月07日

SIMPLEX 英田サキ

大学教授(36)×ボデイガード(27)
 キャラ文庫2008年

「DEADLOCK」シリーズで、当て馬というにはあまりにもご活躍のロブ・コナーズを主人公にしたスピンオフ。
ロブに人気があり「ロブを幸せにしてあげて」という読者のリクエストが殺到したというのも無理はない・・・あれほどユウトに尽くして、最後まで紳士的な態度で口説き続け、ディックよりロブを選んだほうがいいんじゃないか?と思わせるほどに魅力的な人物だった。

「DEADLOCK」シリーズは間違いなく英田さんにしか書けない骨太の面白さなんだけど、ユウトもディックも特殊な訓練を受けた特殊な人で、出会いも刑務所と、特殊な世界。
なんと言うか、ものすごく金のかかったハリウッド映画を見ているようで、面白いけどそうそう気楽に入りこめない。

そんな中で大学教授であるロブは、比較的「普通の人」で、犯罪心理学者としてユウトのサポートをするだけでなく、ギリギリに追い詰められたユウトの心を癒し、励まし、下ネタで笑わせ・・・読者にとってもオアシスのような人物である。

若くしてカリフォルニア大学の客員教授、相手によっては上でも下でもオッケーな生粋のゲイで(下になってるのは同人誌「デ・キエロ・ムーチョ」で読めます)、趣味は料理・・・・・・そんなロブのお相手は、ディックの同僚のボディガード、ヨシュア。

ブロンドで緑の瞳のヨシュアはびっくりするくらいの超美形のボディガード。
しかし生真面目で礼儀正しいけど無愛想で、何を考えてるのか全くわからず、人の好意に対して無神経といってもいいくらい鈍感。

いや〜このキャラは実にいいですね。
これで女だったら間違いなく女が嫌いな「やな女ナンバーワン」だけど・・・男ならオッケーというBLらしいキャラクター設計だと思う。
続きを読む

bokaboka3 at 16:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2008年05月27日

黒い竜は二度誓う 英田サキ


白泉社 花丸文庫BLACK 2008年

花丸文庫「ブラック」って・・・ブラックってナニ?
英田さんのファンタジー? え?これが初めてのファンタジー
大丈夫?

ちょっと及び腰で読み始めましたが・・・要するにこれも『獣の妻乞い』同様、「鶴の恩返し」だった。
(あ、ネタバレ? でもタイトルでバレてるし)

こういうのって、それでそれで?ヒロインはどうなるのどうなるの?という引きが勝負どころで、そういう意味では最後まで一気に読める面白さだった。

でも・・・敵国に人質として囚われた美貌の王子、老いた皇帝の慰みものとして後宮で繰り広げられる屈辱の褥・・・そこまで書いているにもかかわらず、なんだろうこのカラっとした読後感は。

「まあ!なんてすごいお召し物でしょう」
次女のマルザが赤い天鵝絨(ビロード)の布箱から取り出したのは、金糸と銀糸がふんだんに織り込まれた見事な長着だった。



たとえばこういうことをもし山藍紫姫子先生が書くとしたら、もっと盛大に漢字を使って、「そこまで言うか〜?!」ってくらいしつこくこってり書くと思う。少なくともヒロインのお衣装の描写はこんなに簡単じゃすまない。

続きを読む

bokaboka3 at 15:07|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2008年02月02日

ライク・ファーザー・ライク・サン 英田サキ

脚本家(38)×高校生(18)
 SHYノベルズ 2008年

例によってあとがきから先に読むと、「商業誌で高校生受けは初めて」って書いてるので、えっ、そうだっけ?と自分の過去記事をたぐってみたりして。
確かに「花嫁のピジョンブラッド」が18歳だけどフリーター設定で、他は受けの年齢が高いったら・・・私が一番好きな「夜の」シリーズなんて受けが36〜37歳だもんね・・・この話のオヤジと変わんないじゃんか。

高校生の話をいっこも書いてないというのは、BL作家としてはイレギュラーな経歴ではないだろうか? BL読者の年齢が上がっているわりと最近のデビューだからかもしれない。

その初めての高校生ものは、20歳も年上の親友の父親に片想いをしている健気ヒロインという(英田さんにしては)意外な話だったんだけど、もちろんハッピーエンドに違いないと思っても、読みながら何度も鼻の奥がツンとしてしまうような、六青みつみばりの「かわいそうヒロイン」ものだった。

【以下ネタバレにつき注意】
続きを読む

bokaboka3 at 21:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年12月30日

愛していると言う気はない 英田サキ

探偵(37歳)×ヤクザ(30)
 SHYノベルズ 2008年

「さよならを言う気はない」は、英田作品のなかでも地味な作品だと思う。
一応、天海は、派手な刺青を背負った父親殺しの過去を持つ美形ヤクザと華やかだけど、いかんせん陣内が・・・靴下に穴のあいてる貧乏探偵だし。

37のオッサンで貧乏というのがBLで許されるのは、金なんかいらねーという野蛮系オヤジくらいだと思うんだけど、この陣内はクソ真面目で不器用、家賃の滞納にビクつき、カップ麺を大事に食いつなぎ、趣味はパチンコという正真正銘のショボクレたオヤジ。

17歳の高校生と25歳の刑事として出会ってから12年の紆余曲折を経て、2人が結ばれる「さよならを〜」は、ラブラブカップル誕生!という感じではなく・・・気性の激しい天海に殴られ蹴られいたぶられる陣内が情けない・・・この情けないところがいい、と言うにはちょっと微妙なかんじだったけど、この続編を読んで陣内×天海のダメダメカップルにすっかり惚れ直した。

口の悪さ手の早さと裏腹に、陣内だけに甘えてる天海が可愛い。そして融通のきかない陣内の律儀な男らしさもカッコイイ(相変わらず貧乏だけど)。
今回は天海狙いの美形でド変態のヤクザ我那覇(がなは)の登場で話も派手になり、これはまた面白いシリーズになったと思う。

今年最後のお買い物・・・年末の配送事情をかんがみて久しぶりに書店で新刊を買い求め、渋谷の「まんだらけ」に寄ってみたら、背の高い、どこかの国の王子様かと思うような金髪碧眼の外国人が「新着委託同人誌」のコーナーを夢中であさっていた・・・。
最後に「まんだらけの王子」を見たということで、よき年の瀬であった。

みなさま今年もご来訪ありがとうございました。
良いお年を迎えください。

bokaboka3 at 00:48|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年10月14日

すべてはこの夜に 英田サキ

ヤクザ(32)×元同級生(32)
クロスノベルズ2007年

ずいぶんたて続けに出るなーと思ったらこれはデビュー前の同人誌作品「すべてはこの夜に」「夏の花」に書き下ろし(短編)を加えたものだそうで。
あとがきで作者は「古い作品なので」「稚拙でも未熟でも当時のまま」と謙虚に書いてますが・・・全然古くないし拙くもない。
むしろ商業誌デビュー初期の頃よりも英田サキらしい作品だと思う。

10年ぶりに再会した大学時代の同級生・湊(みなと)は暴力団幹部になっていた。主人公の加持(かじ)とはかつて肉体関係はあっても恋人だったとは言えず、二人の間に起きた悲惨な事件が憎しみだけを残していた・・・というと珍しくない設定のようだけど、意表をついた再会のシーンから衝撃的な幕切れまで、ドラマチックな構成といい緻密な心理描写といいすでに完成された作家の持ち味がある。ラストシーンには涙なみだ・・・。

「このラストはどう考えても商業誌向きではない」と作者は言ってますが、書き下ろしの「春宵一刻」でフォローしてるから問題なしでしょう。(でもこのラストのかっこよさにはしびれる。これで終わってもよかったんだけど・・・でもやっぱり「その後」は読みたい・・・)

ヤクザ×堅気というお得意のカップリングでしかも同級生再会ものだが、再会した昔の男との確執を解いていく過程で、主人公が「いつも本当の自分から眼を背けて逃げてばかりいた自分」に気づき、相手を丸ごと受け入れる決意をする・・・というところに「夜シリーズ」や「エスシリーズ」にも共通するモチーフがある。
ついでに言うと、ヤクザの子分たちが家族的で気が優しいところも共通している。

しかし湊の舎弟・武井の若い頃のエピソードである「夏の花」はいかにも同人誌らしい作品。小冊子がついてくるというのでコミコミスタジオで買ったんですが、この小冊子がこの「夏の花」の後日談で、これが悲しい・・・悲しすぎる。

でも英田サキはやっぱり上手いよ・・・「エロとじ」でもダントツだったもんね。
BLとしては主流派じゃないかもしれないけど、評価は得ているのだから(エス小冊子のまんだらけ買取価格にはびっくら!)、これからは好き勝手に書いて欲しいと思いますね。


bokaboka3 at 23:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年07月07日

DEADSHOT 英田サキ

 徳間書店 キャラ文庫 2007年

『DEADLOCK』完結編の到着に合わせて2冊目の『DEADHEAT』を再読し、さあ今日は『DEADSHOT』をバッグに入れて出勤・・・と思ったら、ないっ!
さっきまでテーブルの上にあったのに・・・書店のカバーをつけて。
そういえば今朝は夫が出張用の大きな鞄に荷物を詰め込んで出て行ったけど・・・ひ〜〜っ! 出張に持って行かれた?!

夫にBL本を読まれてしまうかもしれない・・・ということよりも、せっかく気持ちを盛り上げて臨んだのにあと1週間読めないなんて!と恐慌状態に陥り、「名古屋から送り返して!」とメールしてもう一度捜索したら、夫の読みかけ本の山脈の中に埋もれていた・・・間違えて片付けたらしい。

・・・しかし結論から言うと、この本は出張先で夫に読まれても構わなかったなと。
表紙も口絵も肌色じゃないし。最後にHはありますがそこに至るまでの話はひたすらハードで骨太のエンタティメント小説だった。

しかし刑務所ものから始まってここまで大きな話になるとは。
アメリカの軍事、政治についてかなり勉強して書いてると思われるが、これがなかなかハンパな力量ではない。

ディックと袂を分かったユウトは、やっとコルブスを追い詰めたと思ったら拉致されて、コロンビアのテロリストキャンプに連れ去られる・・・そこからの脱出劇はまるでダイハードなんだけど、史上最悪の悪役コルブスの
最後にもう一度だけ・・・、ネイサンと、呼んでくれ
に思わず涙ぐんでしまった。

ラストはちょっと強引な気もしないではないが、誰よりも作者自身が幸せになった2人を書きたかったのだろうと思う。
今までずっと過酷なロケを強行してきた監督が、最後に「お疲れさん、酷い目にあわせて悪かったね」と主演俳優をねぎらっているようなかんじ?

しかしディック・バンフォート(仮名)の本名はいったいいつ明らかになるのかと最後まで緊張して読んでいたら・・・1本とられました。私の負けです。
続きを読む

bokaboka3 at 00:31|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年07月01日

いつわりの薔薇に抱かれ 英田サキ

香港マフィア(34)×刑事(27)
 ビーボーイノベルズ2007年

英田サキは最近絶好調の作家の一人だと思う。しつこいようだがとても『花嫁のナントカ』でなんちゃってメイドプレイを書いた人と同じ人とは思えない・・・。

実業家の仮面をかぶった香港マフィアの首領アレックス、ホテルのバトラーの仮面をかぶってアレックスを監視する警視庁公安部の刑事・高峰(たかね)。
舞台はホテルのスイートルームからほとんど一歩も出ない。
非日常の豪華な密室でのスリリングな駆け引き・・・最初は高峰の正体がアレックスにバレやしないかと冷や汗もの。

高峰は広東語と英語ができる語学力と容姿のよさを買われてこの潜入調査に抜擢されたが、まだ経験不足の若者、『エス』の椎葉ほどは肝が据わってない。
なんとかバトラーとして気に入られたと思ったら、アレックスは高峰をベッドに誘う。高峰は動揺しながらも、ここでは言うことをきいたほうが情報を得られると判断、文字どおり「身体を張った捜査」になるが・・・。

お互いに仮面をかぶったまま恋に落ちる・・・『DEADLOCK』もそういう趣向だったけど、舞台は豪華なスイート、休暇で来日しているアレックスは香港マフィアとはいえ、何かしでかすわけでもなく、紳士的な大富豪として高峰を甘く口説く。アレックスに惹かれていく高峰はひたすら混乱し追い詰められていく。

続きを読む

bokaboka3 at 12:03|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2007年04月16日

夜に咲き誇る 英田サキ

暴力団幹部(33)×秘書(37)
 プランタン出版プラチナ文庫 2007年

ついに完結「夜の」シリーズ・・・とはいってもドラマチックな部分は2冊目まででほぼカタがついているので、完結編というよりは、探偵をやめて溝口組若頭である久我の秘書に転職(?)した秋津の「その後編」であります。

やっぱ「ヤクザ攻め」を書いたら、どうでも最後は「姐さん」になるところまで書かないと気がすまない・・・なんだかんだ言って作者も読者も「極妻」が好きなわけよ。

久我と共に生きる道を選ぶ・・・といっても盃を交わすわけでない。
「指輪の交換」だったり「永遠の愛の誓い」だったりと演出は甘々なのだが、男が男に丸ごと人生を預けるとは・・・結局最後は「生きるも死ぬもお前と一緒」と、けっこうマジに任侠してますよ、この人たち。

続きを読む

bokaboka3 at 17:54|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2007年03月07日

DEADHEAT 英田サキ

 キャラ文庫 2007年

アメリカを舞台にした刑務所小説『DEADLOCK』の2。
こんなに続きが待ち遠しいと思ったのも久しぶり・・・しかしやっぱりこれは完結編を待って3冊そろってから一気に読むべきだった・・・。
『エス』のときはそれができたのに、今回は我慢ができなかった・・・だって前作は刑務所で始まり、刑務所で終わり・・・やっぱりシャバの2人を読みたいじゃん。まだ1冊目を読んでいない方は、完結してから一気に読むことをおすすめします。

史上最悪のテロリスト・コルブスを追うデッィク(偽名)とユウト・・・BL味のミステリー・アクション小説として、また「すれ違い」メロドラマとして楽しめる作品ですが、今回は次の完結編の予告編的というか・・・まーたここで終わるのか、おい!ってかんじ。
作者の焦らしプレイにすっかり翻弄されております。
だいたい2冊目でまだ攻めの本名が明らかにされてないって・・・。
(ちなみにいつものようにカップルの職業を記載しなかったのは、それが1作目のネタバレになるからであります)

ところで作中でテロリストがユウトに接触するのに「スカイプ」を利用しているところが興味深かった。
「スカイプ」は、インターネットを利用した無料のIP電話の一種で、私は今の仕事で使っています。使うのはほとんど文字チャットで離れたオフィスとの内線電話代わり。世の中ってどんどん変わっていくのね・・・というリアルタイムなリアリティをうまく盛り込んでいます。

bokaboka3 at 23:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年11月05日

英田サキ「エス」完結記念 徹底比較「エス」×「夜蘇」

 SHYノベルズ 2006年

英田サキの「エス」シリーズもついに完結・・・いつも意地張ってテンパってる椎葉ちゃんを見てるのがつらくて完結してからやっと一気読みしたんだけど・・・正解だったわ。少なくとも「裂罅(れっか)」と完結編「残光」は2冊続けて読まないと苦しいと思います。

英田サキの「ヤクザ攻め×カタギ受け」ものとしては、もっとユルくてエロい「夜が蘇る」シリーズのほうがお気に入りなんですが・・・この二作は読めば雰囲気が全く違う話なんだけど似てるようで似てない、似てないようで似てる・・・裏と表みたいな関係に見える。結末も反対だし。

どちらも心に傷を抱えたヒロインを、かっこいいいヤクザの愛が救う・・・という話ではあるのだが。

まずヒロイン編

【名前・年齢(開始時)】
[エス] 椎葉昌紀(しいばまさき)28歳
[夜蘇] 秋津芳人(あきつよしと)36歳

【学歴】
[エス] 東京大学
[夜蘇] 東京大学

【職業】
[エス] 警視庁組織犯罪対策五課 巡査部長(刑事)
[夜蘇] 元警視庁警視 現探偵事務所所長代理(探偵)

【傷口】
[エス] 姉をヤクザに殺される
[夜蘇] ヤクザの情人をヤクザに殺される

【家族】
[エス] 両親を早く亡くし、姉に育てられる。
[夜蘇] 父を早くに亡くし、母子家庭育ち。

【経験】
[エス] 女のみ 
[夜蘇] 男は一人

【理解者】
[エス] 篠塚(死んだ姉の夫・警察庁理事官)
[夜蘇] 高彦(東大法学部の同期・弁護士)続きを読む

bokaboka3 at 00:14|PermalinkComments(9)TrackBack(0)

2006年10月14日

LOVE ALIVE 英田サキ

同人誌 (人工楽園2006年)

よっぽどのことがないと同人誌には手を出さない。手間がかかってめんどくさいからなんだけど・・・これはコミコミスタジオで簡単に入手できる英田サキの同人誌オリジナル作品。
2002〜3年『小説JUNE』掲載の単行本未収録作品なのだけど、これがどれもいいのだ。やっぱJUNEって最後までレベルが高かったのね。

ヤクザ受けの「傷痕」「Longing for」
ヤクザ受けは、単行本で2作ほど書いているが、これが一番いいじゃん、と思った。攻めはヤクザの上を行くワイルドな武闘派オヤジ。腰から下に刺青を入れた若いヤクザの色気もいい。どこか無国籍な雰囲気があるハードボイルドな作品。

幼なじみのゲイの助教授×ノンケの八百屋の「ワンナイト・ラブアフェア」「恋のリターンマッチ」
ずっと親友だったのが、一回くらいいいじゃんとか言ってるうちにマジになって・・・『バカな犬ほど可愛い』路線のコメディだが、「おまえの処女地は俺が踏んでやる」とか言っちゃうエロ助教授がナイス。

「隣DE晩ゴハン」は、子持ちヤモメと、その隣に引っ越してきた恋人と別れたばかりのゲイの教師のほのぼのLOVE。もちろんヤモメ受けです。

「No Romance」「俺を歯医者に連れてって」「不機嫌な魚」
ゼネコンリーマン後輩(25)×先輩(29)
歯に衣着せぬ物言い、態度はでかいが仕事のできる吉永は、実はゲイで10年来の恋人と別れた寂しさに自分に懐いている後輩の久保を襲って?しまう。(No Romance)

この男っぽい吉永が受けで、やさしげな後輩の久保が攻めなんですよ。そこがツボ。
こういうの「男前受け」っていうんでしたっけ? 自信たっぷりの男前が、自分の軽率な行動が原因で本気にさせてしまった後輩の告白に困惑し逃げ回る。
「俺を歯医者に連れてって」は、歯医者恐怖症で、歯が痛いのに歯医者に行かずに事態を悪化させる吉永に、久保の真剣な気持ちから逃げ回る吉永の姿を重ね、実にうまい構成。
ただし親知らずを抜歯した当日にそんな激しい行為をするのはどうかと思う。

なかなかお得な1冊ですが・・・ハゲしい誤植があります。同人誌だから仕方ないか。


bokaboka3 at 14:09|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年10月04日

DEADLOCK 英田サキ

囚人(29)×囚人(28)
 徳間書店キャラ文庫

実は刑務所ものって苦手なのよー。
閉所恐怖症気味のせい? 閉じ込められた場所での暴力行為ってのがダメみたいで。

英田サキの初キャラ文庫は、刑務所もの。しかも外国。
どうしようかと思ったけど・・・普通は絶対やりませんが、先に最後の2ページを読んで最後は主人公が無事に娑婆に出ることを確認してから読むという反則ワザを行使してみました・・・でもそんなことしなくても面白く読めたと思う。
続きを読む

bokaboka3 at 22:09|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2006年09月16日

夜に赦される 英田サキ

若頭(33)×探偵(37)
 プラチナ文庫 2006年

【ヤクザ攻め×年増未亡人受け】という、ツボにはまった名作『夜が蘇る』の続編。これが出る前に前作を読み返したら、ラストの秋津と久我の会話が・・・

「俺はお前の女にはならない。だけど俺の夜をお前にやる。色あせていた俺の夜を、お前の色で染めてくれ」
「やっと素直になったな。お前の夜は確かにもらったぜ。返せって言ったってもう無理だからな。覚悟しておけよ」


こんな大盛り上がりで終わっていたんだっけと期待も盛り上がる。
続きを読む

bokaboka3 at 12:53|PermalinkComments(5)TrackBack(0)

2006年09月05日

花嫁のピジョンブラッド 英田サキ

会社役員(32)×フリーター(18)
 SHYノベルズ 2005年

英田サキってやっぱ面白い・・・とあえて避けてたものに手を出してみました。
これが、あとがきで「ハンバーグ、デミグラソースが、肉団子の中華甘酢あんかけになってしまった」と作家自身が認めているように、大きな設計ミス、はっきり言って失敗作なんだけど、その誤算が面白い。

華族の末裔である由緒ある名家、都内の広大なお屋敷に大勢の使用人たち、結婚に反対されて駆け落ちした母の無念を晴らすためにやってきた「孫」が探しているのは、この家の花嫁の証、ピジョンブラッドと呼ばれる大きな宝石・・・いったんこういうゴージャスな舞台を設置したら、腹くくって最後まで臆面もなくドリームを描かないと。
間違っても「痔の薬」なんていう単語を使っちゃいかんのです。

途中で作家も「こりゃいかんわ」「んなわけないよね」と突っ込みつつ書いているのが手に取るようにわかるところが楽しめます。「夢のメイドプレイも玉砕」っていうか、もうヤケクソとしか思えない。

最初は冷たい意地悪な敵役だったのが、最後は激甘な恋人になってヒロインを迎えに行く・・・っていう展開も、BL的には普通なんだけど、自分で自分に言い訳しちゃだめでしょ。
やっぱりこの人は、人の心の襞を丁寧に書ける人だから、「こんな奴いねーよ」的なキャラを堂々と動かせないのね。
うーん、大失敗でしたねえ(笑)というところが面白かったです。


bokaboka3 at 20:14|PermalinkComments(3)TrackBack(1)

2006年08月24日

バカな犬ほど可愛くて 英田サキ

webデザイナー(26)×作家(28)
 海王社ガッシュ文庫 2006年

「私のこと嫌いになった?」
現在13歳年上のチョイ悪オヤジと恋愛中の友人が本当に打ったメールのセリフです。×年生きてきてそんなセリフ一度も使用したことないし、実際に使う奴初めて見たよ。

私思うに、恋愛体質の人って恋愛小説を読まないよね。必要ないっていうか。
恋愛小説を好む人は、恋愛するより、恋愛してる人がグルグルジタバタするのを見てるほうが楽しい、という体質なんじゃないかと思う。

高校のバスケ部の先輩後輩の関係。
また作家ものなんだけど、聡(さとし)はやっと3年前から作家専業になったという駆け出しのミステリー作家。恋愛体質のゲイで、隣に住んでいる後輩の苅谷(かりや)は、昔から自分がゲイであることを知っている気安さから、10年ずっと親友でいた仲。

しかし1年前、聡が2年間付き合った12歳年上の作家と修羅場の末別れてから、この自分によく懐いているワンコな後輩に地味に恋している自分に気づく・・・。
続きを読む

bokaboka3 at 22:49|PermalinkComments(7)TrackBack(0)

2006年05月30日

さよならを言う気はない 英田サキ

探偵(37)×ヤクザ(29)
 SHYノベルス 2006年

ヤクザと探偵・・・『夜が蘇る』の攻受逆転版、と言ってはミもフタもないけど、「ヤクザ受」って久しぶりに読んだ気がする。
というか、ヤクザ受と言われて、傾正会若頭・辰巳鋭二(剛しいら『はめてやる!』)しか思い浮かばないんですけど。
辰巳が「ヤクザ受」としてあまりにも完成されたキャラクターなので、どこかしらかぶってしまうのだ。

天海(あまみ)もまた辰巳と同じく、「組長の愛人」から極道人生をスタート、その才覚を組長に見込まれて出世コースに乗る。
辰巳は自分の男(愛人兼舎弟)の背中に見事な2匹の龍の刺青を彫らせているが、天海は自らの背に虎と竜の刺青をいれている。

いっぱしの極道になってからも、少年時代に自分を補導したことのある元刑事の陣内につきまとっている天海。陣内にしてみれば、勝手に事務所に上がりこみセクハラまがいの嫌がらせをするやっかいなヤクザが天海なのだが・・・。

お互いの古傷も過去の過ちも知り尽くした男と男、長い付き合いの阿吽の呼吸。
なんだかんだ言ってもこの二人、別に最後まで行かなくてもいいんじゃないかという腐れ縁加減だけど、BL的にはそうもいかないので、最後はやってしまうわけだが・・・「受の言葉攻め」という珍しい趣向になっている。

組長はじめ老彫師、極道たち・・・くせのあるオヤジがザクザク登場するので、37歳探偵のオヤジ度が中途半端に終わったのが惜しい。
やっぱどうしても天海が受じゃなきゃいけなかったのかなあ?という気もするが・・・天海に「こんどは掘らせろ」とか言わせてるので、リバに発展の可能性ありと解釈しておこう。

bokaboka3 at 22:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年02月02日

ラブ・シェイク 英田サキ

代議士秘書(31)×大学生(19)
 プラチナ文庫 2005年

ヒロインは大学生バイトのバーテンダー(つい最近も読んだなあバイトのバーテンダーって・・・水原とほるか)。

この秋良(あきら)の視点から見るとわりと普通のBLなんですが。
母親は早く死に、代議士である父親にはほとんど省みられず、父の秘書を兄のように慕ううち恋心が芽生え・・・という。

けったいなのが、この秘書の檜垣の行動。
大切な先生のご子息に欲望を抱く自分を恥じて離れようとする。そこまではわかるんだけど、やり方があまりに意地悪で極端。秋良を傷つけるようなことばかりしている。
そして秋良がバイト先の店長と付き合ってると誤解した挙句、自分も店長が好きだとウソをついて、秋良を押し倒しちゃうんだからワケわかりません。

これだけ年齢差があったら攻はもう少し余裕見せて欲しいよね。
まあ、恋をすると人間分別を失うんだねということでこの人のことは片付ける(笑)。
続きを読む

bokaboka3 at 00:19|PermalinkComments(3)TrackBack(0)

2006年01月05日

ひと目会ったら恋に花 英田サキ

ラーメン屋大将(26)×ファミレス店長(31)
ひと目会ったら恋に花
英田 サキ著
白泉社 (2005.12)
通常24時間以内に発送します。
  白泉社花丸文庫2005年

この人はヤクザものなど比較的シリアスなものを書く印象があったが、花丸文庫初登場の本作はにぎやかな「下宿屋もの」。

これこそお正月に読むにピッタリの「おせちBL」だった。
理不尽な出来事で左遷され、ファミレスの店長に出向させられた商社マン、幸村。
しかも住んでいたアパートの火事で住むところと家財を失い・・・という不運の30代。そしてゲイといううれしい(?)設定。

とりあえず引っ越した先の下宿で、そんな幸村にひと目惚れするのが、元ホストで今は屋台のラーメン屋の大将、無精ひげ+タオル巻きのワイルドな男前
これだけもかなりの大サービス(?)だと思うけど、このいまどき珍しい賄い付き社会人下宿の他の住人もツブぞろい。

美貌だがものすごい変人の大学助教授、アイドル顔の鳶職人、SM専門のエロ漫画家、そして下宿の管理人は20代の男なのに賄い専業のオッカサン。
この下宿は、近所のオバサンたちからはイケメン下宿(笑)と呼ばれている。

この設定なら、もう何が起きても楽しいでしょ。続きを読む

bokaboka3 at 15:53|PermalinkComments(0)TrackBack(1)

2005年10月11日

愛しすぎる情熱 英田サキ 

天文台職員(28)×フリー翻訳業(32)
  プランタン文庫 2005年

偶然なんだけど、二日連続で似たような台詞を読んだ。

「身体だけならくれてやる。お前みたいなあとくされのない相手ならなおさら歓迎だ」
(by雫「霜雪のかなたに」)

「・・・なんだったらセックスの相手くらいはさせてもらうよ。身体だけの関係でいいなら、僕も気が楽だしね」
(by夏目「愛しすぎる情熱」)

いずれも攻めてくる年下男の情熱をなんとかかわそうとする30男の台詞。

いまさらなんですけど、どうも私は「世を捨てた年増受け×年下攻め」が大好物みたいで、気がつくとそういう本を選んでる。
おそらくその原点は「ANSWER」(崎谷はるひ)の秦野(商社マン→保育士)にあると思われ、「ミツバチの王様」(中原一也)の杉崎(商社マン→喫茶店主)とか、「水温む」(山田ユギ)の高尾さんとか。続きを読む

bokaboka3 at 00:40|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2005年09月11日

夜が蘇る 英田サキ

ヤクザ(32)×探偵(36)
  プラチナ文庫 2005年

BL界の高○薫(?)英田サキの描くヤクザは、微妙に私の好みからズレるところがあったんだけど、やっとストライクゾーンに来た感じ。
このヤクザさんもひたすらヒロインの(文字通り)尻を追いかけている色男の若頭という定番ながら、ヒロインの設定がいいんだよね。

元警視庁キャリアの秋津は、長年の情人だったヤクザを失い、警察をやめて大阪で人探し専門の小さな探偵事務所の雇われ所長をしている。
36と年増だが、愛する人を失い、人生投げやりになっている影のある美人という設定は、「寺内貫太郎一家」における篠ひろ子(古くてすいまっせん)、男ゴコロをソソってやまないマドンナである。

元カレのヤクザは4年前、刺されて腹から血を流しながら秋津の部屋に逃げ込み、「お前の腕の中で死なせてくれ」と言って絶命したのだ。それやりすぎだろ、って話だけど、BLにおけるヤクザものは、トゥーマッチところがないと面白くないのよ。続きを読む

bokaboka3 at 12:18|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2005年04月20日

エス 英田サキ 

ヤクザ(32)×刑事(28)

エス
SHY 2004年

今のところ私のベストBLヤクザキャラは
【攻め部門】沓澤亮治(榎田尤利「ラブ&トラスト」シリーズ)
【受け部門】辰巳鋭二(剛しいら「はめてやるっ」シリーズ)
このどちらかのタイプが理想ですね。

本書のヤクザ宗近は、組長の異母兄弟で表向きは企業舎弟の若頭補佐、スマートな沓澤型の経済ヤクザである。このタイプのヤクザは都内一等地に高級マンションを所有していることになっているが、この人はなんと六本木ヒルズにお住まいです。セキュリティシステムなどよく取材しましたね。

「エス」とは刑事が情報収集のために使っているスパイのことで、「鬼平犯科帳」なら「密偵」というやつだ。
前半はわりと硬い文章で警察組織の説明が延々と続き、「義兄」も出てくるせいか、なんか高村薫っぽいかんじ? そう思いはじめると主人公の椎葉もどこか合田刑事っぽい。

言ってみれば「スパイもの」なんだけど、椎葉のキャラがイマイチつかみきれない。
自分に惚れていたエスの安東の気持ちにはこたえなかったのに、宗近には色仕掛けも厭わない。いきなり「うしろからお前に責められたいんだ」なんて言い出すのにはちょっとびっくり。
BLとしてはめいっぱいハードボイルドタッチなんだけど、そこが微妙に中途半端でもある。

どうやらこの話はシリーズ化しそうで、宗近とエスの関係が固まったこれから先が面白くなるのではないかと期待する。

bokaboka3 at 00:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年03月14日

君のために泣こう 英田サキ

大学生弟(20)×リーマン兄(26)

君のために泣こう
SHYノベル 2004年

「兄弟もの」というのも、BLにおける一ジャンルを形成している。
ここで興味深いのは、男同士における近親相姦の定義である。
別に妊娠するわけじゃないんだからいいじゃんか、とも思うのだが、成立するカップルは、戸籍上は兄弟だが実は血が繋がってないとか、実は腹違いとか、実は長く離れて暮らしていたというようなエフェクトがかかっていることが多い。

一緒に育った実の兄弟の場合は、弟が兄に告白できない気持ちを抱いているとか、兄が弟を性的に虐待しているなどの歪んだ関係がまずあって、そこから脱出して新しい恋を見つける・・・という話が多いように思う。
(実の兄弟でラブラブハッピーエンドという話にはまだ出会ってないけど、あるのでしょうか?)
また兄弟ではないが、従兄弟など遠い親戚で、幼い頃から兄のように慕っていたのが・・・というおなじみの年下攻めのパターンは、兄弟もの一種ともいえる。続きを読む

bokaboka3 at 00:00|PermalinkComments(8)TrackBack(0)

2005年02月26日

今宵、天使と杯を 英田サキ

暴力団組員(27)×リーマン(33)
クリスタル文庫 2005年

気に入ると毎日同じものを食べ続ける偏食傾向が読書にもあり、おまけにコレクター気質なので、つい同じ作家ばかり続いてしまう(それで誰に迷惑がかかるというの?)。なので意識的にときどき「読んだことない人」を読むことにしている。

初めて読む作家は「タイトル」で選ぶことが多い。これもちょっといいタイトルだなあと思って購入。

目が覚めたら同じベッドに知らない男と全裸で寝ていた・・・という始まり方はけっこうあるよね。私のような駆け出しのBL読みでも、すぐに二つ三つ思いつく。
それは別にいいのだ。同じパーツを使っていかに面白いものを組み立てるかが作家の腕のみせどころ。

BLで極道とえいば、舎弟を従えた若頭、代貸クラスか組長の息子あたりが普通だけど、このヤクザは27歳の行動隊長・・・いわゆる鉄砲玉クラス。
つまりここでは極道=金と力のある男の職業という意味ではない。そこは新鮮。
続きを読む

bokaboka3 at 00:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)