医師不足の問題を研修医の強制配置で対処しよう、という厚生労働省のアプローチですが、「学徒出陣」と猛反発を浴びています。キャリアブレインニュースからです。
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医師養成の在り方を大学の枠を越えて考えようと集まった全国の医学生でつくる「医師のキャリアパスを考える医学生の会」(代表=川井未知子・東京女子医科大学医学部4年)は、2010年度から見直される新人医師の研修制度について、「教育体制の整わない病院にも未熟な医師を強制的に配置し、国民が将来享受する医療の質の低下を招くもの」などと反対した上で、「都道府県別募集定員の上限設定」と「病院別募集定員の設定」の撤回を求める署名活動を開始した。
医師免許を取得した新人医師に2年間の研修を義務付ける「新医師臨床研修制度」は2004年度から導入された。しかし、研修先を自由に選べるようになった結果、研修医が大学に残らなくなり、地方の病院に医師を派遣していた大学病院が関連病院から医師を引き揚げ、地方の病院が医師不足に陥ったという問題点が指摘されていた。
このため、文部科学省と厚生労働省は昨年9月から見直しに向けた議論を進め、今年2月18日にまとめた最終報告に、研修医を医師不足の地域に誘導できるような仕組み(募集定員の調整)を盛り込んだ。このような「医師不足を解消する」という観点に軸足を置いた見直しに対し、「良い医師を育てるという視点が欠けている」との批判もある。
そうした中、200人を超える全国の医学生でつくる「医師のキャリアパスを考える医学生の会」は2月27日、「臨床研修制度改定における計画配置について」と題する声明文を発表。
「医師不足問題と医師の教育は切り離して扱うもの」と指摘し、医師不足の地域に研修医を派遣する仕組みに対して、「地域医療の支えとして望まれているのは研修医ではなく、臨床経験豊富な熟練の医師であるのだから、研修医がよい教育を受けることこそ、日本の将来の医療を担う優秀な医師を育てるために必要である」と主張している。
その上で、「都道府県別募集定員の上限設定と病院別募集定員の設定の撤回」を求めている。
■“徒弟制度”から“お客さん扱い”へ
「新医師臨床研修制度」の見直しをめぐっては、「現在のような“見学研修”は意味がない」「医師不足なのだから研修医を現場でもっと活用すべき」との意見もある。2月26日に開かれた厚労省の「医道審議会医師分科会医師臨床研修部会」の終了後、同省の担当者は記者団に対し、「研修医はお金をもらって働いている医者なのだから、医師偏在問題に貢献すべきだ」と話している。
「新医師臨床研修制度」の導入は、劣悪な労働環境にあった研修医を解放させる1960年代の“インターン闘争”の延長線上にあるともいわれる。基本的な診療能力(プライマリ・ケア)の獲得を目的とするものの、最大の狙いは、医学部教授の権威を背景にした「医局講座制」の解体だったとされる。医師の人事権を大学医局から奪い取り、研修医の獲得を「自由競争」に委ねた新制度により、教育制度や待遇面での充実が図られ、研修医の質が向上したと評価する声も多い。もはや、従来のような“徒弟制度”を望む声は少ない。
しかし、へき地や離島のように医師不足が深刻な地域に医師を供給する「大学病院の医師派遣機能」が、地域医療を支えていたと評価する声もある。また、現在の制度について、「専門医の下をぐるぐる回っても、本当の意味でのプライマリ・ケアの教育にはならない」と皮肉る声もある。研修医を“お客さん扱い”する「ゆとりの教育の弊害」を指摘する声もある。
■「良い教育」とは何か
今回、「医師のキャリアパスを考える医学生の会」が発表した声明文では、「研修医を単純に労働力としてのみ考えている風潮もあるが、卒後数年間にきちんとした指導医のもと充実した教育を受け経験を積むことが、将来優秀な医師となる上で大変重要であるということは、疑う余地がない」としている。
その上で、「教育環境の整っていると考える病院を選んだ結果、都会・地方にかかわらず教育に力を入れている病院に研修医が集まったのであり、それに国が介入することは、研修医からよい教育を受ける機会を奪うものである」と主張している。
「医師のキャリアパス」を考えるために全国の医学生らが結集したことは、国が主導する政策形成の手法に風穴を開ける意味を持つかもしれない。ただ、今回の一連の動きからは、医学生らが望む「良い教育」とは何かが見えない。
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