人工透析が医療機関にとってドル箱だったのは今は遠い昔の話です。医療崩壊の津波は透析現場にも押し寄せています。透析は3日と空けられず、ストップすれば即、生命の危機に陥りますから、患者さんに取って、大げさでなく、「毎日が綱渡り」です。人手不足、診療報酬不足に高齢者の増加も加わって、大変な状況になりつつあるようです。

キャリアブレインの連載ルポ記事です。


 「増子クリニック昴」(名古屋市)の町田みゆき看護課長は今から2年前、本院の「増子記念病院」からほぼ10年ぶりに透析医療の現場に復帰して、驚いた。かつて働き盛りだった透析患者の高齢化が進み、身の回りの介助が必要な人が増えていた。

 昴には現在、240人ほどが透析を受けに通っている。その3人に1人が、65歳以上の高齢者だ。80歳以上の後期高齢者もかなりいる。

 透析中の血圧低下や終了時の転倒など、高齢化は患者たちに新たなリスクをもたらした。急激な血圧低下によるショック状態などを避けるため、本来は1時間置きのバイタルチェックを、15分ごとに実施しなければならない患者もいる。透析室では、午前中から「夜間透析」が終わる午後11時すぎまで、ほとんど気を抜けない状態が続く日もある。

 町田さんは日中、“プレイングマネジャー”として勤務表を片手に院内を走り回る。勤務シフトの作成など管理職としての業務に充てるのは、午前と午後の患者が入れ替わる際などのわずかな時間だ。

■深刻化する人手不足

 町田さんは、透析医療の技術はこの10年間で大きく進歩したと感じている。しかし、患者の高齢化によって介助業務が増える一方、スタッフの人数はこの間、ほとんど変わっていない。スタッフ一人当たりの業務量は、むしろ格段に増えた。

 昴では、ベッドが49床ある2階で、症状が比較的軽く、身体の自由度も高い人たちを受け入れている。1階(31床)に足を運ぶのは、車いすが必要だったり、症状が重かったりする患者たちだ。

 透析を安全に提供するのに必要な看護スタッフの定数を1階5人、2階7人と自主的に決めているが、最近は共に定員割れが続いている。看護職の全国的な不足が叫ばれる中、人員を補充しようにも思うように集まらない。

 高齢化に伴い、施設側は新たな設備投資も迫られている。増子クリニック昴は、市内に2つあった透析クリニックを統合して2005年11月に開院した。旧クリニックでは、高齢患者を想定したエレベーターやバリアフリー構造が整備されていなかった。分院の統合には、高齢患者のニーズに対応する意味合いもあった。「透析医療を続けるには、これらの設備を整えることが最低条件」(町田さん)になっている。

 高齢患者のリスクや新たな設備投資ニーズの高まり、業務量の増加…。二重苦、三重苦に見舞われる中、現在の診療報酬で透析室に十分な管理体制を敷くのは簡単ではないと、関係者は口をそろえる。

 町田さんは「いくら技術が進歩しても、見守りやケアが必要な患者さんがこれからも増え続けたら、安全に透析を提供するのは難しくなるかもしれない」と危惧している。

■透析医療の苦境、病院でも

 苦しい状況は、本院の増子記念病院でも変わらない。2000年代に入って透析医療の診療報酬の引き下げが続いた影響もあり、社会復帰した患者らに実施する「夜間透析」を取りやめたり、実施日を減らしたりする病院が周辺に相次いだ。これに伴い、本院では透析室の受け入れ患者が急増。一方で、3つある透析室には看護スタッフ3人の欠員が生じているところもある。

 増子記念病院の佐藤久光看護副部長は、「患者が重症化し、対応できる透析ベッドが不足している。そのため、分院にも“準重症患者”が通院せざるを得なくなっている」と頭を悩ませている。





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