Book News|ブックニュース

人文系・コミック・音楽から雑学など、出版系イベントからマニアックな新刊情報まで、「本」にまつわることはなんでも扱います。

『ハードウェアハッカー』から「あなたの聴かない世界」最終回まで。もろもろのお知らせ

10月に刊行された本と、11月に刊行予定の本のなかから、注目のものを選んで紹介するバグマガジンの連載「汽水域の旅」が公開されました。とりあげているのは10月の新刊んからハードウェアハッカー』『零號琴』『社会主義リアリズム』『パフェ本』『プロメテア2

11月刊行予定の本はニューダークエイジ』『自然なきエコロジー』『バイオビルダー 合成生物学を始めよう』『『アナザーマルクスです(近刊予定本ではよくあることですけど『ニューダークエイジ』の刊行は12月上旬に変更されてるみたいですね。

http://bugmag.xyz/articles/kisui_08/

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「汽水域の旅」の冒頭部分でも話していますが、バグマガジンでの連載は2019年の1月・2月の本を紹介する回までで終了になります。連載自体はどこかで今後も続けていきたいので、どこかのメディアで「ウチで続きを載せないか」という方がいたらぜひ声をかけてください。
ご連絡はTwitterの僕の個人アカウントのDMやメールなどでお願いします。

なお12月1日には佐々木友輔監督作品の上映会「異日常」を久しぶりに開催します。

また12月に刊行予定の『このマンガがすごい!2019』のランクイン作品の紹介2作品分および、アンケートに回答しています。好きな作品を紹介することができてとても嬉しいです。これを機会にそれぞれの作品の読者が増えてくれたら嬉しい。

そして来年2019年の1月20日には、特殊音楽(?)文化イベント「あなたの聴かない世界」の最終回が開催予定です。20世紀末から現在にいたるエッジな界隈の生き字引かつ明快な論客であるバンギさんをまたしてもゲストにお迎えします。1990年代の状況、まったくわかっていないので当日どんなお話を聞けるのかとても楽しみです。
詳細は主催の持田保さんのページをご確認ください。
http://tmochida.jugem.jp/?eid=305







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パフェの食べ方、味わい方、楽しみ方の多面性から、パフェの世界探訪へと誘う斧屋『パフェ本』

今回ご紹介するのはパフェ評論家の斧屋さんの新刊『パフェ本』す。最初に刊行された2015年の『東京パフェ学』シンプルな書名ですが、今度のこのストイックなまでの『パフェ本』というわずか4文字の書名に込められた思惑はいったいなんなのでしょうか。

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まえがきから「パフェには構造があり、構造には思想が表れます」というパンチライン。本書は、パフェの構造を模した3層の構成になっています。
最初の第1層は9つのテーマで「現代のパフェ」を考える手引きを提供。いわばパフェの世界探訪への入り口です。
次なる第2層では、全国各地のパフェの紹介。文字通りのパフェ世界彷徨です。
最後の第3層は、パフェ世界の深奥を味わうためのヒントになるコラム。パフェはグラスの底に何を秘めているかが重要なのですが、この第3層はまさにパフェの底のような、驚きと納得でもって本書を締めくくるような位置を占めています。

…とはいっても、本書はわずか110ページ前後のごく軽い本です。コースや儀式ばった料理でもない、軽く楽しめるパフェという文化に大胆であるとはいえ繊細な手つきで分け入る試みです。一杯あたり映画一本分のチケット代よりも安い、お店までの行き帰りの交通費を含めても演劇などの舞台鑑賞よりも値の張らないエンターテインメント。その広がりと底の深さを覗いてみませんか。


「『パフェ本』はパフェのガイドブックではない」というのは、著者の斧屋氏をはじめあちこちで言われていることです。たしかにこの本は、パフェのお店を紹介し、そこのメニューを紹介するという、いわゆる普通の「ガイドブック」ではありません。そうは言っても、パフェの食べ方、味わい方、楽しみ方をさまざまな角度から紹介し、その多様性・多面性からパフェの世界を探訪することへと誘う、そういう意味での「ガイド」をする本であるという意味ではやはりガイドブックであると考えてもいいのではないかと思います。


パフェの楽しみ方の多面性、その多面的な楽しみ方から見えてくるパフェのさまざまな多様性。その豊穣な「世界」へと読者を導くために本書は膨大な情報量をこれでもかと削り込んだと思われます。


たとえば第1章ならぬ「第1層」冒頭は「月替りのパフェ~季節感~」と題されています。その名の通り、パフェが月替りで考案され、季節感を演出に採用しているということなのです。このお題、ほんとうはこれだけで1冊の本を作れてしまうものです。それこそ同じお題で毎年、それぞれの季節感の表現をまとめる年鑑を出してもいいくらい。パフェを出すお店は多数あり、本書にも触れられているとおり果物は季節ごとに旬が替わり、年を重ねるごとに豊作不作の違いがあったり流行が変わったり、新しい品種が登場したりするからです。


あるいはそれに続く「アトラクション」「見立て」「ライブ」「舞台」といった切り口も、それぞれパフェの作り手が日々あたらしい表現を検討し、提案しているもの。本当は各店に章を割いて解説したくなるところ。でも本書ではそこをぐっとこらえて、読者がお腹いっぱいにならないように、最低限の要素で見せていく。ひとつひとつの切り口の紹介は軽いものではありますが、いずれもパフェを実際に食べるときにはじっくりと考えて向き合いたくなるテーマなのです。


第2層は全国パフェ巡り。僕は正直、パフェの全国巡りなんてあんまり興味がなかったのですが、第1層を経てから読んでみたらこのパートが非常に面白い。日本地図のうえにパフェを置いて、そこを点と線で繋いでいくような読み方を想定すると(実際僕はそういうものかなと思っていた)面白くありません。むしろ、パフェの多様性が全国的にまず存在していて、そのうえに日本地図が浮かび上がるような読み方が可能なのです。まずパフェありき。さすがパフェ評論家の仕事だと唸らされた瞬間でした。



そして読者をパフェ世界のさらなる深みへと引率するのが第3層。のっけから二段文字組みでパフェのパレルゴンとでも呼ぶべき「パフェグラスとパフェスプーン」についての小論がお出迎え。パレルゴンの意味がわからない人はググってみてください(斧屋さんが使っている用語ではありません。ご安心ください)。いったい何が「深み」かというと、この第3層を読んでから本書を最初から読み直すと、1回目に読んだときには気づくことがなかったであろう「細部」あるいは「外部」へと意識が向けられることになるからです。パフェグラスとパフェスプーンを例にとりましょう。


たとえば本書で取り上げられている108本のパフェのなかでもひときわ異彩を放つ「横に広い」形状のパフェを出す、埼玉・志木のShinfulaの「葉月~朝霧の風景~」と第された1本。パフェと言われておおかたのひとが想像するであろう、あの倒立した二等辺三角形の鋭角的なフォルムではなく、箱庭のような、縦に潰れた金魚鉢のような「うつわ」が、この店独特の世界観、表現を可能にしていることがわかります。「うつわ」つまりパフェグラスは、食べ物としてのパフェにとっては外部にすぎず、視界にはいっても意識されない細部にすぎないかもしれません。しかし何がそのパフェを可能にしているのかを条件づけている重要な外部であり細部なのです。


さらにいえば、本書ではShinfulaで使われているスプーンは写真にうつっていません。ワインではグラスの形状が香りの動きを左右するために非常に重要なのですが、うつわが視覚的な外部として重要なのと同様に、スプーンはひとくちの分量を左右し、本書でもたびたび書かれているように時間芸術であるパフェの食べる「時間」の進行に不可欠な影響を与えています。写真にうつっていないという意味では本書の外部に、パフェの味や食感そのものと同じく、締め出されているようでいて、この第3層ではスプーンにも言及されているのです。本書を読んで以降、食を愛するすべての人は、パフェを食べるときにパフェスプーンを持つ手の感触から「味わい」が始まっていること、パフェスプーンの重さをすら「味わう」ことを、意識してしまうようになるに違いありません。

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斧屋『パフェ本』



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今月からは月イチ更新ベースにしますというのと、『なくてもよくて絶え間なくひかる』(宮崎夏次系)

9月の振り返りはいちおうもうやってしまったし、いつもは月初めに公開される「汽水域の旅」も今月から第2月曜日公開になったので、今回特に書くことがないんですよね。


もちろん良い新刊はじゃんじゃん出ていて、チェックはしているのだけれど。そういえば、今月からこのブックニュース、基本的に月イチ公開というペースにします。引き続きお引き立てのほど、よろしくお願いします。


9月に出た本でひとまずとりいそぎ取り上げておきたいのは宮崎夏次系のなくてもよくて絶え間なくひかるです。


nakutemo


宮崎夏次系は独特の崩れた人物描写と透明な世界観、そこで繰り広げられる人間関係の齟齬が特徴の作家で、いぜんにも別のところで言及したことがあります。

https://shimirubon.jp/reviews/1682683


この『なくてもよくて絶え間なくひかる』は、この作者の特徴とも言える過剰な「歪み」はかなり抑えられているように見える。序盤はところどころコマ落ちしているかのように説明が欠けていて、何が起きているのか掴みにくいけれど、中盤はわりとスタンダードな青春もの…かと思いきや、終盤では序盤の意味不明だった部分を説明するかのような展開があり、と物語の構成もシンプルながらひねられており、楽しく読めました。


あと今月10月の「サイバーバカ異世界」は10月22日の月曜日、21時から配信予定です。過去の配信のログはこちらをご覧ください。

https://note.mu/nnnnnnnnnnn/m/m86672b9b6e77


それから、先日も告知しましたが12/1の土曜日は午後から夜まで、高円寺で佐々木友輔監督作品の上映会をやります。くわしくはこちら。

http://blog.livedoor.jp/book_news/archives/54204659.html



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佐々木友輔監督作品上映会のお知らせ。12月1日@高円寺グリーンアップル 『異日常』

永田がセレクトした映像作品を、可能な限り大音量で、スマホ可・途中入退場可・喫煙飲酒可の会場で上映する企画「異日常」を久しぶりに開催します。


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※『土瀝青 asphalt』予告編からiPhoneのYouTubeアプリでスクリーンショットした画像。


上映するのは、『アーギュメンツ#3』の座談会や、人間から遠く離れてなどでも活躍されている佐々木友輔監督の作品。かつては「郊外映画」の人のようにも言われていた佐々木監督ですが、実は一貫してメディア論的・環境論的なポストヒューマンの映像を撮ってきた人でもあります。今回は、代表作『土瀝青 asphalt』『新景カサネガフチ』にくわえて、虚舟伝承をモチーフにした意欲作『And the Hollow Ship Sails On』 も上映することにしました。いわゆる「映画館」ではない場所で光と音響にどっぷりと身を浸して、日常が異化される感覚をどうぞ心ゆくまで味わってみてください。

会場は「異日常」ではおなじみの高円寺グリーンアップル。名物のナポリタンを当日ご希望の方は事前に予約をお願いします。

なお、このBook Newsで過去に佐々木監督に寄稿してもらった連載は
こちら
こんな文章を書く人は、いったいどんな映像を撮るのだろうかと興味を持っていただけたら幸いです。

===【以下告知】================

異日常「

drift eye compose/distort the world

傍観者が世界を編集する

佐々木友輔 作品上映会


日時:2018年12月1日(土)

開場 13:30(21:30 終了予定)


料金:3,000円(要1drink注文。定員40名、入れ替え無し、途中入退場可。喫煙、飲酒、スマホ操作可。少数ながら電源も用意があります。また私語可。ただし当日はバンドライブ用のスピーカーシステムで可能な限り大音量で上映します)


上映作品

『土瀝青 asphalt』




『新景カサネガフチ』




『And the Hollow Ship Sails On』 




上映順未定。


トーク:

佐々木友輔×永田希

「不定形発達する世界」

   


会場:
高円寺グリーンアップル(東京都杉並区高円寺南4-9-6 第三矢島ビル2階)

http://greenapple.gr.jp/access.html


お問い合わせ:

以下のアカウントまでDMにてお問い合わせください。
会場、佐々木監督、また永田の個人メールアドレスへのお問い合わせでは、対応できない場合があります。

https://twitter.com/nnnnnnnnnnn/


プロフィール:

佐々木友輔

1985年神戸生まれ。映像作家、企画者。近年の上映・展示に「第7回恵比寿映像祭」(2015年)、「記述の技術 Art of Description」(2016年)など。2011年より出版プロジェクト・トポフィルを共同運営し、floating view “郊外”からうまれるアート(編著、2011年)、土瀝青──場所が揺らす映画(編著、2014年)、人間から遠く離れて──ザック・スナイダーと21世紀映画の旅(共著、2017年)を刊行。





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いつもは月初にやってるけど、いったん9月の振り返り。書評とツイキャス配信について。

『週刊金曜日』9/14号書評欄で「自然」という幻想:多自然ガーデニングによる新しい自然保護ついて書いています。また、9/28発売予定の『現代詩手帖』の小特集「『月吠』番外編」にもエッセイを1本書きました。『現代詩手帖』は6月に『月に吠えらんねえ』を特集して話題になりましたね。それから、宝島社の平成ライダー20作記念! 「仮面ライダー」2000-2018全史にも、『風都探偵』を紹介する文章を書いています。

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あと、毎月やってるツイキャス企画「サイバーバカ異世界」を9/20に配信しました。無料のオンラインサービスで自動文字起こしした文章(?)と合わせて録画した内容はこちらからどうぞ。相方は作家の輝井永澄さんです。マシントラブルのため本配信前半が消えていますが、前半を聞かないでも楽しんでもらえるのではないかと思います。




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最新記事(画像付)


ギャラリー
  • 『ハードウェアハッカー』から「あなたの聴かない世界」最終回まで。もろもろのお知らせ
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  • 中華料理と中国料理の違い、そして未来へ。『中華料理進化論』(徐航明著)
  • 未来の生態系が息づく熱帯雨林を舞台にしたSF『薫香のカナピウム』(著 上田早夕里)
  • 2018年1月から8月の振り返り
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