Book News|ブックニュース

人文系・コミック・音楽から雑学など、出版系イベントからマニアックな新刊情報まで、「本」にまつわることはなんでも扱います。

今月からは月イチ更新ベースにしますというのと、『なくてもよくて絶え間なくひかる』(宮崎夏次系)

9月の振り返りはいちおうもうやってしまったし、いつもは月初めに公開される「汽水域の旅」も今月から第2月曜日公開になったので、今回特に書くことがないんですよね。


もちろん良い新刊はじゃんじゃん出ていて、チェックはしているのだけれど。そういえば、今月からこのブックニュース、基本的に月イチ公開というペースにします。引き続きお引き立てのほど、よろしくお願いします。


9月に出た本でひとまずとりいそぎ取り上げておきたいのは宮崎夏次系のなくてもよくて絶え間なくひかるです。


nakutemo


宮崎夏次系は独特の崩れた人物描写と透明な世界観、そこで繰り広げられる人間関係の齟齬が特徴の作家で、いぜんにも別のところで言及したことがあります。

https://shimirubon.jp/reviews/1682683


この『なくてもよくて絶え間なくひかる』は、この作者の特徴とも言える過剰な「歪み」はかなり抑えられているように見える。序盤はところどころコマ落ちしているかのように説明が欠けていて、何が起きているのか掴みにくいけれど、中盤はわりとスタンダードな青春もの…かと思いきや、終盤では序盤の意味不明だった部分を説明するかのような展開があり、と物語の構成もシンプルながらひねられており、楽しく読めました。


あと今月10月の「サイバーバカ異世界」は10月22日の月曜日、21時から配信予定です。過去の配信のログはこちらをご覧ください。

https://note.mu/nnnnnnnnnnn/m/m86672b9b6e77


それから、先日も告知しましたが12/1の土曜日は午後から夜まで、高円寺で佐々木友輔監督作品の上映会をやります。くわしくはこちら。

http://blog.livedoor.jp/book_news/archives/54204659.html



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佐々木友輔監督作品上映会のお知らせ。12月1日@高円寺グリーンアップル 『異日常』

永田がセレクトした映像作品を、可能な限り大音量で、スマホ可・途中入退場可・喫煙飲酒可の会場で上映する企画「異日常」を久しぶりに開催します。


inichijou
※『土瀝青 asphalt』予告編からiPhoneのYouTubeアプリでスクリーンショットした画像。


上映するのは、『アーギュメンツ#3』の座談会や、人間から遠く離れてなどでも活躍されている佐々木友輔監督の作品。かつては「郊外映画」の人のようにも言われていた佐々木監督ですが、実は一貫してメディア論的・環境論的なポストヒューマンの映像を撮ってきた人でもあります。今回は、代表作『土瀝青 asphalt』『新景カサネガフチ』にくわえて、虚舟伝承をモチーフにした意欲作『And the Hollow Ship Sails On』 も上映することにしました。いわゆる「映画館」ではない場所で光と音響にどっぷりと身を浸して、日常が異化される感覚をどうぞ心ゆくまで味わってみてください。

会場は「異日常」ではおなじみの高円寺グリーンアップル。名物のナポリタンを当日ご希望の方は事前に予約をお願いします。

なお、このBook Newsで過去に佐々木監督に寄稿してもらった連載は
こちら
こんな文章を書く人は、いったいどんな映像を撮るのだろうかと興味を持っていただけたら幸いです。

===【以下告知】================

異日常「

drift eye compose/distort the world

傍観者が世界を編集する

佐々木友輔 作品上映会


日時:2018年12月1日(土)

開場 13:30(21:30 終了予定)


料金:3,000円(要1drink注文。定員40名、入れ替え無し、途中入退場可。喫煙、飲酒、スマホ操作可。少数ながら電源も用意があります。また私語可。ただし当日はバンドライブ用のスピーカーシステムで可能な限り大音量で上映します)


上映作品

『土瀝青 asphalt』




『新景カサネガフチ』




『And the Hollow Ship Sails On』 




上映順未定。


トーク:

佐々木友輔×永田希

「不定形発達する世界」

   


会場:
高円寺グリーンアップル(東京都杉並区高円寺南4-9-6 第三矢島ビル2階)

http://greenapple.gr.jp/access.html


お問い合わせ:

以下のアカウントまでDMにてお問い合わせください。
会場、佐々木監督、また永田の個人メールアドレスへのお問い合わせでは、対応できない場合があります。

https://twitter.com/nnnnnnnnnnn/


プロフィール:

佐々木友輔

1985年神戸生まれ。映像作家、企画者。近年の上映・展示に「第7回恵比寿映像祭」(2015年)、「記述の技術 Art of Description」(2016年)など。2011年より出版プロジェクト・トポフィルを共同運営し、floating view “郊外”からうまれるアート(編著、2011年)、土瀝青──場所が揺らす映画(編著、2014年)、人間から遠く離れて──ザック・スナイダーと21世紀映画の旅(共著、2017年)を刊行。





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いつもは月初にやってるけど、いったん9月の振り返り。書評とツイキャス配信について。

『週刊金曜日』9/14号書評欄で「自然」という幻想:多自然ガーデニングによる新しい自然保護ついて書いています。また、9/28発売予定の『現代詩手帖』の小特集「『月吠』番外編」にもエッセイを1本書きました。『現代詩手帖』は6月に『月に吠えらんねえ』を特集して話題になりましたね。それから、宝島社の平成ライダー20作記念! 「仮面ライダー」2000-2018全史にも、『風都探偵』を紹介する文章を書いています。

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あと、毎月やってるツイキャス企画「サイバーバカ異世界」を9/20に配信しました。無料のオンラインサービスで自動文字起こしした文章(?)と合わせて録画した内容はこちらからどうぞ。相方は作家の輝井永澄さんです。マシントラブルのため本配信前半が消えていますが、前半を聞かないでも楽しんでもらえるのではないかと思います。




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中華料理と中国料理の違い、そして未来へ。『中華料理進化論』(徐航明著)

今回ご紹介するのは徐航明さんという料理研究家による中華料理進化論。著者は、水餃子を「忘れることのできない最愛のソウルフード」と讃えつつ、自宅で餃子を作る際にはわざわざ焼きギョウザの皮も買ってきて、水餃子と一緒に焼きギョウザも作る、という日本在住20年という人物。

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このエピソードから伺えるように、水餃子は中国の一般的なスタイルで、本書でわざわざ「焼き餃子」と書かずに「焼きギョウザ」と書かれる方は日本で発達した「中華料理」として扱われています。

本書では中国の料理(中国料理)と、日本で発達した「中華料理」、そして近年グローバル化にともなって世界各地で発達した中華料理という3つのジャンルの展開を、日本という舞台のうえに描き出す一冊です。

さいきん、といってももう古い話題のようにも感じられますが、「アメリカの寿司屋に日本の職人が文句を言いにいく」ような番組が一部で話題になったりもしました。しかし、文化とは広がり変化して様々に楽しまれるべきものなのだとしたら、本書のように多方面に発達して定着していく過程を知り、多様な面白さ、新しい工夫を認めていく態度こそ、文化を豊かにしていくものなのではないでしょうか。

本書を読んで最初に思い浮かんだのは速水健朗ラーメンと愛国です。太平洋戦争後にアメリカで生産された大量の余剰小麦を受け入れることになった日本で、敗戦の反省から導入された大量生産と大量消費のモデルを取り入れた日清食品のチキンラーメンなどを軸に、日本におけるラーメンの歴史を鮮やかに整理して見せた名著です。チキンラーメンは、この『中華料理進化論』でも重要な契機としてたびたび言及されています。

『ラーメンと愛国』では、戦前の稲作への信仰(コメ食ナショナリズム)と、戦後の健康志向や粉食振興というグローバル経済からの圧力とが絶妙なバランスで拮抗し現代のラーメン観が形成される過程が、技術史、政治史、メディア史というさまざまな歴史から多面的に活写されています。

この『中華料理進化論』では、『ラーメンと愛国』でフォーカスされたラーメンのほかに先述のギョウザをはじめとする中華料理のメニュー、そしてその根底にある精神がどのように受け継がれて、どのように発展してきたのかをあとづけていきます。

個人的に、もっとも興味深く読んだのは「食文化とハイテク」という「日経x Tech」の連載を下敷きにした部分。『ラーメンと愛国』では、チキンラーメンの生みの親である安藤百福がフォーディズム的な大量生産技術の導入のために町工場から「魔法のラーメン」工場を作り、まるで自動車のようにチキンラーメンを製造し全国へと普及させる過程が語られていましたが、『中華料理進化論』ではたとえば「餃子製造機」の開発と世界への伝播が紹介されています。浜松にある自動車やバイクの部品メーカーが開発した、この小型餃子製造機はアジアや欧州へも輸出されているといいます。

また丸美屋の「麻婆豆腐の素」や、味の素の「回鍋肉」などの中華料理のための合わせ調味料の開発もテクノロジーによる文化の普及定着の例として挙げられています。このあたりに対する著者の視線は、料理研究家とは別の「大手電機メーカー勤務」というもうひとつの肩書きも関わっているのかもしれません。


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未来の生態系が息づく熱帯雨林を舞台にしたSF『薫香のカナピウム』(著 上田早夕里)

今回ご紹介するのは上田早夕里『薫香のカナピウム』です。2015年に刊行された単行本の文庫化です。

未来に訪れる異形の生態系を、広大な大洋を舞台にして描き出すオーシャンクロニクルシリーズ(『魚舟・獣舟』『華竜の宮』など)でSF作家として知られる作者が、今度は未来の圧倒的な熱帯雨林とそこに生きる人々を描くのが本作。

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植物とSFというと、2005年のバチガルピ『カロリーマン』、2013年の藤井大洋『Gene Mapper』、2017年の『コルヌトピア』を思い出します。本書の巻末の解説では池澤春菜氏が1961年『地球の長い午後』、1984年ニーブン『インテグラル・ツリー』、1995年トムスン『緑の少女』、そして宮崎駿が1982年から連載していた『風の谷のナウシカ』の腐海も「森林」として見做し、この『薫香のカナピウム』を加えて「私的世界五大森林SF」と呼びたいと提唱しています。

人間の営為と、植物に象徴される自然環境とは、えてして対比的に語られがちです。しかし実際には、人類史が始まって以来、人間と自然環境、人間と植物たちは相互に深く関わり影響を与えあってきたのです。

したがって、人間とその営為のひとつとしての科学の未来を描こうとするならば、必然的に植物や自然環境の未来のことも描くことになるのです。

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