今回は、プロメテア をご紹介します。

ウォッチメン 』『フロム・ヘルで知られる、英語圏のコミックス最強の原作者アラン・ムーア。彼は実は、世界で最も有名な現役の魔術師でもあり、それは先述の『フロム・ヘル』が全面的に黒魔術をテーマにしていることからも容易に理解されると思います。今回ご紹介する『プロメテア』は、ムーアの魔術師としての知識を下敷きに、近未来を舞台にした幻想神話とでも言うべき世界が繰り広げられています。




本作の翻訳は、『フロム・ヘル』と同じ柳下毅一郎氏ですが、監修に現代の魔女を自称する谷崎瑠美氏の名前があります。現代の魔術師として最近注目を集めているバンギ・アブドゥル氏と共に谷崎氏が編集協力をした海野弘氏の『魔女の世界史』と本書を平行して読むと、本作の世界観の深みがより具体的に理解できると思います。

たとえば、『プロメテア』は全編を通してアール・ヌーヴォー風の非常に凝ったコマ割りが採用されています。僕は本書に限らず、翻訳コミックの多くは単なる「翻訳されたマンガ」としてよりも、一種の画集として読むべきだと思っているですが、『プロメテア』では単なるアール・ヌーヴォーの模倣ではなく、作品の舞台である近未来をより身近に感じさせています。それのみならず、『魔女の世界史』でも第1章が19世紀末に割かれていたように、アール・ヌーヴォーが開花したこの時代は、現代の魔女たちのルーツのひとつでもあるのです。

参考記事:
ラファエル前派からゴスロリまで!ゴスの系譜概略『魔女の世界史』
http://www.n11books.com/archives/40115208.html




本作の主人公でありスーパーヒロインである「プロメテア」とは、古代エジプトに異端として排斥された神話的存在であり、その後も時代と場所を変えながら様々に描かれてきました。本作において、「プロメテア」に変身する女子大生ソフィーは、この「歴代」のプロメテアに助けられ導かれながら、彼女を亡き者にしようとする悪魔や黒魔術師たちと戦います。プロメテアは、想像力とその創造物そのものであり、プロメテアになる者は想像の世界と現実の世界とを自由に往き来することができます。ソフィーは、最初プロメテアの強力な力に戸惑い、自分が生み出した想像の世界の中で彷徨ってしまったりもするのですが、やがてプロメテアの力を使いこなせるようになっていきます。

『プロメテア』の作中で、女子大生であるソフィーは、「プロメテア」の来歴をレポートにまとめようとします。その過程で自らプロメテアになってしまうのですが、「プロメテア」についてもっとよく知ろうと友人と図書館で関連書籍を調べるというシーンがあります。ここでなんと哲学者ジャック・デリダと共著ヴェールを手がけたことでも知られるフランスのフェミニスト、エレーヌ・シクス―の書籍が登場します。図書館のシーンだけでなく、別のコマでも友人がシクスーの著作を手にしているシーンが描かれています。哲学や現代思想に興味のある読者はぜひ探してみてください。








【ナガタのプロフィール】

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アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。
その後、札幌・千葉・マニラ・東京・京都を転々。現在は関東某県在住。
フリーター・契約社員・嘱託社員・正社員・無職・結婚・離婚など紆余曲折を経て現職。
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