億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術


■STOCKMANのレビュー■

【お薦め読者レベル】 中級者以上
【  カテゴリー  】 バリュー投資
【  お薦め度  】 ☆☆☆☆

「先生!○○くんがワークブックやらないで遊んでます!」
なんて自習の時間にクラス委員の女の子に言われて
「ちぇっ!なんだよ!いいつけやがって」などとブチブチ、文句を言ったりしていた小学校時代。
 そんな小学校時代以来のワークブックです。
 この『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』はバフェットの手法をインターネットで企業の情報を調べながら、エクセルを使って計算し、鉛筆片手に読み進めるワークブックタイプの本です。ワークブックなんて小学校時代以来やったことがなかったのでなんだか新鮮な気持ちで取り組むことができました。
 さてそのバフェットですがその素晴らしさは世界一の大金持ち(世界長者番付2008年度版にて、620億ドルの資産で初めて首位に立った)でありながらその投資手法が判りやすいことだと思います。
 ただ、それゆえにバフェットの手法を「優良企業を安値で買って高く売る」と単純化しすぎて誤解している人も多くいるようです(ボク自身もそんな風に考えていました)、このワークブックはその誤解を解き、銘柄選びから、将来の予測まで丁寧に解説し、バフェット流銘柄選択を体験させてくれます。
 そして「市場の裏をかくというのはこういう事だったのか」と「本物の長期投資というのはこういう見方で行うものなのだな」と改めて考えさせられました。自分がそして、多くの投資家がいかに“近視眼的”であるのかを改めて思い知らされました。
 ただ当然のことですが、バフェットは基本的に米国で投資をしてきたわけですから(今の時代、インターネット等を利用してバフェットと同じ、米国の市場に参加するのも一つの手ですが)我々は状況やルールが異なっている日本の市場で戦うため、バフェットの手法のエッセンスを吸収し、日本市場に応用してゆく知恵が求められます。
 そしてバフェットにできて我々にできない事(大株主となって自社株買いをさせる)と、我々にできてバフェットにできない事(資金規模が小さいので市場に影響を与えないで株を買える)を考え合わせて、バフェットの戦術を自分なりに吸収し、日本の市場で応用してゆく事ができれば皆さんもミニバフェットや日本のバフェットになれるかも知れません。
 ただ塩漬けの株を目一杯抱えているボクとしてはもう少し早く、この本を読んでいたらなぁと残念でなりません。あーあ。


以下、青色部分は本誌より引用



■『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』−はじめに■

 この本は、ウォーレン・バフェットの銘柄選択術を伝授するために書かれたものである。バフェットは「相場を張る」タイプの投資家ではない。事実、彼は過去40年間にわたって、ウォール街を風靡したあらゆる「相場」を注意深く避けて通ってきた。それがインターネット革命をはやしたものであれ、バイオテクノロジー・ブームに乗ったものであれ、それらのすべての相場をパスし、そこから1セントたりとも儲けた事はない。しかし、こうした無数の宝船がウォール街を通り過ぎるのを傍らで眺めながら、バフェットは10万5000ドルを元手に初めた株式投資で、実に300億$以上の富を築いてきた。
 一体、バフェットは、株式市場の主要な相場には賭けないで、どのようにしてウォール街一の億万長者になれたのだろうか。まことに興味深い話ではないか。

■『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』−目次■

はじめに

【基礎編】

 [バフェットの銘柄選択]

  <第1章>市場からの永遠の贈り物―短期志向と悪材料現象

  <第2章>バフェットが重視する優良企業とは?

  <第3章>コモディティ型企業は避けよう

  <第4章>消費者独占型企業とは―バフェットの富の源

  <第5章>消費者独占企業を見分ける8つの基準

  <第6章>消費者独占型企業の4つのタイプ

  <第7章>絶好の買い場が訪れる4つのケース

【応用編】

 [バフェットの方程式]

  <第8章>なぜ安値で買うことが大切なのか

  <第9章>利益は安定して成長しているか

  <第10章>買値こそ投資収益率の鍵を握る

  <第11章>利益成長率から見た企業の実力

  <第12章>国債利回り以下では投資と呼べない

  <第13章>バフェットが高ROE企業を好む理由

  <第14章>期待収益率の水準で投資を判断する

  <第15章>コカ・コーラ株の期待収益率と実績

  <第16章>疑似債権として見た時の株式

  <第17章>利益成長率から期待収益率を求める

  <第18章>自社株買い戻しが株主の富を増やす仕組み

  <第19章>本業による利益成長か財務操作か

  <第20章>経営陣の投資能力評価

  <第21章>インターネット時代のアービトラージ戦略

  <第22章>バフェット流投資のためのワークシート

  <第23章>3つのケーススタディ

   訳者あとがき

■『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』−著者■

メアリー・バフェット
 バフェットの息子ピーターの元夫人。12年間、ファミリーの一員としてバフェットの投資をもっとも身近に見てきた。その後もバフェット家との関係は良好である。現在、ビデオ、企業広報などの編集会社のCEO。

デビット・クラーク
 ベテランのポートフォリオ・マネージャーで30年以上にわたるバフェット家の親しい友人。バフェットの当初のパートナーシップの数少ない会員でもある。

<訳者紹介>

井手正介
 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。役所に『ウォール街のランダム・ウォーカー』(日本経済新聞社)、『インデックス・ファンドの時代』(監訳、東洋経済新報社)など。

中熊靖和
 野村アセットマネジメント・シニア・ファンドマネージャー。