図書館のねずみ

南アルプスの伏流水を使った香り高い珈琲を啜りながら、じっくりお気に入りの本が選べる本好きのためのささやかなサロン、ブックギャラリー&カフェ風信。現在は店舗移転の為、日々奮闘しております。書店では扱っていないような古書、絶版文庫を集めています。

水のある風景

雨が降り止まない。
特に人吉の被害には胸が痛い。
まだ連絡不能の人が30人近くいるという情報もあるが、はっきりしない。
いつかウナギを食べた店も、映像で大被害を受けたことを知った。

当地の川、釜無川や尾白川も川幅いっぱいに増水して、白砂交じりの白茶色の濁流となっている。
去年の台風19号によって姿を変えた釜無川もまた、流れを変えつつある。
砂や石によって埋まってしまった崖沿いの深い淵がまた再現できるかどうか、少しの楽しみもある。
この淵の大石に乗り、アユやアマゴが逃げる様子をまた見たいものだ。
赤い婚姻色を持った大アマゴは、こんな深い淵を住みかとしていた。

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ほとんどが流失してしまった川カフェ(?)も、いくつかできつつあったが、どうなるだろう。

川カフェ

中洲となっている候補地も石や砂が動き、様相が変わっただろう。
川カフェには手が届くところに清流の流れが必須だ。
そこに座れる石が2.3個あればよい。
入り江となるような砂や小石の小さな浜があれば最高だ。
椅子代わりの石は流れの中でもよい。
手や足が冷たい水につかれるのも夏の喜びだ。


春には川辺にいたクジャクチョウやテングチョウも、今は高原に向かってしまっただろうが、対岸の深い緑の中にキツリフネソウの黄色が目に染みる。

テングチョウ

クジャクチョウ

キツリフネ


また、山桜が咲いていた対岸の崖は、フジ、ウノハナ、ノイバラ、ニセアカシアそしてスイカズラの花と続いていたが、樹の花はもう終わっている。
スイカズラ



このあたりの川は甲斐駒ヶ岳、日向山、ノコギリ岳由来の白い花崗岩がゴロゴロしている、白い流れの世界が多い。

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特に尾白川はこれが砕けた白砂が美しい。

アシ

神宮川は、小さな川だが一級河川として国が管理している。
明治神宮に献上される白い丸石の石灰岩が採れるからだろうか。
小さな川がすべて流れ込む釜無川もこの白い丸石が多くみられる。
清流と白い砂は白州という名、そのものだ。

清流

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我が家のナナフシ君を紹介しよう。
カキの若葉やエノキの葉を食べて、こんなに大きくなった。

ナナフシ小ナナフシ大

古川ロッパのCDを聴く

ロッパは美食家ではない。
マグロも赤身魚も貝も一切食べられない。
日本料理も、自ら語る資格もないと言っているほどだ。
ソバも食べられない、ウドン食いだ。
何もかも正反対の芸風のエノケンとロッパが、ソバ嫌いと酒好きだけは一致していると告白している。
「その代わり、ちょっと脂っこいもののことになったら、うるさいよ」と言うほどの肉好き、中華や洋食には目がない。
その食日記の、並々ならぬ食へのこだわりには圧倒されてしまう。

ロッパこと古川郁郎は小学校3年で緑波(りょくは)という雅号を持つほどに文芸に親しみ、旧制早稲田中学では早くも謄写版印刷の映画雑誌を作るほど早熟な男だ。
それも、その「映画世界」の編集の才を認められて大学1年生の時、菊池寛の文芸春秋社に入り、「映画時代」の編集・記者となった。
映画通(とくにアメリカの無声映画)で、筆も立つインテリだ。

そのロッパが映画雑誌をあきらめ、喜劇に行きたいと決心したのはチャップリンが来日した1932年のことだ。
もうロッパは30歳になっていた。
しかしこの時すでにロッパ得意の声帯模写はレコード発売されるほど評判になっていた。
33年には徳川夢声、山野一郎、大辻司郎との「笑いの王国」を浅草で作り上げ、レコード・舞台の活躍が始まる。
36年からは映画の出演も加わって、丸の内に移ったロッパの絶頂期に入っていく。


「古川ロッパ傑作集」のCDを聴きすぎて、「チョンキナ、チョンキナ、チョン、チョン、キナキナ、チョンガチョントキタ、エッササノサー…」とお座敷うたの鼻歌が出てしまって、一人唖然とする。
しかし、もっと調子のイイ歌がある。

ロッパCD

もう、終戦間際の昭和19年に発売された「潜水艦の台所」だ。
東京空襲が始まっているころにこんなのんきで楽しい歌が発売されているとは…。
しかしこの曲はアニメーション映画「フクちゃんの潜水艦」の挿入歌だった。
「海の底から聞こえてくるわ 大根ごぼうをきざんでゆでて まな板たたいてうたう歌 潜水艦の台所の歌はトントントントントン トントントントン…」
作詞・監督は横山隆一。
人気者「フクちゃん」は戦争当初から軍部の宣伝に利用されたが、これが戦時下最後の作品だ。
晩年、毎日新聞に載った「隆一コーナー」(六興出版・昭和57年刊)には、世界中にたった一冊の本として、「フクちゃんの潜水艦」を挙げている。

⇔完譽魁璽福


⇔完譽魁璽福屡

校正中に空襲で印刷所が焼け、手元に残った校正刷りだけが世界に一冊だけの本だという。
また、同署には、「戦争末期には漫画映画の「フクちゃんの潜水艦」という作品の中で「潜水艦の台所」という歌を古川ロッパさんが歌ってくれた。テスト盤ができたが、空襲のため発売できなかった。その盤も持っている。ロッパさんが私に「舌を噛みそうな歌でまいったよ」と愚痴をこぼした。」とある。
CD解説書の「古川ロッパ総覧」には、「潜水艦の台所」にはレコード番号も1944年11月上旬発売(8月新譜臨時)とあるが、空襲のために遅れて発売されたのだろうか。
晩年、横山隆一さんの鎌倉の家を訪問した折、ビールを飲みながらTVの「大相撲」鑑賞していないで、聞いておくべきことが多々あったのに…と、今になって反省しきり

もう一つ、「ロッパの悲食記」の小林信彦さんの「跋に代えて」には、ロッパの30歳代の若き姿がPCL第一回作品「ほろよひ人生」(フィルムセンター所蔵)の特別出演で観られるという耳寄りな情報が載っている。
絶対、観たいもの!
ロッパの舞台作品や映画漫談についての評価はこれからだ。(了)

古川ロッパのCDを聴く

STAY HOMEが叫ばれる中、古川映画やCD を見聞きする機会も多くなる。
5月の連休中だったと思うが、NHKラジオで突然、ロッパとエノケンの掛け合いによる「ちょいといけます」が流れてきて驚かされた。
(しかし、これは古関祐而の作品紹介ということで選曲されたようだ)
最近入手した「古川ロッパ傑作集」が面白くて、よく聴いている。

ロッパCD

戦後の1947年東宝映画の「新馬鹿時代」の主題歌 「ちょいといけます」(サトウハチロー作詞)も、このCDの目玉だ。
同時期に買った「The Band」や「Clannad」、「Pete Seeger」などの古いアルバムもかけたいのだが、ついついロッパの方に手が伸びてしまう。

エノケンのレコードはかなりCDになっているし、古い映画もビデオやDVDになっているのだが、ロッパ単独のCDはこれが唯一だろう。

(2010年ニーチレコード発行)美空ひばりの古いレコードのCD 化されたのを聴くと、原盤がないのだろうが、レコードのノイズが修正されていないので聴き苦しい曲があるが、ロッパのこのCDは完ぺきな修正がなされていて、発売当初の忠実な復刻となっているのが気持ちが良い。
添付の歌詞、ロッパのレコード総覧、中野正昭氏の解説も懇切で、行き届いている。
全20曲はSPレコード化されたロッパの代表作がほぼ網羅されていて、魅力的だ。


ロッパの当たり狂言で映画化もされた、「歌う弥次喜多」「ガラマサどん」「歌えば天国」…など、舞台と映画、そして歌(レコード)をメディア・ミックスさせるのがロッパの企画・手法だが、このCD でこれらの歌を聴けばその舞台も見えてくる気がする。


ロッパが得意とした声帯模写が入っていないのは、版権者の許可が下りなかったそうだが、残念だ。
(ポリドールの戦前の版権はまだ生きているのだろうか?)
しかし、「宵闇迫れば」の中の夜店のバナナ売り、易者、メリヤス売り、辻音楽師の店主と客の駆け引きを一人で演じている街頭のスケッチを聴き、「酔へば大将」の酔っ払いぶり、「ロッパの防護団長」の演技ぶりを聴けば、ロッパの言語感覚の鋭さが識れる。
声帯模写の実力も相当高かったことがうかがえる。
喜劇人デビュー前にレコードを連発するほど評判だったのだから。
出版の方では、夢声の「戦争日記」と並んで昭和史の貴重な文献と評判になった大冊の「古川ロッパ昭和日記」が晶文社から出版されたのが昭和62年。
近年では、「あちゃらか人生」の復刊(日本図書センター・1997年刊)、河出文庫からは「ロッパ食談」(「アマカラ」連載分を収録)、「苦笑風呂」(戦後すぐの随筆集)が復刊され、ロッパの文筆の方はほとんどが復刊され、再評価がなされてきた。
日記の公刊前に、ロッパの再評価のきっかけになった「ロッパの悲食記」(六興出版・昭和58年刊)が面白い。

悲食記

戦中の食日記(昭和19年)と戦後の食日記(昭和33年)の間に「ロッパ食談」と「悲食記」の食エッセイをサンドイッチしている。
長新太さんの装丁も秀逸だ。
昭和14年8月7日の日記からカバー絵を描いた。

「今夜は一人でウィスキーを飲もう。宿には何の肴もない。一個一円二十銭で買った卵を二つ。めがねたまごにして貰って、それだけで飲む。しみじみと、めがね卵を見た。こんなによく見たことははじめてだ。塩をふりかけて先ず白身を少し食べる。黄身がとろりと溶けた。黄身を食べる、うまいな。めがね卵はよきもの。二つの卵はウィスキー三杯の間になくなってしまった。皿には黄身が少しついている。皿を手に取るや、ペロリと舐めた。そして又、一杯。めがね卵はもういない。」


表紙にはペンの一筆書きで、古川ロッパ以外は考えられないロッパ像が、少し悲しく描かれ、帯には「この書を食うことに情熱を持つ人々に捧げる」と極太ゴチック体で書かれている。

悲食記本体表紙

口絵写真は「さくらんぼ大将」よろし、ロッパが木になったサクランボを枝ごと丸かじりしている。

△気らんぼ

NHKラジオの連続ドラマ「さくらんぼ大将」の主題歌(さくらんぼ道中・菊田一夫作詞・古関裕而作曲)が発売された1951年の撮影だ。
(長くなるので、以下は△悄
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