図書館のねずみ

南アルプスの伏流水を使った香り高い珈琲を啜りながら、じっくりお気に入りの本が選べる本好きのためのささやかなサロン、ブックギャラリー&カフェ風信。現在は店舗移転の為、日々奮闘しております。書店では扱っていないような古書、絶版文庫を集めています。

2009年01月

ジャズの流れる街はどこに?

前回、野毛は大道芸だけの街じゃないと書きましたが、ひと昔前ならば、野毛は飲み屋街だけじゃなく、ジャズの似合う街だと当たり前に言えたのに・・・。

昭和8年開店のジャズ喫茶「ちぐさ」が小さなプレートだけを残して消えてしまうと、なかなか素直にそう書けない。
戦後まもなく出来た「ダウンビート」は未だガンバっているけれど。
また、ジャズのライブ゙ハウスがいくつか出来、秋のジャズ・プロムナードの時には全国からジャズファンが集結してくるのですが・・・。

映画もジャズも昭和30年代を全盛に40年代も半ばになると、熱気が急速に失われてしまった気がする。
その残滓が細々と生き延びていたが、ついに、「ちぐさ」の閉店で止めを刺された、そんな感じがぬぐい難くある。

横浜市は、日本のジャズ文化発祥の地に小さな記念館でも作って、日本全国からジャズファンの集う憩いの場所を作ったらどうか。その一室に「ちぐさ」を再現して。
まぁ、美空ひばり記念館ひとつも建てられなかった横浜市では無理か。
ひばりのデビューを飾った国際劇場や「悲しき口笛」の舞台・野毛は、いまやJRAの場外馬券売り場と、ワンルームマンションばかりの街というわけか。
野毛再活性化が叫ばれながら、このテイタラクはどうしたことか。

さて、悲しき話題はこれくらいにして、ブックカフェ風信のジャズ関連本のお薦めを2・3点。
「ちぐさ」にジャズのお勉強に通った、秋吉敏子の「ジャズと生き方」(岩波新書)も面白いのですが、これは簡単に入手できる本なので、ここはジャズの原点「黒人ブルース」に重きを置いた本2点と、「入門」というがかなり高度な技術書を1冊。



詩 黒人ジャズ








木島 始(晶文社)





ブルースの歴史








ポール・オリヴァー(晶文社)






ジャズアドリブ入門









ジェリー・コカー(音楽の友社)

能楽・狂言の観られる街

野毛は大道芸だけではない。能楽・狂言など伝統芸能も観ることができる。
当店から、歩いて5〜6分のところに横浜能楽堂がある。
ここは加賀藩の残した伝統的な能舞台が、そのまま近代建築の中に納まっている。
(公演のない日には誰でも見学できます。)
ブランチ能が始まれば、お手軽に能を観られるし、狂言も人間国宝の芸が低料金で楽しめる機会があるのが嬉しい。
金沢の老舗の和三盆菓子が買えるのも魅力のひとつ。


能面








白洲正子「能」献呈本サイン入り



去年の暮れには隣の掃部山公園で薪能・狂言が上演された。
能楽にも横浜開港にも縁が深い井伊(掃部頭・かもんのかみ)直弼の像の前で、狂言の秘曲「鬼が宿」が篝火のなかで披露されて感銘を呼んだ。
初日は大雨にたたられ、能楽堂での公演になり直弼ただひとつの能「筑摩江・つくまえ」が上演された。


それと忘れてはならぬのは、近くの県立青少年ホールでの伝統芸能の公演。
地方に残された歌舞伎や人形浄瑠璃を観ることができる。
特に、毎年秋に行われる文楽の公演が貴重。年に一度だけですが、本格的な大坂の文楽が観られるチャンス。
人形遣いと浄瑠璃語り(太夫)と太棹三味線の、三位一体の至芸を気軽に(文化庁後援で低料金)楽しめるのは特筆すべきこと。

各公演後には当店にもお立ち寄りを。
桜木町へ帰る方には寄り道ですが、日の出町には帰り道です。
金・土の週末は夜9時までワインやコーヒーを楽しめます。
もっとも小生が公演に行く日は難しいかも・・・。でも、予約していただければ、すばやく成田山の境内を近道し、トンボ帰りして開店することも可能か。


梅若實聞書梅若函





珍しく和綴じの
「梅若實聞書」





当店では、伝統芸能に関する本も入門書やエッセイを中心に、できるだけそろえるようにしています。
歌舞伎では戸坂康二さんの本、能では戸井田道三さん、白洲正子さんの本など、初心者でも楽しめる本をそろえています。

大衆文学の生誕の地・ヨコハマ

当地、野毛の坂上は開港から明治時代には、成功した商人の自邸や税関官吏の社宅などが集まっていた関係で、有島武郎・生馬、獅子文六、中村汀女らの出生の地でもあります。
特に獅子文六は子どもの頃の横浜回想を残しているし、、晩年の「父の乳」も横浜を舞台としていて、いかにも横浜生まれのノンシャランな作風で好きな作家の一人です。

随筆町ッ子













また、長谷川伸(日ノ出町生まれ)、大佛次郎(中区生まれ)、吉川英冶(根岸近くで生まれた)と、大衆文学の書斎派の巨人達がすべて横浜生まれ、山本周五郎までもが戦後からずっと本牧住まいだったことを考えると、仲々興味深い。



四半自叙伝 忘れ残りの記













当店ではこれらの横浜の作家達の作品は、出来るだけ切らさないように心がけています。
これらの作家の中では大佛次郎の古き横浜を回想したエッセイ(昭和33年から47年まで神奈川新聞に連載された「ちいさい隅」というエッセイに多く含まれている)や、開港の横浜を舞台にした「幻燈」のノスタルジックなムードに木村荘八の挿絵も相まって心魅かれる。
当店では大切な作家の一人。



随筆ちいさい隅














*今週より、「フランスやパリに関する本を集めて展示しています。
 興味のある方はご来店ください。

いのちの作法

明けましておめでとうございます。

大企業による派遣切りが平然と行われている日本の社会、また、それを推進させた政治は何もできずに民間にお任せのテイタラク。

昭和三十年代に、すでに老人医療費を無料化し、乳児の死亡率0%を達成した岩手県旧沢内村(現在の西和賀町)の、村民が安心して生きられる地域づくりに取組んだドキュメント映画、小池征人監督「いのちの作法−沢内「生命行政」を継ぐ者たち」を観た。


いのちの作法












心ある有能な村長のいた幸福、村長の遺志を継ぐ行政の若い力、村では老人と若者たちとの自然な結びつきを当然とする暮らしがある。
福祉関係者ならびに地方行政に携わる人たち(国会議員も!)必見の映画。
(9日までジャック&ベティでアンコール上映)



昨年、J&Bで観た「狼の護符」もわずかに生き残っていた民間信仰の跡をたどった秀作でしたが、横浜では優れたドキュメンタリー映画を観られるのはこのJ&Bとテアトルヨコハマだけ。
「ヨコハマメリー」の大ヒットに見られるように一度話題に上り始めると大ヒットにつながる。(「靖国」も)

昭和三十年代には当地、野毛にも横浜ニュース劇場などもあって、ニュース映画さえもお金を出して楽しむ時代があったことを思い出すと、まだ、横浜でもドキュメンタリー映画の可能性が残っているのではないか。
(この時代のテアトルは、子どもにはメチャクチャ恐ろしい「吸血鬼ドラキュラ」や「血を吸うカメラ」などの恐怖映画が得意だったけれど・・・。)


早池峰の賦












ところで、羽田澄子作品の「早池峰の賦」「痴呆症老人の世界」「薄墨の桜」や土本
典昭「水俣」、小川紳介「ニッポン国古屋敷村」などのドキュメンタリーの歴史的名作を観せてくれる映画館はないか?
だめだったらせめて、横浜中央図書館にビデオかDVDくらいは、真面目な話、揃えて欲しい。
(あるかなぁ? ない!)






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