図書館のねずみ

南アルプスの伏流水を使った香り高い珈琲を啜りながら、じっくりお気に入りの本が選べる本好きのためのささやかなサロン、ブックギャラリー&カフェ風信。現在は店舗移転の為、日々奮闘しております。書店では扱っていないような古書、絶版文庫を集めています。

2009年05月

ヨコハマとクジラ

鯨と言えば江戸時代まで遡らなくても、ついこの間まで、日本人の貴重なタンパク源でした。
29日の神奈川新聞によると、昔の食卓を再現しようという試みで、開港記念日にあわせ、横浜市立小学校全部の学校共通の献立として、「くじらのごまみそあえ」が並んだそうだ。
昭和30年代〜40年代の家庭では高い肉(特に牛肉)のかわりに鯨ステーキがよく出たものだ。
小生の中学・高校時代の昼食に欠かせないのも、鯨のフライをはさんだカツパンだった。


この懐かしい味が横浜で復活する。
開港記念日前日の6月1日(月)、赤レンガ倉庫1号館3階ホールでは、開港博’Y150のイベントとして「横浜開港事件簿−開国と鯨と日本人−」が開かれる。

横浜開港事件簿ポスター


そもそもペリーは、アメリカの捕鯨船団の中継基地として利用したいこともあって、ヨコハマにやって来たようだ。
(アメリカでは鯨を食用ではなく鯨油をとるために捕鯨をしていた。)
こんな鯨とヨコハマ、日本人についての展示や講演、フィルム上映とともに、特別のプログラムとして「美味しい鯨料理の試食会」が野毛地区の料理店によって催されるのに注目。(3時半から6時半まで)

野毛の街おこしのひとつとしてクジラ料理を広めていきたいようだ。
B級グルメブームもあってのことか?わからないが、鯨料理を手軽に食べられるのに不満はない。
ぜひもっと広めて欲しいものだ。
昔の太洋ホエールズの本拠地ですから!(山口と並んで)

野毛では戦後フグ料理を出す店も多かったようですが、(未だ、結構多く残っている)、鯨料理もがんばってもっと増やして欲しい。
グリンピース、くそくらえだ。
高級になってしまった鯨肉が少し手に入れやすくなった現在がチャンスだと思う。
応援したいもの。



捕鯨といえば、南氷洋の日本の捕鯨船団のニュースを野毛のニュース専門館で見たような記憶があるが、定かではない。

ここで鯨に関連する本を紹介します。
ファーブル昆虫記の訳者、また、名著「モロッコ」や評判となった「気違い部落周遊紀行」の著者・きだみのるに捕鯨ルポルタージュがあったはずですが、今、手元にないのでお見せできず残念。
鯨やイルカ・シャチの大きな写真集はいくつか出ているが、手軽に見れるのはこの文庫本が一番。
1.水口博也「巨鯨」(講談社文庫)

巨鯨



2.児童書ですが仕掛け絵本の傑作
  「クジラ−力持ちの海の巨人たち」(ナショナルジオグラフィックソサイエティ監修・大日本絵画刊)

クジラ


3.映画「グランブルー」のモデルとして有名な海洋学者で、潜水の名人ジャック・マイヨールと兄のピエールの「海の記憶を求めて」(翔泳社刊)

海の記憶を求めて



今月より「横浜の本」を展示します。
ご興味のある方はご来店ください。
もちろん紹介のクジラ本もご覧いただけます。


オペレッタ「ミカド」と映画「浮雲」

先週も書いたが、6月2日の開港記念日に向けて、関連イベントが集中してくる。
これは開港イベントではないが土・日には珍しいアフリカ映画デーも開かれ、同時にもっとも新しい国エリトリアのコーヒーセレモニーも紹介された様だ。
日本の茶道のようなコーヒーセレモニーが伝統的にあるらしい。

アフリカ映画デー


また、6月のフランス月間に合わせて、フランス映画やアニメ週間も始まるし、キューバ映画祭も・・・(J&Bにて)。
とてもみな付き合いかねるので、悩ましい日々が続く。

特に注目は、能楽堂企画・公演「海を渡った能装束」とそれに合わせて6月6日・7日に行われるオペレッタ「ミカド」の上演。

海を渡った能装束


開港時に流出した能装束を復元して、能楽堂の「班女」「清経」に使用。
能衣装だけ見たい方は能楽堂で公演のない日に無料で見られる。(6月7日まで)

また同時に開港記念館というピッタリの舞台を与えて戦前は上映禁止だったオペレッタ「ミカド」がみられる。
オーストリアのグラーツ芸術大学のスタッフによる必見の公演。
これも能装束を使った当時のジャポニズム・ブームを彷彿させるオペレッタが甦る。
(1885年、ロンドンで初演。1887年にヨコハマの外国人居留地内で初演された。)
・・・ということで、日曜日(6月7日)は4時閉店となります。スミマセン。



ここで、ふと新聞の映画蘭を見ると「浮雲」と出ている。
同タイトルの映画とばかり思ったが、別の広告を見ると成瀬巳喜男の「浮雲」と判明。
なぜ?突然ココで?(県民共済シネマホール)と、考えたが、サッパリ分からず。
でも、やるなら大歓迎。
ついでに「稲妻」も「めし」も「鰯雲」も頼みます。
もっとついでに開港150年に引っ掛けてずっと見たかった「鞍馬天狗・横浜に現る」もやってください。
・・・など、擦り寄ってみたりして。

浮雲


「浮雲」は未だ見ていない若い人たちには、昭和30年代の日本映画の実力を知ってほしいから、モノクロームの男女の逃避行を観てください。
また、公開時に高嶺秀子と森雅之の演技にないた熟年層の人たちには、(女性はダメ男に腹を立てながら)もう一度細部を見届けて、泣いて欲しい。
公開時に見られなかった団塊世代の人たち、ビデオやDVDで見た人たちも、大画面でどうぞ。
6月1日まで。(県民共済加入者とその家族のためのホールらしい)




開港地ヨコハマの当時の空気を伝える展覧会3つ

大型連休も終わり、町は少し落ち着いてきた気分。
野毛坂のヤマボウシの並木もいつの間にか白い花をたくさん付けている。
少し上から見下ろすと、白い蝶が樹に群れているようで美しい。


先週の展覧会のご紹介でヨコハマ開港記念がらみの大切なものを二,三忘れていました。
その1、文明開化を描いた版画家「川上澄生展」(そごう美術館 5月9日〜6月7日)

川上澄生展ポスター


当店より徒歩5分くらいの紅葉坂生まれの木版画の詩人・川上澄生の情緒あふれる南蛮画や絵本・ガラス絵・革絵・泥絵・トランプ・本の装丁など500点近くを集めています。
多くは鹿沼市立の「川上澄生美術館」や柏崎市の「黒船館」所蔵のコレクション。
川上は幼年期の5,6年過ごした横浜に生涯通して愛着を感じていたようです。
横浜の開化期の風俗や風景など、鮮やかな色彩の愛すべき小品も多く、開港記念にはぴったりの展覧会です。
特に「初夏の風」(1926年)は、これも晩年、横浜に縁が深かった棟方志巧に衝撃を与えた作品として有名。
川上の残した作品は中央公論社より全集が出ていたが、その後文庫本としても全14巻が出ていて重宝する。
これも品切れですが、バラでしたら時々見かけるので、、「全詩集」「横浜懐古」「横浜どんたく」の巻は欲しいところ。
特に「横浜懐古」の第3巻は傑作「少々昔噺」も入っていてお買い得。

横浜懐古


川上澄生装丁の猫町(萩原朔太郎著)昭和10年刊。
この本も展覧会で展示中。当店のものはその復刻版。

猫町




その二、横浜版画(浮世絵)の名品を集めた「横浜浮世絵」展がそごうの反対側(西口)でも、同時開催されているので、二つとも観たいもの。(横浜高島屋 5月20日〜6月2日)
開港当時の横浜風景や外国人風俗を描いた三代広重、五雲亭貞秀、一猛斎芳虎の版画や瓦版、絵図なども含め150点を揃えている。
(これにもれた版画も川崎の「砂子の里資料館」でも、無料で展示している。)

絵葉書


ヨコハマ・グラフィカの1冊。(有隣堂刊)
他に「横浜絵地図」「横浜浮世絵」がある。
横浜浮世絵はもっと大冊もあるが、一般にはこれで十分。
開港130年時の刊行。



その三、もうひとつ。
これは横浜だけではないが恵比寿ガーデンプレイスの東京写真美術館では、「東方へ−19世紀写真術の旅」と称して、銀板写真からカロタイプ(紙ネガ・ポジ法)を使った極東日本の珍しい写真を展示している。
外国人向けのおみやげものとして作られた手彩色の「横浜写真」を数多く見ることができる。(5月16日〜7月12日)

東方へ展ポスター


どの展覧会も明治のヨコハマの雰囲気を味わえる大切な機会ですから、特に若い方たちにおすすめです。

ホソバシャクナゲとムーミン谷(オサビシ山か)

先週(大型連休の後半)はお店も休み、久しぶりにゆっくり水汲みに山梨へ。
雨にたたられた中で小さな喜びはシャクナゲ(細葉)の開花が見られたこと。

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桂の木の根元で、細々と生きていて、花はほとんど期待していなかったので、喜びはそれほど小さくはない。

当店ではおすすめの展覧会・コンサート・演劇・映画・イベントなどのチラシを貼っているコーナーがありますが、今週、特におすすめしたいのが連休初めから始まった「ムーミン展」(大丸ミュージアム東京)

ムーミン展ポスター


原作者トーベ・ヤンソンの描いたムーミンの原画やスケッチ170点(ムーミン谷博物館所蔵)や、門外不出だったムーミントロールの立像が見られます。
彫刻家の父と挿絵画家の母の長女として生まれたトーベ・ヤンソンの画家としての確かな仕事振りが見られる貴重な機会ですから。

ムーミンのお話全9話は講談社文庫などで手軽に読めますが、今回おすすめしたいのが彼女の書いた初めて大人向けの出版自伝小説「彫刻家の娘」。

彫刻家の娘


これは以前英語訳本が講談社文庫から出ていましたが、ずっと絶版状態だった本のスウェーデン語版からの訳。
これも、講談社から1991年に出た本です。
この訳者、冨原眞弓さんの「ムーミンダニへようこそ」も一緒にご推薦。

ムーミン谷へようこそ


トーベ・ヤンソンの本はムーミン以外のトーベ・ヤンソン・コレクションとして筑摩書房から出ていましたが、品切れのようです。
この中から「誠実な詐欺師」や短編集がちくま文庫から出ています。
ほかの作品も少しずつ文庫化されると思います、多分!
ヨーロッパの人たちにとっては馴染みの「ムーミン・コミックス」は筑摩書房で未だ在庫あり。

ムーミン谷以外の展覧会で今このコーナーに張ってあるのは、神奈川県立近代文学館の「森鴎外展」や県立近代美術館葉山の「荘司福展」、シルク博物館の人間国宝「古賀フミ展」など。
また、開港150周年記念の展覧会も続々と始まっています。
神奈川歴史博物館、ヨコハマ歴史博物館、横浜開港資料館、横浜能楽堂「海を渡った能装束」、横浜都市発展記念館「横浜建築家列伝」、馬の博物館「文明開化と近代競馬」など目白押しです。

この中で注目すべきは、横浜に住んでおられた日本画家・荘司福さんの生誕100年、初の大回顧展「花・大地・山−自然を見つめて」。

荘司福展ポスター


みちのくの民族や古仏、インド・ネパールの仏跡など、幅広く追求された作品から晩年の自然の風景に回帰してゆく作品まで見られて必見。

シルク博物館の佐賀錦の美しさも見たいが(5月24日まで)、次には「ヨコハマ開港とシルク展」という大物もひかえているし、横浜建築家列伝という意欲的な展示もあるし、仲々全部は見られない。・・・(お店をやっている場合じゃない?)

朴(ホウ)の木のこと

冬の雑木林に入ると、やたらと大きな葉ばかり見かける場所がある。
これは、ほとんど間違いなく朴の木がその中心に立っているということだ。
褐色がかった木肌の太い幹、細枝には白い斑点が見える。
それぞれその頂点に弾丸のような立派な冬芽がひとつついているので、それと知れる。

かなりの高木となり、材としても有用な木だ。
やわらかく素直な材で割れや狂いが少ないので、木工には良く使われる。
刀の鞘や、下駄、楽器、製図版、小さな細工物にはなくてはならぬ重宝な木だ。
もっと身近なところでは、学校などの木版画の板はこの木が使われることが多い。
(シナベニヤも多いが・・・)

森の博物館


標本


稲本正さん主催の、飛騨の木工集団「オーク・ヴィレッレジ」の作った「森の博物館・現物標本」(日本人なら知っておきたい木 30種)にも入っているので、確認してほしい。
ポプラの材ほどではないが、少し緑色がかった特徴的な材で、木目も素直だ。

この朴の木の冬芽のしっかりした枝が手に入ったので、店に活けておいたところ、この暖かさですぐ産毛の生えた柔らかそうな葉が開いて、開花しかけの花のようだ。

ほうの木


芽を守っていた肌色の鞘(苞)がとれて、仏手冠のようなフォルムが美しい。
この葉が初夏には大きく放射状に開いて、中心に白い大きな花をつける。
モクレン科らしい香り高い花だ。
花びらも厚く、中華料理に使う白い蓮華を集めたような立派なもの。

初夏の成長したはも田舎では貴重なもので、田植え時のお皿やラップ代わりになる自然の恵みだ。
「ホオっぱしい大盆に厚いオムスビのっけたり、煮物や漬物ものっけて食う。皿代わりだこっつぉ。いい香りしてうめんそ。ホウ葉は田植え時分が一番匂うすけ・・・」
(尊敬していた植物民族エッセイスト宇都宮貞子さんの採取した話より)
吉野の柿の葉ずしのように、結びも、粽(チマキ)も、餅も包む飛騨の朴葉味噌は、その究極のカタチ。

大きな庭のある家の書斎の窓に近いところには、この木を植えて夏の緑陰を楽しみたい。
6月頃には2階の窓から大きな白い花を眺められるし。
アンデルセンの訳者、北欧文学の紹介者、文芸評論家でエッセイストの故山室静さんの書斎「朴の木山房」のように。
*狭い庭には、絶対植えぬこと。

今週は、たくさんある樹についての本から1冊だけ。

木


幸田文「木」(新潮社刊)文庫本で出ています。
これが木のエッセイのベスト。
(朴の木は出てこないが・・・)












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