図書館のねずみ

南アルプスの伏流水を使った香り高い珈琲を啜りながら、じっくりお気に入りの本が選べる本好きのためのささやかなサロン、ブックギャラリー&カフェ風信。現在は店舗移転の為、日々奮闘しております。書店では扱っていないような古書、絶版文庫を集めています。

2009年06月

美空ひばりのヨコハマ

先週の水曜日6月24日は、早や、20回目のリンゴ忌。(無論、リンゴ追分から採った名前)
ひばりは平成元年6月24日、0時28分、順天堂病院で亡くなった。
享年52歳。
早すぎる死。
いつも通る「悲しき口笛」の恰好をした[ひばりの像]の前には、いくつもの花束が供えられていた。
ひばりが見たら悲しみそうな、青いポリバケツに入れられて。

美空ひばり、本名加藤和枝は磯子の滝頭の生まれ(昭和12年5月29日)、下町の魚屋の娘というのは有名なことですが、小学校に入学当時から歌の天才といわれ、当時の杉田劇場のポスターには早くもひばり楽団と称して、父親とバンドを組んで主役で歌っている。

ここ野毛には昭和21年「アテネ劇場で初舞台を踏む」と年賦に出ている。
当時の野毛は闇市が立つヨコハマ一の賑やかな街。
銅像の斜め向かいの横浜国際劇場(今のJRAの場所にあった当時最大の舞台)への出演は、昭和23年。
当時の大スター、川田晴久との交流もここから始まった。

昭和24年には美空ひばりと芸名を正式に決め、早くも松竹映画「悲しき口笛」に初主演。
翌年には「東京キッド」。
それ以来ひばりは歌手として、映画スターとしての大活躍をスタートする。

その160本にも及ぶ映画の仕事の再評価がやっと始まってきた。
没後20年・磯子区役所前には生誕記念碑ができたようですが、命日、24日だけジャック&ベティでは「娘船頭さん」(松竹・昭和30年製作)が上映された。
また、8月に入ると、ひばり映画特集が始まります。
乞う、ご期待というところ。
ひばりは松竹だけでなく江利チエミ、雪村いずみとの三人娘・ジャンケン娘の東宝や、時代物、若衆物の東映、銭形平次捕物長やべらんめえ芸者の大映という具合で、各映画会社を席捲している。
(日活だけは主演がなく「力道山物語」のワンシーンだけという)
ほとんどが娯楽作品ですが、「鞍馬天狗」や「山を守る兄弟」など、大佛次郎原作にはひばりの新鮮な魅力が光る。

ひばりの本は次の3冊が基本図書。
1.「ひばり自伝・わたしと影」1971年初版・89年新装版(草思社刊)
芸能生活25年の節目に母との生き様を描く。

ひばり自伝


2.「川の流れのように]1990年・集英社刊。後に2001年集英社文庫に入る。
闘病生活も含むひばり自身のメモリアルノートと自伝。

川の流れのように


以上は2冊とも、ひばり自身の残した文章。

3.竹中労[美空ひばり」1965年弘文堂刊。後1987年、朝日文庫に入る。
ひばり評伝の決定版。

美空ひばり

フランス月間 in YOKOHAMA

6月といえば、横浜ではフランス月間、5年目となるとようやく定着してきた感がある。
今年は開港150周年とリヨンとの姉妹都市提携50周年も重なり、いつも以上の盛り上がり。
リヨン市長も来浜したし、美食の街リヨンのコックさんもかなり来日している。
三渓園では横浜とリヨンのコックたちによる食の饗宴があったようだが、一人10万円では縁遠い。
「アペリティフの日インヨコハマ」行事の甘いカクテルに一口ディッシュ4000円でもまだ高い。

食のほうはさっさとあきらめて、無料の”French-French"のフランス車赤レンガ集合を楽しむとするか。
シトリエンの名車など個性的なフランス車で広場を埋め尽くすらしい・・・?(6月27日)

それともう一つ、山手の洋館を使ったフラワー・アーティストによる装飾も面白そう。
近すぎてなかなか行く機会のない、ベーリック・ホールや外交官の家などの建築も楽しめる。

それにしても、ここにフランス映画祭がないのが寂しい。
フランス・アニメ映画祭2009(ジャック&ベティ)や、フランス・ショートショートフィルムフェスティバル2009などはあるが・・・。
どういう経緯か分からないが、何年も続いたフランス映画祭が東京に移ったのは納得できない。
横浜に単独映画館がほとんどなくなっているのが遠因かもしれない。無念!

ここで、例によって当店おすすめの本をご紹介します。
「リヨンは絹織物や美食だけの都市ではない!!」ということで大佛次郎賞の「本の都市リヨン」(宮下志郎著 晶文社刊)を挙げたいところですが、菊判472ページの大冊であまりにも専門的に過ぎるので、ここでは「ガストン・ガリマール、フランス出版の半世紀」(ピエール・アスリーヌ著 みすず書房刊)。

ガストン・ガリマール


これも四六判500ページを越える本ですが、フランス文学ファンには興味深い貴重なエピソードが詰まっている。


あまたある、フランスの旅の本のうちで、かなり実用的で役に立つ本と、同じ著者によるデザイナーから見たユニークな視点のパリ・エッセイの2冊を取り上げたい。
1.「ガイドブックにないパリ案内」稲葉宏爾(TBSブリタニカ刊)

パリ案内


もう何度かパリに行っている人たちや、観光地ではないパリらしさを知りたい人たちのバイブル。
あまり、女性一人では歩かない方が良いちょっと危ない場所も入っていそう。
パリのパサージュについてもかなり詳しく書いてあるのが嬉しい。
同シリーズのレストラン食のガイドもある。


2.「パリ街角のデザイン」稲葉宏爾(日本エディタースクール出版部刊)

パリ街角のデザイン


マガジンハウスの「クロワッサン」「アンアン」などのエディトリアルデザインのための教科書(解答)ともいえる本。
編集者・出版人養成学校の刊行らしく、用紙や装丁にも気を使っている。

*7月には入ると、みなとみらいでボルドー音楽祭も始まります。(7月2〜5日)

犬本のいろいろ

猫横丁にも時々は犬の散歩にお目にかかる。
時間は決まっていて朝・夕の2回だけ。
他の時間は猫の天下だ。
本の世界も似たような状況で、猫本は山とあるが、犬の本はかなり少ない。

絵本の世界をみても同じことで、「犬の絵本をあげてみてください」と言われると困ってしまう。
「どろんこハリー」(ジオン文・グレアム絵)シリーズやターシャ・チューダーのコーギー犬の絵本くらいしか思い浮かばない。
それと、「しばわんこの和のこころ」?
でも、これは別に犬の本という訳ではないし・・・。
よく探せばあるでしょうが、すぐ出てこない。
秋田犬の中犬ハチ公や南極犬タロージローなどのおはなしや、盲導犬××、看護犬○○などの真面目な児童書はいろいろあるでしょうが。

その中で、大人にグッと迫る絵本が1冊あるのを思い出した。
「アンジュール−ある犬の物語」(BL出版)。
ガブリエル・バンサンが始めて出版した絵本で、日本でもロングセラーとなっていますから、見た人も多いでしょう。
捨てられた老犬のいる光景を鉛筆デッサンだけで描いた地味な本ですが、発刊すぐ評判を呼んだものです。

アンジュール


それと、犬本の代表作。
カレル・チャペックの楽しい写真や犬のカットが満載の「ダーンシェンカ」「ダーンシェンカ・小犬の生活」の2冊。
(新潮文庫にも入っています。河出文庫にも「犬と猫のお話」があります。犬・猫1冊本とは珍しい。)
ダーンシェンカと呼んだ白い小さなかたまりのようなワイヤヘアード・フォックステリヤの小犬。
このお茶目な行動、いたずらに大騒ぎする生活も突然静かな生活に戻る。
「ダーンシェンカ、いいこでいるんだよ。」この最後にほろりとさせられる。
イラストにはいつもの兄ヨゼフではなくて、本人のふでになるもの。
パラパラ漫画つきで楽しみいっぱい。

ダーンシェンカ


犬本はさすがペットNO1というだけあって、実用書風な本はいろいろある。
例えば「愛犬のトラブル解決法」「この犬が一番!自分に合った犬と暮す法」「愛犬の愉快なトレーニング術91」等々。

エッセイ集とするとどうでしょう。
以前(と、言っても昭和30年頃の出版ですが)中央公論社の瀟洒な新書判「猫」(谷崎・大佛・井伏などのエッセイ編集本)と並んで、「犬」(幸田文・志賀直哉・林文子・徳川無声らのエッセイ編集本)もあっていい本でしたが・・・。
今、入手できるエッセイとしては愛犬家(とくに紀州犬)として有名な近藤啓太郎の「ぬた毛の犬」「愛しき犬たち」、「高安犬物語」「咬ませ犬」の戸川幸夫、「ハラスのいた日々」「犬のいる暮らし」の中野孝次のエッセイ集などがあるが、ここではやはり紀州犬の白い名犬コンタとの生活を描いた、安岡章太郎の「犬と歩けば」(新潮文庫)を上げておきます。

犬と歩けば


このエッセイを連載中に老いたコンタの死を迎えてしまう。
「コンタの上に雪ふりつもる」の章が悲しい。

他には「日本犬・血統を守るたたかい」吉田悦子(小学館)もあるが、、狼や犬の研究家・歌人・平岩米吉の犬の本は重要。
写真集としては岩合光昭さんの「ニッポンの犬」(新潮社文庫に入った)がベスト。
日本の貴重な固有種、柴犬・紀州犬・川上犬・甲斐犬・四国犬・秋田犬・北海道犬の全種が生きている背景・環境の中で撮られていて感動もの。

ニッポンの犬


「猫はどこ?」の路上観察者でありマンホールのフタ研究家の林丈二さんの「犬はどこ?」も笑える犬の写真も多い珍本。

写真開祖・下岡蓮杖、文久二年の下に写真館を開業す

先週はクジラのことを書きましたが、野毛のクジラの街おこしは一段すすみ、飲食店30軒による鯨横丁として出発している。
ほとんどが2、3品のメニューが加わる程度ですが、5、6店はサシミ、フライ、ベーコン、ステーキ、天ぷらなど充実した店もある。
乞う、ご期待というところ。

ところで、野毛には下岡蓮杖の最初の写真館があったが、記念プレートもないのが残念だ。
その後、お店を移した馬車道には立派なモニュメントがあるのに・・・。
場所が特定できていないのか?
ともかく、日本のプロカメラマン第一号、長崎の上野彦馬か横浜の下岡蓮杖か、はたまた江戸で開業した鵜飼玉川かは微妙ですが、蓮杖の写真館は弁天通りや馬車道、本町のお店の前に、野毛にあったのは確か。

その弟子の白井彦三郎も明治2年には横浜に写真館を開いている。
もう一人の弟子、鈴木真一も明治6年洋館2階建ての立派な写真館を新築した。
また、蓮杖に写真術を教えた(盗んだが正確か?)ウイルソンを始め、日本初の写真館を横浜で開業したフリーマン、開港直後のヨコハマ風景を残しているロシエ、イラステッド・ロンドンニュース紙上に6枚つづりの貴重な横浜の全景写真を載せたソンダース(パノラマ写真の名手)など、幕末〜明治のヨコハマは写真家の黄金時代の様相。

なかでもイギリス人ベアトは生麦事件直後の緊迫したヨコハマでワーグマンと共にスタジオを開き、肖像写真を多く残している。
後、海岸通に写真館を開いたベアトは精力的に撮影旅行に出かけ、多くの貴重な日本の風景を残している。
江ノ島、鎌倉、箱根など撮りまくっている。
その仕事は「F・ベアト幕末日本写真集」(開港資料館編)としてまとまっているので、ご覧ください。

ベアト幕末日本写真集



下岡蓮杖の写真集も新潮社から石黒敬章編の立派な本が出ています。
これは、当店すぐの中央図書館でどうぞ。
明治のヨコハマ風景は土産品として手彩色を入れて、横浜浮世絵と並んで絵葉書ブームを興しましたが、これも複製がたくさん出ていますので、開港資料館や桜木町野毛ガイドショップでどうぞ。

もう1冊、明治フラッシュバックと称して筑摩書房から発刊された、小写真シリーズも面白い。

ホテル


1.働く人びと、2.遊郭、3.ホテル、4.サーカスの4冊が出ていますが、小生にはホテル篇が一番。
開港期のヨコハマの街並みとグランドホテル、伊勢佐木町の芝居小屋、本町通りのサムライ商会、富士屋ホテルなど興味深い。
神戸のメリケン波止場やオリエンタルホテル、トーアホテルの写真も面白い。
プロフィール
ウェブサイト
お店のウェブサイト
http://home.netyou.jp/33/fushin/
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