図書館のねずみ

南アルプスの伏流水を使った香り高い珈琲を啜りながら、じっくりお気に入りの本が選べる本好きのためのささやかなサロン、ブックギャラリー&カフェ風信。現在は店舗移転の為、日々奮闘しております。書店では扱っていないような古書、絶版文庫を集めています。

2011年04月

桜のいろいろ

町の桜はすっかり葉桜となるころ、八重桜が咲きそろう。
桜前線は北上し、東北の桜の名所が咲き始めている。
テレビで見た、福島県美晴の滝桜は、ちょうど今が満開の時期を迎えていた。
地面につきそうに枝垂れた枝に花をビッシリつけている。
まだ樹勢が盛んで、紛れもなく日本一の桜といえる。
「合図の石部桜」も見事に咲いているだろうか。
「伊佐沢の久保桜」(山形県)は咲き始めただろうか。
4月下旬ともなれば、角館の武家屋敷の枝垂れ桜も、盛岡の「石割り桜」も・・・。
日本列島、沖縄の寒緋桜が咲く1月下旬〜2月上旬から、北海道襟裳町庶野に自生する大山桜が濃いピンク色のはなをつける5月下旬まで、4か月間の桜の旅を楽しめる。
標高が高い長野県の名桜はこれから5月上旬まで、野生の山桜と共に花見ができるし、尾瀬の長蔵小屋前のエゾサクラは水芭蕉と同じく5月下旬が見ごろだ。


仲々、旅に出られぬ人のためには「桜・巨樹名木巡礼」(六興出版刊 1984年)がおすすめ本だ。
神奈川県では、小田原の「長興山紹太寺跡の枝垂桜」が入っている。
(この桜は4月上旬〜中旬に咲き終わった)
桜


人間老境に近づくと桜が恋しくなるようだ。
作家も宇野千代は薄墨桜に取りつかれ「薄墨の桜」を書いた。
薄墨の桜


小林秀雄・白洲正子も晩年は桜巡礼を繰り返した。
水上勉も桜の小説やエッセイを多く残した。
画家も同じく、特に日本画家は土牛をはじめほとんどの作家に桜の絵がある程。
桜の名著もいくつかある。
京都の桜守佐野藤右衛門の本、桜研究に生涯をかけた笹部新太郎の「桜男行状」(平凡社 昭和33年刊)。
桜男行状


戦前の桜研究の名著、山田孝雄「櫻史」(講談社学術文庫)、三好学「櫻」(名著復刻版)などがその代表。
桜史


一般書としてはさくらの品種や文化史までやさしくまとめた林弥栄・戸井田道三著「さくら百花」(平凡社カラー・ブックス)がおすすめ。
桜百科


ところで、横浜の名椿を先日見てきたので、写真を載せます。
鶴見近郊・名刹「宝蔵院の五色椿」。
椿全体

椿花


椿は花期が長いので3月下旬〜5月上旬ころまで見ることができる。
白・赤・ピンクと白花に赤・ピンクがそれぞれ混じった5色の花が咲く名木。
京の名椿にも負けません。


本日は野毛・春の大道芸の日、また近くの居酒屋「村田屋」では東日本大震災チャリティーバザーをやっています。
陸前高田氏の生き残りの貴重な地酒「男山」のオークションもあります。
陸前高田の海岸の松林は一本の大松だけ残して消えてしまった。
この立派な一本松を大事に守り、枝や実から子孫を増やす試みが始まったようだ。
松原の復元を期待したい。

*「白洲正子展」も5月8日まで、世田谷美術館でやっています。氏のコレクションの他、国宝重文クラスの仏像も展示されています。
連休中のおすすめの展覧会です。

「くさいはうまい」の小泉武夫


少し前、フランスの小さな農村で、小学校給食を全部オーガニック食材にしようとした運動の映画があったが、日本でもかなり前から一部の農村ではオーガニック運動の取り組みがは始まっている。
昨年も相模原の津久井地区では有名な地元産の大豆をオーガニックにして地元の小学校の給食に使う運動が紹介されていた。
「酒と食の冒険家」「歩く酒樽」の小泉さんも、意外なことに日本のスローフードを推進している一人だ。
氏の「不味い!」(新潮文庫)は世の美食本と真逆の世界を描いた奇書。
学校給食の洋食化、ファストフード化を嘆き、病院食や幕の内駅弁の不味さ、グルタミン酸ナトリウム味のスープ、糸を引かない納豆、弁当に入った「猫またぎ鮭」に怒っている。
ホテルのティーバッグのお茶・紅茶、ポットのお湯の不味さ、ブヨブヨ肥った皮がきれいなウナギ、解凍したスカスカの味なしカニ、堂々と指をスープに入れて運んできたオバちゃんのラーメンまで、これでもかという不味さのオンパレード。
こんな本が売れる訳がないと思うが、新潮文庫に入ったところを見るとそうでもないらしい。

少年期でアカガエルの味を知って以来、ラオスでネズミの燻製をかじり、ベトナムで泥ガメの串焼きを食うゲテモノ食いの「歩く胃袋」の人とは少し異なった、日本人の食の堕落を嘆く小泉さんがいる。

無類の魚の缶詰好きで、氏の研究室のロッカーには「サンマの蒲焼き」「イワシの姿煮」「サバの味噌煮」「マグロの油漬け」「イカの煮物」「サケの水煮」等が常備されているという。
馬肉ニューコンビーフのファンで「ぶっかけごはんの快楽」(新潮社)の著書ももつC級グルメ好きだが、専門の発酵食品には本物にこだわる人だ。

ぶっかけ飯の快感 001


「くさいはうまい」(文春文庫)は無類の納豆好き、発酵食品好き、世界中の臭いものを食べて歩いている発酵仮面の小泉さんの代表作。
(専門である「発酵―ミクロの巨人たちの神秘―」などの本を除いて)

くさいはうまい 001


生家が福島の酒蔵という小泉さんは、東農大の発酵学醸造学の専門家だが、テレビ・雑誌などの登場も多い。
日経新聞に長く掲載されている「食あれば楽あり」も次々と出版され、このところ文庫本も多くなってきた。
氏の文庫・新書は当店の常備本になっています。
B級C級食材好きの氏の簡単で極安の鍋物の一例。
大きな鍋の中央にサバ水煮缶を3缶ほど、その周りを短冊切りしたハクサイ、角切りの焼き豆腐、笹がきのゴボウとニンジン、そしてシラタキで取り囲み、その上からしょうゆ・みりん・酒・砂糖を加え火にかける。ぐつぐつと煮えてきたらポン酢しょうゆをつけ汁にして食べる。食べる直前に七味唐辛子を撒くと一段と美味。この鍋に最も合う酒は、焼酎のお湯割り。



発酵 001


食に幸あり 001




先週書き忘れた地元の老舗醤油製造元として、神奈川県相模原の「井上醤油」を紹介します。
1875年創業。
創業以来使い続けている杉樽に1年熟成し「タマキュウしょうゆ」という名で流通しています。(1リットル1600円)

本物の醤油蔵

津波で壊滅的被害を受けた越前高田市の映像が映し出される。
美しい松が並んでいた浜辺の面影はどこにもなく、美しく豊かな街並みは消えてしまった。
築200年のなまこ壁の美しい醤油蔵をもつ八木澤商店も全壊だという。
背丈より高いもろみの杉桶もほとんど流されてしまった。
蔵の梁や壁に住み着いていた微生物は、昔からの伝統製法にこだわってきた醤油生産者にとっては宝物だ。
流された桶から、蔵酵母(微生物が生きている)を削り取っている若社長の姿をテレビが映し出していた。
これで復活できる。
酵母菌は東京農大の研究室で培養されるという。
社員2名も解雇しないという意気込みが伝わってくる。
被災以来、この蔵の醤油ファンから連日のように注文の手紙が届くという。
前払いのお金と復活一番の醤油を待つとのエールを添えて。
これも、復活の大きな力となっただろう。

この岩手県の最南端(お隣は宮城県の気仙沼)陸前高田市の八木澤商店は、向笠千恵子さんの「日本の朝ごはん食材紀行」(新潮文庫)にも取り上げられた醤油作りの名店だ。

日本の朝ごはん


岩手県産減農薬丸大豆と南部小麦を原料に、天日塩と酒造用地下水で杉の桶に仕込む。
2年間充分に発酵させる。
そして、低温殺菌。
すべて江戸時代からの製法そのまま伝えている。
コスト削減を押し進め、手間も時間も惜しんだ現代製法とは逆方の貴重な蔵だ。

これと同じ方向を向くのが、紀州・和歌山県湯浅町にも一軒だけ残っている。
天保十二年創業の角長だ。
日本の醤油造りの発祥の地といわれる湯浅町には19世紀初めには92軒もの醤油蔵があったという。
(戦後にも23軒残っていた)
この南紀の港町から関東の銚子や野田に伝わったようだ。
この角長も江戸時代からの伝統製法を守っている。
熊野街道の古い町並みと醤油蔵、近くには醤油発祥の大元、禅寺・興国時。
そして、もうひとつ近くの御坊の老舗「三ツ星醤油」で有名な堀河屋野村の蔵もある。
この径山寺味噌もおいしい。

こんな日本全国の本物の蔵を巡っているのが藤田千恵子さん。
酒蔵ばかりかと思っていたら「極上の調味料を求めて」(文春文庫)という、醤油・味噌・塩・味醂・・・発酵調味料の蔵巡りの本を出した。

極上の調味料を求めて


この本にはもう一つ、築230年以上という国指定文化財の蔵を持つ香川の「かめびし」が取り上げられている。
弁柄を色漆喰壁の醤油蔵と蔵付き酵母230種以上!と併設のうどん屋さん。
一大観光資産だ。
名物讃岐うどんに「かめびし」の生醤油を垂らして・・・ズ、ズズーッと。

ついでに味醂も。
藤田本は飲んでおいしい(女性用美酒)三河味醂、向笠本や辰巳芳子さんは岐阜の「白扇酒造」の本味醂。
アルコール分14度、お屠蘇のような香り。

平松洋子さんの「おいしい日常」に登場するのが、もち米のリキュール!佐原の醸造元「馬場本店」の最上白味醂。
いずれも江戸時代からの製法を忠実に守っている希少な蔵元生産者。

おいしい日常


「丸大豆でなくとも杉桶で1年半熟成させれば、すばらしい味になります。もちろん丸大豆も造っていますが」というのが新潟のコトヨ醤油。
(「日本人が食べたいほんもの」向笠智恵子・新潮文庫)

日本人が食べたいほんもの


日本各地に残る地醤油、味醂、酢、味噌、発酵食品・調味料を大切にしたい。
まだ、探せば地元の生産者がいるはずだ。
京都マルサワ(澤井醤油本店)の淡口醤油、川越・松本醤油商店の「はつかりしょうゆ」・・・金沢にも、銚子にも、野田にも。


こう書いているうちに無性に、角長の三ツ星醤油で卵かけご飯を食べたくなった。
馬場本店の最上白味醂をチビリチビリ飲りながら。
上記の文庫本4冊はいつまでも当店で販売しています。


いのちの食卓

今年の冬はかなり厳しい。
三寒四温どころではない、何度でも真冬の寒さがぶり返す。
土曜の春の陽気で咲き出した桜も、日曜には凍えそうにしている。
花冷えというには寒すぎる。
店前のレモンバームの芽生え、扉のハゴロモジャスミンの蕾も震えている。
店に出入りの牛乳好きノラ猫も丸々太って、まだ冬仕様。
体脂肪をふやしたまま寒さに耐えている。
これでは乳脂肪分を少なくした猫用牛乳を使わなくてもよさそうだ。

上野不忍池では「野鳥(ほとんどドバトだが)に食パンを与えないでください」という看板を見かけたが、これはハトが集ってフン公害という訳ではなく、高かろりー、高コレステロールの成人病ハトを予防するためらしい。
野鳥のえさやりも冬だけが原則だが、野鳥にもノラ猫にも気を遣う現代の健康と食の問題。
生命と食の関係を現代人はどう考えているのか?

野性の戻したトキがドジョウばかり食べてまともに歩けなくなり、ビタミン剤を投与することになったらしいが、人間様は高カロリー、高コレステロール、添加物いっぱいの食品に囲まれて、成人病は減りそうもない。
小学校では英語よりも食育を!と、言いたくなる。

いつぞや、食肉の偽装問題で捕まった添加物名人の社長の言葉。
「うちの家族には、うちの肉は絶対食べさせないようにした」と、のたまわったそうだ。
恐ろしいことだ。

食品添加物の神様といわれた人が書いた日本の食品添加物の実態を読むと(この本は当店の禁書)、肉や魚の加工食品、なかでもソーセージやメンタイコなどはクズ肉が高級品に変身するから恐ろしい。
(もちろん見かけだけだが)スーパーの店頭で、ライトの色でツヤツヤした光沢でいかにもおいしそうな色をしたものは危ない。
地味でまずそうなものに本物があるという逆転現象。
一見賢い、添加物など気にしている消費者ほど、色艶にも標示にもだまされてる。
子どもの舌を鍛えないととんでもないことになる。
日本の食の堕落は深く進行中。

辰巳芳子さんの「いのちの食卓」はいのちを支える食についての著者の考えを優しく説いた入門の書。

いのちの食卓

辰巳さんの基本料理のレシピが付いているのが嬉しい。
シンプル蒸し料理12品。
厳選煮物料理6品。
基本介護スープ3品。
当店では辰巳芳子さんの本や、その母親・辰巳浜子さんの「娘につたえる私の味」(婦人の友社刊)は常備本。

娘に伝える私の味


味覚旬月味覚日乗


あなたのために



店ではサンシュやダンコウバイの黄色い花が、春を呼んでいます。
どうぞご来店ください。


お知らせ
5月14日(土)午後2時半より、佐藤凉子さんをお迎えして2回目の「おはなし会とお話の会」を開きます。
詳しくはホームページをご覧ください。
プロフィール
ウェブサイト
お店のウェブサイト
http://home.netyou.jp/33/fushin/
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