図書館のねずみ

南アルプスの伏流水を使った香り高い珈琲を啜りながら、じっくりお気に入りの本が選べる本好きのためのささやかなサロン、ブックギャラリー&カフェ風信。現在は店舗移転の為、日々奮闘しております。書店では扱っていないような古書、絶版文庫を集めています。

2011年09月

小田原〜強羅は大茶人コレクターの茶会の地だった

小田原・箱根強羅、湯河原、熱海などは、東海道線が通り、東京にも程よい距離ということもあって、政財界の重鎮たちの別荘・隠棲の地として、明治・大正の時代から有名であった。
特に小田原には三井財閥の柱を築いた政商、益田孝(鈍翁)の茶室・別荘があったが、晩年はお城に隣接した掃雲台で茶三昧の生活を送ることになる。

鈍翁は、原富太郎(三渓)と並ぶ日本美術の最大コレクターであった。
源氏物語も地獄草紙も絵因果経も鈍翁のコレクションである。

三渓には仏画の名品「孔雀明王画像」(現在は東京国立博物館蔵)と「閻魔天像」「愛染明王像」があり、源氏物語に比肩しうる「寝覚物語絵巻」もある。
「病草子」も「一字蓮台法華経」も・・・周文も宗達も・・・
(三渓は自身のコレクションを画集「余技」として、死の前年、昭和13年に出版している。また、自身の絵を集めて「三渓画集」も出版した。)
光悦はもとより、仁清、乾山も宮本武蔵(二天)もコレクションしており、三渓が最高の眼力を持つ最大のコレクターであったことが識れる。
返す返すも、戦前三渓コレクションを中心にした横浜市美術館が実現できなかったことが悔やまれる。

どうしても鈍翁より三渓に力点が移ってしまうが、戦後の小田原に三渓を師と仰いだ最後の茶人コレクターが隠棲した。
老欅荘の松永安左衛門(耳庵)である。
相模湾を望む小田原板橋の高台には、山縣有朋の「古稀庵」の広大な別荘もある温暖な地だ。


昭和36年、耳庵は最大最高の仏画を入手した。
これまで鈍翁・三渓と比べるとどうしても小さく見られてしまう耳庵だが、この絵だけは三渓もあこがれていた名品だ。

釈迦IMG
                        (部分図 芸術新潮より)


「釈迦金棺出現図」(現在は京都国立博物館蔵)、この平安時代に描かれた日本仏画最高傑作については、個人的な思い出もあり、また、次回に書きたい。

近代の日本美術コレクターについては、「芸術新潮」に長く掲載された「戦後美術品移動史」を増補した、田中日佐夫「美術品移動史(日本経済新聞社 昭和56年刊)という優れた成果がある。

熊野・吉野の人たち

和歌山・奈良、特に熊野地方が台風12号の豪雨により、死者・行方不明者が100人を超える大被害を受けた。
雨量1300ミリといえば、その集中ぶりがわかるだろう。
奈良・吉野から、山伝いに十津川村、そして熊野川を下り新宮で海に至る。
山が落ち込む深い谷々に川と道がくねくねと続き、家は斜面に寄り沿っている。
山津波のような深層崩れで川が堰き止められ、対岸の家が埋まってしまったり、セキトメ湖が各地で出現する危険もよく理解できる。
このなら・和歌山・三重の県境が山の熊野の中心、熊野本宮にも近い。

熊野といえば、昔ならば南方熊楠・佐藤春夫と名が浮かぶが、現代では「枯木灘」の作家、亡くなった中上健次や熊楠伝を書いた和歌山生まれの津本陽と、「縛られた巨人」の神坂次郎がいる。
奈良県側の山には、吉野の歌人・前登志夫がいる。

小生は山住まいの氏の随筆集を愛読していたが、近年亡くなられてしまった。
その遺著が「羽化堂から」(NHK出版)

羽化堂から


氏の描いた山峡(やまがい)の村の山桜、山霧が谷を覆い山の稜線だけがくっきり姿を見せている風景、朴の花、泰山木、大山蓮華など白い花が咲く山家の庭などは、すっかり親しいものになっていた。
(あの恐ろしい百足〈ムカデ〉さえ、氏は龍神の使いであると言われ大目に見ていたが、これだけは小生には納得できず)
角川文庫から昭和42年に刊行された「吉野紀行」も、現在でも利用価値が高い。

吉野紀行


もう一人、十津川には林業家で作家の宇江敏勝さん健在だ。
宇江さんの本については、別の機会に。

今夜は台風15号の大雨が、数多いセキトメ湖の決壊を起こさぬよう祈るばかり。
熊野川最下流の三重県紀宝町では、水位が10メートルも上昇、昔がらの「輪中」という守りまで、決壊する被害を起こした。
津波並みの被害だ。

今週のおすすめの本は、南方熊楠の日常生活をその娘が証言した、谷川健一・中瀬喜陽・南方文枝著「素顔の南方熊楠」(朝日文庫 品切れ)

素顔の南方熊楠

満月の夜、再開店しました。

真夏の日差しが戻ってきた。
この2,3日、野毛の街中には木陰というものがほとんどないことを実感。
野毛山公園まで登らないと緑陰の一息とはいかない。
街中に樹を増やさないと・・・。
老人にも子どもにも優しい街を目指してほしい。
さすがに夜は涼風が感じられるようになった。
中秋の名月の夜、野毛の路地から電線越しに眺める月は「野毛八景」の一つかも。

八月中旬から休業していたお店も、この9月13日より再始動になりました。
店の奥の倉庫整理、本とガラクタの山に大苦戦、予想以上の段ボールの山になりました。
店内も溢れた本・雑誌を仕舞い、すっきり、さっぱり、きれいになっています。
スリッパというものをなくし、靴のまま入っていただくようにしました。
一度ご来店になり、ご確認を。

雑誌のバックナンバー、絶版の文庫や新書など並びきれないものも多く在庫していますので、お問い合わせください。
倉庫から出してきます。
また、ネット販売も徐々に充実し行きたいと思っています。
特に絶版文庫の在庫は、「横浜一」と自負しています。
探求書がありましたら、メールをください。


今週のおすすめ本は、次の2冊の絶版文庫
カーソン・マッカラーズ
「夏の黄昏」「The member of the wedding」(福武文庫・絶版)売価800円

夏の黄昏


日影丈吉
「応家の人々」(徳間文庫・絶版)売価500円

応家の人々


ご両人とも、当店では全作品を取り扱っています。
マッカラーズの第一作品「心は寂しい狩人」(新潮文庫)と、丈吉「夜汽車」(白水社刊)の2冊は『高価買入れ中』です。

大鹿村山羊乳記

「日本一美しい村」をめざす南信濃の大鹿村に行ってきた。
大鹿村は元々、農村歌舞伎が残っている秘境の山村として有名であったが、今年は亡くなった原田芳雄が企画主演した最後の映画「大鹿村騒動記」(横浜国大出身、横浜映画から育った坂本順治監督!)の舞台として一段と村名が広まった。
この南アルプスの山々が連なる山麓の村はトンネルができるまでは、飯田方面からも高遠方面からも山に阻まれ、春明の歌舞伎開催の日か、荒川岳など南アルプス塩見岳に登る登山家だけが訪れる、静かな最奥の山村であった。
映画はまだ見ていないが、歌舞伎上演までの主役を張る主人公のドタバタを描いたようだ。

写真は、この毎年5月3日に開催される舞台になる神社の境内。

舞台


階段状の石垣が少しあるだけの素朴な広場が観覧席。

観覧席


みな、思い思いにシートを敷いて、弁当持参の芝居鑑賞となる。
2〜300人がやっとの空間だが、このところ、海外からの観光客も混じり全国から多くのファンと村民が会場を埋め尽くす。
この、コンビニもスーパーもない山村の風景に惹かれて移住する若者たちも多いようで、谷ごとの集落には耕作放棄地など一つもないのが自慢だ。
休耕田にも畦道にも花が植えられ、村の景観を保っているのが心地よい。
高遠口からの峠近くには、日本最大級のパワースポットが発見された。
このご霊験あらたかということか、実はこの山々の懐のような辺境の村のそこここに力がみなぎっているのが感じられる。

実は、ここには急斜面の高地を利用した山羊の放牧がおこなわれていることを聞いて見に来たのだが、到着時刻が遅すぎた。
ヤギの乳搾りとチーズ作りはとうに終わったが、(この時期、山羊乳も少ないのですべてチーズに回すとのこと)大鹿村名産、温泉から作る珍しい山塩を手に入れて(50g500円)満足して帰ってきた。
霧深い標高1,000mの拘置を利用したのがもう一つ。
ヒマラヤの青いケシの群生(栽培)が見られるのも魅力。

店内整理で休業中の店は、13日(火)より、再開いたします。
ご来店ください。

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http://home.netyou.jp/33/fushin/
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