図書館のねずみ

南アルプスの伏流水を使った香り高い珈琲を啜りながら、じっくりお気に入りの本が選べる本好きのためのささやかなサロン、ブックギャラリー&カフェ風信。現在は店舗移転の為、日々奮闘しております。書店では扱っていないような古書、絶版文庫を集めています。

2012年08月

「称名晩鐘」だけの金沢八景

「かなざわ」と言えば、江戸っ子にとっては名所・金沢八景をすぐ想い浮かばせるほど親しんだ地であった。
それが、加賀百万石の金沢が先に出てしまうようになったのはいつごろだろうか。
八景の風光が次第に失われつつあり、鉄道が全国に巡るようになる明治末には、逆転現象は起きていて、東京人にとってもハマっ子にとっても加賀の金沢が優勢になってくる。
大正13年の清方の随筆にも、金沢八景は忘れ去られ、今では武州の金沢といわねば通じないと嘆いている。

日本画家・鏑木清方が金沢八景に惹かれ、通い始めたのは大正7年ころからであった。
当時すでに能見堂のすぐ近くまであった入江の海は後退し、ハス田が広がっていたが、清方の愛した「江戸名所図会」の金沢八景の名残は随所に見られた。
大正9年には君が崎に別荘を手に入れ、少し高台にある四阿「游心庵」からの眺望を愛した。
「東南に開けて三浦の武山、大楠山。中には箱根の二子山にそっくりの山容を持つ山もあり、石を切り出す高取山、鎌倉半僧坊などの峯が、墨絵のように連なり合って、瀬戸の継橋のこなた、入江の跡の青田は漣(さざなみ)の寄せるが如く丘に迫り、裏の山にも、庭の崖にも、季節は過ぎたが茅に交わって山百合の花の咲いているのも都会人には珍しかった。」と、その著「こしかたの記」に記している。
現在の君が崎といえば、国道16号のバイパスが出来ているほどの渋滞で知られる交差点の地だから隔世の感がある。

少し前に県立「金沢文庫」で「金沢八景いま昔」展が開かれたが、その変貌を版画や古写真で識ることができる良い展示であった。

金沢ポスター


これすべて楠山永雄氏の個人コレクションという。
広重も北斎までも描いた名所・金沢八景の地は、鎌倉・江の島とセットになって、江戸っ子に人気の行楽地となっていたが、鎌倉・江の島は残り金沢八景だけは消えてしまった。
称名寺と瀬戸神社だけではどうにもならない。
海軍基地横須賀に近かったことが決定的に悪かった。
追浜の飛行場や軍事工場ができ始める頃には、金沢の風光はほとんど失われてしまった。
能見堂跡の筆捨松も、清方が描いてすぐ折れて失われてしまった。

能見堂


鉄道駅のなかった金沢に湘南電鉄が開通したのが昭和5年。
急速に都市化が進み、横浜市に編入されたのが、昭和11年。
あれほど愛着があった金沢も、飛行機の金属音に耐えがたく清方が別荘を手放すのは、昭和14、15年頃だったようだ。

戦後の金沢は、この辺りではどこにでもある海水浴場となってしまった。
飛行機音は無くなったが、清方はもうここを訪れることはない。
都会の中の田舎を求める清方は、鎌倉の雪ノ下を終の住処に決め、「こしかたの記」を書くことになる。

江戸っ子たちの愛した金沢八景を当時の版画で偲んでみよう。

八景景色

白州の夏

毎夏、お盆前後は夏休みをとって、山梨・白州行きに決めている。
テレビもパソコンもおいていないので、情報はもっぱらラジオからだ。
オリンピックも高校野球もラジオの中継で聞いた。
高校野球は毎年聞いているし野球中継はいつもラジオでやっているが、オリンピックのラジオ放送は珍しい。
アナウンサーは実によく説明しているが、こちらの頭がその言葉についていって、状況を思い描くのが難しい。
それでも、夜中まで楽しんだ。

白州といえば、甲斐駒ケ岳をもつ名山の地であり、そこから流れる尾白川で有名な名水の里でもある。
名水があるところ名酒もあり、ということで、「七賢」の酒蔵もあり、シングルモルト「白州」のサントリー・ウイスキー工場もある。
無論サントリーの「南アルプスのおいしい水」もここの水を使っている・・・と、町自慢を書いてから、さらに甲州街道の街並みが日本の道100選に選ばれていることも加えると、100名山・名水100選・日本の道100選の三冠を持つ町はあまりないのでは?という、話になる。
ついでに言えば、ホッザマグナという日本列島の成り立ちに関わる構造線までこの地を走っていて、古くからの名湯・塩沢温泉「ホッサマグナの湯」もここにある。

もひとつついでに、名水の地は良いコメもできる。
ここの白州米やお隣の武川米は全国のコメの品評会で新潟・魚沼産のコシヒカリ並みの評価を受けて注目されている。

これに犬山城のような名城でもあったら、身延山のように砂金でも出たら、大月の猿橋のような名橋でもあったら・・・などと欲張ってはいけない。
猿橋4
(猿橋)

所詮、白秋は江戸時代では街道の宿場町。
武田信玄時代の山城はあっても、名将並びに築城家でもあった馬場美濃守の屋敷や墓所があっても城下町ではない。

白秋の夏はやはり渓流遊びが一番だろう。
名水の湧く駒ケ岳神社より、吊り橋をわたって尾白川渓谷に入る。
尾白川3
尾白川2
滝

















この季節は花は少ないが、玉アジサイの涼しげな花はよく見られる。
小さな滝がいくつも続いて清流に変化をつけている。
冷たい水に足をつけながら、渓谷の緑を味わう至福のとき。

お盆を過ぎると夏の後半、そろそろツクツクホウシの鳴き出す頃だなあと思っていたら、計ったように「オーシーツクツクー」と法師ゼミが鳴き出した。(初声)
過ぎ去った夏を惜しむ声だ。
小学生にとっては、「宿題やったか、済んだか」の恐ろしい声に聞こえるだろう。

庭に植えたはずのないソバナの花が二株咲いている。
紫の風鈴型の小花が可愛い。
どこから来たのだろうか。
ソバナはソマナ(杣菜)から転じた名前だろうが、里から森へ入る山際で見かける草だ。
奥日光ではよく見たが山梨ではあまり見たことがない・・・不思議だ。
お店の展示用に立派な株の方を少し茎葉を残して切る。
必ず二度目の花がつくはずだ。

この夏居付いたクロツグミの綺麗な鳴き声をいつも楽しんでいたが、初めてその姿を見せてくれた。
クロツグミというより茶色ツグミに近い?
メスの羽色に近いが・・・?
メスがあんなキレイな声で鳴くか?
オスの鳴き声におびき寄せられたメスを見たのか?
疑問は増えてしまった。
野鳥の会の藤本さんに聞いてみれば早いのだが・・・そうはいかない。
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